サイモンうるせぇ、第25話。テレビ未放送でDVD特典として収録された今作、故あって割と早めに見ることが出来ました。いやぁ、久し振りのデュラワールドに、お腹いっぱいです。
物語としては、本編で巻き起こった激動の事件の後日談。(かりそめの?)平和が戻った池袋を舞台に、これまで登場した大量のキャラクターたちが元気いっぱい、常識皆無の状態で暴れ回っている様子をただただ描き続けるだけの、本当にお祭り騒ぎのエピソードだ。内容が内容なので本編の時に見せたような張り詰めた緊張感や、思わず唸ってしまうような見事な伏線なんてものは見受けられないが、その代わりにあるのはあまりにも賑やかな大量のキャラクターによる群像劇のごった煮パーティー。これだけのキャラクターが野放図に走り回っているにもかかわらず、シナリオラインとしては全く破綻を来さず、見事に「ある休日」のお話になっているあたりは、この作品のスタッフの手腕を褒める以外に無い。ホント、よくこの作品の脚本で統制がとれるものだ。
まず、ほぼ全てのキャラクターに出番があり、ワンポイントの登場でもばっちりイカれた雰囲気を出してくれているだけでも驚嘆に値するもの。流石に紀田の出番だけはあんまりなかったけど、個人的にはちょこっと出てきただけなのにマッドな雰囲気がインパクト充分な矢霧姉弟がお気に入り。波江さん、そのテレビは臨也の家のものだよね……そして張間美香さん、日本には放送コードというものがあって……って、こいつらに何を言っても無駄だわな。
他にも最後の締めで美味しいところを持っていった葛原や、全国のDVD購買層である腐女子の意見を代表して受けだの攻めだの連呼してくれた狩沢さんを含むチームダラーズ。相も変わらずいちゃいちゃっぷりが目に毒なセルティ・新羅夫妻も愉快。もう、新羅はセルティのタイプした文字列なんて一切見てる描写が無いんだよね。絶対に声が聞こえてるんだわ、あれ。ラブですなぁ。そして、そんな中でも一応主人公らしく最愛の人との関係性を発展させたのが、一般人代表の帝人。テレビのインタビューに対して気が利かないってレベルじゃない応対だが、その木訥な態度は園原さんにも高評価。園原さんがやたら可愛らしかったので、こちらのカップルも素直に祝福したくなります。急なピンチにちょろっと覗く罪歌もご愛敬。
そして狩沢をして「池袋一のベストカップル」と言わしめた臨也・静雄のコンビ芸。世間のニーズを鑑みてか、この2人の怪獣大戦争が一番尺を取ったシーンになっており、なおかつ動画の質もかなり充実したいかにも映像特典らしいパートである。本放送の間はある程度守られていた「ギリギリの現実感」は今回全く機能しておらず、大量の交通標識を突き刺して展開される脅威の空中戦は馬鹿アクションの極み。静雄の馬鹿力スキルは前にも色々と描写があったが、臨也の一体どこから湧いてくるのか分からない謎の投擲術は、もう格好良さだけを優先させたあり得ないネタになっている。刃物連打でどんなものでも破壊するって、どう考えても臨也の方が静雄よりも強いよな。もちろん、冒頭で静雄が言った「ダンプに轢かれて〜〜」のくだりを臨也が踏襲してみせるあたりが、この2人のいつも通りの流れである。そういや突如新キャラ(だよね?)の臨也シスターズが登場していたが、特に何もしないまま終わってしまいました。ま、百合百合しいパートがあったから良しとするか。中の人が喜多村英梨っていう時点で化物語のファイアーシスターズを思い浮かべるのだが、片割れが井口ではなくてひーちゃんだった。井口だと思ったら金元……ハッ、これはイカの呪いじゃなイカ?
ま、冗談はさておき、最後に残された1キャラは、本編でそこまでスポットが当たらなかった静雄の弟、羽島幽平。今回の「バカ騒ぎエピソード」を1本のシナリオとしてまとめる際に、彼が最も重要な基盤をなしているのが、脚本の上でのポイントである。要所要所でチープな煽り文句を挿入することで、池袋の街中で起こった様々な超常現象が「テレビの中のフィクション」に落とし込まれるという演出が、今回特有だった「現実感のなさ」に免罪符を与えることになるし、幽平のナレーションによって1つ1つの騒動が区切られることにより、本来ならば収拾が付かないはずのバカ騒ぎの多元構造が、いつの間にか「1本のテレビ番組」として収斂するような錯覚を与えるようになる(もちろん、実際は無茶苦茶なのでちゃんとドタチンが突っ込んでいる)。この「テレビ撮影」というシチュエーションを完成させた時点で、このシナリオは成立したわけだ。お見事である。
今回のコンテは、「禁書」で罰ゲームエピソードなんかを担当してちょっと気になっていた川面真也という人。こういう賑やかなものを強引にまとめる手腕に長けているのだろうか、今後も注目してみたいところだ。そして、様々なテレビ番組のパロディを繋いでも1つの世界観を維持し、最終的には「結局いつもの池袋」という不思議な親近感に帰着させてくれるのは、やはり大森監督のディレクションの力と見ていいのではなかろうか。様々なテレビのつぎはぎというと、最近だと「海月姫」のオープニングでも見せてくれた印象的な手法。このあたりの「落とし前の付け方」が本当に上手くて、賑やかさだけを前面に押し出した頭空っぽ状態で楽しめる画面作りが徹底しているのが嬉しい。今回はアクションシーンを中心にキャラクターのデザインもかなり崩し気味の表現になっていたが、「崩れ」というよりもどこかユーモラスな「崩し」になっているのも意図的な部分なのだろう。この作品ならではの、面白い変化球である。
今回のエピソードでもって、一応このテレビシリーズは完結ということになる。だが、どうやらまだ原作は残っているようだ。今後、またこの胡散臭くもどこか近しさを感じる池袋の街に、ご厄介になる日が来るかもしれない。それまで、我々は交機に気をつけながら待ち続けるのである。
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