1/19【声優100人名鑑 No.015】久野美咲

　久野ちゃんである。この記事を書くためにWikiを確認しにいって久野ちゃんが32歳になるという事実を全く受け止められないでいる。えっ、まだ11歳くらいじゃないの？　未だその正体を掴みきれていない久野美咲。果たして、どこからどんな角度で彼女を評するべきなのだろうか。

 

・馴れ初め

　久野ちゃんと遭遇したのは世間一般の人らとおよそ同じで「世界征服〜謀略のズヴィズダー〜」だとばっかり思っていたのだが、過去ログを確認したところその1年前の「ガリレイドンナ」でレギュラー出演している時点で名前を挙げており、がっつり認識はしていたようだ（正直全く覚えてない。10年前のことだし）。でもまぁ、改めて認識してしっかりとその名前を刻み込んだのはやっぱり「ズヴィズダー」だと思います。そして久野ちゃんについては、本企画で取り扱っている声優の中でも、思いの外言及してる回数が多いのが意外だった。やっぱり出てくるとそれだけ印象に残ってるってことなんでしょうかね。ログを追いかけると「ズヴィズダー」の後も即座に「ログ・ホライズン」→「WIXOSS」→「七つの大罪」とがっつりレギュラーで活躍してる作品に言及しているし、もはや登場直後から久野ちゃんは久野ちゃんだったし、私の中の認識もほとんど変わっていない。だからこそ10年で歳を重ねた印象が全くないのだが……まぁ、年齢に縛られない活躍が楽しめるってのが声優ファンの特権ですからね。「限度があるだろ」とは思うんですが、常識を覆すことこそが、久野マジック。

 

 

・良きところ

　久野ちゃんの場合は「良くも悪くも」みたいな注釈もつきそうなんですが、それでもやっぱり声質。声優の記事書いてるんだからだいたいの人が「声質」で片がつくやろ、と思われるかもしれないが（実際そうなんだが）、久野ちゃんの場合はやはり異次元ですよ。ほんとのほんとに久野ちゃんの前に久野ちゃんはなく、今のところ久野ちゃんの後にも久野ちゃんはいない。どこをどう振り回してもひたすらに久野ちゃん。この「最終的に味付けに醤油入れときゃなんとかなる」みたいな全方位型の強さこそが最大の武器である。

　「久野ちゃんは声優として上手いのか否か？」という問題については、数年前にグランプリに選出した際にひとしきり俎上に挙げたのだが、この時にいくらか濁した結論は未だ完全に出たわけではない。未だ久野ちゃんキャラを聞いてて「変なの」と思うことはあるが、それは彼女の演技が拙いことの表れなのか、それとも演技やらなんやらの縛りを全部とっぱらった上でなお残る「変な声」だからなのか。もう、ここまで軸が外れているとまともな評価ができないのである。

　「何を大仰なことを。ロリボイスの声優なんて過去にもたくさんいたじゃないか」と思われるかもしれないが、そんな簡単な話じゃない。たとえば「ロリボイス」の大看板としてはこおろぎさとみとか、大谷育江とか、斎藤彩夏あたりがパッと浮かぶと思うが、この辺りの人たちは、失礼な言い方にはなるが「似た系統の声」を探すことはできるのだ。それこそ大谷育江とこおろぎさとみを横並びにすることは可能だろうし、斎藤彩夏についても、実際に同じ枠に吉田有里と森永千才を並べると、意外とどれが誰だか分からなくなる。また、これらの役者さんたちは同じ系統の声を並べつつも、案外幅を広げてもいるので、森永千才なんかはがっつりキャリアウーマンの役なんてのもこなせてしまったりする。

　転じて久野ちゃんはどうかというと、どれだけ隠そうとも一発で久野ちゃんだと分かる。モブに紛れてても久野ちゃんだし、なんならボイスチェンジャーを通しても久野ちゃんである。もう、ここまでくると「声優」というよりは「久野美咲サウンド発生装置」と見た方がいいのかもしれない。それだけの唯一性を持つ才能を、やはり放っておくわけにはいかないのだ。

　久野ちゃんが声を付与したロリは「久野ちゃんボイスだ」というだけで特別になる。普通ならば「れっきとした社会人女性がロリっぽい声を当ててるだけなんだよな」ということをしっかり理解した上で聞いているが、久野ちゃんの場合はもう、「いや、これは久野ちゃんがほんとは幼女なだけだろ」と誤認してしまう。声優だとかどうとかいう次元じゃねぇ、人類の神秘なんだよ。

　結局今回も久野ちゃんの巧拙についての話はしてないな！

 

 

・お勧めキャラ３選（ぐらい）

 

・「ひそねとまそたん」より「甘粕ひそね」

　上述の通り、ロリキャラをどれだけ並べ立てたところでそれは「久野サウンドのベースライン」を示す意味しかないので、ここはなるべく「外れたところにいる久野ちゃん」をピックアップすべきだろう。その筆頭はこのひそね。なんと、成人女性である。久野ボイスの成人女性って久野ちゃん本人以外はなかなか観測できないため、それだけでずいぶん貴重。そしてそんな久野ボイスが生み出す（生み出してしまう）異次元をうまいこと作品の本質として落とし込んだのが怪作「ひそねとまそたん」。ユルい雰囲気の中にピリッとしたスパイスが混じる独特の世界観は、「中心に久野ボイスをおきます」という型破りなスタートラインがなければ実現しなかった構造。世界をつくっちゃう声、というか世界のあり方を強要する声なのだよ。

 

 

・「メイドインアビス 烈日の黄金郷」より「ファプタ」

　こちらも世界をぶっ壊す声ですよね。しかもこちらは久野ボイスを悪用して世界を捻じ曲げてやろう、という制作理念ではなく、「既にぶっ壊れてる世界なので、途中から久野ボイスで更なる混沌を引き起こしても成立するだろう」という狂気の乗算。あらゆるスタッフのネジが外れたおかげで実現した、貴重な貴重な久野ボイスのアウトローサンプルである。

 

 

・「アイドルマスターシンデレラガールズ」より「市原仁奈」

　最後に普通のロリ！！！！！　いや、でもこの子は「普通のロリ」であるのか？　私なりにラインナップを見て「正統派の久野ちゃんロリを１キャラで表現するにはどのキャラを選んだらいいんだろう」と考えてみたんですよね。個人的な思い入れとしては性の概念を超越したエルフナインがおすすめだし、作品への愛着でいえば頑張り印の鈴木さつきちゃんも捨てがたい（一応女子高生やぞ）。それこそ「ズヴィズダー」からケイトちゃんを連れてくるのもいいし、超越存在としてのバランスならWIXOSSのタマあたりも有力候補だ。ただ、そうして外に外にばかり向けてしまっても正統な久野ちゃん評ではない気がして、視線をぐるりと逆に向けた時、「ロリで、ちょっとだけ現実から外れてるけど、そこにただ久野サウンドの幼女がある」というサンプルとして一番ふさわしいのはこの小さなアイドルだと思ったのである。アイマスは真っ当なフォロワーじゃない私が選ぶのもどうかと思うが、U149の中でもひたすらに「無垢さ」の象徴であり続けた仁奈ちゃん。でもどう考えても口調はイカれてるクレイジーな仁奈ちゃん。ここいらが、当座の「久野アビス」の深奥ということで置いといてください。

 

 

　回を増すごとにスピリチュアルな雰囲気になってる気がする当企画、果たして、100のカウントを終えるまで私の精神は持つのだろうか。マジで百物語みたいに最後に灯火が消えたら怖い。

 

 

・関連リンク集

新番チェック・七つの大罪

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番組感想・ハッピーシュガーライフ

メイドインアビス烈日の黄金郷第１０話「拾うものすべて」

映画「アリスとテレスのまぼろし工場」

 
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