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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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 洋装のみよ吉は本当に美しくていらっしゃる、第6話。いや、それも大変結構だけど、今回は全体的に希望に満ちあふれていて、とてもとても良いお話になっていたと思います。一言でまとめると「菊さん可愛くてしょうがない」。

 これまでずっと燻ってきた菊さんの悩みが、すかっと晴れ渡る転機となるエピソード。もちろん、これまでの蓄積があり、悩んで悩み抜いたために得られるカタルシスなわけだが、やっぱりこうして晴れやかな気持ちで見ることが出来るエピソードというのは感無量だ。そこには「菊比古とみよ吉」、そして何よりも「菊比古と助六」の関係性がこれ以上無いくらいにはっきりと描かれている。

 注目すべきシーンを2つに絞ってしまおう。1つは、夜中の汚い相部屋、助六との対話。みよ吉との電車での会話のおかげで、自分に向いている芸の方向性のとっかかりを掴んだ菊比古が部屋で稽古に励んでいると、そこにいつも通り赤ら顔で入ってきた助六が「俺の言った通りだろ?」としたり顔に。それを見た菊さんは大きな衝撃を受ける。この時の彼の感情は、珍しくはっきりと台詞でも表されており、「この人はいつも先を行っている」と、これまで通りの羨望を漏らす。そしてそれ以外にも、手に持った扇子をぎゅっと固く握る様子から、にじみ出る悔しさが執拗に感じられるのである。嫉妬とも取れる「負け台詞」と扇子に籠もってしまう戦慄きを見ると、さぞかし悔しくて、助六のことが疎ましいのかとも思うのだが、もちろんそんなことは無い。助六の先見の明と抜群の勘を認めた菊比古はわずかに笑みも浮かべるし、フッと力を抜いた様子も見せる。嫉妬と羨望、尊敬と感謝、そうしたものが入り交じった菊さんのなんとも複雑な感情が、この静かなシーンの中に様々な表情で溶け込んでいるのである。助六が乱暴に口を付けて飲み込んだ鉄瓶の口にしたたる雫は、菊比古の悔しい涙を表すかもしれないし、ショックににじむ冷や汗を表すかもしれない。火鉢に突き刺さる火箸は、沸々と湧き上がる菊さんの情念と、そこに突き立てられた確固たる意志の表れかもしれない。狭い部屋の中で、助六の発した全ての言葉が、菊さんにとって重圧にもなり、励みにもなっていた。

 そしていよいよ新しい菊比古の時代が訪れる。今回は本作らしく、きっちりたっぷりと噺を聞かせてくれる構成になっており、前座を飾るのは助六の「お血脈」。なるほど、聞けば聞くほどに菊さんは「アタシには出来ない」と思わせられる、そんな軽妙な噺の進め方。石川五右衛門の大仰な芝居口調のギャップが笑わせどころの噺であり、助六が舞台上で客席との相互作用でどんどん高まっていく様子がはっきり見て取れる。この一席だけでもなかなかに贅沢な演目である。しかし、今回の真打ちはその次の高座だ。助六の仕事を見た菊さんは、またもそこから気分を落とし込みそうになった。「客のための落語」という助六の主義信条をまざまざと見せつけられ、そこに相容れない自分の芸に思い悩み、「なんのための落語か」と、内に内にこもってしまいそうになる。しかし、そこは昨晩も考えたこと。そして、頭の隅にはみよ吉という心強い理解者の存在もあったのかもしれない。ここでついに、菊さんは「アタシの落語」という言葉を発するのである。

 高座に上がり、思い通りの噺を進めていく菊比古。その表情は柔らかく、助六の言っていた通りに、艶っぽい登場人物の描写が次第に客の心を取り込んでいく。勢いに任せた助六の落語は、場面転換とともにコロコロとカット割りがかわるめまぐるしい落語だったが、菊比古の「品川心中」は、そうした助六の落語描写とは見事な対比を成している。非常に面白いのは、落語の「中の世界」の描写が少しずつ高座の菊比古に入り交じってくるわけだが、その溶け込み方がどちらか片方に振れず、曖昧な状態に入っていくところ。具体的に言えば、背景だけが廓のお座敷になっているにも関わらず、そこで噺をしているのは噺の中の女郎ではなく、あくまで高座の菊さんだ。彼が作品世界に埋没して、そこで対話を進める形になる。金蔵と女郎の切り替えについても、助六の話のようにカットで割るのではなく、自然に菊比古が演じているそのままを画面に投影させている。柔らかく、沈み込むように入ってくる菊比古の落語の情景としては、この演出が非常に効果的に働いている。そして、肝心の心中のシーンまで来ると、ついにその世界がはっきりと「作中世界」へと移る。あとはサゲまで一直線だ。これまで菊比古が噺をしたときに、ここまではっきりと作品世界が投影されたことは(後年の「鰍沢」を除けば)一度も無く、今回の演目が、これまでの菊さんの作りあげてきた落語とは全く違うものであることがはっきり分かるようになっている。本当に、見ていて退屈しない。

 ようやく手に入れた、「アタシの落語」。その見事な変化に舞台袖の助六もはしゃいでまわる。達成感に満ちた菊比古が最後に深々と頭を下げた時に、高座の板目に映り込む彼の表情が大写しになるのもなんだか不思議なカット割りだが、記念すべき一席となった高座から離れがたいほどの菊比古の高揚感が感じ取れる。そしてとどめは、帰りがけに「良かったよ!」と褒められた時の菊さんの返し。「ナ・イ・ショ」って、やっぱりあんたがヒロインだよ! 菊さん、可愛すぎるわー。本当に素敵な笑顔でございました。

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