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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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 英雄も悪党も最期は毛玉か、第7話。思えば兄弟揃って金曜倶楽部によって命脈を絶たれたのだな……。愛を持って食われることを選んだ兄、憎しみを持って食うことを選べなかった弟。どちらも毛玉のなれの果て。

 こうして見ると、やはり金曜倶楽部というのは謎多き組織である。どうやらメンバーの中で人ならざる力を持っているのは寿老人(と弁天)だけのようであるが、その寿老人が一体何を目論んでいるのかが闇の中であるため、何とも不気味な印象なのだ。まぁ、同じく森見作品には様々な「闇の組織」が存在しているので、そうした京の都の暗部を司るのが寿老人だという認識でおよそ間違いではないと思うのだが。今回登場した寿老人の三段重ね電車は、「夜は短し歩けよ乙女」の李白が鴨川の川床で乗り回していた二階建て電車に通じるものがあるが、李白がギリギリ人の範疇で描かれていたのに対し、こちらの寿老人は天狗や天満屋と真っ向から渡り会える実力の持ち主であることを考えると、ひょっとしたら上位存在なのかもしれない。

 そんな寿老人の手になる地獄絵から何とか帰還した矢三郎。弁天に連れられた手前、そのまま尻をまくって逃げるというわけにもいかないし、そもそも矢三郎はそんなことをするタマじゃぁない。素直に弁天に連れられて金曜倶楽部の会合へ殴り込み。これで矢三郎が会合に列席したのは2度目である。狸を食う連中の中に飛び込む狸というのも何とも命知らずだが、それは早雲とて同じことか。「木曜倶楽部」を自称する淀川先生とも合流し、露天風呂では弁天様のサービスシーンまで。こういうシチュエーションで何故か全員がそっぽを向いてしまうあたり、曲者の集まりと思われている金曜倶楽部も、案外紳士が多い組織なのかもしれませんな。まぁ、ここで平気で近寄ってくるような連中だと、弁天様がのらりくらり楽しめないしな。

 コーヒー牛乳の真価を確認したのち、いよいよ問題となる会合へ突入。矢三郎は堂々と早雲に面通ししており、弁天や寿老人の後ろ盾を得て一度は「地獄送り」を押しつけてきた叔父とも平気な顔でハジメマシテの握手。このあたりが矢三郎のしたたかなところで。面白いのは、早雲がどれだけ矢三郎のことを邪魔だと思っていても、「アイツは狸ですぞ」とは言えないというところ。何せ自分だって狸だしな。知った上でおちょくるような態度で眺めている弁天さんもひどい人だが、どうも立ち居振る舞いを見ていると寿老人の方もぼんやりと早雲の正体には気付いてたような気もする。早雲を招き入れる会合と言われていた割には、寿老人は何だか早雲に素っ気なかったし、元から狸の悪あがきを見て楽しむのが趣向だったのかもしれない。たまたま今回は、そこに淀川先生と矢三郎という「もっと珍妙なもの」が入り込んできたためにアドリブで脚本を書き換えたのではなかろうか。

 淀川先生は持ち前のピュアさでもって真っ向から金曜倶楽部にぶつかっていく。まぁ、真っ向と言っても何しろ「詭弁論部」であるからその振る舞いも何とも妙ちきりんであるが、詭弁踊りまで披露せずとも、彼の振りかざす愛の論理は何とも無茶。元々理屈で丸め込めるような相手ではないのだから後はひたすら厄介な外野を演じるしかないという算段だったのかもしれない。上手くすれば、「こんな面倒なヤツの相手をしてまで狸鍋など食わなくてもいいじゃないカ」という落としどころに向かうかもしれなかったのだ。しかし残念ながら寿老人はそんな簡単な攻略対象ではなかった。天満屋という手頃な配下を引き連れ、とりい出したるは何とも古めかしい折りたたみ式の銃。見事な腕前で会場の全員を震え上がらせると、「下手したら本当に殺してしまうんじゃないか?!」というところまで場を盛り上げる。

 ここでしびれを切らして出てきたのはやはり矢三郎。彼はグルグル巻きの淀川先生の前に立ちはだかり、ひとまずの盾となると、その後は畳みかけるように淀川先生の心を折りにかかる。彼が何を狙っていたのかは定かでないが、命あっての物種と思い、ひとまず先生に口を噤んでもらう方向に向かおうとしていたのではなかろうか。信頼厚い矢三郎に裏切られたとなれば、いかに先生とて意気消沈して詭弁も鈍るだろう。しかし、矢三郎の狙いとは関係無い次元から更なる一手を打つ者が現れる。全てを知る女、弁天である。彼女は茶釜エンジンをおもむろに起動させ、これを寿老人への手土産とする。早雲の石に明らかに退屈していた寿老人を見て、その上を超えられるというのは計算のうちだったのだろうか。とんとん拍子で矢三郎の入会までが決まってしまう。

 茶釜の茶番に業を煮やしたのはもちろん早雲。これまで必死に有馬の地で牙を研いできたというのに、ほんの一瞬のドタバタの末に自分の目論見は全て水の泡。これで矢三郎が自分の人生に立ちはだかったのは2度目。そして、矢三郎は彼が憎むべき下鴨の血をもっとも色濃く受け継ぐ阿呆の粋である。我を忘れた早雲はついに禁忌に触れ、人間の前で悪鬼へと変じる。これまで必死に「化けの皮」を被ってきた早雲。今後は狸を捨てて人の中で生きると決意した早雲。そんな彼が、最後の最後で「化けて」しまったというその事実に、彼の人生のはかなさが表れているようである。当然、物の怪は退治されるべきもの。人を撃つには物騒な鉛玉も、化け物相手なら立派な防衛手段。かくて、狸は猟銃で撃たれてしまった。狸の最後は「猟師の鉄砲」と童唄でも相場が決まっているのだ。

 「悪党」の死なのだから、そこには胸のすくような爽快感があるはずなのだが、何故だろう、憐れな毛玉の矮小な姿には、誰一人として快哉を叫ぶ者などない。父の仇と憎んでいたはずの矢三郎ですら、ちっぽけな狸の末期には憐憫を隠せない。先代偽右衛門、下鴨総一郎の死に様は実に見事であったと、淀川先生は聞かせてくれた。自ら死を選び、狸らしさを貫くために笑って食われた総一郎。そして、狸らしさを否定し、全てをなげうってでも野心をなさんとしながら、最後には惨めな毛玉として死を待つのみの早雲。二人の人生に何の違いがあったものか。悪逆の徒であっても、その信念に貴賤はないはずなのに。

 天に還る毛玉を看取る矢三郎。そして、物陰からは成りゆきを見守っていた海星の声。父の死を知らされた海星は、矢三郎を責めるようなことは1つも言わなかった。ただ、娘としての別れだけを願っていた。愛する娘を残し、大切な家族を残し、世紀の「悪党」は何故逝ってしまうのか。阿呆の血を残した兄・総一郎と、あちらで再会した折には何を語るだろうか。

 早雲の死に涙する者は出来れば多くあって欲しい、そんな風に思えるのです。

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