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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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ID:INVADED」 6→7

 ハイパーな作品であった。1クールに1本くらい、こうして一筋縄ではいかないオリジナル作品が出てきてくれると、アニメもまだまだ捨てたもんじゃないという気になる。

 まー思い切った作品である。普通なら「わけわかんねぇな」っつって設定の不備とか矛盾とか、そういう部分が気になってしまうばかりで、1話目からして強烈に視聴者を振り落としてくるような作り。視聴者の熱が冷めやすく根気もない現代アニメ業界において、こうした冒険的なアニメ作りはリスクが高いせいでなかなかチャレンジする作品がなくなってしまったのだが、今作は容赦無くそれを断行してみせた。改めて1話目での感想を観てみると私はアニメ「C」を引き合いに出して「わけわからんけど気になる」と書いているのだが、もうちょい最近の作品で比較するなら、この分からなさ、手探り感は「迷家」なんかに近い部分もあったかもしれない。あちらはそうした「分からない」設定が実際に視聴者をどこかに置き去りにしてしまったようなのだが(私は最後まで楽しみましたがね)、今作はどうだったんだろうか。

 そうした「分かりにくい」先人たちと比べて今作が白眉だったのは、分からない要素、意味不明な要素を、アニメという媒体の強みである「画面の構成」で魅力として叩きつけてくれたところにある。1話目で展開された富久田のイド、バラバラの世界からスタートして「目が覚めたら名探偵」「誰だか分からないカエルちゃん」「支離滅裂な世界の中でしか成立しないロジック」などを、とにかく画面の鮮烈さを押し出すことで展開していく。こうした「頓狂な映像」はダイレクトに今作の魅力につながっていく部分で、その後構築されたイドはどれもこれも「普通のお話を作っていたら絶対に出てこない」画面ばかり。それらのファンタジーともサスペンスともつかぬ非現実が、理屈を追う前段階から魅力として作品に入り込むきっかけを作ってくれた。ぶっちゃけ「トクナナ」を作ったNAZが制作ってことで不安ばかりがあったのだが、今期の作品の中では珍しく、間に総集編を挟むことすらせずに1クールを理想的なクオリティで走りきった(まぁ、今作こそ間に解説のための総集編を入れて欲しい作品だったが)。監督のあおきえいはもともとTROYCAの持ち味である白を基調とした淡い色彩の映像展開が特徴の作風だったが、今作においても余白を大胆に使うシンプルな構成に難解なオブジェクトを多数絡めることによって、カロリー高めの映像部分を効率的に作り上げたようだ。

 そうして生み出された「わけのわからない世界」は単なる見た目だけのこけおどしに終わらない。舞城王太郎の脚本はどこかで思い切って踏み外しているはずなのに、ギリギリで片足一本を「ミステリ」の土俵の中に残して踏ん張っているような印象。これで完全にイミフの領域にぶっ飛んだら妄想以外の何物でもないが、視聴者が「ミステリ」としてもみることができるラインを保持することで、興味を引き離すことがなかった。一体どんな発想から今作の設定が飛び出したのかは想像すら出来ないが、ミヅハノメの設定が作られた時点でまず一勝みたいなところがある。ミヅハノメの中において、探偵はすでに「名探偵」であることが保証され、彼らは動機などのバックグラウンドを考慮せず、ただその世界のありようだけを見て「推理」を展開する。そこにあるものは全て手がかりであり、余計な現実がシャットアウトされる。こうして「手がかり」をどのように拾うかはイドに委ねられ、名探偵に委託される。そうすることで、ミステリにありがちな「探偵主観から見えている世界の正しさ」が強引に保証され、短い時間しか確保できないアニメの枠の中で「それっぽいこと」ができるようになるのだ。こうして手がかりと事件をつなぎ合わせる世界構築は、もしかしたら後期クイーン問題みたいな面倒くさいメタ構造への一種の揶揄なのかもしれない。

 周到なのは、別にイドの中の事件そのものが現実の解決に直接リンクしないという部分。あくまでイドの中の「名推理」は手がかりを掘り起こすための舞台装置であり、そこから天啓としておりてきた「解決」は、最終的に現実世界での地取り捜査へとフィードバックされていく。この辺りの「刑事物」との接続も絶妙なところで、今作の世界をギリギリ現実に残すための大きな要因となっている。考えれば考えるほど、今作の常軌を逸した設定は、それぞれにきちんと役割を持っているのである。

 こうして、アニメオリジナル作品が「映像」と「脚本」の二人三脚でもって綺麗に作品としての完成形を見せたことは、オリジナルアニメの成果として文句のないところ。最終回でミヅハノメが崩壊しなかったことで、この世界の探偵たちはまだまだ捜査を続けることができるようになった。現在はコミック版でも新たな事件を捜査中であるが、もしできることなら、アニメ続編でもまたとんでもない世界を見せて欲しいものである。

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