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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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「凪のあすから」 6→8

 一言でいうと「完璧」。これが作り出せるというだけでも、まだまだ日本のアニメ業界は頑張っていける希望が持てる。

 1つの結末に向かって恐ろしく端正に積み上げられた2クール。普段は最終評価をまとめるときに「シナリオがどうこう」「映像がどうこう」(あとキャストがどうこう)という話を色々とするわけだが、今作においては、どれもが期待以上のものであり、全ての完成度がピカイチである。アニメオリジナルでよくここまで統制の取れた製作が可能になり、その企画が通ったものだと感心する。本当に毎度のことで申し訳ないが、やはりP.A.Worksというのは恐ろしいスタジオだ。この路線のアニメ開拓がもっと広く浸透すれば、アニメは単なる焼き直しの販促メディアでなく、新たな表現の形式を求めたオリジナルな媒体として堂々と機能できるようになると思うのだが。

 蛇足とは知りつつ今作の見どころを確認すると、まず「シナリオが云々」は岡田麿里のイマジネーションに感服するところから始まる。よく彼女の得意ジャンルとして「ドロドロした男女関係」とか、「女の情念」みたいなものが取り沙汰されることがあるが(まぁ、それも一面の真実ではあるが)、彼女の脚本の見事なところは、そうした「どろどろ」というのを徹底的に内面的な正当性の下で作り出していく手順と、それをマンネリ化させずに、次々に新しい形で提供して新鮮な衝撃を与えてくれることにある。突き詰めればラブストーリーなんてものは究極のマンネリズムであり、何をやったって「くっついた」「別れた」の2択しかないシナリオ分岐。どれだけ趣向を凝らしたところでそこに変わりはないはず。しかし、人類は長い歴史の中で、ずっとずっとそれを再生産し続けるくらいに「ラブロマンス」が好きなのである。その本能的な欲求を満たすべく、岡田麿里は常に妥協せずに「新しいマンネリ」を模索し続けている。今作の場合、発想のとっかかりは「浦島太郎」だという。まずその時点で「どないやねん」とは思うが、このアイディアを、ここまで巧緻なシナリオに組み上げることは容易ではない。

 シナリオを大きく分けた時、お船引前の「第一部」では「海と陸」という分かりやすいロミジュリ設定で恋愛感情を隔てる。単純な惚れた腫れたに障害が挟まるだけで物語として成立するわけだが、今作における起点は「海と陸の文化差」からだった。普通、「海の中にすむ人類」なんて設定からスタートしたらその説明と世界設定だけで「語り」が終わってしまいそうなところだが、そこを上手く「察することが出来る」世界に組み上げ、たっぷりと「陸に上がる汐鹿生の気持ち」でドラマとして盛り上げる。この第一部だけでもお腹いっぱいになるくらいにドラマがてんこ盛りになっており、「どれだけジェットコースターで進むんだ」と毎回ハラハラさせられたものである。しかし、それだけで終わらないのが今作の白眉なところであり、続く後半戦の「第二部」においては、今度は冬眠を挟んだ「時間による隔たり」で更に物語が広がりを持つ。この第一部の「海と陸」、そして第二部の「今と昔」という2つの軸がそれぞれに影響し合いながら互いの気持ちを作り上げていく行程があまりにも巧みで、2部に入って以降、「第一部のあのときのシーンはこのために用意されていたのか!」といちいちうならされることになる。要素に分解していけばそれら全ては「恋愛ドラマのいろは」であるのだが、それが何層にも折り重なり、全てがキャラクターの気持ちとして収束していく。そのドラマ作りがあまりにも精妙で、1話たりとも無駄がないのである。たまに「2期目から面白くなったな」なんて意見を見かける時があるが、改めて1期目から組み上げられた全体像を見れば、第一部の恐ろしさが分かるだろう。

 そして、そんなシナリオ面での偉業を支え、新たな次元に突き進ませることが出来たのは、なんといっても映像面を作り上げたアニメスタッフの底力である。1話から嘆息していたこの世界の「形」が本当に素晴らしい。ある意味あり得ないほどに無責任な岡田麿里の「思いつき」が、どこまで真に迫って映像になるか、というところが今作の成否を分ける分岐点だったと思うのだが、そんなところでP.A.Worksに心配は無用だった。あり得ないはずの汐鹿生の景色、そしてそれを受け入れながらも異界として捉える地上の風景。どれもこれもがこの世界を当然のものとして提供する力を持ちながら、極上のファンタジーとして広がりを与えている。このビジュアルが作れるのは、生産過多のアニメ業界においても、P.A.だけではないだろうか。もちろん、熟練のスタッフによる「ドラマ作り」の妙も大きなポイントであり、キャラクター1人1人の細かい仕草、与えられたシチュエーションの細部に至るまで、全てが「ドラマのための」道具立てとして効果的に機能する。これこそが真骨頂。「true tears」の濃密なドラマ、凄絶な青に幕を開けたスタジオが産みだした、1つの集大成といえるのではなかろうか。

 更なる蛇足でキャストの話は……いいかな。感情面でのドラマ作りで最も活躍したのは、ちさき役・茅野愛衣と、美海役・小松未可子だろう。もちろん他の面々についても文句の出ようはない。最終話で明かされたお女子様のキャストがはやみんだったのはやっぱりP.A.的にはゆずれない部分だったか。もう1つの看板である能登麻美子を先に使ってしまったからしょうがない。あと彩陽を置いてくれれば完璧だったのだがね。

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