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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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 人類はきっと傘で飛べる、第7話。誰しも夢見たメリーでポピンズな世界。きっとそのうち、人類はその夢を実現させるよ。それくらいに、この夢は人類普遍のものだ。きっと3歩くらいなら湖も渡れていたに違いない。

 ようやく「意味のある」話になったなぁ、という感慨のある1話。これまでの展開を貶める気もないが、どうしたって「いい話」のテンプレ感が拭えず、さらに何度もクサしてきたヴァイオレットのキャラの不安定さも災いしてなかなか作品に入るこむことができない状況が続いていたのが正直なところ。全体的に「もったいないなぁ」という印象だったわけだが、今回のお話でようやく、その「もったいなかった」部分が実質的な意味を持ち始めたかな、という感じがする。

 いくつかの要素を見ていくと、まず、基本線となる「いい話のテンプレ」は今回も同じといえば同じ。これまた人類普遍の話ではあるが、そりゃぁ死に別れた親子の話なんてものが出てくれば泣かせる話になるに決まっているのだ。しかもそれが呑んだくれてしまった親父と、その娘にそっくり(父親目線)なヴァイオレットという組み合わせなのだから、もうそこからの展開は決まったようなもの。そこに新規性は見いだせないが、これまで通りに「30分でお手軽ないい話」は作り出せるだろう。気になるのは序盤の自動人形の扱いで、ヴァイオレット本人も「メイドじゃありませんけど」みたいなこと言ってた割にしっかりメイドになっていたあたり。まぁ、コスチュームからしてメイドになる気満々にしか見えないのだが、「どこに呼び出しても綺麗なおねーさんが健気に出張してきて旦那様にサービスしてくれるよ」というのがなんだか下世話な設定に見えてしまってしょうがない。いや、こっちの心が汚れているせいなのだろうけども……。

 しかし、幸い今回はそうした阿漕さが「娘の虚像」というポジショニングのおかげで有意味なものになっている。無償の奉仕は親子関係に通じる幻想を見せるのでより娘の幻影に肉薄することになるし、メイド然としているのでなんでも出来そうに見えるヴァイオレットが実は卵すら割れず、塊となったカルボナーラも娘の思い出に繋がってしまうという展開。最近すっかり有能になってしまったヴァイオレットの急成長はここ数話でようやく飲み込めてきたので、彼女がちゃんと雇用主の希望を理解した上で動けるようになっていることに違和感がなくなっているのもプラスの要素だろうか。おそらく戯曲の類にこれまでほとんど触れてこなかったであろうヴァイオレットが、初めてのフィクションを読んで心踊らせている様子も年相応のあどけなさが見えて可愛らしい。

 そうして作り上げていった関係性は、作家先生の更生という役割とヴァイオレットの変化を促進する意味の両方を兼ね備えている。常々ヴァイオレットのことを「アスペ」と表現してきたわけだが、ここ数話で彼女のアスペぶりは大きく改善されている。これは彼女が「職業として」自動人形のノウハウをマスターする上で必要に迫られて人間の感情を学習しているおかげなのだが、どうしたって自学自習では時間がかかる。そこで手っ取り早いのは、優秀な先生に「感情の授業」をしてもらうことだ。人の発する言葉を記録することが使命である自動人形の彼女が最も影響を受けるのは、真に迫る言葉を紡ぐ者であろう。あの作家先生がどれほどの才能を持っているのかは定かでないが(ちゃんと冒頭にたくさんのファンがいることは明示されている)、なんらかの「感情を呼び起こすプロ」である彼の実感のこもった「愛情」が、ヴァイオレットの魂に直接働きかけ、「愛することの喜び」や「それゆえに生まれる別離の悲しみ」を伝えるというのは、非常にわかりやすい成長プロセスであると言える。

 今回をもってついにヴァイオレットは完全に「アスペ」を脱却して人間になった感がある。それは、ラストシーンで社長に自分の感情をぶちまけているシーンでも明らかで、シリーズを通して彼女がわがままや自分勝手な発言をしたのはこれが初めてのこと。「なぜ私だけ」などという身勝手な(そして身につまされる)感情がついに彼女の中に生まれたというのは、ひどい言い方ではあるが、実に新鮮なものであろう。また、その前のシーンで自分の戦争責任を振り返り自責を繰り返すシーンも印象的。少しずつ人間的な感情を覚え始めた彼女は、過去にどれだけ自分が「アスペ的な」行動を取っていたかが理解できるようになり、例えば最初にお世話になったエヴァーガーデンの奥さんに謝ることもできるようになったし、戦時に自分が壊してしまったであろうあらゆるものへの後悔を覚えるようになった。戦争兵器には必要のない感情が新たに芽生えることで産まれる救いようのない慚愧の念。それはあたかも、中二病が終わったあとにどうしようもなく恥ずかしい、そんな気持ちにも似ているかもしれない。燃えている、燃えている、そんな過去のアスペに対する感情が、なんとも痛ましく思える。

 さらに今回のお話で非常に良かったのは、これまでいまいち有効に使いきれていなかった京アニ作画がフル回転したことである。別に作画のクオリティが変わったわけではない。描く対象がドンピシャになったということだ。それは例えば湖畔の麗らかな風景であるし、そこで描かれるヴァイオレットの素直な憧れの感情だったりする。そして何と言っても、華美なエプロンドレス姿で彼女が全力疾走してひらりと湖を舞うダイナミックな跳躍シーン。ヒラヒラの衣装での大ジャンプというミスマッチと見栄えの良さ。この辺りに京アニ的なミラクルというのが実によく現れるわけで。話の内容もさることながら、ようやく「いいものが見られた」という実感が募る1話でございました。

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