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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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<以下の文章は、放送当時に執筆されたものである>
 
○第15話「兎と亀」
 脚本・根元歳三  絵コンテ/演出・神保昌登  作画監督・門智昭


 <あらすじ>
 六文灯籠の一件以来、ゆずきの様子は少しおかしい。回りの友人もそれに気が付いているが、その一番の原因は、やはり親友の秋恵がいなくなったことだろうか。携帯電話のプッシュ音に過敏に反応するゆずきに、回りの友人達も心配顔。そんな彼女の様子を、あいが廊下から見守る。
 
 ゆずきと同じ学校に通う女子中学生、篠原うさぎは、自他共に認める駄目な女の子。何をやるにもとろくてドジで、自動販売機でジュースを買うことも、買ったジュースにストローをさすのさえ、回りにいる友人がイライラして代わりにやってくれる。「うさぎは本当に駄目な子ね」と言われても、うさぎは情けなく笑うばかり。友達からは、ずっと「カメ」と呼ばれていた。そんなうさぎの自慢は、高校を卒業してから街に出て音楽活動をやっている兄、美知人。高校時代から成績優秀、スポーツ万能で、最近はインディーズの音楽活動で雑誌にも掲載され、コンピレーションCDも出した。隣のクラスの生徒は雑誌にも紹介された新人アーティスト美知人の妹がいると聞いてサインを求めにくる程だ。
 
 ある日、うさぎが家に帰ると、近くでイベントがあったと言う美知人が久しぶりに家にいた。雑誌に載った、音楽事務所の人間と接触を持った、などの話を聞いて息子の活動に喜ぶ両親。そして、そんな兄との対比で、うさぎの進路にも話が及ぶ。娘は一人では進路も決められないと思った両親は、知り合いのつてでうさぎに介護の仕事はどうだと提案する。うさぎ自身は、本当は調理師学校への進学を望んでいたのだが、いつも通りに引っ込み思案が災いして両親に切り出すことが出来ず、両親の話に首を縦に振ってしまう。
 
 そんな妹の様子を苛立たしげに見ていた美知人。彼は、うさぎが何か言いたそうにしていたことに気が付いていた。去り際に友達からのサインの依頼を持ち込んだうさぎに対し、「お前は親父達の言ってた通りでいいのかよ」と聞くが、うさぎはいつものように何も言えずに俯くばかり。「勝手にしろ、この亀!」。美知人は不機嫌そうに出て行ってしまう。うさぎと美知人の関係は、昔からずっとこんな様子だった。何をするにも時間のかかる駄目な妹と、良く出来た兄。両親にいつもいつもうさぎの面倒を見るように言われていた美知人は、小さい頃からうさぎには冷たくあたるようになっていた。しかし、そんな兄の背中を見て、うさぎはまた笑みを浮かべる。
 
 うさぎの存在を気にしている人物が、学校には2人いた。1人は、たまたま道ですれ違った際に何かを感じとったゆずき。彼女は意を決してうさぎと接触し、「地獄通信を使わないで下さい」と訴える。彼女にもまた、怨みの思念があったのだ。しかし、そんな突然のゆずきの面会に、何がなんだかさっぱり分からない様子のうさぎ。彼女は、そもそも地獄通信の存在自体を知らなかった。ぽかんとするうさぎを見て、顔を真っ赤にして逃げ出すゆずき。思いあまって、とんだフライングをしてしまったらしい。
 
 そしてもう1人、物陰からうさぎの様子を見ていたのは、隣のクラスの男子、遠藤。彼もまた、意を決してうさぎと接触すると、胸の内に秘めた思いを打ち明けた。「カメ」に彼氏が出来た。その噂は、うさぎを取り巻く友人達にもすぐに広まった。別に遠藤は特に魅力的な人物でもなく、友達連中は「あのカメがねぇ」と笑ってみせるが、自分たちにもまだ彼氏はいない。「カメに先を越されてしまった」と、内心穏やかでない。
 
 時を同じくして、美知人の生活にも変化が訪れる。バイト先のコンビニで、チーフをやってくれないかと依頼される。「いえ、俺は音楽があるので……」と断ろうとする美知人に対し、店長は「最近は毎日入ってくれてるから、てっきり音楽はやめたものだとばっかり思っていたけど」と意外そうな顔。その言葉を聞いて、美知人の顔が曇る。彼の音楽活動は、実際はまったくうまくいってなどいなかったのだ。そして、そんな状態のところに母親からの電話が入る。嬉しそうに電話口ではしゃぐ母親から、妹に彼氏が出来たことを告げられる。人生の苦境に立たされた自分と、順風満帆に見える妹。その落差が、美知人を追い詰める。
 
 うさぎと遠藤の関係は、うまく行くかと思われた。遠藤はうさぎに安らぎを求めていたし、遠藤も地味ながら誠実な人柄だ。しかし、そんな2人の関係を認めたくない人間が回りにはたくさんいた。1人だけ「抜け駆け」をしたことに対して回りの友人達は陰口ばかり叩くようになった。そして決定的なのは、ある日自宅に届いた数枚の写真。そこには、他の女に囲まれている遠藤の姿が写っていた。すぐに遠藤に確認を取るうさぎ。彼の口からは、その写真が兄の美知人によって作られたものであることが語られる。打ち上げのパーティーがあると誘われて、そこで美知人の息のかかった女に籠絡されたのだ。真面目な遠藤は自分の行いを悔いながら、そんな惨めな自分はうさぎとつき合う資格など無いと、別れを持ち出した。その夜、うさぎは「地獄通信」にアクセスする。
 
 うさぎは、近所の河辺に美知人を呼び出し、2人で対峙する。「写真が届いたのか。あんな男とは早く分かれた方が良い」と白々しい台詞を吐く美知人に、うさぎは「もう分かれた」と答え、堪えきれずに涙をこぼす。「お兄ちゃんはそんなに私のことが嫌いなの?」と藁人形を取り出すうさぎ。美知人は慌ててうさぎを取り押さえるが、もみ合った拍子に、彼の懐からも藁人形が転がり出す。「ひょっとして私を……」と落ち込むうさぎに、美知人は「ずっとお前が羨ましかったんだ」と胸の内を吐露する。手のかかる妹のせいで、両親にも構われずに信頼ばかりされる兄。仕事に失敗して挫折した今だからこそ、何の努力もせずにヘラヘラしているだけの妹がうまくいくのが許せなかった。兄の知られざる胸中を聞かされたうさぎも、「自分は何もうまくなどいっていない。友達にも馬鹿にされ、何をやっても駄目な自分は、笑っていなければ生きてはいけない」と、溜まりに溜まった鬱憤を兄にぶつける。
 
 互いの苦悩と弱さを打ち明けた兄妹は、「兄弟でこんなことをするのはやめよう」いう結論にたどり着く。あいの視界を通じて駆けつけたゆずきの前で、信頼を取り戻した2人は一緒に藁人形を川に流す。「彼氏にはすまないことをした」と謝る美知人。うさぎは静かに頷くが、兄との関係性が戻った今、また新しい明日をやり直せることを信じた。「大丈夫、お前にも、きっと良い奴が見つかるさ。彼氏だけじゃない。諦めなければお前にだって出来ることはあるんだ」。美知人は、妹に励ましの言葉を残して帰路につく。
 
 そしてその夜、彼は地獄に流される。「一体誰が……」と呆然とする美知人に、四藁たちは真実を伝える。「あんたの妹が糸を解いたのさ」。
 
 これからもうまくやっていこうと約束した兄妹。2人の関係を再び崩壊させたのは、美知人が最後にうさぎに残した一言の励まし、「お前にもきっと良い奴が見つかる」という言葉。うさぎが待っていたのは、新しい「いい人」ではなく、実の兄からの「答え」だった。美知人は、妹の気持ちを、最後の最後まで理解出来なかった。
 
 
 <解説>
 メインストーリーが着々と進んでいくが、まだラストスパートという段階ではないので、改めてこうした1つ1つの細かいエピソードが紡がれていく。1期ではラストエピソードが始まったのが24話、2期は22話だったが、今回はどの辺りから「締め」に突入するのだろうか。
 
 多分、視聴後にはほとんどの人がたまらないもやっと感を拭えないであろう不思議な後味のエピソード。その中核にあるのは「世間体」というモチーフである。話の筋自体は、ラストのオチを除けば割と分かりやすいもので、必ずクラスに1人くらいはいたようなどんくさくて駄目な女の子と、それを取り巻く回りの人間、特に今回は血を分けた兄の思いのズレが描かれる。美知人のように「上の兄弟が出来ると思われてしまって下の子だけが可愛がられ、内心気に食わない」というのもお話としては良くあるものだし、これといって新しい要素は感じられない。兄と妹の関係性というエロゲーなどでは王道的路線も、既に「あにいもうと(2期9話)」でがっつりやっている。これでもし2人で藁人形を流すシーンまでで終わっていれば、非常にまとまった、良い話になったのだが。そこで終わらせないのが、この作品の業である。
 
 今回焦点となるのは、主人公である篠原うさぎの心情面である。元々台詞も少なくてリアクションにも乏しい彼女の心情面はなかなか追いにくく、私も実は2回目の視聴で色々と新しい発見があったほど。このエピソードに仕込まれた全ての要素を一回で全て回収するのは結構骨ではなかろうか。例えば、最初に美知人が家に帰ってきてうさぎと対話するシーン。美知人に「このカメ!」と悪態をつかれて途方に暮れたうさぎは、幼かった頃の兄との思い出を回想し、最後に奇妙な笑みを浮かべる。両親に進路を決められ、兄にも冷たくされたのだからここで1人笑みを浮かべる理由は全く無いのだが、一番小さかった頃の記憶を回想した後、うさぎは何故か、笑う。最後までストーリーを追えば、うさぎがそこで幼かった兄との記憶を思い出し、優しくされたこと(具体的には、「お前が美人になったら嫁にもらってやる」といわれたこと)を思い出していたことが分かる。もちろんこの時点で「嫁にもらってやる」という発言がなされたという事実は視聴者には知らされていないのだが、徐々に遡る回想と、「兄の記憶を回想して笑みを浮かべた」という事実から、うさぎの心中にあるただならぬ感情を推察することは可能である。
 
 そして、ほんの一時の間だけ恋人となった遠藤との関係性も面白い。彼との関係性を語る上でかかせないツールに「ピザ」がある。あらすじには書いていないのだが、今回作中では中学校近くのファーストフード店(「East Kitchen」という店名で、これまでも何度も登場しているゆずき達の御用達の店)のピザが3度登場する。1度目は、うさぎが友達と食べにいった時で、この時ピザカッターをもったうさぎがまごまごしていると、友達がいつものようにしびれを切らしてカッターを奪い取り、さっさとピザを切り分けてくれる。2度目は、初めて遠藤とデートに行った時。この時には、うさぎが丁寧にピザを切り分けており、向かいに座った遠藤は「篠原さんを見ているとあったかい気持ちになれる」と微笑む。うさぎはその言葉を聞いて頬を赤らめる。そして3度目は、兄から写真が届き、遠藤に別れを切り出される時。土砂降りの雨の中、遠藤が店を訪れると既に席にはうさぎが座っており、テーブルに置かれたピザは既に切れ目が入っている。しかし、この切れ目はあまりに乱雑で、全てのピースの形はぐちゃぐちゃ。切り分けたうさぎの心情が読み取れる。
 
 遠藤との関係に、うさぎは満足していた。このことは2枚目のピザのくだりからもよく分かる。彼女は、最後に美知人に打ち明けたように、自分にも出来ることがあると信じて、様々な場面で努力をしてきた。ピザの切り分けも、自動販売機での買い物も、自分の力でなんとかしようとしていたところを、脇にいた友達が世話を焼いて手伝ってくれただけで、自分から頼んだことは一度も無い。しかし、友達や兄、両親の中で、うさぎはすっかり「カメ」なのだ。何も出来ないカメだから、全部回りがやってやらなければいけない。うさぎは回りからそう思われていることを知っており、そうした回りの手を断ることはせず、むしろ「私はカメだから」と甘んじて受けている。たとえ内心でどう思っていようとも、それは自分勝手な思いでしかなく、駄目な自分は大人しくしているべき、そう思って生きている。
 
 しかし、遠藤は違う。彼女がピザを切るのを最後まで見ていてくれたし、どれだけ時間がかかっても文句を言わず、彼女を褒めてくれたのだ。遠藤だけは「カメ」でなく「うさぎ」を見ていてくれる。うさぎの中で彼は特別な存在になった。だからこそ、別れたことを美知人に報告した時に涙を流し、地獄通信にも手をかけた。しかし、それでも糸を解かなかったのは、やはり兄、美知人への想いがあったからだ。両親に勝手に進路を決められた時にも、美知人は「親父達の言った通りでいいのか」と疑問を投げかけている。これは、彼だけがうさぎの内心に気付いてくれた証拠だった。口ではどれだけ悪態をつかれても、美知人も「カメ」ではなく「うさぎ」を見てくれる数少ない人間だったのだ。そしてお互いに胸の内の嫉妬と怨みを打ち明けたことで、二人の関係性はまた幼少の頃に戻って、うまくやり直せる。はずだった。
 
 しかし、「カメ」のイメージを取り除いた美知人の目に映っていた「うさぎ」もまた本人の意志とは別の姿であった。彼女が望むのは、兄との関係性。幼い頃優しくしてくれた自慢の兄、そして今も自分の本当の姿を見てくれた兄。そんな美知人が、うさぎにとって唯一無二の存在だった。しかし、美知人自身はそのことには気付くことが出来ず、うさぎのことを裏切ってしまう。一度は信頼を取り戻しただけに、その落差は大きかったのだろう。うさぎはわざわざ川をあさってまで、地獄流しを決行した。「私にも出来ることがある」とうわごとのように呟くうさぎにとって、美知人は、一体どんな存在だったのだろうか。
 
 正直言うと、やはりラストのオチはどう弁護しても唐突だし、取って付けた感は拭えない。シリーズ意図を無視出来るものなら、藁人形を捨てたところで終わった方が1つのお話としてはまとまっていたと思う。でもまぁ、それが許せないのがこの作品なのだ。そして、何とかオチにつなげようという努力ももちろん見て取れる。このあたりの細かい描写をきっちり受け取れるかどうかで、この回の感想はかなり変わってくるのではないだろうか。
 
 その他の要素としては、やはり気になるのはゆずきの身につけた能力のこと。今回も、地獄通信のことをまったく知らなかったはずのうさぎに何かを感じて接触を持った。ひょっとしてゆずきが持ちかけたせいでうさぎが地獄通信の存在を知ってしまったのだろうか。そうだとしたらこれ以上皮肉な話も無い。また、実体をもったあいは少しずつ現世でもうろつくようになっており、今回は冒頭でゆずきの様子を見守り、また、うさぎ達が川で対峙している時にも、その視界をゆずきに伝えている(ゆずきが入浴している時に、あいが背後に立って接触を持っている。何故わざわざ入浴中で、二人して全裸なのかは監督に聞いてくれ)。前回の解説で「視界共有は無くなったかも」と書いたが、あいの意志でいくらでもリンク出来るようである。
 
 そしてお遊びシーンでは、用務員の輪入道がゴミを燃やしていると、その脇であいが落ち葉焚きをして芋を焼いている(随分季節も進みました)。相変わらずゼンマイが切れるきくりは「何であいだけ身体をもらえたんだー!」と不満そう。今回の地獄コントは、何故か亀の着ぐるみを着せられた美知人が西部の荒野で四藁に狙撃されるというもの。何故ウェスタンなのかはさっぱり分からない。亀とウェスタンって繋がりがあるの? 何か元ネタがあるんだろうか。一瞬画面にでっかく映ったBARの店構えを見て「バーと亀……バーカメ、馬鹿め? え、ギャグ?」と思ったが、流石にそれはないか。もちろん、狙撃されて回転した亀がその勢いで空を飛ぶのは日本人なら欠かせない要素ですね。
 
 その後の三途の河辺からうさぎが立ち尽くす川に画面を切り替える演出なんかは非常に凝っていて面白い。考えてみりゃ賽河原の川は地獄に繋がっているわけで、彼女が流した藁人形の糸も、いつかは美知人のところに届くのかもしれない。
 
 今回のキャストは、篠原うさぎ役には満を持してのくぎゅぅが登場。はっきりいって、今回は釘回と言っても過言ではないくらいに釘宮の魅力満載でお送りしている。釘ボイス+お兄ちゃん大好きのコンボは、こんな鬱アニメでなければ数百人規模で殺せるくらいの殺傷力があるはずだ。釘宮といえば、最近は某炎髪、金髪ツインテール、ピンク髪と手乗りタイガーのコンボのせいですっかりキャラが固まって馬鹿の一つ覚えみたいな扱いをされることが多いのだが、今回のうさぎの演技を聞いて分かる通り、文句無しの実力派である。あれだけ聞き慣れたはずの釘ボイスなのに、恥ずかしながら前回の次回予告の時には分からなかった程だ。視聴時も最初の数カットは気付いておらず、長台詞を喋ってくれたところでようやく気付いた。あまりにテンプレートを押し付けようとしていた弊害である。このエピソードを見て改めて釘宮を見直しましょう。他のキャストは……すまん、正直知らんわ。あぁ、今回は他のクラスの女子が一杯出てきたので、あの中学校に阿澄ボイスの子が2人いることは確認出来た。アスミスはどこでしゃべってもアスミスだから一安心!

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