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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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 あまりに濃密な第8話。今回はホントに強烈なシーンの連続だった。1枚1枚の画に破壊力があって、じっとりとした動きの少ない世界でもアニメの見せ方ってのは色々あるもんだ、と再発見した気分。

 シーン1、八雲師匠と菊比古。すっかり自分の落語をものした菊比古の芸を見て満足げな師匠。相変わらずストイックな菊さんはそれでも芸を磨くことを忘れておらず、その延長線上にあるのは真打ちになるという大きな目標。彼にとっての落語は「自分のための落語」であるが、真打ちになることで「自分を作ってくれた」落語界への恩返しをしなければならないという目標も持っている。師匠からしてみればこんなにも孝行な弟子もいないだろう。しかし問題はもう1人。頭痛の種は無くならない。そして、菊比古の方にも問題が残っていないわけではない。自分が小姓として満州から引っ張ってきたみよ吉が、気付けば菊比古とくっついてしまっていることに責任の一端を感じている八雲。自分でひっかけておいて小言をいうのも憚られるが、「所帯を持つならちゃんとした女にしておけ」ということだけは菊比古に言い置かなければいけないらしい。当の菊さんは「それは間違っていると思う」と言いながらも、みよ吉とくっつくことが自分の芸をまっとうする道と相反するものだとは考えている。「自分のための落語」「落語のための自分」という関係性の間に、「みよ吉」というピースははまることがない。師匠の思惑とは違った次元で、菊比古自身もみよ吉を扱いかねていた。

 シーン2,縁日の宵。菊比古の不在で愚痴を言い合うために自然と席を同じくしたみよ吉と助六。共通の話題があれば話は弾むもので、唐変木の菊比古を話の肴に、2人はほんの少し距離を縮める。みよ吉の口から蕩々と語られる菊比古への思いは一片の迷いもなく、あまりにひどい菊比古の仕打ちに対しても、全てを分かっていると語ってじっと耐える彼女の姿はあまりにも甲斐甲斐しく、男心には憐憫を誘う。陰のある表情、気だるげな中にも信念を感じさせる語り口によって、みよ吉という女性の魅力は嫌でも高まり、そんな「不憫な女」を前にして、助六が放っておけるわけがない。彼女が菊比古に一途であることは重々分かっているし、そんなことをしても救いにもならないことは分かっているが、祭りの喧騒にもほだされたのか、思わず彼女を引き寄せて抱きしめてしまう。この時の助六の衝動は、けしからぬとは思うが、人として致し方ない部分もあっただろう。ここで放っておくようでは、彼は助六でなくなってしまう。

 しかしこれが天の配剤か、菊比古は旅から戻っており、一部始終を目撃してしまう。ここで単に菊比古が「勘違い」から激昂してみよ吉を攻め立てるだけなら、2人の関係に救いもあっただろう。しかし、菊比古は全てを分かっていた。みよ吉の気持ちも、助六がそうしてしまった成りゆきも、その全ての責任が、自分にあることも。この機を潮時と見定めた菊比古は、「一世一代の大嘘」に打って出る。素っ気ないそぶりでみよ吉をはぐらかし、彼女の想いを逆なでするような返答に終始する。どうにもならない菊比古にやるせなくなったみよ吉は思わず手をあげるも、ここで打たせてくれない菊比古の徹底した残酷さ。「覚悟を持て」と言い捨て、この局面が決定的な転機であることを伝える。そんな菊比古の決意を受け止めることなど出来るはずもなく、哀れな女は、ただ姿を消すしかなかった。

 これだけの愁嘆場、舞台の上の男2人には絶望的な隔たりが産まれるものだが、ことこの2人については、互いを責める結果にならないのがまた残酷なものだ。みよ吉が退場し、残された男二人のシーン3。相変わらず全てをわかり合った兄弟2人。今回の一件もあり、2人はようやく分かれて暮らすことになる。それは喧嘩別れでも何でもなく、はっきりと見えた互いの目標に向けて、いくらか違った方向へ歩き出すためのスタート地点として。助六は「客のための落語」を目指す。変化することも落語のうちであり、客のニーズに合わせてその瞬間瞬間で最も面白いものを提供するのが助六の役目。その目的のためには、菊比古がお目付役となって枠にはまっているわけにはいかない。対する菊比古は「自分のための落語」を貫く。自分を作ってくれた落語は業界そのものがもたらしたものであり、伝統ある落語という文化を守り、貫き通すためには助六のような自由闊達な落語を目標にはしない。「そんなものぁ落語じゃねぇ」とまで言い切り、変革を良しとせずに古きを貫く。しかし、「伝統と革新」という相反する目標を掲げた2人にも、通底する「落語が好きである」という部分だけは変わらない。この1点が守られている限り、どれだけ意見が食い違っても、2人は決して隔たることがない。これまでは目の仇にしていがみ合っていた部分でさえ、成長して互いが見えるようになった今では、各々を励みとしながら、切磋琢磨することが出来るようになったのだ。たとえその確執の中で、1人の不幸な女性が振り回されていようとも。何とも残酷な友情物語である。

 シーン4,助六の追想と八雲の名。ようやく明らかになった助六のオリジン。彼が最初に落語を教わった「師匠」はなんと遊楽亭の門をくぐったこともある人物であったという。片や夢破れて素人芸の日陰に追いやられた助六、片や大名人と謳われて落語界を背負って立つ八雲。あまりに明らかなその対比に、助六は野心と復讐心を燃やしている。かつて芸の世界から転げてしまった助六という名を腕一本で押し上げて、最後には八雲の名を奪い取るのだ。彼の落語に対する信念は、自分の信じる「助六の落語」で最終的に「八雲の落語」に成り代わること。そのためにこれまで、曲げず、折れずに戦ってきたのだ。そして、その夢は遠くない未来に見え始めている。菊比古の目にも、それは明らかなように思える。

 しかし、我々視聴者は知っている。八雲の名が最終的にどこへ辿り付くのか。助六はこのあとどうなっていくのか。そして、みよ吉は。

 八雲という「名」の重みに改めて向き合う師匠は、遊楽亭の系図を見つめ、その先に新たに刻まれるであろう名前を思う。落語業界は何を求め、何を選択するのか。菊比古が部屋で一人稽古している演目は「死神」。若者の夢は、未だ夢のまま。

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