○「姫騎士は蛮族の嫁」 5
姫騎士を幽閉する独房なのにクローゼットもスマホ用のコンセントも無いのはさすがにホスピタリティに問題があると感じました。そんなんじゃ屈したくても屈せないよなー。
ってな感じで先輩作品のせいで脳がだいぶバグってしまうスタートですが、もちろんスタンダードなのはこちらの作品である。しかし冷静に考えてみると、意外とこの作品に至る歴史って歪んではいるんじゃないかと、ふと思った。まず、「姫騎士文化」が醸成されたわけですよ。何がオリジンかなんて知りませんし、「姫騎士」なんて謎の言葉がどこで生み出されたかも分からないんですが、どっかのエロ漫画とかエロゲとか、その辺りの文化として間違いなく「高貴なものを嬲るエロス」が形を成した。個人的な経験から言うとエロ漫画だと向正義とか、その辺の作家が代表格なんですが今の若い人は知ってるでしょうか。
で、そんな姫騎士文化がラノベ的なところに拡散・浸透したら今度はそれ自体をパロディにする流れが生まれて、いわゆるくっころ騎士へと繋がっていくわけですね。「くっ、殺せ!」という女騎士という類型があり、今度はその女騎士に対してどういう捻りを生み出すか。女騎士自体がクレイジーであればダクネスさんみたいなモンスターも生まれるし、相手にする側をひねると「え? 別にエロいことしないでほんとに歓待するだけだよ?」みたいなギャグに繋がる。それを極北まで引き上げたのがこないだまで活躍していた屈し大好き姫というわけだ。
今作もそうした「くっころ騎士」の背景から生み出されたのは間違いないと思うのだが、これが「嫁にしようと思った蛮族」と相対するとなると、いわゆる「美女と野獣」の類型となり、こちらはさらに歴史が古いときている。つまり、偏狭な文化が熟成して回り回ったら、結局歴史の原点みたいなところに戻ってきて「古き良き」話に辿り着いたという経緯である。これはこれで面白い現象だと思うんだけど、誰かそういう文脈で総評とかしてる人はいないもんだろうか。「麗しの騎士とくっころ文化」みたいな。
さて、前置きが長くなったが、実は原作ちょい既読。こちらはKindle無料パターンで確か2巻くらいまで読めたんじゃなかったかな。微かに残る印象だと意外と悪くなかった感覚があって、それが上述の通りの「ひねったネタ作品みたいに見せてるけど、その実ドラマとしては王道だよな」みたいな印象からきている。この後、姫は「蛮族」と呼ばれる民と触れ合い、次第に「蛮族側の理」を学び、自分が生まれ育った王国側の歪みを知る。その結果が異文化交流の架け橋となる道であり、ヒューマンドラマとしてもごくごく真っ当なデザイン。確か読めるところまで読んで「この後姫はどこまで自国の状況改善ができるんだろうなぁ」ということが気になったのは覚えている。
そうして、お話としてはとても真っ当だし、姫のキャラが案外悪くないし、相手の蛮族王も良識ある人物である。まぁ、結局は顔良し性根良し出自良しの王様キャラではあるのだが、顔がいいムキムキ男が惚れられるのはしょうがない。あとウマ並みだし。……どうせならその辺も描いてもいいんだけど、描き始めるとそれこそエロ漫画の時代まで遡ることになっちゃうしな……いや、でも身体を清拭する時に腰巻きは外せよ、とは思ったね。1話目でね。えぇ。
制作は寿門堂というあまり聞きなれないスタジオだが、直近の作品が「うたミル」ということで「CGモデリングがだいぶこなれてきたんじゃない?」という印象。キャラ絵のクセは極力廃して見やすい画面構成ができていると思う。そしてこちらの姫騎士は何と鈴代紗弓である。もう、ほんと何でもできるな。どっちかというと男側を担当する猪股慧士という名前の方が気になるかな。全く印象はなかったのだが、男性声優にありがちな「下積みで端役をやってるキャリアがめっちゃ長い」役者さんで、ここ最近でようやくメイン級の役がちらほら出てきたという状況。去年の「ボールパークでつかまえて」の男役、そして今期は「氷の城壁」でもメインキャラを担当。おいくつぐらいなんでしょうね。
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