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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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 夢の共演、第11話。落語にこんな演じ方があるなんて想像もしなかった。いや、そりゃ邪道には違いないのだろうが……涙が出るほど嬉しい、誰もが望んだ奇跡の一席だ。

 助六を追って四国の田舎くんだりまでやってきた菊比古。喧嘩別れってわけでもないが、互いに遺恨を残しての別離の果てでの再会劇、絶対に一悶着あるだろうと思っていたのだが、たとえ長年の隔絶があっても、この2人はどこまでいっても「血を分けた」兄弟であるようだ。小夏を通じてめでたく再会を果たした菊比古と助六。タイミングとしては、駄目亭主過ぎる助六に嫌気がさしてみよ吉が家を飛び出しているという最悪の状況なのだが、みよ吉には悪いが、この2人にとって彼女の存在は結局二の次なのだよな。ボロボロの屋根の下、すっかり腑抜けている助六だったが、懐かしのぼんの声を聞いて、怖じ気づくでも無し、気まずそうにするでもなし、一も二もなく飛び出して、年甲斐もなく抱きついてきた。対する菊さんの方はというと、流石に出会い頭に一発お見舞いこそしたが、普段から仏頂面の彼には絶対に出てこないだろう満面の笑みで、面倒な野郎からの抱擁を受ける。どれだけ距離を隔てても、どれだけ時を重ねても、結局この2人の関係性は変わらないのだ。互いに、一番の理解者であり、一番愛しい人間は、苦楽をともにした兄弟1人。

 再会の抱きつくシーンでは、東京で一人暮らしを始める前にジャズバーで互いに別れを言ったシーンとの対比で2人の心境の変化が確認出来る。助六の方は基本的に変わらないテンション、変わらない態度なのだが、かつて、まだ余裕が合った頃の東京では助六のハグに対して「臭い!」と叫んで拒絶した菊さんが、(おそらくあの生活態度だったらもっと臭くなってるだろうに)助六を受け入れている。長のお別れの果てのこと、流石にふりほどくのも不憫と思ったのだろうか。それとも、菊さんの方も抱きしめたいくらいの心持ちだったのか。とにかく、2人は一切含むところもなく、互いに喜ばしい再会を果たしたのである。

 菊さんの要件は簡単明瞭。「東京に戻って落語をやれ」。それに対し、助六は「落語なんかまっぴらごめん」とそっぽを向く。そりゃそうだ。あれだけの仕打ちで東京を飛び出してきた人間が、今更どの面下げて戻れるというのか。落語そのものに対する愛情は2人とも変わらずとも、助六は「落語業界」に嫌気がさしてしまっている。どれだけ落ちぶれたとしても、今更戻れと言われてハイそうですかと応えるわけにもいくまい。しかし、それでも菊比古は自分のわがままを押し通す。助六の落語は「客のための落語」、菊比古の落語は「自分のための落語」だったはずなのに、ついに彼は「アタシのためにお前の落語をやれ」とまで言い始めた。本当にわがままなぼん。しかし、業界に見捨てられた助六を東京に引き戻すには、それが一番手っ取り早い動機付けだ。周りの人間なんか知ったこっちゃないが、すぐそばには、助六の落語を最も理解し、最も求めている人間が常にいる。それだけでも、「客のための落語」をやるのには充分だろう。ブランクを理由に断る助六だが、それでも彼の態度からはまんざらでもない様子が窺える。助六が落語を手放せるわけがない。

 方々に手を尽くし、片田舎の過疎が進んだ村で落語が出来るように取りはからう菊比古。東京で大人気の真打ちの芸が、そこらのそば屋で(おそらくタダで)聞けるというとんでもない贅沢を味わえる村の人々がなかなか羨ましいが、流石にそれじゃまずいってんで、少しずつ小屋を大きくし、とりあえず旅館の舞台で2人会、というところまではこぎ着けた。きっかけはなんでもいいのだ。助六が高座に座り、噺を始めるとっかかりさえ与えられれば。

 すっかり夫婦のようになった助六と菊比古の共同生活。その間に入っている小夏は、あたかも「子別れ」で夫婦を取り持った「かすがい」の子供のように、2人の落語を少しずつ繋いでいく。ボロ屋の縁側で噺をねだる小夏に、菊さんは案外素直に答えてくれている。菊さんの小夏に対する感情ははっきりと示されたものではないが、本人の言葉を借りるなら「利害の一致」。助六に落語をやらせるために協力してくれるというのなら、彼女の存在を力にすることに迷いは無いだろう。気まぐれで「野ざらし」にこぎ着けたのは、そんな小夏に対する感謝の意味もあったのかもしれない。

 さぁ、ここで幕を開ける「野ざらし」の一席。何とも珍しい、菊さんのガラッ八もの。これまでいくつか菊さんの演目は聞いてきたが、なるほど確かに妙な心持ち。もちろん、うろ覚えだろうが不得手だろうが、菊さんはスッとこなしてしまうだけのスマートさがあるのだが、まぁ、ここは寄席で何でもない単なる縁側。忘れちまってしばらく思い出すのに頭を捻るくらいはご愛敬。そして、そんな情けない「弟弟子」を前に、助六もじっとしていられない。外野からは小夏の声がかかり、乱入する父親、パッと雰囲気が変わる八五郎。そのまま助六が得意の「野ざらし」を引き継ぐものかと思われたが、それで引っ込む菊さんじゃない。目の前には久しぶりに現れた助六の芸。思わずそこに自分の領分を合わせて殴り込みをかけ、気付けば囃したてる小夏と3人で一つ。これが落語なのかどうかもよく分からないが、思い描いていた理想の形には違いない。助六は客の求めに答え、菊比古は自分の望むものを満たす。二人の落語が、二人の手によって完成していく。あまりに贅沢なその時間に、二人の噺家の人生が充溢していくことがひしひしと感じられるのである。

 と、ここで終わっていれば大団円、助六の復活劇へと素直に繋がりそうな流れなのだが、残念ながらそうは問屋が卸さない。そう、助六が片田舎で隠遁し、腐ってしまった原因の1つにはみよ吉という存在があるのだ。小夏が毛嫌いしていることからも分かる通り、みよ吉と落語は恐ろしいほどに相性が悪い。それもこれも全部、落語に菊比古といういい人を取られてしまった憎しみから来るものであるが、元々みよ吉は、この作品では非常に珍しい「落語が好きじゃない人間」なのである。教育の方向性次第では小夏だってみよ吉と同じように落語嫌いになっていた可能性もあったとは思うのだが、カエルの子はカエル。寝物語にあの助六の落語を聞かされてちゃ、そりゃぁ好きになってしまうのも仕方ない。元々、みよ吉があまり母親らしい良い親ではないこともあり、小夏は父親にべったり。おかげでますますみよ吉は家族の生活が苦痛になっていくのだろう。結局、駆け落ち同然に転げてきた2人、舐め合う傷が癒えてくれば、その間を取り持つものもない儚い関係性だ。

 そんなところに、2人にとって因縁以外のなにものでもない名前、菊比古の文字が飛び込んできたのだ。「やっと来てくれた」と涙するみよ吉。彼女にとって、菊比古という存在は東京への未練、一番の愛情、一番の憎しみが凝り固まった情念のようなもの。長年忘れて暮らしていたというのに、今更また自分の前に現れたのだ。あまりのことに感情の処理も追いつかないだろう。しかし哀れなことに、菊さんにとっての目的はみよ吉ではなくその亭主の方。みよ吉がやけっぱちでくだを巻いているその時にも、菊比古は助六と小夏を東京に引っ張り出そうとしているのである。もしそんなことになれば、みよ吉はまた1人になってしまう。どこまでも依存を重ね続ける彼女が最も恐れることが孤独だ。菊比古という魔性は、またも彼女を涙に曇らせることになるのか。

 最後の一波乱、一体どうなるものやら。

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