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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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 完全にさやかが主役、第7話。そこまで画面に動きが大きく出ているわけではないのに、今回もあらゆる場面から怒濤の展開てんこ盛り。「食い入るように見る」というのはこの作品のためにある言葉。

 1つずつ処理していこう。アバンは、ストップ安がまだ止まらない、外道の中の外道キュゥべえさんによる商売の心得だ。「聞かれなかったから答えなかった」「私がやってなかったらあなたはこんな危険な状態になっていた」「ガタガタ言うなら痛みで黙らせる」など、ヤクザもんもびっくりの脅迫商売。いわば「面倒みたったんやから身体売らんかい」ってことだものなぁ。その一方的な物言いに、強気なさやかも完全に挫けてしまう。

 そして、そんな外道の所業を知っていながらも黙って見守っていたほむらさんと、彼女の態度にちょいと裏切られた気分のまどかさん。最初のうちはマスコット扱いだったキュゥべえも、気づけば「あいつ」呼ばわりですよ。「人間の価値観が通用しない生き物」ですよ。「どうしてこんなひどいことするの?」と言われる段になって、もう絶対にまどかとは相容れない気もする。

 ただし、この言い合いにおいて、ほむらが冷静にキュゥべえ側の主張を踏襲しているのは見るべき点だろう。「奇跡は、人の命でもあがなえるものではない」とは、確かに事実であるし、そういう見方もあるだろう。そしてキュゥべえ側の主張はこの1点にのみ集約されている。「願いを叶える奇跡と、魔法少女になる奇跡。同じ奇跡ならばその出入りは等価である」と。我々人類は、魔法というもののコストパフォーマンスに幻想を抱きすぎているきらいがあるわけだ。

 もちろん、そんな「理屈」で納得出来るほど少女達も強くはない。どうにかさやかの心の穴を埋めようと、再び傾きかけるまどかの気持ち。しかし、ほむらはその一点においては頑なだ。「感謝と責任を混同しては駄目」とは、酷であるが真実でもあろう。まどかの行いは、「自分で出来る範囲のこと」で奇跡を埋め合わせようとする、「出過ぎた真似」でしかないのだ。彼女の主張は、常に正しい。

 もう1つの議論が巻き起こったのは、犬猿の仲だと思われたさやかと杏子。前回同時に認めがたい事実を突きつけられた2人の魔法少女は、あまりに違いすぎるスタンスを正面からぶつけ合うことで、理解と対立を深める。

 「先輩」の杏子は、ソウルジェムを巡る一件を突きつけられても、立ち直りが早い。おそらくこれは、過去に同様の過酷な運命を戦い抜いてきたが故の経験値の差であろう。「やってしまったこと」はどうしようもないわけで、あとはそれを埋め合わせるべく、自分に利するように世界を生き抜くだけだ。そのためには他者の犠牲もある程度は容認するだろうし、世界から逸脱してしまった魔法少女の特殊性を飲み込めば、多少倫理に外れたとしても受け入れるべき。あくまで利己にこだわれば、受益も被害も、全てが「自業自得」。言うのは容易いが、なかなかたどり着くのは大変そうなテーゼである。

 他方、そんな杏子の生い立ちと誘いを聞いても、さやかの信念は踏みとどまった。「やってしまったこと」はどうしようもない。その部分においては、杏子の励ましを受けて立ち直れた部分であろうし、時間をかけて少しずつ回復した部分だろう。そして、その先に見た信念は、杏子と異なる「利他」の精神。自分が魔法少女になったのが「自業自得」であるならば、それによって変質した世界の責任を、他者に押しつけることはフェアではない。変わりゆく世界も、自らの生き様も、全て一人で飲み込んだ上で、手にした力で何とか改善していく。実に前向きで、正しい方向性といえるだろう。

 2人の魔法少女は決別し、お互いの存在を理解しきらないままに次のフェーズを迎える。何とか自己の復旧に務めたさやかに、さらなる試練が覆い被さってきたのだ。遠因とはいえ、自分を魔法少女にする原因を作り上げた友人、仁美。彼女が、さやかのたった1つの願いであった上條恭介に対する気持ちを打ち明けてきた。この仁美の行動には、言ってしまえば責任も咎も無い。あくまで彼女は自分の気持ちに正直に行動したのだし、中学生のメンタリティを考えれば、幼馴染みのさやかに話して義理を立てたことも、立派とすらいえる行動である。そして、仁美にそんな行動をおこさせたきっかけは上條の復学、つまりはさやかの願いの成就であった。

 さやかの「願いが変質させた世界」が、さらに彼女を苦しめる。ひたすらに「利他」のために動いてきたと信じ続けた彼女が、一瞬でも仁美を救ったことを後悔したと吐露する。それはつまり、上條の回復という願いに、これ以上ない利己の精神が内在していたことを示す最大の証拠である。利己の象徴たる杏子と決別して意志を固めたにも関わらず、わずかな期間でそれが瓦解してしまったのだ。そして、そこまでを認めた上で、未だ彼女は上條に対して具体的なアクションを起こすことが出来ないでいる。何も言わずに退院した上條。明日になれば行動を起こすといった仁美。全ての環境が、彼女の「利他」の精神を苦しめる。

 そして彼女は、自分に嘘をつき続けるために、「魔法少女」という真実を突き詰める選択をしてしまった。「自分は、自らの幸せが欲しかったから上條の回復を願ったのではない」という幻想を現実にするために、無理矢理「魔法少女になること」に価値を付加してしまった。典型的な代替行為は、対岸から彼女を見守り続けるまどかや、根源的なレゾンデートルを別った杏子の目にも異様に映る。何しろ、彼女の願う「価値」には、終わりがないのだから。

 今回のエピソードは、「後悔」という言葉が要所要所で重要な役割を果たす。杏子が歩きながらさやかに聞かせた言葉は、「すべてが自業自得なら、後悔なんてあるはずがない」。このフレーズはご存じの通りに5話のサブタイトルにもなっている、さやかが変身直後に語ったものである。「利他目的を果たすことが出来たのだから、後悔なんてあるはずない」と答えたさやかと、「利己の追究が出来れば、後悔なんてあるはずがない」と勧める杏子。彼女は続けて「これ以上後悔するような生き方を続けるべきじゃない」とも訓告している。しかし、さやかはあくまで「後悔なんてしない」と決意を語るのである。2人の信念が明確に違うことが分かる部分だ。

 そして、この「後悔」というフレーズは、さやかと対面した仁美の口からも出てきている。さやかが魔法少女というファクターと対峙する姿勢については、我々視聴者はその真偽を判断することは出来ない。彼女が「後悔しない」と言っていることは、ただの強がりかもしれないし、心の底から出た言葉かもしれない。しかし、こと上條との関係については、彼女の嘘は明示的である。上條との関係を濁すさやかに対し、仁美は「もう自分に嘘は付かない」と明言している。どっちつかずでぐずぐずしているさやかとの対比である。そして、そんな仁美が「さやかさんは後悔しないように決めて下さい」と進言しているのである。ここでも登場した「後悔」という語が、最終的にはさやかの欺瞞を脆くも打ち崩してしまったわけだ。彼女は後悔した。仁美を救ったことを後悔した。そして、その後悔したことを後悔した。もう、どうにも止まらない負のスパイラルである。

 そして、この負の連鎖の根幹には、「魔法少女という契約をしてしまった」という事実があるわけだ。そして始めに戻る。キュゥべえの悪辣さに。つまり、奴が動き続ける限りは、この連鎖はまだ止まらない。

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