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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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「獣の奏者エリン」 6→8

 すさまじい作品だった。まずはそれだけ断言できよう。アニメとはかくあるべし、ファンタジーとはかくあるべし。そして何より、NHK教育はかくあるべし。

 1年という長丁場をこなした本作、正直に白状すると、中盤に若干の中だるみはあった。視聴体制も途中でゆるみ、見ていなかった話数すらあったりもする。得てしてそういう状況になると次第に見なくなっていってしまうものなのだが、この作品の場合、油断したらどんなとんでもないものが登場するか分からないという緊張感があったために、続けての視聴を余儀なくされた。そして、そんな厳しい「制約」が、きちんと実を結んで納得させられてしまったのだ。全50話の構成を行った藤咲淳一氏に、謝罪と賞賛を送りたい。

 先に断っておくと、当然のことながらこの作品の全てが盤石というわけではない。改めてシナリオラインを追うと、ところどころ筋が通っていない、納得いかない部分があることに気付く。手近なところで例をあげれば、ダミヤの命によってリランを戦場に送り込むことを余儀なくされたエリンだったが、脅迫された際には、「大公の統治に至れば、王獣は神性を失い、リランにも自由が訪れるかもしれない」と思い至る描写がある。このときには「エリンは自らの意志でリランを戦争の道具に使うのか、それとも、真王の権威を犠牲にしてリランの安寧を得るのか」という命題が提示されているわけだが、最終決戦の段になって、エリンがリランを飛ばすかどうか悩んでいるのは、全く別な葛藤である。イアルやエリン、そしてシュナンなどの思惑と意志が絡みあった最終決戦だったが、結局はダミヤの策に翻弄され、その場をとりなすために労力を費やした形だ。結果的には王獣という絶対的な力をもって最善の結果にたどり着くことが出来たわけだが、それまでの複雑に入り組んだ思いを解決するためのエピソードとしては、いささか拍子抜けの感がある。最後のダミヤの抗い方も、それまでの彼の狡猾な振る舞いとはそぐわない部分もあっただろう。

 ただ、こうした「筋の通らない」部分については、扱っている題材がいかに「筋の通っていない」対象かということを考えれば、半ば必然的なものであるだろう。最後にリランがエリンを助けにいった理由は説明出来ないわけだし、シュナンとセィミヤの関係だって、2人の心情を鑑みればどこまで割り切れるかは怪しいものだ。しかし、この作品で描きたかったテーマとは、そうした理屈の通らない部分である。最序盤にはっきり現れた「家族」というテーマと「村」「血統」、中盤には「教育」の体制も問うことになったし、リランとの出会いは新たな「母性」の創造と、改めて「育む」ことへの問いかけを与えてくれる。そして全編を通じて見れば、リョザという1つの国を舞台にして、「戦争」や「権力」についても考えなければならなかった。どれもこれも単純に割り切れるものなど1つもなく、視聴者はエリン達と一緒に、何が正しくて何が間違っているのか、間違っていたとしても成さなければいけないこととは何かを、しっかりと考えることが出来るようになっているわけだ。これは、非常に出来のいい物語であり、寓話である。

 また、そうした教育的な配慮で子供達への番組として成立している他にも、きちんと一本のアニメ作品として、充分に大きなお友達にも魅力のある作品作りが意識されているのも白眉な点。1話からきっちりと守られてきた作画面の安定、特に独特の背景美術による世界観の維持は見事なものだったし、ドラマティックに盛り上げるシーンをとことんまで意識した構成も良い刺激になる。個人的には27話(「ヒカラにおちて」)が印象的だったが、しばしば登場する抽象画のような独特の画面効果は、この世界のファンタジー色を強めるとともに、強固なメッセージ性を補強する見事な演出技法。単一描写では限界のある王獣の権威、そして「獣」の持つ力の恐ろしさなど、インパクトのある形で見せられると膝が震えるほどの衝撃がある。

 叙情的な面での描写も実に手慣れたもので、ドラマの転機となるソヨンの死は、様々な事象がエリンの中で「母の思い」「母との別れ」「獣の恐怖」としてフラッシュバックされる。最終話では、子を想うがために禁忌に手を出して自らの命を投げ出したソヨンと、我が子のように愛情を注いだリランの未来を祈るがために音無し笛を投げ捨てて生き残ったエリンの対比が鮮やかに浮かび上がる。ラストシーンはエリンとその子供がリンゴを挟んで対峙するシーンが同じ構図のエリンとソヨンに重なるという演出で幕を閉じるわけだが、それまででも充分感極まっていたところにあまりにスッと入ってきたために、訳も分からないまま涙腺が決壊した。もちろん、「ソヨンとエリン」「英知と絆の象徴であるリンゴ」といったパーツが、これまた心憎いギミックで印象的なオープニングで何度も効果的に使われていたことも、この画面の効果を高めるのに一役買っていただろう。本当に、全てが全て、ドラマを引き立てるためのあるべき道具立てであった。浜名孝行監督は「韋駄天翔」の時も感心したが、実に真っ直ぐにメッセージを投げかけてくれる良いクリエイターであった。

 様々なテーマを持ちながらきちんと1年間放送し、見事な幕引きを見せたこの作品、本来ならばもっと加点してもいいはず(「電脳コイル」が10点だったから、せめて9点は上げてもいいはず)なのだが、どうしても、本当にどうしても気になるのは、やっぱりエリンのキャストだ。最後の最後まで、ほとんど技術の向上が見られなかったのは悔やまれる。ここまで難度の高い役、流石に素人に任せたのは致命的だった。演技次第で見せるべきシーンがひと味もふた味も違ったものになっただろうに。個人的には第1希望が折笠富美子。第2希望は中原麻衣あたりで(桑島法子だと幼少期が暗くなる上に常に死の影がちらつくから怖い。ジョウンの死因がエリン本人になりそうだ)。製品版出すときにエリンだけ録り直しとか出来ませんかね? 

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