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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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○「刀語」 6

 鬼のような作品である。主に、中の人に対して。1時間枠だからアフレコは半日キープか1日キープか……翌日もNG入れたくなるくらいの仕事量。「化物語」のあとがたりでみんなして言ってたけど、やはり西尾維新作品はまっっっったくアニメ化に向かないな。

 というわけで、真性の化け物作品であった「化物語」に続く西尾維新プロジェクトの第2弾。制作は「ティアーズ・トゥ・ティアラ」を作ったWHITE FOX、監督は元永慶太郎、そして脚本に上江洲誠ということで、信頼度はなかなかのもの。そして、月一で1時間放送という放送枠も目新しい。普通に放送するよりも内容的には少なくなるわけだが、このスタイルで少しでも制作スケジュールにゆとりが出来て良いものが出来るならどんどんやってもらって構わないと思う。どうせ現行のアニメ放送スタイルも限界があるわけだし、とにかく色々試して今後のアニメのスタイルを模索するのは良いことだ。毎週を諦めて月一にして良かった前例として冨樫の「レベルE」なんてのもあるわけだし、存外クオリティは上がるのかもしれない。

 で、問題の1話目だが、結論はやっぱり「アニメ化無理」である。西尾維新作品のアニメ化は「化物語」以外にも「×××HOLiC」の17話があるわけだが、それらの全てに共通するのは、圧倒的な台詞の多さ。普通に考えてアニメ的な枠に収まるはずもなく、収めたとしても全く動きのない画面になってアニメにする意味が無くなる。分かりやすい例としては、今回蝙蝠が七花に変身して飛び上がりぶっ飛ばされるまでのシーンがあり、飛んで、降りてくる間にあり得ないくらい時間がかかり、あり得ない量の台詞が挟んである。正直不自然なのだが、実際それだけしゃべってる描写が原作にあるのだから仕方ない。

 これを「×××HOLiC」の水島努は、「動かさないこと」に意味を見いだして活路を開き、「化物語」の新房は「これこそ真骨頂」とばかりに画面の多重構造を用いて作品世界を強引に成立させてしまった。ただ、前者は長いシリーズのたった1話だから出来た技であるし、シャフトスタイルは一種の裏技。そうそううまいこと逃げ切れるものではない。今回の元永監督もそんな奇策を用いるわけにはいかず、なんと正面からこの問題を問題のまま残すことにしてしまった。つまり、「動かないシーン」をそのまま放送したわけだ。延々続くキャラクターの目のアップと俯瞰構図の画面。途中の何分かは本当にドラマCDでも構わない様な状態だ。この「動かない画面」を黒齣だの赤齣だのでかき回さないあたりに、監督の覚悟が伺える。

 そして、ものすごいのはこの画面でも、視聴者は「忙しくてそれどころじゃねぇ!」と思えてしまうところ。ただひたすらに台詞、台詞。息つく間もなく綴られていく台詞の嵐。明らかに人対人のコミュニケーションではあり得ない密度の会話劇に、耳ばかりフル稼働で脳の活動は目にまで回らない。改めて「化物語」の演出がいかに人道にもとるかが分かるというもの。もちろん、だからといって画面構成を諦めたかといえばそんなことはなく、例えば屋内での七花、とがめ、七実のロケーションや影の落とし方、掛け合いを繋ぐ際のカットの割り方など、何とか画面に彩りを添えつつ、展開される掛け合いが分かりやすいものになるように四苦八苦しているのが伺える。個人的に、この努力は評価したい。もちろん、シーンがバトルなどになればたまった鬱憤を晴らすかのようにきちんと魅せる部分を作ってくれているし、正直、退屈することなく見ることが出来た。まぁ、これは明らかに台詞を作り上げている西尾維新の実力であるのだが。

 「化物語」の時にも感じたのだが、この人の作るストーリーは、非常に凡庸である。今回の「刀語」もメインプロットは実にありがちで、多分ジャンプ漫画か、それよりさかのぼった山田風太郎作品あたりにルーツがある話作りだろう。敵キャラのキャラ設定なんかもいかにもありがちなものだし、単にものすごい力でもって敵をねじ伏せる展開だってひどいと言えばひどい。しかし、それが面白く見られるのが話作りのうまさという奴で、「外界の人間を初めて見たからとがめと蝙蝠の区別が付かない」とか、「刀を使わない流派の人間は刀を使うのがめちゃくちゃ下手だから」とか、あり得ない設定をそのままバトルの勝因として使ってしまう無茶苦茶さもすさまじいし、「俺は頭が悪いから」と言っている七花でも、とがめとの対話では非常に理知的で、明確な意志を持って行動していることが分かる。とがめのテンプレをなぞりながらもどこか外れたヒロイン像も面白い。総じていえば、やっぱりキャラが面白い。だからこそ、この「台詞アニメ」は成立出来ているんだろう。

 まぁ、この1話を放送してしまっては、あとあとのリカバリーも無意味だ。無駄な手心を加えずに、ガンガン「台詞アニメ」を流してくれればいいと思う。多分、その方が作り手側としては大変なことが多いんだろうしねぇ。

 そして、どんなクリエイター達よりも賛辞を送らなければいけないのは、想像を絶する台詞の量に台本を投げつけたくなったであろう、キャスト陣。といっても、今回ご苦労様を言わなければいけないのは田村ゆかりと鈴木千尋の2名。ちーくんについては、本当に色物キャラの造形が楽しくて仕方ない。独特の「きゃはきゃは」笑いなんて普通に考えれば寒いだけの設定なのだが、ちーくんの手にかかるとこれが妙なキャラクターのアクとして活きてくる。マシンガントークでひた走ったシーンの息継ぎとか、本当にどこでやってるんだろう。

 さらにしんどいのは、マジで頭から尻までしゃべり続けた田村ゆかり。事務所にどんな台本が届いたのか、想像するだに恐ろしい。そして、この無茶苦茶な脚本をやり通してしまうのも恐ろしい。下手な役者ではとてもではないが、これを演じきることは出来ないだろう。ゆかりんファンは、この作品はmp3とかに落として家宝にすべし。他にも間が絶妙な中原麻衣とのテンポの良い掛け合いもたまらなかったし、そんな地獄はどこ吹く風の池田昌子のナレーションも素敵。唯一七花役の細谷佳正という人については知らなかったのだが、なんだかちょっと素人臭さが残る。今回聞く限りでは世間知らずの七花のキャラクターのおかげでごまかせていた部分はあるが、他のキャストが凄すぎるために、やや浮いて聞こえてしまうのが難点。まぁ、こんな凄惨な現場を見られたのだから、良い勉強になるだろう。

 次回放送は2月の10日。また、地獄が始まる。 

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