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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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 回る、ねじれる、第19話。表に見えるは池袋の抗争、裏に蠢くは「神」の謀略。友を思う気持ちは、悪意に濁らされ、下へ、下へ。

 前回のエピソードで絶望的な方向へ転がりだした三大勢力の三つどもえの様相は、たった1つのチャットルームを起点として最悪の方向へと加速度をつける。臨也がチャットで操る情報はこれまでよりもかなり直接的なものになっており、「どこまで考えてるっていっても、流石にそんなにうまいこと3つの勢力を転がせねぇだろ」とあきれ果てるくらいに絶妙な采配に。帝人、紀田、園原という3人のトップが「何を知っていて」「何を知らないのか」という情報と、それに応じてどこを刺激すれば何が転がり出すかを操るさじ加減が神がかっており、まさに彼の事務所の謎のチェス盤のごとく。一大勢力のトップとは言っても3人ともあくまでただの高校生であり、その情報体系にはそれぞれ大きな穴がある。その穴をきれいにつなぎ止めることによって「火種」をガンガンに焚きつけていく様は、流石に胡散臭いとは思うが、あまりに出来すぎているのでついつい見入ってしまう。園原が紀田の異変に気付くことや、世話好きのセルティが見るに見かねて園原の救出に乗り込むことまで計画の中に入れているとは流石に思えないのだが、あまりにカチリとはまってしまったので、全てが臨也の手による効果のように見えてくるのだ。

 そして、こうした「穴」の空き方の描写が、これまた実によくできている。前回の感想で3つの勢力の基本には「弱さ」と「虚飾」があるという感想を書いたが、こうした各々の勢力の特徴というのは、今回もきれいに表れている。

 今回一番大胆に動いたのは、罪歌を操る園原であろう。病院での紀田の異変に気付き、チャットルームに恐る恐る入室して情報を求めるも、見事に臨也の策にはまり、2つのカラーギャングの抗争を止めようと足を踏み出す。しかし、そこで見たものは想定外の親友の姿。これまであくまで「客観」を貫き通してきた園原だったが、紀田の行動原理の中心に「自分を想って」というファクターがあることは理解出来たのだろう。これまで罪歌というテロリズムになり得る事態ですら「客観」で克服して来た園原だったが、自らが引き起こした事件に、自分のために敢えて身を投じた親友を見て、平静を保つことは出来なかった。「客観」「人を愛さない」という園原の「虚飾」ははがされ、そこには一人あてもなく怯える女子高生が残される。

 最初から自分の「弱さ」を認めている竜ヶ峰帝人はどうだろう。彼の持つ「虚飾」は数によるかりそめの力と、実体を持たないが故の存在可能性。だが、そんなダラーズの実態も、臨也には全てを知られてしまっている。次第に集まり始める黄巾族の敵意に対してダラーズは全く無力であり、実体が無いおかげで、セルティという象徴に向けられた悪意も、受け止めることは出来なくなる。拡散しているが故に決して無くならないというダラーズの強みは、具体的な悪意を前にした今となっては、「虚飾」としての機能を果たさない。今回、園原と別れて一人途方に暮れた帝人を突き動かしたのが、町ゆく人が「ダラーズが襲われたらしい」と囁く噂話である。実体無きダラーズという組織が帝人を誤った方向に動かし始めていることを象徴的に表すワンシーンだ。

 過去の罪に縛られ、贖罪のために戦う決心をした紀田正臣は、臨也の悪意を最も直接的な形で受け止める。黄巾族という存在自体が臨也の影を背負った集団であることに加え、その構成員にはかつてのブルースクウェアの芽まで植え付けられているという。紀田の抱えるものは、組織を組織として維持出来ず、過去の罪すら受け止められない、最もシンプルな「弱さ」。神のささやく情報でねじ曲げられた黄巾族の意思は、すでに紀田の「虚飾」の範囲を飛び越え、破滅への道を歩み出した。元々、黄巾族にはすがるべき縁もなく、一度紀田の手を離れてしまえば、止まる手段を持たないのだ。

 どうにも止まらない負のスパイラル。相変わらず、この筋立てにはビリビリきますわね。

 今回は、2話や13話などを担当した寺東克己氏によるコンテ。この人の担当回は、ナレーションによる説明の負荷が増えたり、意図的に時系列をいじってシナリオの「俯瞰要素」を高めたりと、メタレベルが他の回よりも上にあるような印象を受ける。今回もメインストーリーと一切関係ない葛原によるナレーションが重要な役割を果たしたり、紀田と園原の関係性を少しずつ時系列を遡って描いたりと、多少変則的な構成になっている。個人的には、もう少しナレーションに頼らずに画面でこのシナリオラインを補強してほしいとは思うのだが、流石に今回はシナリオの密度が濃すぎるだろうか。紀田を見る園原の思考なんかは、もう少しじっくり見せて欲しかったところだけど……

 ただ、今回は素直にうまいなぁと思える箇所もいくつかあって、1つ象徴的だったのは、多用された「反射光」の効果。例えば退院した園原を祝う紀田が三ヶ島沙樹の病室を仰ぐシーンでは、沙樹の病室は窓ガラスに反射する夕日のせいで室内が一切見えないようになっている。これは、紀田の思惑が一切沙樹に届いておらず、一方向的に沙樹の意思(つまり臨也の意思)が働きかけていることを表している。他にも、この「一方向性を示す逆光」は園原のメガネなどにも確認出来て、情報の多寡によってねじれきった現状を含みたっぷりに示唆している(もちろん、セルティによるメットなどの視界封鎖も端的な描写だ)。

 さて、今回はとにかく展開が早くてみっちりたっぷりだったが、今後もこのくらいのスピードでいくのでしょうか。どんどん作り手側の難度は上がっていくと思うのだが、もうここからクライマックスまでは一気に駆け抜けてしまってほしい。ほんとに期待してますんでね。 

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