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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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地獄少女宵伽 第5話 「風の歌が聞こえる」

 脚本・金巻兼一 絵コンテ・寺東克己 演出・門田英彦 作画監督・吉川佳織、阿部恒

 




<あらすじ>

 ある家の軒先にかかる季節はずれの風鈴を見上げるミチルに山童が声をかける。ミチルが見ていた家は、つい最近大きな不幸に巻き込まれた一家のものだ。

 勝沢一家は、休日を利用して息子の理史と、その友人達数人で遊びに行く予定だった。しかし、実際には友人というのは親たちが見ている一面的な姿であり、彼と周りの悪友たちの関係は、いじめっ子といじめられっ子のそれである。半ば脅されるようにして理史は友達と同じ車に乗り込んだが、親の見えない陰では殴ったり蹴ったり、散々な扱い。友達たちは更に悪のりし、勝沢家の車では両親の言うことを聞かずにシートベルトを無視したり、箱乗りを始めたりとひどい騒ぎ。流石に理史の両親も慌てて止めようとするが、小さな不幸が重なり車は制御を失う。対向車のトラックと正面衝突し、車は大破。ベルトをつけていた勝沢一家は何とか大怪我を免れたが、ふざけていた子供たちは全員が悲惨な姿での即死だった。

 自業自得の極み、勝沢の家には何の罪もない事故だったが、残された遺族は怒りが治まらない。合同葬儀の場を訪れても、理史には「何でお前だけ死ななかった」と罵声を浴びせられるばかりで、会場へ足を踏み入れることすらゆるされなかった。

 時代を跨いで、歴史は繰り返す。時は遡って大正か昭和初期か。とある村の長屋では、ミチルとその両親が幸せな生活を送っていた。大家との住環境の改善交渉などで活躍し、周りの住人たちの信頼を集めていたミチルの父親。頼もしい父の姿を見て、ミチルの母も「人の幸せのために笑顔になれる人間になれ」と娘に教え諭す。「いいことをすれば、最後にはみんなで天国に行ける」と。

 そんなミチルの家が面白くなかったのは、交渉事で面倒をかけられた大家の一家。まだ封建的な思考が根強く残る時代、上下関係を分からせるためと、大家の息子がミチルにちょっかいを出し始める。村はずれのため池へつ連れ出されたミチルはその中に沈められかけるのだが、これまた不慮の事故の結果、沼に沈んだのは大家の息子を含めた悪ガキ連中3人。ミチルは凄惨な事故の現場で1人生き残ってしまった。

 当然のように、ミチルの一家に対する風当たりは強くなる。これまで信頼してくれていた周りの人たちまで、子供たちを殺したというので手の平を返して一家を村八分にする。全てはミチルたちの責任だと責められ、人殺しの一家として石を投げられる。そしてそんな迫害はすぐに一線を越えた。大家の指図で、住民の一人がミチルを拉致し、大家の屋敷の蔵へと閉じこめる。ミチルはそのまま放置され、蔵の中でそのまま亡き者とされるはずだった。3日過ぎ、10日が過ぎ、行方不明のミチルを探し続ける両親は見る見る憔悴していく。もはや助からないと諦めかけたある日、両親は風の中に風鈴の音を聞く。ミチルも好きだった、季節はずれのその音色を頼りに、二人は大家の屋敷の蔵へと辿り付いた。そこには、ミチルが最後の望みを託し吊した風鈴が揺れている。どうにか蔵の鍵を破壊してミチルと再会した両親だったが、大家たち村の連中が一家の再会を許すはずがない。「警察に駆け込まれたらたまらない」と、そのまま一家を蔵に押し込め、全てを消し去るために火をかけた。ミチルたち一家は、悪意の濁流に呑まれ、そのまま燃え盛る蔵の中で命を落とす。

 よく似た過去と現在の2つの事件。どう考えても被害者側の子供も、両親も悪くない。しかし、現代の事件では、死んでしまった子供の親が地獄通信にアクセスして藁人形を手にしていた。一人生き残った理史への恨みを晴らすためだ。ミチルはあいに対し、「絶対に子供は悪くない、復讐など間違っている」と訴えるも、あいの答えは「それはあの人が決めること」。今まさに糸を引かんとした母親だったが、最後の最後には悲しみに暮れながら藁人形を投げ捨てた。結局、地獄流しは行われなかったのだ。

 これで良かったと胸をなで下ろすミチルだったが、彼女には、思い出していなかった最後の記憶があった。それは、彼女達一家が蔵で焼き殺された最後の一瞬。憎悪の念を最大まで爆発させたミチルが、末期の一撃として、怨念の炎を妖気と化し、加害者となった村人を、そして村そのものを、全て焼き尽くしたという事実。ミチルは、死の間際に「悪霊」になっていたのである。

 死に際して大きな罪を背負っていたミチル。彼女はこの世を去る前に、その罪を償わなければならないとあいが言う。

 「地獄少として」「それがあなたの答えよ」。

 

 

<解説>

 2本連続放送の2本目にしてラス前のエピソード。見ての通りにミチルの過去話であるが、まぁ、やっぱり6話完結ってことでどうしても話自体はシンプルになるかなぁ。

 シンプルとは言っても、例によって「1話で2本分のエピソード」という無理な詰め込み方になっているので、脚本部分はキツキツ。過去と現在の2枚体勢で似たような事件が展開し、ところどころ時系列がクロスしたりもする。ただまぁ、今回は「湯けむり地獄、旅の宿」(2期19話)のようなアクロバティックな時系列リンクで見せるギミックがあるわけではないし、2つの事件像もほぼ印象は一緒なので、そこまで描かなきゃいけない要素が多いってわけでもないかな。

 冷静に考えれば「子供を殺された両親が事故の当事者に逆恨みをする」という結果こそ同じではあるが、実は勝沢の事件とミチルの事件はけっこう違う部分も多い。最大の相違点は両親の扱いで、勝沢の家はせいぜい「金持ち」と言われていた程度で、親同士の付き合いがどの程度だったのかはあんまり細かく描かれていないのだが、ミチルの場合、周りの住人たちからは大きな信頼を集めていたという状況から一転して集団リンチされる立場まで落ちてしまうので、ギャップによる精神的ダメージはミチルの事件の方が上だろう。まぁ、今回の事件は別に過去と現在を強くリンクさせる必要はないからね。

 では、ミチルの事件は何故わざわざ現在の事件とリンクする形で描かれたのだろうか。やはり、こうして複数の事件を同時進行で描くことで、「理不尽な『恨み』の構図は決して珍しいことではなく、探せばそのあたりにゴロゴロしてる普通の出来事なんやで」ということを伝えたいのだろう。何しろ我々もよく知ってますからね。こういう事件をね。そう、3期の御影ゆずきと辻ノ橋のあの事件である。

 ゆずきの事件とミチルの事件は、「子供を殺された両親が事故の当事者に逆恨みをする」という部分はそこまで合致しないが(一応、ゆずきの親も大量の人間を不慮の事故で殺しているので、その恨みはもちろんあったが)、最も大きな共通点は1つの事件から「ムラ」というコミュニティそのものから拒絶されたという部分だろう。ゆずきの事件は割と最近(少なくとも現代に分類される)の話だったのでむしろミチルの事件の方が先輩なのだが、とにかく日本の封建的なムラ社会の醜さというものがよく表れており、ゆずきの場合はそれがあまりにも極まり、「村の人たちが全然食べ物をくれないし、働き口もないから母子そろって衰弱死する」という(ちょっと現実的には考えられない)悲劇によって亡くなっている。ミチルの場合は村人の悪意が更にダイレクトになり、なんと娘は軟禁からの餓死未遂、それが失敗したらあとはまとめて焼き殺すという、殺意ダイレクトにもほどがある。まぁ、このあたりの無茶がまかり通る時代設定として大正時代(推定)が選ばれているのだろうが。

 こうした理不尽なムラ社会からの迫害というファクターが重なることで、最終的には「村の因習に殺され、全ての住民を呪いながら壮絶な死を遂げた」という少女あいに接続することになるわけだ。ゆずきの場合でも充分リンクが成立しているかな、と思ったが、ゆずきの場合、本人があいよりも心優しい女の子だったと思われる点、そして、最後まで母親の愛情に守られて死んだために住人への恨みつらみがそこまで累積していなかったという点、あとは何より、デビュー直後の依頼人が高杉家の人間だったというあまりにも難度の高いミッションだった件など、不幸(?)が重なって地獄少女デビューには失敗してしまったわけだ。あの時のすったもんだであいは「もう二度と地獄少女の任務からは離れられませんよ」というマジモンの終身雇用を言い渡されたはずなのだが、今回新たに後任を探しているということは、もしかしたら地獄の労組が頑張ってあいの労働環境の改善に動いてくれたのかもしれない。まぁ、普通に考えたら後任が見つかってもあいはリタイアせずに働き続けることになると思うけどね……流石に現代社会で地獄少女1人ではブラック過ぎるので、もうちょっと分業制にしようっていう閻魔様の計らいなんじゃないでしょうかね(適当)

 地獄少女になるための資格はそれなりに満たしていると思われるミチル。あいの「生き埋めにされた」ってのとミチルの「生きながら焼かれた」っていうのは恨む要因としては負けてないでしょうし。死に際に怒りバーストから村人全員と村全部を灰燼と化したっていう妖力の強さも素質はばっちりだ。冒頭部分できくりがミチルのことを「悪霊」呼ばわりしていたのはそういう理由があったのだね。ただ、ミチル自身は相変わらず(ゆずき同様に)「地獄通信なんて間違ってる!」というスタンスなので、これをコロリと転換させるのは割と難儀である。ゆずきはそのイデオロギーを打ち崩すためにわざわざ2クールもの見学期間を設けられてたわけでなぁ。ゆずきが徐々に地獄流しへと転げていく様子を描いた3期エピソードは傑作ですからね。「後ろの正面」(3期21話)とかすばらしいのでみんな見返すといいぞ。

 冒頭でも言った通り、ミチルの生い立ちが不幸だったのは事実だが、こうした恨みの事件というのは何もミチルやゆずきだけが特別というわけではなく、探せば多分他にも候補はいるだろう。その中で何故ミチルが地獄少女の候補者として選ばれたのか。彼女が母親の言うように「天国に行く」ことが出来ずに現世をさまよっていたのはおそらく「怨念の炎」の罪によるものだと思われるが、そんな状態で憤死した彼女が、何故ここまでのエピソードであいにくっついて「間違ってる」なんて粘着していたのか。そのあたりの事情はさっぱり説明されていないのだが、次の最終話で分かるのかな? 多分分からない気がするな。個人的に面白かったのは、また「地獄少女の後継者」が出てきちゃったことで相変わらずきくりがおかんむりなところですかね。まぁ、山童に八つ当たりしてるだけだったけど。今回はきくりのどアップで目が蜘蛛っぽくなってるシーンとか、「虫」呼ばわりされてきくりが「虫じゃない!」ってキレてるシーンとか、細かいネタ出しが割と楽しい(確かに蜘蛛は厳密には虫じゃないですからね)。さて、来週は一週間遅れでラストエピソードを見るよ。当然すでに情報公開されているけど最終話は大森さんがコンテ担当してくれてるみたいだし、いい着地を期待したいところだ。

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コメント
六話の記事作成楽しみにしてますよ。
六話は正直、意外な展開でしたね。
今までと同じパターンで収まると思ってたのですが・・・
【2017/09/20 01:18】 NAME[トマト] WEBLINK[] EDIT[]
Re:六話の記事作成楽しみにしてますよ。
コメントありがとうございます。


……すみませんでした!
 実は、6話の記事はすでにUPしているとばかり思い込んでいました……PCクラッシュのゴタゴタのタイミングだったのでその辺の管理ができてなくてですね……。慌ててあげさせてもらいましたが、すでに一ヶ月近く前に書いた記事なので、なんか変な事書いてたらすみません。なお、現在は毎週「回顧録」冒頭のきくりの狼藉と強引な導入部分だけちょっと楽しみに観てます。
【2017/09/20 12:22】


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