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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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 オラッ! 今年もこれを書くんじゃい! 毎年、春の期間は実家に戻って暇にかまけてこのテキストを出力してるんですが、今年はコロナの影響でそのイベントがぽしゃりまして、数年ぶりに自宅での執筆になります(執筆は3月時点で開始している)。なんか、環境が変わった方が膨大なテキストを一気に書き上げるのには良かった気がする……自宅だと全然スイッチはいらにゃい。まぁ、スイッチが入らないのは年々衰えゆくモチベーションのせい、という話もありますけど。これは決して日本のアニメ業界が悪いわけではなく、単におっちゃんが年をとって色々と大変になっているというだけです。でもね、頑張らないとね。こういうところできっちり仕事をしてこそだと思うのね。多分、こういうどうでもいいことが少しでも揺らぐと不安でしょうがなくなるのって、絶対何らかの精神疾患なんだろうなぁ……。
 毎度何となく言い訳じみた話や愚痴から始まってはいますが、とにかく継続は力なり。いつも通りに頑張っていきましょう。もし過去分に興味があるという物好きな方は、リンク貼るのもめんどいので「アニメ・雑記」タグでたどることが可能ですので遡ってみてください。これだけ長いこと続けていると、数年前の記録なんて自分で書いたのに綺麗さっぱり忘れてて、たまに読み返すとすげぇ新鮮だったりしますね。右からきたアニメを左に受け流す視聴スタイルのおかげで、毎年毎年ほとんどの記憶がリセットされていくわ。
 
 (以下去年の記事からのコピペ)一応毎年のことなので約束事をコピペしておくと、タイトル賞の選出は何故か毎年「仮装大賞」の賞に依っており、タイトル部門以外の賞は、基本的に3位まで取り上げてある。(コピペ終わり)結構タイトル部門の数は多いのだが、それでも毎年「あれも入れたい、これも入れたい」ってんで押し込めるのに四苦八苦しており、柔軟な声優アワードを見習って(??)増やしたけりゃその年だけ適当な賞を増設してもいいんじゃないかと思う時もあるんだけど、そういうことするときりがなくなるから無闇にいじれないのよね。今年もウンウン唸りながら、適当に理由をでっち上げてエントリーを考えていくよ。
 今期エントリーされたのは、「2019年4月期以降に終了した、もしくは現在放送中である」ことを条件として、ある程度最後まで視聴していた以下の157作品。実はこの数字、結構すごいことなんです。何がすごいって、10年以上増加の一途を辿っていた年間アニメ視聴本数が、ついに今年度は目に見えて減ったんです!!! 試しに昨年度の本数を確認すると、トータルは183本という記録が残っている。まぁ、分割2クールをどう扱うかとか、ショートアニメどう数えるかとかいう微細な差はあるのだが、それでも、今年度は明確に本数が減った。理由はいくつかあるのだが、やはり何かのバブルが弾け、テレビ放送のアニメの本数が減ったことは間違いない事実だろう。確認ついでに、毎クール数え上げている「今期見るアニメの本数」という数字で比較してみると、2018年度(2018年春〜2019年冬)の4クールでの視聴本数は60+55+55+55=225(長期クールのものが別換算されるので実際の本数よりかなり多くなる)。それに対し、2019年度(2019年春〜2020年冬)の視聴本数は45+47+52+52=196。こうしてみると、実際に減っていることがわかるはずだ。
 まぁ、世間的には配信アニメも増えているので単に時代遅れのおっちゃんの視界に入る本数が減っただけという話もあるが、コロナ関係での減少は、確実に業界に変革を迫るものになってしまったし、業界的にも限界を感じている部分は少なからずあるはずなので、この数字が1年後にどうなっているかは非常に気になるところである。
 一応毎年のことなので数字のデータをまとめておくと、今期はショートアニメ枠が22本、それ以外が135本。これまでの数字に連結すると
7674596790
103(93)132(121)149(133)152(129)170(148)
170(150)183(157)157(135)
となる。こうしてみると大体5年前と同じ数字ってことになるな。……ってことはまだまだ削れそうやな……。
 ちなみに、これまた毎年触れていることだが、テレビ放送のアニメは減少したが、その分「劇場版商法」は安定期に入ったようで、細かなタイトルがガンガン劇場でかかるようになってきた。「劇場で放映するOVA」と「劇場作品」の差別化が難しいのだが、とにかく「映画館で見たアニメ」でひとまとめにすると、今期視聴本数は22本。過去最多となった昨年の17本を余裕で飛び越えており、1ヶ月に2本くらいのペースになりつつあるわけだ。まぁ、これくらいのお布施でアニメ業界が活気付くなら喜んで足を運ぶが……今後はこの数字もどうなっていくんでしょうかね。現時点では映画館自体が厳しいことになってるけども。一応本数の推移を書いておくと
7→4→6→ 12→8→6→
9→17151722
となっている。なお、毎年のことだが劇場作品については基本的にこのグランプリの選出基準からは外すようにしている。
 ちなみにこれまたどうでもいい注意書きではあるが、さすがに毎年長大化しすぎていていい加減見づらくなっていたため、過去のタイトル獲得作品については、今年から5年分削除して2010年以降のデータのみを残している。それ以前の情報については、昨年度以前の当該記事をあたってほしい。
 
○一応ある程度見ていたエントリー作品(アイウエオ順・ショートアニメは【】で表示)
【アイドルマスターシンデレラガールズ劇場(第4期)】「アサシンズプライド」「アズールレーン」「あひるの空」「アフリカのサラリーマン」「荒ぶる季節の乙女どもよ。」「ありふれた職業で世界最強」「あんさんぶるスターズ!」「異種族レビュアーズ」【異世界かるてっと(1期2期)】「異世界チート魔術師」「痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。」「ID: INVADED」「イナズマイレブン オリオンの刻印」「インフィニット・デンドログラム」「戦×恋(ヴァルラヴ)」「ヴィンランド・サガ」「うちタマ?!~うちのタマ知りませんか?~」「うちの娘の為ならば、俺はもしかしたら魔王も倒せるかもしれない」「映像研には手を出すな!」「炎炎ノ消防隊」「凹凸世界」「推しが武道館行ってくれたら死ぬ」「織田シナモン信長」「俺を好きなのはお前だけかよ」「かつて神だった獣たちへ」「彼方のアストラ」「歌舞伎町シャーロック」「からかい上手の高木さん(第2期)」「からくりサーカス」「可愛ければ変態でも好きになってくれますか?」「神田川 JET GIRLS」「ガンダムビルドダイバーズ Re:RISE」「ギヴン」「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」「鬼滅の刃」「キャロル&チューズデイ」「虚構推理」「空挺ドラゴンズ」「GRANBLUE FANTASY The Animation Season2」「グランベルム」「群青のマグメル」「警視庁特務部特殊凶悪犯対策室 トクナナ」「ゲゲゲの鬼太郎」「ケンガンアシュラ」「賢者の孫」「恋する小惑星」「胡蝶綺~若き信長~」「COP CRAFT」「この音とまれ!(1期2期)」「この世の果てで恋を唄う少女YU-NO」「PSYCHO-PASS3」「さらざんまい」「地獄少年花子くん」【少年アシベGO!GO!ゴマちゃん】「SHOW BY ROCK!!ましゅまいれっしゅ!!」「消滅都市」「食戟のソーマ 神ノ皿」【女子かう生】「女子高生の無駄づかい」「ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風」「新幹線変形ロボシンカリオン」「進撃の巨人 Season3(第2期)」「真・中華一番」「慎重勇者」「スター☆トゥインクルプリキュア」「スタンドマイヒーローズ」【ストライクウィッチーズ 501部隊発進しますっ】「Z/X Code reunion」「7SEEDS」「世話やきキツネの仙狐さん」「戦姫絶唱シンフォギアXV」【川柳少女】【ソウナンですか?】「SAO アリシゼーション War of Underworld」「ソマリと森の神様」「ダーウィンズゲーム 」「ダイヤのA actⅡ」【耐え子の日常】「盾の勇者の成り上がり」「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか(第2期)」「ダンベル何キロ持てる?」「厨病激発ボーイ」【超可動ガール1/6】「超人高校生たちは異世界でも余裕で生き抜くようです」「通常攻撃が全体攻撃で二回攻撃のお母さんは好きですか?」【手品先輩】【テレビ野郎ナナーナ わくわく洞窟ランド】「とある科学の一方通行」「とある科学の超電磁砲T」「Dr. STONE」「ドロヘドロ」「どろろ」「ナカノヒトゲノム【実況中】」「七つの大罪 神々の逆鱗」【なんでここに先生が!?】「number24」「22/7」【ぬるぺた】「ネコぱら」「ノー・ガンズ・ライフ」【ノブナガ先生の幼な妻】「ハイキュー!! TO THE TOP」「ハイスコアガールⅡ」【博多明太!ぴりからこちゃん】「BAKUMATSUクライシス」「旗揚! けものみち」「八月のシンデレラナイン」「はてな☆イリュージョン」「バビロン」「叛逆性ミリオンアーサー(第2期)」「BanGDream! 3rd Season」「BEASTARS」「ヒーリングっど♡プリキュア」「ビジネスフィッシュ」「ファンタシースターオンライン2 エピソードオラクル」「fairy gone フェアリーゴーン」「Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア-」【ふらいんぐべいびーずぷち】「プランダラ」「フルーツバスケット」「文豪ストレイドッグス(第3期)」「pet」「BEM」【へやキャン△】「放課後さいころ倶楽部」「宝石商リチャードの謎鑑定」「ぼくたちは勉強ができない(1期2期)」「僕のとなりに暗黒破壊神がいます。」「僕のヒーローアカデミア(第4期)」「星合の空」「ポチッと発明ピカちんキット」【ぼのぼの】【ほら、耳が見えてるよ!(第2期)】「本好きの下剋上」「魔入りました!入間くん」「魔王様、リトライ!」「マギアレコード 魔法少女まどかマギカ外伝」「魔術士オーフェンはぐれ旅」「まちカドまぞく」「真夜中のオカルト公務員」【みだらな青ちゃんは勉強ができない】「MIX(ミックス)」「群れなせ!シートン学園」【八十亀ちゃんかんさつにっき(1期2期)】【闇芝居(第7期)】「妖怪ウォッチ!」「妖怪学園Y~Nとの遭遇~」「ライフル・イズ・ビューティフル」「ラディアン2」「ランウェイで笑って」「理系が恋に落ちたので証明してみた。」「Re:ステージ! ドリームデイズ」「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿 魔眼蒐集列車」「RobiHachi」「私、能力は平均値でって言ったよね!」「ワンパンマン(第2期)」
 
 
○今期視聴した劇場アニメ作品(視聴順)
「響け♪ユーフォニアム〜誓いのフィナーレ〜」「甲鉄城のカバネリ 海門決戦」「スパイダマン:スパイダーバース」「プロメア」「海獣の子供」「青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない」「ガールズ&パンツァー 最終章第2話」「二ノ国」「この素晴らしい世界に祝福を! 紅伝説」「天気の子」「ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝-永遠と自動手記人形-」「BanG Dream! FILM LIVE」「HELLO WORLD」「空の青さを知る人よ」「BLACKFOX」「Re:ゼロから始める異世界生活 氷結の絆」「すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ」「冴えない彼女の育てかた Fine」「フラグタイム」「メイドインアビス 深き魂の黎明」「劇場版SHORIBAKO」「PSYCHO-PASS3 FIRST INSPECTOR
 
 



 
<タイトル部門>
技術賞
‘10「デュラララ!」 ’11「輪るピングドラム」 ‘12「さんかれあ」 ‘13「蒼き鋼のアルペジオ-アルス・ノヴァ-」 ‘14「ピンポン The ANIMATION」 ‘15「ブブキ・ブランキ」 ‘163月のライオン」 ‘17「正解するカド」 ‘18「はねバド!」
‘19「映像研には手を出すな!」
 日進月歩を続ける、アニメ技術の向上を讃える部門。ざっくりと「とにかく実利的な映像技術がお見事、わかりやすくいえばCGとかの類」っていう基準と、「監督に代表される映像作家の独自の世界構築が見事」っていう基準に分けることが可能で、過去の受賞歴を見ても、この2つの基準が入り乱れているのでちょっと分かりにくいところがあるのが悩ましい。まぁ、時代に応じて評価されるべきものは変わっていくのだと思えばいいじゃないの。
 さておき、コロナの影響で人手不足がますます顕在化し、よその国の技術が無いと日本のアニメは立ちいかないことが白日の下に晒されてしまったわけだが、そんな中でも、日本のアニメは日々研鑽を積んで新しい世界を作り上げようと努力を怠らないのである。まずは「CGとかの実利的技術の進歩」という方向性から見ていこう。個人的に、「国内のCGスタジオ」というとパッと浮かぶ名前は3つ。「ポリゴンピクチュアズ」「サンジゲン」、そして「オレンジ」の3つ。今年もそれぞれのスタジオが肝いりの自信作を世に繰り出しており、「空挺ドラゴンズ」では異形の竜の造形がレトロな飛空挺とマッチした新鮮な世界観を表出させていたし、「Bang Dream 3nd Season」ではより血肉の息づいたバンド演奏と日常の女子高生の描写をシームレスに接続することに成功した。そして泣く子も黙る「BEASTARS」における「獣」というおよそCGとは一番相性が悪そうな素材との融和。どのスタジオも、「CGは固い、生気がない」という過去の評価を覆すために、「現代のCGアニメ」の姿を思う存分に表現してくれているだろう。
 ちなみに同様のCG作成でいえばMAPPAの手による「ドロヘドロ」も新たな歴史の1ページと言えるかもしれない。「異形すぎて描けないならCGの方がかえってハマる」という、なんだか逆説的な親和性が実に面白い。そうそう、CGとのミスマッチが不思議な融和を見せた事例でいうなら「ケンガンアシュラ」の作画も注意しておきたい。まさかのダンガンロンパ風からあの泥臭い格闘漫画をCGベースの作品に生まれ変わらせるなんて、ちょっと想像できなかった。我々素人消費者が思っている以上に、業界でのCGの活用法というのは進化しているものだ。
 CGにこだわらずとも、作品全体の画面構成で手が込んでいるからこそ見応えあるものに仕上がった作品もたくさんある。真っ先に思いつくのは、「なぜそこにリソースを??」とアニメタイトルみたいな疑問が口をつく「痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。」。アニメの放送前は、まさかSILVER LINK作品でここまでの動画クオリティが上がってくるとは思わなかったところだ。まぁ、それが有効利用されているかどうかはまた別問題だが……他にも、今年を代表する作品となった「鬼滅の刃」はufotableによる偏執的な作画がなかったらここまで爆発しなかったのは間違いない。「ヴィンランド・サガ」についても、同様の「アニメブースト」の力を確認することができるだろう。原作ありの作品をアニメ化することは様々な困難がつきまとうが、それなら「動くこと」というアニメの存在意義そのものに価値を付与してやれば良い。言うは易く、行うに難い真理であろう。
 さて、ここから少し、「監督に代表される映像作家の世界作り」の方に目を移そう。今年のラインナップを見て思い出すのは、例えば安藤正臣氏のアートワーク。「彼方のアストラ」では得意のコマ割り演出を活用してぎゅうぎゅうだったシナリオラインをなんとかワンクールに収めることに成功しているし、同様の演出をポップな印象で見せる「地縛少年花子くん」は一転してのんびりながらもクールな印象は残している。この辺りの「手癖」とも言える味わいをきちんと作品のテイストとして活かせるのが一流の作家の証といえるのではなかろうか。他にも「キャロル&チューズデイ」なら渡辺信一郎の仕事ぶりがたっぷりと堪能できる。映像に加えて音楽性というのも監督の個性を活かしやすい重要な素材であろう。
 映像素材の見せ方でいえば「どろろ」もハッとするような演出が多くて引き込まれた作品。こちらは古参の古橋一浩氏による作品作り。いろんな意味での温故知新が楽しめる。転じてまったく新しい方向性で言うなら、たとえば「ハイスコアガールⅡ」なんてのは一昔前なら想像もできなかったデザインだろう。まるでコラージュのように画面に統一感のないモチーフが散らばる様は、まさに現代芸術がアニメの世界に混ざり込んでいるかのよう。CG技術の発達はこうしたトリッキーな見せ方を可能にするという、そもそもの道具レベルでの革新でもあるわけだ。あ、「さらざんまい」については……まぁ、何を作っても時代の最先端すぎて背中しか見えない人ってのもいるんですよ。ほんと、同じところにとどまらずに常に新しい刺激を求める姿勢ってのは感服するなぁ。
 というわけで、今回は幾原邦彦ではなく湯浅政明を一番上に引っ張り上げようと思います。「映像研には手を出すな!」については直近の作品なので改めてここで持ち上げる必要もなかろうが、「アニメ作り」というあまりに内省的なテーマ設定を、全力で「アニメだからできること」で作り上げようという貪欲さが実に魅力的。「アニメのキャラ目線で世界がアニメに見えるという「アニメの中の外」と、そんなアニメキャラが作った「アニメの中の中」が共存する世界設定が、こんなにもすんなりと、魅力的に入ってくる構造ってのは簡単そうに見えて極めてミラクル。綱渡り感覚の「アニメ作り」の一端が、この作品から転げ出てきそうではないか。
 
 
 
 
努力賞 
 ‘10「世紀末オカルト学院」 ’11「ブラック★ロックシューター」 ‘12TARI TARI」 ‘13「聖闘士星矢Ω」 ‘14「ばらかもん」 ‘15「デュラララ!×2」 ‘16「魔法少女育成計画」 ‘17「魔法使いの嫁」 ‘18「プラネット・ウィズ」
‘19「キャロル&チューズデイ」
 「頑張ったね!」と評する部門。ただでさえ選出基準がよく分からない本グランプリにおいて、最大のぼんやり加減を誇る部門であるが、最近は「原作あり小説ってどうしてもアニメで見てても熱量が下がっちゃうんだけど、いい作品いっぱいあるよね」という部門になっている感がある。まぁ、「どこが良いってはっきり言えないけど俺は好きやねん」というわがままを満たすためのスロットの1つだ。
 さて、前振りも充分にしておくと、この枠はやはり原作ありの作品がグッと多くなるのが特徴。例えばタイトルとして全体を褒めるのは微妙だなぁ、と思っていても光るものがある作品としては、2年という長いおつきあいを終えた「ゲゲゲの鬼太郎」なんかが思い浮かぶ。これだけのスパンで飽きずに楽しませてもらったのはやはり貴重な枠だった。
 原作を知っているとどうしてもアニメの新鮮味が薄れてしまうものだが、それでもやっぱり面白いよね、っていう分野だと「ジャンプ漫画」というのが毎年恒例で用意されており、今年は何と言っても「鬼滅の刃」の年。正直どこかの部門での戴冠は考えたのだが、正直世間のブームには乗り遅れたのでここで名前を出すにとどめておこう。他にもジャンプならきっちりファンのニーズを満たしてくれた「ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風」は贅沢に違いないし、まだまだヒットを続けていくだろう、「ハイキュー TO THE TOP」「僕のヒーローアカデミア」あたりは、ジャンプが本気出したらアニメのクオリティが上がるというわかりやすい例だろう。
 別に掲載元はジャンプに限る必要もなくて、たとえば「炎炎ノ消防隊」はアニメとしてのクオリティは充分高かっただろうし、「魔入りました!入間くん」はチャンピオン漫画とは思えない(失礼だな)新鮮さで夕方アニメの仕事を全うした。「文豪ストレイドッグス」のように長期作品になりながらも魅力を下げずに発信し続けられるコンテンツもこの部門での候補に上がるかもしれない。なにも漫画原作だけでなく、「盾の勇者の成り上がり」や「本好きの下剋上」など、ひとまとめにされがちななろう系作品でも、アニメとしては見るべき価値がある作品だってあるだろう。
 アニメオリジナル作品になると、「再現度」ではなくて「冒険心」での評価ということになる、渋いけど決して悪くないという、難しいバランス感。ぜひ忘れないでほしい作品の1つに「グランベルム」があり、こういうコンパクトにまとまったオリジナル作品で品質の良いものが連発されるのが、多分数年前まで想定されていたアニメ産業の理想形なのだ。なかなかそうもいかないけど……あとは数々の類似作品がある中でも決して埋もれずに個性を発揮してみせた「Re:ステージ!ドリームデイズ♪」なんてのもここで拾っておきたい作品。なかなかピンポイントでの評価が難しいんだよなぁ。
 まだまだあげたい名前は多く、最後まで悩んだ作品群としては、例えば映像クオリティで図抜けていた「ヴィンランド・サガ」。NHK制作への信頼感は高まるばかりである。構成の妙で見事な編集を見せたのは「彼方のアストラ」。1クールは絶対無理だと思われていたが、想像以上に不満のない出来にはびっくりだ。「ギヴン」は万人受けしづらいテーマ性を懇切丁寧に見せることで、視界をはっきりさせてくれた佳作。BL作品も、必要以上に卑下せずにまっすぐにこういうドラマで見せてくれればもっと受け入れやすくなりそう。映像化の難しさを必死にクリアした秀作には「pet」もある。このあたりのアニメがもっとニーズを高めていけば、ゴールデンタイムのドラマなんて蹴散らせるくらいの吸引力があると思うのだがねぇ。
 もっともっと「頑張った!」と言いたい作品はある気もするが、とりあえず今年度の作品の中でもっとも応援したいと思わせたのは、まっすぐすぎるテーマ設定から予想外にトリッキーな構成で楽しませてくれた「キャロル&チューズデイ」である。「ゴールはここやで」としつこいくらいに確認されているのに、何故か「今週はどうなってしまうんだ?!」とハラハラさせられる無体なシナリオライン。2クールという尺の長さをフル活用した大胆すぎるストーリー展開は、渡辺信一郎がずっと持ち続けている「アニメと音楽」の関わり合いに新たな表現技法を確立させるものだった。これだけアイドルもののアニメが濫造されている時代なのだから、アイドル音楽以外の芸能だって、どんどんアニメに落とし込まれて良いはずなのだ。その端緒として、本作は新しい時代の姿をほんの少しだけ見せてくれたように思う。こういうこだわりは、もっともっとアニメクリエイターの人たちにほとばしらせてほしいところですわね。
 
 
 
 
ファンタジー賞 
’10「あにゃまる探偵キルミンずぅ」 ‘11「うさぎドロップ」 ’12Fate/Zero」 ‘13「翠星のガルガンティア」 ’14「ログ・ホライズン2」 ‘15GO! プリンセスプリキュア」 ‘16「フリップフラッパーズ」 ‘17「少女終末旅行」 ‘18「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」
‘19「ドロヘドロ」
 実は設定がガバガバ、ファンタジー賞である。見ての通りに、過去の受賞作品も何がファンタジーかよくわからんものが並んでおるからな。やはり「うさぎドロップ」をファンタジー扱いにしたのは自分でもどうかしてると思うわ……。
 さておき、そんなことは特に反省せずに今年もふぁんたじっくな作品群を見ていこう。結局、ファンタジーなんてもんは個々人の解釈次第なので、なんかこぅ、現実離れしてたらファンタジーなのさね。ただ、不思議なことに「異世界ファンタジー」が大量に作られている時代だというのに、そっち方向で刺さる作品というのは皆無に等しい。いわゆる典型的な「ファンタジー」設定の作品の方が、アニメ界隈ではすでに飽きられて「手垢のついたもの」に成り果てているというのも面白い話だ。強いてあげるとしたら「盾の勇者の成り上がり」が一番頑張っていただろうか。剣と魔法のファンタジーならぬ、盾といじめのファンタジーである。尚文は複数の女はべらせてハーレム展開しないだけでもなろうヒーローの中じゃ印象はいい方なんだよな。ついてってるのタヌキと鳥だしな。
 そうして「典型的ファンタジー世界」というものに手垢がついてしまったら、今度はそれをネタとしてひねる展開が待ち受けている。つまり「異種族レビュアーズ」の誕生だ。もしかしたら、今年度異世界作品の中で一番丁寧に世界を考えてたのってレビュアーズなんじゃなかろうか? もうちょい健全というか、まっすぐな世界観で見るべき点が多かったのは「ラディアン2」。お話自体はハードだが、これくらいのバランスで「世界と魔法」のありようについて真剣に向き合ってくれているのが理想の1つなんじゃなかろうか。ファンタジーらしい世界の美しさを見せた作品としては「ソマリと森の神様」もあげることが出来るだろうか。背景設定がきちんとしているだけでも、アニメの見栄えはぐっと良くなるものである。
 もうちょいずらして、いわゆるファンタジーとは違うけど独自の世界観という部分では、たとえば「魔入りました!入間くん」あたりはわかりやすい中にもきちんと思想や信念のドラマが織り込まれていて見応えがある。考えてみりゃ、入間くんのムーブも完全になろう系主人公のはずなのだが、設定の見せ方次第で随分印象が変わるものだ。ファンタジー世界の中にも不思議な日常性というか、日々の暮らしのリアルさを織り交ぜて見せてくれたのは「空挺ドラゴンズ」。やっぱり飛空挺っていくつになっても惹きつけられる魅力があるんだよなぁ(FF3大好きだったなぁ)。そして、ファンタジーというには地に足がつきすぎてて胃が痛くなる世界が展開されたのが「BEASTARS」であろう。むしろ「もう少しファンタジックにやってもいいやんけ」っていうレベル。
 現実とファンタジーという2つの世界にどうやって折り合いをつけるか、っていうのも面白い視点で、例えば「映像研には手を出すな!」では、浅草の生み出したファンタジー設定が「アニメの絵」として動き出す様子を独特の風合いで見せてくれている。まるまる1話がのラフ絵ファンタジーで動く世界なんてのも見てみたい気もするね。そしてファンタジーというには過酷すぎる世界をいくつも生み出し続けた問題作が「ID: INVADED」。まぁ、ほとんど人間も存在しないような世界がいっぱいあったし、必ず人が死ぬのでファンタジー要素とは言えない気もするが……それくらいに現実との境目なんて曖昧なもんなんですよ。ほら、「うさぎドロップ」をファンタジーに選んだ私の目からみたら、「世話やきキツネの仙狐さん」だって立派なファンタジーやで……。異世界に飛ぶんじゃなくて、異世界から救いに来て欲しいのじゃよ。
 てなわけで、いろいろな方法で「現実にはないもの」を見せてくれるアニメの見せ方ってのも色々あるわけだが、「見たことのない世界」という新鮮さで言えば、今年度最大の「びっくり世界」には「ドロヘドロ」を選出させてもらおう。本当に画面の端から端まで全部が異物。原作漫画の時点で凄まじいグラフィックなのだろうが、それをアニメに落とし込み、見事に「気持ちの良い気持ち悪さ」を実現させたのは、文句なしにアニメスタッフの手腕である。CG作画の妙もあるだろうし、キャラの動かし方、見せ方、シナリオの組み方。どれを取っても違和感を伴ってストンと落ちてこないという理不尽さがこんなにも楽しいものになるなんて。みんな、異世界転生じゃなくてホール転生小説を書くんだ(すぐ死にそう)。
 
 
 
 
演技賞 
’10「屍鬼」 ‘11「C3 シーキューブ」 ’12「夏雪ランデブー」 ‘13「戦姫絶唱シンフォギアG」 ’14selector spread WIXOSS」 ‘15「六花の勇者」 ‘16「クズの本懐」 ‘17「メイドインアビス」 ‘18「ハッピーシュガーライフ」
‘19「荒ぶる季節の乙女どもよ。」
 事実上の声優部門やんけ、演技賞。毎年言ってるけど特に改善の兆しはない。いや、賞の策定の時点で諦めるしかないやろ。とにかく、あまり声優一個人に触れるのではなく、作品全体でのキャラの描き方、掘り下げ方などに役者陣がどれだけ貢献してくれるかを評した部門である。
 今年も様々な感想で声優の名前が飛び交ったわけだが、まずわかりやすく「とにかく豪華」ってんでキャストの充実ぶりに目を見張る作品としては、真っ先に「織田シナモン信長」が浮かぶだろう。ベテラン声優(自称・新人声優)が好き勝手に集まって戦国武将のふりをした犬をやるというこのカオス。これこそが「声優ファンでなければ味わえない」という声優業の妙味である。同様にとにかく豪華キャストを引っ張り出してくれた作品には「キャロル&チューズデイ」がある。短い時間でみっしりとゲストキャラの人生に厚みを持たせるためにとにかく声で説得力を持たせるという、なかなかずるい手法であった。「バビロン」におけるキャスト陣のお仕事も、これまた「冥利」の1つかもしれない。何しろ現実ではあり得ない死に方のオンパレード。殺す方も殺される方も、倒錯した状況を全力で楽しんでくれていた。「曲世が現実にいたらどうなるんだろう」という度し難い疑問を、スパッと見せつけてくれるゆきのさつきの名人芸よ。そうそう、「からくりサーカス」もキャストの頑張りに見どころが多かったですね。個人的には最古の4人が好きだったけど、そこに重ねてなお説得力がある最後の4人の登場とか、エンドレスクライマックス感が尋常じゃなかったな。
 もう少し若手のラインナップにして、オールキャスト的な見どころを探っていくと、なぜか最初に思いついたのは「俺を好きなのはお前だけかよ」だった。最近だとこういうハーレムものは珍しくなっているが、個性あふれるヒロイン勢の中で一人気を吐く山下大輝の熱演は見どころが多い。同じくヒロインが大挙していたのに意味合いが全然違う凄みを持つのは「女子高生の無駄づかい」だろうか。突き抜ける馬鹿、突き抜ける不条理。赤崎千夏は、キャリアの早い段階で織部やすなを経験したことが絶対に声優人生を左右したと思う。もう少し真っ当な青春絵巻でいうなら「この音とまれ!」における高校生たちの群像劇もアツい。いや、種﨑&東山のコンビネーションが素晴らしかったというだけでなくね。種さんの名前が出たついでに「グランベルム」のタイトルもあげておこうか。こちらは種﨑&島袋というメイン2人もさることながら、乙女の人生を思い切り振り回したり壊したりの日笠&悠木という奏者コンビが強い。若手は並み居るババアに食われないよう頑張って欲しいもんである。
 ちょっと視点を変えてみると、最近の作品で印象深いのは「pet」である。こちらはなんとキャスト陣の多くが中国語にチャレンジしたという謎の苦労が伴ったもの。流石に中国語の演技の良し悪しはよくわからんかったが、それでも飛田さんはなんかやたらに説得力があったのは本当に謎。これが声の力なのだろうか。異次元の仕事ぶりを見せつけられたといえば「まちカドまぞく」における処理速度を間違ったとしか思えない詰め込みトーキングは役者勢にはひたすらに試練。桜井監督の作るワールドがまさかこんな形で結実することになろうとは。
 一応役者単体での頑張りにも触れておくと(つまり声優部門で選出できない人をここで拾っておくと)、真っ先に浮かんだのは「慎重勇者」における豊崎愛生のパワー芸。すでに「駄女神」というジャンルは後輩の雨宮天が打ち立てた領域なのだが、それを受けて「自分ならこう見せる」という先輩の背中をまざまざと見せつけた。伊達に芸歴重ねてませんわ。まだまだ若手ながらも頑張りを見せたタイトルには「手品先輩」なんかもあげておきたい。本渡楓の声を聞いてるだけで、ちっぽけな悩みなんてどうでもいいな、って気になってきません? そして「ぬるぺた」に「ダーウィンズゲーム」……。上田麗奈旋風はまだまだ尽きることはない……。
 ってことで結局女性声優の話に収束するんやんけ、と言われればそれまでだが、今年の「キャスト陣の高め合い」の中から選ばせてもらったのは「荒ぶる季節の乙女どもよ。」である。もっと他の部門でもいくらでも選べそうな作品なのだが敢えてここでの戴冠とさせてもらったのは、やはり最大の見どころである「女子高生という存在のあれこれ」が作品を作り上げる根幹だったから。河野ひより・安済知佳・上坂すみれ・黒沢ともよ・麻倉もも。この5人が織りなす、いや折り成す、混沌の五重奏。全てが明後日の方向へ飛ぶキャラクターであるはずなのに、ねっとりと地を這うごとき濃密なドラマが展開されるという岡田麿里ワールドの妙味。こんな仕事よくも受けたな、というくらいの壮絶な役ばかりだったが、やりきった甲斐あってのこの完成度である。ことに主役の和紗を担当した河野ひよりについては、まだまだ芸歴も浅いところをこんだけの怪物たちに囲まれ、相当な刺激を受けたのではなかろうか。脈々と受け継がれる化け物声優の系譜に、新たな名を連ねることができるだろうか。
 
 
 
 
ユーモア賞 
’10「パンティ&ストッキングwithガーターベルト」 ‘11gdgd妖精s」 ’12「しろくまカフェ」 ‘13「マイリトルポニー〜トモダチは魔法〜」 ’14「スペース☆ダンディ(シーズン2)」 ‘15「てさぐれ!部活ものすぴんおふプルプルんシャルムと遊ぼう」 ‘16「ヘボット!」 ‘17「ゲーマーズ!」 ‘18DOUBLE DECKER ダグ&キリル」
‘19「女子高生の無駄づかい」
 評価軸が全然違うので、他部門との差がはっきりと出るのがこの部門。毎年毎年、的確に頭のおかしな作品が僕たちを楽しませてくれている。こうして歴代の受賞作品の名前を見ていると、なかなかこれに並び立つのは至難の技だよなぁ、ということを感じさせてくれるラインナップだ。
 ギャグというのも流行り廃りはあるもので、なんとなくではあるが、「今だからウケるネタ」みたいなものはある気がする。今年度の作品でいえば、例えば「慎重勇者」なんかはいわゆるなろう系設定を笑い者にするようなネタ回しを入れ込みつつ、実際はそのなろうの限界に挑戦するかのように、きっちりとネタを回収してブレイクスルーを図ろうとした意欲作。閉塞感のあるジャンルでも、そうした抜け道があるのか、という気づきを与えてくれるという意味では、小さいながらも時代の変革を感じさせてくれる作品だ。同じ異世界系でも正々堂々(?)ギャグに仕立て上げようとした作品は「旗揚!けものみち」。異世界設定の迷走ぶりがよく分かる一本だが、もう、異世界っていう看板は「恋愛もの」とか「スポーツもの」と同じように、一種のジャンル分けとして定着したのかもしれないな。そういう目線で見れば「異種族レビュアーズ」も同じ考え方から研ぎ澄まされた作品といえるわけだが、その方向性を研ぎ澄ますのが正解だったのかどうかはまだわからない。とにかく前代未聞だったのは間違いないだろう。
 こうして似たような方向性から並べると「どうしてもオタク専門の偏ったジャンル分配になりがちだよな……」という気になるが、実際は「オタク要素」ってのはジャンル設定だけにとどまるものではない。例えば「推しが武道館行ってくれたら死ぬ」の場合、アイドルオタクという悲しい生き物(悲しいよね)を滑稽に描きながらも、その中で純愛やらなんやらを混ぜこぜにしてがっつりドラマ仕立てにしている怪作。オタク文化が浸透すればこそ、こうした作品が抵抗なく受け入れられるようにもなっているし、実写ドラマなんかでもこの手の作品が増えているのは分かりやすい時代の象徴といえるだろう。まー、そういう仕事は実写ドラマに任せておけ、っていう傾向もあるのかもしれないけど。アニメにしかできない仕事っていうと……うーむ、「叛逆性ミリオンアーサー」みたいな方向性だろうか? 今となってはあれも多少古風な趣ですがなぁ。
 もう少し素直に、大人も子供も楽しめる分かりやすいギャグの方向性を探ってみると、個人的に外せないのは「魔入りました!入間くん」の存在。NHK教育テレビ(現Eテレ)といえば、個人的には「忍たま乱太郎」とか「おじゃる丸」みたいな子供向けのシンプルなギャグを提供してくれる枠という認識なのだが、その中で放送されたのがチャンピオン漫画だったというのはなんだか印象深い。きちんと土曜の夕方に親子で楽しめる作品に仕上がっていたのだから、理想的な「笑えるアニメ」といえたのではなかろうか。
 子供向けといえば、何故か今年はやたらと動物もの、ケモが元気だったというのも印象深かった年で、「動物を扱ったコメディ」だけでも「アフリカのサラリーマン」「織田シナモン信長」「うちタマ?!〜うちのタマ知りませんか?〜」「群れなせ!シートン学園」とタイトルが固め打ち。この中で笑いの純度でいえば多分「アフリカのサラリーマン」が一番分かりやすかっただろうが、妙なギミックをそこかしこに仕込んで油断ならなかった「うちタマ」、「けもフレ」同様にアニマル要素を突き詰めた「シートン学園」、そして声優の力をフル回転させた「シナモン」ときっちり個性が分かれていたのは面白いところ。こんな世の中だからこそ、人々はケモノの癒しを求めているのかもしれませんな。
 あとはショート枠から「八十亀ちゃんかんさつにっき」や「ぬるぺた」などが候補に入るかどうかをちょっと考えたことも。特に「ぬるぺた」はショート枠だからこその効果的なネタの仕込み方がギャグとか萌えとかいう次元とは一段違うところで感心した作品であった。ここ数年ずっと書いてきた「ショートだからこそ出来ること」をオリジナルアニメで模索してくれているのはありがたい話。そして最後まで悩んだ「ギャグ中心のアニメ」候補として、「ダンベル何キロ持てる?」があり、多方面にアピールする話題性は今期でもダントツ。こういうエネルギーに満ちた作品が出てくると、まだまだアニメが生み出される価値はあるものだと安心できるのである。
 そんな「ダンベル」と同時期に放送されてしのぎを削った今年の顔には、「女子高生の無駄づかい」を選ばせてもらうことにしよう。これもまぁ、女子高生のドタバタコメディという外枠だけで考えてしまえばありがちなアニメではあるのだが、あまりに救いのないキャラクターの配置と、一歩間違えれば収拾がつかなくなりそうな野放図なネタ回しを紙一重で「一本のアニメの流れ」の中に押しとどめることに成功したディレクションを評したい。まぁ、簡単にいえば「やっぱり高橋丈夫はアニメがうまいよ」っていう話になってしまうのだけど。ギャグの部分で手を抜かないのはもちろんだが、そうして笑いを取りながらも、個々のキャラクターの魅力を少しずつ高めるようなドラマ作りが意識されており、こんな連中でも終わってみれば「キャラ萌え」に近い感情を抱いているような気がするのである。オタク向けアニメかくあるべしというお手本みたいなバランス配分である。そういえば実写ドラマ化してたらしいけど、これ、絶対実写にできるはずないと思ってたがどうなったんだろうな……。
 
 
 
 
アイディア賞 
’10「魔法少女まどか☆マギカ」 ‘11TIGER&BUNNY」 ’12「戦国コレクション」 ’13「ガンダムビルドファイターズ」 ’14SHIROBAKO」 ‘15「おそ松さん」 ‘16「ユーリ!!! on ICE」 ‘17「アクションヒロインチアフルーツ」 ‘18「ゾンビランドサガ」
‘19「ダンベル何キロ持てる?」
 「その発想はなかったわ」を評する部門。過去の受賞歴を眺めてみると、今となっては別に普通かもしれないが、当時は「そんなアニメの作り方もあるんやなぁ」と感心させられたものが並んでいる。そういう意味では時代の先駆けがどこにいるかがわかる部門といえるかもしれない。
 今年も色々と斜め上から襲いくるアニメの刺客たちが揃っていたが、面白いアイディアと言われてパッと浮かぶのは、直近の「うちタマ〜うちのタマ知りませんか?〜」だ。擬人化なんてのはもう手垢のついたジャンルで、もともとキャラクターだったものという縛りでも、ウルトラ怪獣なんかは美少女化されてアニメにもなっている。しかし、まさか元から可愛い動物キャラを、「自分たち目線」の時だけ擬人化するなんてギミックを打ち出してくるとは。「ならでは」のギミックがこれでもかと仕込まれていたのは正直悔しい。作品構造の面白さでいえば「俺を好きなのはお前だけかよ」のひたすら繰り返される天丼ネタが着実に精神を蝕んでいく構造も面白かった。ベンチが出てくるだけで「ひえっ」ってなるように仕上がったのは、しつこい積み重ねのなせる技やね。似たようなタイトルの「可愛ければ変態でも好きになってくれますか?」も、実は作品ギミックとしてはチャレンジングなことをやっている。ヒロインが多数押し寄せるハーレム作品ながら、主人公との関係性が「容疑者」っていうのが刺激的。毎回足を使った調査やアリバイによる消去などで律儀に限定していこうとする生真面目さが面白い。
 作品構造とはちょっと違うが、「PSYCHO-PASS3」は1時間枠で8話放送という、既存の放送枠の常識を打ち破った形式で話題になった。過去には同じくフジテレビ系列で「刀語」が1時間枠で放送されていたが、あれは1年間の企画枠。今回のように1クールに詰め込むデザインというのは史上初ではなかろうか。まぁ、映画までまとめて一本の作品なので、地上波アニメとして成立したかどうかは微妙ではあるけども。逆に尺の短さを活かしたスタイルでいえば、実は「ソウナンですか?」みたいな作品は特性を活かしている良い例だ。ショートネタのアニメがもっと作られてもいいんじゃないかと内心期待してるんだけどね。今年はオリジナルで「ぬるぺた」みたいな野心作も作られたわけだし。
 作品そのものの発想が面白かったのは「胡蝶綺〜若き信長〜」。今更手垢のついた信長ものを改めてやる意味あるんかい、と思われたが、むしろこうして限定的な時代を描く「大河ドラマ」というのはアニメでは盲点だった気がする。地味な題材なのでなかなか作りにくいかもしれないが、もっとチャレンジされてもいい方向性だ。「キャロル&チューズデイ」のデザインも、実は割と思い切ったことをやっている。冒頭で何度も「奇跡の7分」が来ると繰り返して、本当に単なる「7分」で終わるという指向性の定まったデザイン。マーズブライテストなどの音楽番組をそのまんまアニメに流してしまう枠の使い方も愉快だ。アニメでしか出来ないことをやろうという気概を見せたオリジナル作品には「ID: INVADED」もある。1クールの枠なら、1クールでできるサプライズを繰り広げればいいだけの話なのだよね。そうそう、そうして尺の組み方が注目されたのは……「星合の空」だ。ほんと、何かが惜しかった気配はするんだよね。気配だけなんだけどさ。
 作品のテーマ自体で攻める方向性として、今年一気に賑やかになったのは「なろうプラスワン」とでも言えば良いのか、新世代の異世界作品。具体的にあげるなら「慎重勇者」はなろう的お約束をギャグで茶化しながら進行していると思わせて最後にどんでん返しを用意しているという全体構造が周到。逆に異世界で使える道具立てが枯渇しちゃってどんどんあさっての方向に向かった結果出来上がったのが「旗揚!けものみち」。異世界ギャグと言っても、まだまだ開発の余地があるってことだよね。「異種族レビュアーズ」だってこの流れの中にあると言えるが……。あれはどっちかというとエロ漫画からの派生か。
 アニメ制作の企画段階でのチャレンジ精神を買いたいのは「歌舞伎町シャーロック」。とにかくいろんな要素を詰め込んで混ぜて、一目でそれとわかる「斬新さ」で勝負をしたはずなのだが、終わってみれば存外良心的な範囲で落ち着いてるのは不思議なもんだね。そして、どうやって企画会議を通したのかが気になるのが「どろろ」。今更のアニメ化、そしてオチをどうつけるのかという難題。よくもまぁ、きちんと成立させるところまで辿りついたものである。そして、制作体制がボロボロになっても成立させてやろうという信念だけで乗り越えた作品が「COP CRAFT」。……放送版のあれやこれやの「なんとか画面を繋ぐんだ!」という涙ぐましい演出は、ある意味で職人芸でしたよ。
 こうして様々な方向から、まだまだ見たこともない世界を提供してくれるからこそアニメというのは面白いのだ。そして、今年もっともオタクと縁遠い世界をアニメ爆心地に持ち込んだ問題作が、「ダンベル何キロ持てる?」であった。アニメと筋トレ。そういえば過去には「いっしょにとれーにんぐ」なんて企画もあったわけだが、あれはあくまで企画もののショートアニメ。30分がっつりネタアニメとして展開しつつ、その中にダイレクトに筋トレ要素を持ち込むってのは、一体誰が思いついたことなのだろうか。「女子高生に趣味をやらせればだいたいのジャンルはアニメオタクに通じる」というこの世の真理が、いよいよ筋トレにまで到達した。あとオタクにやらせたいことって何があるんだろう。いや、ダンベル放送当時はよくわからないオタクがジムに来て迷惑したなんてほんとか嘘かわからない話もあったけどねぇ。オタクを動かし、社会を動かす、それがアニメの力である。
 
 
 
 
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