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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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 全方位に切ない、第6話。本当に、全てのパーツがハマるべきところに(ハマって欲しくなくても)カチリカチリと収まっていく端正さ。この筋立ては……上手い。

 結局元を正せば「人間が悪いやんけ」というところに帰結してしまうのはこの手のお話のお約束で、グレイスと冴木博士の悲恋は、人間の浅はかな行動が原因だった。そして、その原因となったのはさらに元を正すとヴィヴィがサンライズでとった行動であり、ここまで気にしていた「バタフライエフェクトがどれくらい働くデザインなのだろう?」という懸念をいくらか解消してくれる展開にもなっている。バタフライエフェクトってのは「蝶が羽ばたけば云々」の言葉の通り「些細な変化から大事件」の喩えなので、今回のように「大事件から大事件へ」ではあまりそこのフォローにはなっていないのであるが、それでも今作の基盤となった「未来から来たメッセンジャーによる過去改変」という構造をきちんと使っていることの表れにはなっている。「ディーバ」が最初にあった女の子の妹がサンライズにいたことでサンライズの事件に影響を及ぼし、最初の事件でとっさに救助したテロリストとは末永いお付き合いになり、負の影響を止めるために行ったサンライズの計画が今度は別な角度から新たな悲劇の引き金を引く。こうした因果の絡み合いが見えてこその時間跳躍ものである。

 やはりどう考えても、人間の考えの浅はかさは救いようがない。ヴィヴィ・シスターズはどうやら想定以上に優秀だったようで、サンライズ事件以降、自立思考型AIの展開が「正史」よりも急速に早まることになったという。そこで「じゃぁ量産しようぜ」にするなら話はわかるのだが、そういう体勢が取りづらい製品だったのだろうか、「すでにある製品の用途を変えて流用しようぜ」というとんでもない提案があっさりと通ってしまったという。その辺の病院で地味に仕事をしていたグレイスに白羽の矢が立ち、誰もお上の決定に逆らえないままに、彼女はAIの発展の犠牲となって消えた。冴木博士が止められなかったのはやむなしであるが、「1つのAIに1つの使命」が絶対原則であったとするなら、こんなにも酷い横紙破りが人間の手で率先して行われるのはとんでもないことである。願わくは、今回のメガフロートの事件を受けて、少なくとも「使命の改変」に対しての問題意識だけは後世に残ってほしいものだ。

 そうしてAIへの勝手な期待のために「殺されて」しまったグレイス。そしてそんな彼女が「生きているかどうか」という問いのために今回のお話はグルグルとどうしようもないことを考えながら回り続ける。博士の中で、グレイスは「生きている」(もしくは生きていて欲しい)。AIなのだから姿形を変えるのは問題ないが、その「意識」がメガフロートで生きているかどうかに関しては、(少なくともこの世界においては)おそらくマツモトの説明が真なのだろう。拡散し、粉微塵になったグレイスの意識はもう、集まって元に戻ることはない。この問題を描写するために扱われたのが「歌」であるというのも首尾一貫した演出姿勢になっており、小型ロボット・Mたちを通じてそれぞれの「残滓」は歌を通じて確認できるのだが、逆説的に、そこまで分散し、そこかしこに散らばってしまった「歌」では、もうそれを「歌」と認めるわけにはいかなかった。マツモトがヴィヴィに問うた「それは歌と呼べるものなのか」という問いかけは、歌うことを生業とし、そこから幾多のシスターズを生み出してきたヴィヴィにはあまりに残酷なものである。エステラとエリザベスは、歌で救われた。しかし、グレイスの歌は、救いにならなかった。この対比がヴィヴィに与える影響は、想像することも叶わない。

 「グレイスは死んだ」とみなしたあとのアクションパートも、劇場版もかくやという力の入った描写で嫌でも惹きつけられる。メガフロートの特性を活かして作っちゃったマツモトのマインクラフト飛行機も愉快なアイディアだし、ヴィヴィが「歌」の呪縛から使命を一段上に引き上げ、マツモトと息のあった連携を見せる展開も圧巻。しまいにはマツモトの意気すら超えて、「AIを滅ぼすAI」として動き始めるヴィヴィ。すでに亡骸に等しいグレイスのコアに一撃を加えた際にも、そこに迷いはない。いや、同情や葛藤はあったのかもしれないが、その拳を止めるまでには至らない。「グレイス」は最後まで何も語らない。バックに流れる音楽は、彼女が好きだった歌のアレンジバージョンになっており、歌が終わり、書き換えられることで、その「音階」は意味を消失していく。声もなく停止したグレイスが最後に「意識」を持っていたのか。彼女は停止させられたことをどう感じたのか。それはヴィヴィにも、誰にもわからない。

 AIの命を奪った青い右手。人の命が消えるのを止められなかった赤い左手。ヴィヴィの手には何も残らない。人とAIの未来は、交ることがあるのだろうか。

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