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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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 観てきました。正直、劇場に行くたびに予告編が流れていたので知ってはいたが観るかどうかは微妙だった作品。だって、予告編を観てもあんまり興味が湧かなかったんだもの。ただ、Twitterで某キャスト(私の中の絶対存在)がせいいっぱい宣伝していたので「ほなら観にいかなあかんか」と思い、確認したらすでに劇場では日に1回とかの上映回数になってたので慌てて観てきた。

 一応先にこれだけは書いときますけど、面白かったです。私は劇場で1回泣きました。まぁ、前日も劇場に行って60分作品で3回泣いてる奴が言っても何の参考にもならないけど……少なくとも予告編を観ただけでちょっと舐めてた印象はすっかり書き換えられましたね。これは観る価値がある作品だと思います。もし、観るかどうかを悩んでる人がいるなら出来れば行ってほしい。某キャストもそう言ってたから(別にステマじゃないよ)。

 

 

<以下、ネタバレを含みますので未視聴注意>

 




 さて、そうは言ってもなかなか評価が難しい作品で、切り口は色々とあると思うのだが……なんだろ、個人的に最も評価する部分はどこかと問われたら「脚本構成」って答えるかな。身も蓋もない言い方をすると、今作もやっぱり「日本のオリジナル劇場アニメにありがちな構造」ではある。というか、まさにそのものの構造と言ってもいいぐらいで、起点にしても「クラスにロボットが転校してきてドタバタが起こるけど、その正体がバレたらダメなんだぜ!」なんて設定は藤子不二雄作品のような、ジャンプの連載作品のような、どこでも見る形。「AIと人の共存関係とは?」みたいなテーマもベタ&ベタの極みで、直近なら「Vivy」なんて作品もある。そうして本当に「どっかで見た内容」になるはずなのだが……入れ込み方が実に巧みなのである。分かりにくい喩えで言うなら(なんでだ)、「ピアノのコンクールで課題曲の演奏がめっちゃ上手い」みたいな印象だろうか。審査員も聴衆もどんな曲が演奏されるかは嫌という程知ってるはずなのだが、細部まできっちりと完成度を高めて極力減点を許さないように進めているし、「その要素をそんな風に表現するんだ!」という驚きもきちんと発揮される。そんな作品。

 劇場アニメを観るとき、「これ、地上波でシリーズアニメとして放送してくれた方がいいのに」と思うことが多々ある(そして何度も感想で書いている)。1クールアニメの20分×十数本という尺と、劇場アニメの2時間前後という尺。やはり量で言ったらシリーズアニメの方が圧倒的に多いわけで、描ける内容も増えてくる。逆に劇場作品は「どうしても尺がねぇ」という感想が出てくる。今作の序盤でも、例えばアヤちゃんの変心なんかはいささか急な部分もあり、「これはもうちょい時間をかけてツンをデレ化させて欲しかったな」と思わないではない。シオンが1人1人のクラスメイトを籠絡していくなんてのはいかにも1話1話の区切りがある構成でやりやすいのだし、「やっぱ劇場アニメは詰め込みがなぁ」と思いながら見ていたのは事実である。

 しかし、後半に進むにつれてそんなヒネた印象は次第になりをひそめるようになった。本当に、「どこに何を入れるか」が一分の隙もなく決まっている作品だということが分かってくるからだ。「110分にシナリオを入れてください」と言われたら、絶対に「書いてから削る」のは間違いない。「ポンポさん」なんかはその「削る」という行為のデメリットを逆手にとってアクロバティックな解決法を見出していたが、本作はそうしたトリッキーな裏技など使わず、本当に110分目のゴールを設定し、そこに必要なルートをカチリカチリと埋めていく。最後にはまるで巨大なジグソーパズルを完成させた時のような充足感が待っている。それは「このピース、ここにはまるんだ」という気持ち良さでもあるし、「このピースとこのピースを組み合わせるとこんな絵になるんだ」の発見でもあるし、「これもピースだったの?!」の驚きでもあるし。そんな理にかなった端正さが、個人的にはツボだった。そうした「シーンは1秒たりとも無駄にしたくないんですよ」という意思が吹き出したのがクライマックス(の1つ)となるシオン誕生秘話が明かされるパートであり、あのシーンがあまりに気持ちよくパチパチとパーツをはめていくものだから、ちょっと意外で、素直に感心して泣いてしまったのだ。いやまぁ、普通にええ話だったからってのももちろんあるけど。

 もう1つ話題としてピックアップしなければならないのは「ミュージカルシーンの是非」だろうか。個人的にはあまりミュージカルという文化に触れてこなかったので、アニメでちょいちょいミュージカルが出てくるのに接しても、いまだにちょっと苦手だ。どうしたってシーンとしての整合性が取れなくなるので、視点の切り替えが追いつかないせいだ。もちろん「そう言うものだから」というマナーがあることは分かっているし、そこは1つの表現技法として脚本云々とは切り離して考えるべきだということも分かっているのだが、そこに一線を引くことにまだ慣れていない。私のような石頭の人間がそれを乗り越えるためには、例えば作品世界内にメタもネタも丸投げにした地獄のレヴュー空間を作り、全てを飲み込んで「分かりまぁす」してもらうなどと言った反則技を使うしかなかった。いや、あれは反則にしても度が過ぎているが。

 しかし、今作はそんな「ミュージカルパートの存在」を、かなりの部分で「それ以外のシーン」に接続することに成功している。言い換えるなら、作品世界内で「ミュージカルになること」に蓋然性を生み出している。というか、多分そこが最大の見せ場になっている。この「ミュージカルって不自然だから苦手」という私の狭量な見方を、「不自然なんだから、そこは伏線になるじゃろ」という見事な送り足払いみたいな技に持っていかれてしまったのが悔しい。がっつりとタイトルにも「AIの歌を聴かせて」と書いてある。そしてAIは必死に歌っていたし、歌い続けていた。これ、英語タイトルが「Sing a Bit of Harmony」になってて、「a bit of」が「少量の」っていう意味に加えてコンピュータ用語の「ビット」にかかってるのがあまりに綺麗なんですよ。そう、シオンは歌い続けてた。その音声が8ビットみたいなバリバリ電子音だった時代にも。これだけしっかり「ミュージカルアニメ」が歌に意味を乗せてきたのって、かなり革新的な趣向だったと思うんですよね。

 あと、単純に映像として面白くなるっていうのも利点で、正直いうと序盤の2曲くらいは「あぁ、やっぱり俺、ミュージカルは面食らっちゃうから得手じゃないな」って思いながら見てたのよね。自己紹介で歌うシオンとか、その後の機能停止シーン前とか(もちろん、そこでそんな風に舐めてかかったもんだからクライマックスで泣かされることになるわけだが)。でも、その後の柔道シーンは素直に感心しちゃった。あれは本当にそこだけ切り出しても面白いシーンでしょ。事前にシオンが「舞踏」と「武道」を勘違いしてるのに、気づいたらその2つが一緒くたになって見事に柔道着で四つに組みながらの「舞踏」シーンと、ちょっとそれまでとは趣の違うシオンの歌唱。あのシーンだけでも観る価値がある。

 映像の話が出てきたのでついでに触れておくと、あまり作品の売りとして前面に出てくる要素ではないが、J.C.STAFFはいかにもJ.C.らしい作画作業で作品の完成度に貢献している。なんだろね、京アニとかP.A.とかMAPPAとかufoとか、そういうスタジオみたいな激烈な個性が見せ場になるわけじゃないんだけど、本当に作品をスッと入れられるような映像の作り込みができてるし、見せ場はちゃんと見せ場だと分かるだけの力が入っている。全てのパーツが綺麗にはまる「収まりのいい」作品なので、端々で作画が気になっちゃったりするとそれだけで全体の印象が悪くなりかねないのだが、本当に最初から最後まで、キャラデザも落ちないし背景も美しい。予告編の時は「なんか地味なキャラデザだな」と思ったものだが、等身大の学生青春絵巻として、この「特別すぎない存在感」はちゃんと狙わないと出せない要素なのかも。

 世界設定の美術についても、今作は本当に「減点のない」作りになってて、「近未来のAI実験都市」っていう設計がなんとも自然なあんばいになっている。どうしてもAIやロボが主人公の作品ってのはそのほかの技術体系とのギャップとか、どうにも安易な「未来観」みたいなもので一気に嘘くさく見えてしまうものなのだが、本作におけるAIとの接し方は、現代科学から想定される「ありそうなステップ」をきちんと捉えている。そりゃま、「なんで掃除ロボットがあの形なのに田植えロボットが人型やねん」みたいな部分が気になるといえば気になるが、それも段階的なロボットのデザイン工学の変化がシオンというゴールにつながっていると考えれば世界設計の1つの指針と言える。他にも現代のAIスピーカーからの純正進化とか、「こんなこといいな、出来たらいいな」が少しずつ実現している現代だからこそ描ける空想が楽しかった。

 脚本、映像と一通り触れたので最後は当然キャストの話。まぁ、シオン役の土屋太鳳に関しては「これでいいんだろう」という話ですよね。別に積極的に褒めようとは思わないけども……AIっぽい仕上がりになっていたのは、ちゃんと役者として落とすべき部分を理解した上での配置でしょう。まぁ、「もっと声優業が聞きたい」とは思わんが……それこそ、同じような女優畑にいて見事な成長を遂げた福原遥と聴き比べてみるのも面白いかも。あとはまぁ、やっぱりサトミのママンなんですよね……。正直、今作は冒頭のサトミとおかーさんの母娘のやりとりがすごく綺麗だったのよ。あそこで「世界と人」がパッと鮮烈に見えたからこそ、作品に入りやすかった部分はあったんじゃないかなぁ。「日本中のママンはもう井上喜久子と久川綾と本田貴子と大原さやかでまかなってしまえ」という過激派な私ですが(その日によって気分は変わります)、やはりさぁやオカンは私の中では絶対なのです。声を大にして「私の母親になってくれたかもしれない声優なのだぞ!!」って言えるんですよ(言うなよ)。しかも今回のママンは本当にいいキャラでね……それだけに一瞬だけ闇落ちしちゃったシーンは本当に辛かったですが、あのシーンで出てきた「言葉を選べる自信がない」っていう表現、本当に好き。苦境に耐えながらも相手を想ってないと出てこない一言ですよ。まぁ、その後で「酔って投げるのはおしぼりまでにしてくれ……」ってガクブル震えながら思ってましたけど。ワインの瓶片手に管を巻くのが本当に似合うので……きっとサトミが成人したら、2人でいいお酒を飲みにいくことでしょう。

 さて、だいぶ長くなった気はするけど、多分まだ書こうと思って忘れた内容がある気がする。それくらいには、色々と気づきや発見を与えてくれる刺激の多い作品です。これを見逃したら損するところだった。センキューTwitter

 

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