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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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 「屍鬼」 5→6

 今期最後のゴールインはノイタミナ2枠目。2クールの間、地味に地味に展開してきた作品だが、なかなかどうして、悪くないアニメでしたよ。

 一番しんどかったのは、やはり原作同様にその圧倒的な登場人物の数を処理しきれなかった部分。話数にしてわずか22話であまりに多くのキャラクターが登場するため、それら全てを把握した上で物語を追うのはかなりの困難を伴った。加えてノイタミナ枠が変則的な枠構成になり、数週にわたって番組が無かったりしたため、視聴のモチベーションや記憶そのものが薄れてしまうという、外的要因も多少足を引っ張ってしまったか。物語中盤は「とにかく屍鬼に襲われた村人が減っていくだけ」という状況が続くため、そのあたりのマンネリ感を払拭しきれないと、最後のクライマックスまで持っていくのがしんどくなる。振り返ってみればこれでも色々と切り捨てた要素が多いくらいに詰め込んだ内容だったとは思うのだが、こればかりは致し方ないところだろう。そもそもアニメにする際の難度の高い作品だったわけで、回避しきれなかった問題というのは残されるものだ。

 とは言っても、全体を見据えたシリーズ構成はよく考えられていたと思う。メインとなる視点が複数箇所にわたってしまうのでどうしても散逸的な印象になってしまうわけだが、「屍鬼が現れる」→「少しずつ村全体を蝕んでいく」→「敏夫が屍鬼の存在に気付く」→「対抗策が無く、絶望的な状況で夏野も死亡」→「どん底の状態から、気力で打開策を見付ける」→「一気に反撃へ」という大きな流れは全ての話数を通じて意識されており、アウトラインさえ追えれば些末な状況は拾いきれずとも物語は楽しめる。個人的には中盤以降の「どこをどうやったって人間側に勝ち目はないだろ」みたいな絶望的な状況の描写はたまらないものがあり、長い間陰鬱な物語を見続けていたおかげで、最後にみせた一気呵成の反抗劇の盛り上がりは充分に楽しめた。もちろんそうした「話作りの巧さ」は原作に依拠する部分であろうが、アニメにしづらい原作のデメリットを極力抑え込み、表に出すべき魅力の部分はちゃんと展開出来たのだから、小説・漫画媒体のアニメ化としては成功例と見ていいのではなかろうか。

 個人的に魅力的だと感じたのは大きく2点。1つは、やはり陰惨な「村社会」において、ジワジワと侵攻してくる屍鬼の絶対的な力を見せつけるホラーとしての底力。「死人が起き上がる」というシンプルな恐怖に加え、個々の圧倒的な力と桐敷という組織力までを加えた絶望。尾崎敏夫の回りから少しずつ味方の数が減っていき、最終的には夏野の死亡と室井の変心により、ついに尾崎医院は孤立無援の状態へ。一個人対ムラというどう見ても勝ち目の無い構図にもっていくまでの絶妙な絡め手の描写が、本当に救いのないものだったのが印象的である。

 そして、そんな惨劇を導き出した屍鬼の存在自体が、2つ目の胆。全ては桐敷沙子という1人のキャラクターに帰着するわけだが、「生きるために殺す」というシンプルな理念に加え、「認められたい」という願望から仲間を増やしていく過程で、新たな屍鬼たちも各々に目標や葛藤を抱えている。純粋に不死の肉体を手に入れて悦に入る者や、徹のようにかつての仲間を殺すことに懊悩する者、そして、清水恵のように、生前の思いを屍鬼となったその身体に託し、全く別の思惑で生きていく者。単純な「人間対化け物」という構図ではなく、その下に敷かれた「人間対人間」というドラマが、物語への没入度をさらに上げてくれる。恵・徹・夏野などのキーとなるキャラクターが、他の諸々に埋もれずにちゃんと個々の人生を歩んでいる様子が分かったのが、こうした物語の成功の鍵だったのだろう。

 正直言えば、やはり毎週放送するシリーズアニメには「向かない」作品だったとは思う。あり得ない話だが、劇場作品などで3,4時間ぶっ続けてやってみたり、「刀語」「もしドラ」のように長めの時間を確保したり、一気に放送してしまったり、そういうスタイルの方が可能性が広がった作品ではあろう。その上で、与えられた枠の中で最大限に仕事をし、結果を残したことは評価されるべきだ。ノイタミナという枠の理念を考えれば、今後も1つの目安として、引き継がれていくべき作品ではなかろうか。

 で、個人的な興味は中の人の話に移るわけですよ。壮大な物語であり、魅力的なキャラクターが多数登場するだけに、中の人の活躍もめざましいものがあった。羅列していくと、例えば尾崎恭子役の水谷優子や、桐敷千鶴役の折笠愛。絶妙な艶っぽさを醸し出す大人のエロスはホラーと密接に関わりながら、どちらも末期の壮絶さとのギャップが強烈。ぞくぞくしました。努力賞なら夏野役の内山昴輝。「SOUL EATER」の時にはまだまだ素人感満載だったが、少しずつ自分なりの演技プランが見えてきたみたいです。イケメン枠にはなんと言っても敏夫役の大川透。作品の空気を決定づける屋台骨の役割を完璧にこなす流石の貫禄。恭子殺害シーンの語りとか、本当にたまらん。同様に、最後の最後まで信念を貫き通した孤高のロリコン、室井静信役、興津和幸。室井さんには幸せになってほしいものだ。ある意味イケメン枠ではマッスルじじいこと富雄役の石井康嗣。何をやっても悪辣。

 そして、鬱々とした外場村の中で最後の最後まで異彩を放ったのは、清水恵役、戸松遥。この作品のもう1つの側面を一番はっきりと描き出すキャラクターだっただけに、その内面性の重要度はかなり高かった。戸松劇場に限りなし。最後はもちろん、桐敷沙子役、悠木碧。3話の時点でも軽く触れたが、沙子のキャラ作りについては、彼女にしかなしえなかったものではなかろうか。最終回に至る終盤の盛り上がりは、沙子が支えなければ実現しなかったものであり、一言でも気を抜けば作品全体の崩壊に繋がりかねない重要な役どころ。この歳でここまでのものが仕上がったというのは、本当に見事としか言いようがない。あおちゃん劇場に限りなし。

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