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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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 新年度一発目の劇場作品はこちら。いや、ほんとなら昨年度の作品に入る時期に公開はされてたんですが……いつものことながらあれよあれよと時間が過ぎ、気づいたらもう上映回数も減っていたので割とギリギリでした。ただ、1日1回上映になったせいもあるのか、劇場はかなり人が入っていました。もしかしたら口コミで評判とかが広がったのかも。ちなみに私個人としては、年度をまたいじゃったことが結果的によかったかな、とは思っています(というか、いくらか狙ってそうした部分はあります)。何故かというと、昨年度中に視聴してたら、すでにまとめ終わったはずの「アニメグランプリ」の記事に今作をなんとかねじ込めないものかウンウン唸る羽目になっていただろうから……。これはねぇ、すごい作品ですよ。

 

 

<以下、一応ネタバレ注意>

 




 

 私が今作を観たいな、と思っていた最大の理由は、監督が立川譲だったから。この人の映像制作は本当に凄まじくて、ここまで関わってきた作品には1つたりともハズレがない。まぁ、アニメクリエイターの上手い下手なんでのは私にはよく分からないのであくまで「私の感性に合う作家」とまとめておくが、とにかくこの人の描く画図はみんな強いんですよ。だからこそ、どこかで必ず観に行こうとは思っていた。

 原作はさっぱり知らない作品で、後から調べたら結構な長さの作品。つまり、たかだか2時間の尺の映画ではあまりに短すぎてごちゃごちゃになってしまうという、劇場アニメにありがちな要素を抱え込んでしまうことになる。実際、冒頭からしばらくの間は主人公の大が上京してきてバンドを組み、ライブを行うところまでがあまりにとんとん拍子で行くものだから、割とダイジェスト感が強い。パンフによればそもそも「仙台編」があってからの「東京編」らしいので、まるまる修行パートを1本省いて物語を進めているようなものなので、この駆け足状態は大きな問題になる……はずなのにそこまで気にならないのは脚本のまとめ方の妙。そして、「そこはまぁ、いいじゃない」と言いながら本当に見せたいものを叩きつけてくる荒技の成果。次第に沈み込んでしまう脚本の上手さは、実はかなりの神技な気がする(原作知らないからあくまでも予感でしかないけど)。

 そう、正直いうと最初の方は視聴しながら「シナリオラインは添え物程度、バックグラウンドを理解するためのもので、この映画の目的はライブシーンの音を聞かせるものなのだな」などと考えていた。そりゃね、私は「バンドリ」のフィルムライブを3回観に行くような人間なので、大きくドラマに括られるものがなくたって、アニメで描かれたライブを楽しむことができるってのは重々承知しているわけですよ。だからこそ、「まぁ、シナリオにそこまで重きを置かれなくても問題ないだろう」と一種切って捨てたような印象があったんです。でもしょうがないじゃん、大は状況して速攻でTAKE TWOにいって東京に馴染んじゃうし、そのまま雪祈と出会ってバンド結成、ド素人の玉田を加えてライブを始めてお客がつくまで、おそらく1時間も掛からなかった。そうした「大まかな筋」はあまり重要視していないパートなのだろうと、そうたかを括っても仕方ない。実際、演奏シーンに見応えがあるのは冒頭の河原のシーンからわかっていたことだし、雪祈の勧誘のための大のソロパートあたりで音響と映像のマッチングの素晴らしさはわかっているのだ。「そこだけ観て帰ろう」と思うのが自然な流れじゃなかろうか。

 しかし、結果から言えば、後半はもう号泣しっぱなしだった。添え物だと思ってたドラマ要素が、いつしかライブと切ってもきれない要素になって泣かされてた。おかしいなぁ、お話はほんとにテンプレ展開でダイジェストみたいなもんだと思ってたんだけどなぁ……必要な要素は漏らさず集めて、きちんとお話になってたんだなぁ……。この辺りの「尺との勝負の仕方」はやっぱり一朝一夕で身に付くものではないので、脚本と映像の二人三脚が本当にうまくいった結果だと思う。細かい部分はあまり言及できないが、個人的に注目したいのはオーバーラップの多用かな。無声にして映像の断片を繋ぐ文字通りの「ダイジェスト」みたいなパートも多かったが、それ以外の時短要素として、シーンとシーンを重ね合わせて同時に画面に載せるという技法も多用されている。時間にすれば数秒程度の重ね合わせでも、塵も積もって山となって、それなりに時間を削る効果があったはず。オーバーラップは最大の見せ場であるライブシーンでも多用されており、今作が「大・雪祈・玉田」の3人の物語であるという性格も上手い具合に表現されている。これだけの要素を2時間に押し込めておきながら、「描き足りてない」とは思わせないだけでも凄まじい構成力だ。

 あとはまぁ、そうしてドラマの枠をギリギリまで絞り込み、今作が一番見せたいライブパートを見せていくだけである。ライブ映像はCGによる実際のモーションの取り込みと、手描き作画のハイブリッド形式で描かれるが、CGはまぁ、そこそこレベル。ただ、そこを跨いで出てくる手描きパートの熱量がヤバいことになっている。うねるような熱気、熱狂を描いたパートは「モブサイコ100」のサイキックシーンにも似て、とにかくエキセントリックに迸るエネルギーが画面の向こうからバシバシ飛んでくる。わざわざ劇場でこのアニメをやる最大の意味である重厚な音響に相まって、ある種のトリップ・ムービーにすらなっているかもしれない。もちろん、ただ斬新に、とっぴな映像を飛ばせばいいというわけではなく、その映像の中には間違いなくドラマの一部となる3人の感情がないまぜにされている。このバランスもまさに神技。とにかく、ただ「ジャズが聴きたくなる」そんな映像のオンパレードである。

 本当にありとあらゆる技巧が詰め込まれている気がするので私如きが何を感じ取れるものかと打ちのめされもしたが、個人的に注目した要素を1つピックアップするなら、今作で多用されている「反射」「光沢」の表現が非常に興味深かった。描かれるべきメインテーマが「サックス」という管楽器であるので、当然、魂を北宇治に囚われた人間は管楽器が主役と言われたらその描写を吹奏楽部のそれと比較してしまうのが成り行きというもの。天下の京都アニメーションが作り出したユーフォニアムやトランペット、フルートやオーボエの描写はそりゃぁすさまじいものだった。およそ人間業とは思えない精巧さで描かれる金属の輝きは、まさに青春のきらめきに通じるものがあり、演奏シーンでもそこに映り込む情景が印象的に使われたりもしている。確か作中では駅フェスで部長先輩がサックスを演奏するシーンもあったはずで、「日本一の楽器演奏シーン」は間違いなくあのアニメの中にあった。

 しかし、そんな王者の存在に待ったをかけたのが、この度NUTが生み出したBLUE GIANTの世界である。映像の効果処理で生み出された反射や光沢が印象的だったのが京アニ版の管楽器。それに対し、こちらのサックスは手描きによる光沢処理も非常に多く、さらに光沢はただの反射以上の意味を数多く与えられ、どちらかというと「嘘の輝き」を放つことの方が圧倒的に多い。ほんとのサックスはそんなふうに光らん、そこで発光するのはおかしい。そんな描写ばかりのこの作品の「光」は、単なる見えを超えて、魂の迸りを表現するためのツールとして使われる。陽光の下でキラリと輝く高校生の汗の結晶の如き「ユーフォ」の光沢、それに対するは、薄暗いライブハウスの中でギラリと輝き、文字通り「鈍色に光る」大の持つ野望の大きさ・あまりにわがままなジャズの精神を物語っている。光はさまざまに形を変え、一緒に演奏する仲間を、観客を、そして視聴者を魅了していく。演奏シーンの1コマ1コマに現れるエフェクトに酔いしれながら、常に張り詰めた音の海に飲まれていく。とにかく興奮と多幸感に溢れるひとときが味わえる。

 そうして演奏シーンが高まっていくのは何も映像・音楽の力だけではなく、やはりドラマ部分との二人三脚のおかげでもある。当ブログの熱心な読者ならおよそ予想はできるかもしれないが、作中で私が一番好きなキャラは玉田。最も号泣したシーンは玉田の涙ながらもドラムソロである。もう、ほんとにもう……あれはたまらんよ。まぁ、もちろんその後の雪祈が参加してのラストライブも号泣だし、雪祈で言えばフェスで披露された異次元のピアノソロも鳥肌ものではあるのだが。玉田はねぇ……本当いいやつだよね……。

 乱暴なまとめ方をすると、少なくともこの映画だけで言えばこの物語は「玉田と雪祈の物語」だったんですよ。2時間の枠でまとめた「東京編」の切り抜きだとしたらそれは当然で、途中、関係者からのビデオメッセージが挟まることからも「東京での1年半という奇跡の瞬間を切り出したもの」であることがわかる。実は途中で玉田本人がビデオメッセージに登場したところでびっくりしたのだが、あれは「終わった後の玉田」を登場させることによって、「この3人の時間は、間違いなく終わりを迎えたのだ」ということを視聴者に明確に伝えることによって、作品としてのまとまりを作り、世界を閉じるための一仕事だったのだ。そしてここで物語が終わるのであれば、それは「玉田の物語」だったことに他ならない(大のジャズは、この後も続いていくのだから)。漫画原作では大が主人公の物語なのかもしれないが、少なくとも2時間のアニメ映画の中で、中心にくるべきは玉田と雪祈。その2人の物語として、これ以上の形はない。

 普通に考えたらある程度尺の長い作品なのだから「テレビシリーズでやりましょう」になりそうなものだが、「音響を最大限に使える環境じゃないとダメ」ってんで色々切り捨ててアニメ映画にしてしまった製作陣の采配は本当にお見事だ。もちろんシリーズアニメにしてもそれなりに良いものは出来たかもしれないが、本作のエッセンスを全て注ぎ込むとしたら、もうこの形以外は考えられない。一瞬だからこそ特別な時間。これを観たら、もっとジャズを聴きたくなるし、知りたくなるのは間違いないです。今からでも間に合うなら、劇場に行ってください。

 

 

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