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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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  外道も道のうち、第10話。いつにも増して強烈な回になりました……

 今回は前半部と後半部に大きく分かれる構成になっているが、なんと言ってもインパクトが絶大だったのが前半部、秀吉と信長の深夜の「茶会」である。前回ラストで胴体真っ二つに切断された信長が、重力の力で見事下半身に着地。そのまま絶命を先延ばしにし、胆力でもって秀吉に一杯の茶を振る舞うことになる。あまりに漫画的な、あり得ないお話には違いないのだが、「あの信長なら、これくらいの最期は迎えそう」という有無を言わさぬ迫力があり、むしろ「信長が単に逆賊に討たれてのたれ死ぬだけのはずがない」という説得力がある。臣下に斬られたと知った次の一言が、「刀が安い」とは、最後の最期までかぶいた御仁だ。

 末期の茶会では、信長も少し心を許してしまったのか、自分が選択した未来の綻びについて、多少は後悔の念を漏らした。駄目だと分かっても仕方がなかった息子たちへの恩賞と、家臣の扱い。いつかは自分がこうなる日が来ることを予測しながらも、一人の人間として、他の選択肢を選ぶことが出来なかったという。しかし、次なる器は、同様の野心を持つ秀吉の手に託されることになるのだ。夢破れた最期の会席で、信長が一つも不満を言わず、むしろ清々しくすら見えたのは、次の世代を託すべき男が、目の前で自分に運命を突きつけたことへの安心感からかもしれない。子供達に次代を託す夢、血族の繋がりこそ途絶えたものの、最期に振る舞った一杯の茶は、まさに「血脈」を受け継がせるためのもの。あまりに奇妙な譲渡の儀式に、秀吉は一言の言葉もなく、黙って器を受け取り、噛みしめるようにしてそれを引き継いだ。「天主」として行われる移譲の席としてはあまりに小さく、あまりに暗い一場面ではあるが、「歌舞伎者」から「へうげもの」へと受け継がれる国の未来が、じっとりとした「黒」の中で伝わってくる名シーンといえるのではなかろうか。器を受け取る時の俯瞰シーンに現れた「天命」の描写や、倒れた信長と、立ち尽くす秀吉を分ける「明」と「暗」のコントラスト。実に画面映えするものである。

 そして後半パート。明智の謀反で蜂の巣を突いたような大騒ぎとなった京の都。織田の血筋は討ち果たされるも、首謀者であるはずの光秀自身は、姿が確認出来ない信長や、予想外に本能寺に積まれた爆薬の存在など、一切イニシアティブを取れずに右往左往しているイメージ。そんな混乱に乗じて、織田の中でもただ一人、長益だけはどさくさに紛れて逃げおおせてしまう。武人としての誇りなどより、よほど自分の方が大事。織田のかっとんだ血筋の中でも、また特別なはみ出し方をした愉快な男の逆転の一手だ。

 そして、似たような理由で、最終的に焼け落ちた本能寺にたどり着いたのが、我らが左介である。元々京に駆け付けたのは、単なる虫の報せ、純粋な信長への忠義心からだったはずなのだが、明智の動きを聞きつけた瞬間、頭の中には「信長は無事か!」の号令よりも「本能寺に集まった名品たちは無事か!」の不安が支配的に。「武人として」やらねばならぬことは山積みで、頭ではそれを知りつつも、身体は勝手に名品探し。全く同じメンタリティで火事場泥棒に勤しむ命知らずの長益を発見して諭そうとしてみるも、「同じ穴の狢」の一言であっさり心が折れてしまう。目の前の男が武士ではなくて「数寄者」であるなら、見せかけだけの仁義など邪魔になるだけだ。

 巡り巡った数寄への執念か、弥助の手を介して名品の一部は馬鹿2人の手に回ってきた。もう、このあたりのシーンになると二人とも信長のことなどすっかり忘れているようである。時代は移り変わっていくが、それ以前の時代からの物に囚われ続けている男共には、大した問題ではないのかもしれない。

 結局、この作品の中心は大河ドラマでも愛憎劇でもなく、あくまで「数寄」に魂を売った馬鹿どもの喜劇。決意の一太刀で信長を斬って捨てた秀吉ですら、ちゃんと本能寺で名品たちを集めることに余念がなかったのだ。「ワシが出てきて良かったわ」って、まさかそんなことのためにここまでの危険を冒すことになるとは……すげぇ連中だ。

 そして、これだけの大騒ぎを、まるでワイドショーでも見るかのように悠然と見守るのが、巨人・千利休。白装束を身にまとい、漆黒の茶器で茶をすする文化人の異形は、まさに暗躍する巨悪。本能寺に打ち上げられた自作の壮大な花火にしても、彼の目から見れば単なる「花々の間引き」程度でしかないのかもしれない。時代は成った。ここからは、数寄の世界だ。

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