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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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「UN−GO」 4→5

 今期最も判断に困るのが、この作品だ。何だか珍妙な味だ、と思っていたら、噛めば噛むほど味が出始めて、それが美味しいかというと、出てきた次の味も珍妙であるという、……つまり、珍味だ。

 1話目の感想についても、今見返すとまっとうなようでいてどこかピントがずれている。「坂口安吾なんて全然関係無いやん!」という突っ込みは当然のものだったと思うが、正直言ってそれは一切必要が無かった。「ミステリとして陳腐過ぎる」という批判についても、流石に熟練のスタッフ陣がそのあたりの懸念を持っていなかったはずもなく、数話観るうちに正直どうでも良くなった。何しろ、ミステリとして成立させるつもりなど無い作品だったのだから。そうなると、「ミステリのくせにキャラクターにギアス能力者を潜ませるのはおかしい」なんて指摘をしても、単なる道化である。制作スタッフには鬼の首を取ったように、「知ってるよ」と言われてしまいそうだ。

 では、こうして当初の批判が全て無に帰した後で、この作品に何が残ったのか。1つ目は、「雰囲気的にはミステリ物」という微妙なバックグラウンドを武器にした、何とも怪しげな人間関係。「捜査する側」「される側」という関係性ではなく、「創作する側」「される側」という構図は、作品内世界でもう1つの作品を生み出すという二重構造を産み出し、他の作品にはない独自の価値観を産み出すに至った。全てを変質させる「神」としての別天王の能力により、作中人物はもちろん、視聴者も「どこまでが作られたものなのか」を判断出来なくなり、「虚」と「実」の間を彷徨う不思議な感覚が体感出来る。主人公である結城新十郎はあくまでも「虚実を分ける」役割を任されており、因果の持つ能力も「真実を作り出す」能力だったために、「探偵」としては不適格だが、「番組の牽引役」としては正しい存在だったわけだ。

 そして、そんな不安定な世界だからこそ、奇妙な時代である「戦後」というパラレルワールドを、危ういながらも成立させることが出来た。普通の作品ならばもう少し世界背景の説明に筆を割きそうなものだが、この作品はほとんどそれが無く、いきなりボーカロイドが世界を席巻したり、AIが事件の容疑者となったり、無茶苦茶にもほどがある。しかし、この作品の場合、暴かれるべきは事件の真相ではなく、「世界の真相」そのものである。「創作される側」である敗戦探偵は、事件を解くといいながら、その実視聴者のために少しずつ世界を切り出していただけなのだ。そのために、彼は一度「創作」の中に取り込まれてしまうという大冒険にも出ているわけだ(7−8話)。

 なるほど、こうしてみるとこの作品の脚本は思いの外きちんとした信念を基に描かれていた。そして、この何とも怪しげな雰囲気が、きちんと成立したような気になるレベルにまで解題され、視聴後にはある程度の満足感も得られるものになった。オサレ作品を追究し続けるノイタミナ枠の実験作としては、今後も語り継がれる価値のある、異彩を放つ存在である。

 ただ、そこまで全てを理解しながらも、なおかついつの間にか劇場版まで視聴しながらも、それでもなお、「コレってそこまで面白かったのか……」というわだかまりが残っているのも事実。やっていることは面白い、結果も出ている。しかし、アニメとしてはもう1つ上のレベルも充分狙えたんじゃなかろうか。非常に感覚的な言い方になるが、コンセプトを活かすための作品作りとして、何だかやけに素っ気ない仕上がりになってしまっているような気がするのだ。脚本を追うために、画面が犠牲になっているような気がするのだ。本当に「面白く」見せる目的なら、もっとけれん味に溢れた、悪い言い方をすれば「媚びた」作り方もあったと思うのだが……スタッフは、そこまでのものを作らなかった。難解な世界観を、「こんなものを用意してみたんだけど」と、さらりと素材のままで持ってきた。うん、これはこれで悪くないのだが、せっかくのうま味が、やっぱり「珍味」になってしまう気がする。ひょっとしたら、まだ私には理解の及んでいない、何か隠された信念が、この「素っ気なさ」に隠れているのかもしれない。出来ることならば、もう1度見直して、作り手側の意図を探ってみたい作品だ。

 最後は中の人のことだが、今作は3人。1人は、とにかく驚きの連続だった因果役の豊崎愛生。通常だけでも2パターンの演じ分け、一度は3役にまで挑戦しており、「豊崎テンプレ」を打ち壊すだけの仕事を見せてくれた。ベストの音域ではないのでアラも目立つ部分はあったが、常に新しい仕事にチャレンジし続けるスピリットは充分に感じられる出来だったし、役者としての底の深さが確認出来る、記念碑的な作品になったと思う。そして、そんな先輩に追いつけ追い越せで頑張るのが、梨江役の山本希望。作中で唯一「普通の女の子」として描かれていたおかげでシンプルなキャラ造りにはなったが、きちんとニーズにこたえるだけの仕事を果たしていた。今作のヒロインは彼女だったと思います。そして最後は、結局ラストまで何が狙いなのかよく分からなかった謎の人物、海勝麟六役の三木眞一郞だ。あの曰く言い難い気持ち悪さ、得体の知れ無さ、これがズズッと心の内側に入り込んでくる感じ。ミキシンだなぁ。

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