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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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<以下の文章は、放送当時に執筆されたものである>
 
 
○第5話「うつせみ」
 脚本・高木登 絵コンテ・小滝礼 演出・小坂春女 作画監督・河南正昭
 


 <あらすじ>
 ゆずきが学校の廊下を歩いていると、たまたま教室から教材を持って出てきた生徒、片瀬利々香とぶつかってしまう。利々香の持っていたビーカーが割れ、立ち往生する2人。そんな様子をたまたま見ていた教師、新山美和は、以後気をつけるようにと注意するが、不慮の事故ということで2人を笑って許してくれた。「優しい先生で良かったね」と、2人は笑顔を交わす。新山は、怒った姿を生徒に見せることもほとんど無く、大人の女性として生徒からは人気がある人物だ。その夜、自宅で作業をしている新山のもとに、無言電話がかかってくるところから事件が始まる。
 
 あくる日新山が学校へ行くと、1人の来客があった。片瀬利々香の祖母、小枝子が、新山に謝罪を求めてきたのだ。彼女がいうには、孫の利々香は3年生の先輩がビーカーを割った責任を押し付けられ、教師に叱られたという。まったく事実と違う話に戸惑う新山だったが、有無を言わせぬ小枝子の態度に、教頭達は「教師としての責任ということで」と、とりあえず謝罪するように促す。渋々頭を下げると、小枝子はさも当然であるかのような横柄な態度で対応し、学校を後にする。他の教師達は新山に同情するそぶりを見せるが、口をつくのは「穏便に、穏便に」。
 
 新山は、すぐに利々香に事実関係を確認しに向かう。彼女が言うには、祖母は非常に思い込みの激しい性格らしい。自分の話がどこか間違って伝わってしまったのだろうと言う。もう一度小枝子には正しく説明してもらうよう、新山は利々香に念を押す。しかし、その夜も再び新山の家に電話がかかる。小枝子は新山が不良教師だと決めつけて責め立てる。「自分が潔白であることを証言しろ」と孫を脅迫したというのだ。またしてもあらぬ誤解である。勝手な思い込みで迷惑な電話をされた新山は、必死で怒りを抑えながらも、憤懣やるかたない様子で受話器を叩き付ける。
 
 次の日、当然のように職員室には小枝子からのたびたびの電話。あげく小枝子は校門の前で「横暴な教師を許すな」のビラを撒き始め、他の教師達の言葉も身内同士の隠蔽体質だろうと聞く耳を持たない。生徒達もそんな教師たちや新山に同情のまなざしを送るが、「先生だから仕方無いか」と諦めた様子。
 
 自宅ポストへの大量のビラ、そして自宅玄関へのビラのはりつけと、小枝子の抗議活動はエスカレートするばかり。怒りに耐えかねた新山は一度はパソコンを開いて地獄通信にアクセスするが、その場は何とかマシンを閉じてことなきを得る。ただ、その様子はあいの目を通じてゆずきにも伝わっていた。
 
 小枝子は、過去に利々香の小学校時代にも問題を起こした要注意人物だった。職員会議ではこの問題については小枝子の方に問題があるとし、新山はただひたすら嵐が過ぎるのを待つように、という結論に至る。教師達は全員新山の味方だというが、彼女にとって、事なかれを謳うだけの同僚達は味方でも何でもない。思い詰めた表情の新山のもとに、ゆずきが相談に訪れる。
 
 「教師って、いつからこんな職業になったんだろう」。不安そうなゆずきに自分の悩みを吐露する新山。「間違っていると分かっていても頭を下げなきゃいけない生活。理想の教育を目指していたのに、どこにいても現実は現実」。新山は、ある種の諦観に達していた。しかし、ゆずきが心配そうに相談にきてくれたことで、自分本位な人間ばかりでないことに気付かされ、少し救われたと言う。新山は笑顔で立ち去るが、ゆずきはその背中を不安そうに見送ることしか出来ない。
 
 そして、その夜新山は再びの面会に挑むべく、片瀬家を訪問する。彼女を招き入れたのは祖母の言いつけで自宅に引き込んでいた利々香。古めかしい調度の並ぶ居間では、利々香が「おばあちゃんはあんなだけど、本当はいい人なの」と新山に説いて聞かせる。どんなに問題があっても孫にとっては大切な祖母。複雑な心境ながらも、新山はそんな生徒の様子に笑顔を向ける。
 
 そこに、小枝子が帰宅する。自宅に上がり込んだ新山に激昂する小枝子。すぐに出て行くように叫ぶが、新山も話を聞いてくれるようにすがる。間に立っていた利々香は、小枝子の胸に顔を埋めてじっと黙っている。「今度は何を言われたの」。小枝子の問いに、利々香は少し迷った後に、口を開いた。「先生が、おばあちゃんを黙らせないと、また嫌がらせをするって」。
 
 生徒の言葉に二の句が継げない新山。再度出て行くように言われては、大人しく引き下がるしかない。家を出た新山の後を、慌てて利々香が追いかけてくる。「ごめんなさい。ああでも言わないと、おばあちゃんは納得してくれないから」。生徒の言葉にショックを受ける新山だったが、「あなたの嘘で困っている先生はどうなるの?」と問いつめる。しかし、利々香は笑みを浮かべ、「先生は先生だし、大人だから平気でしょう」。
 
 その夜、新山は改めて地獄通信にアクセスする。夕暮れの岡で藁人形を受け取ると、あいの説明もそこそこに糸を解く。「教師だからって、ないがしろにされるのは疲れた」と。「みんながあたしを教師だ教師だと追い詰めるなら、教師として復讐したい。教師が責任を持たなければいけないのは、保護者じゃなくて……」。
 
 居間でうとうとしていた小枝子は、膝の上で寝ていた利々香がいないことに気付く。地獄流しが、静かに、確実に行われたのだ。
 
 翌日、改めて片瀬家の前を過ぎる新山。片瀬家の窓辺には、魂を抜かれたような小枝子が立ち尽くしている。そこですれ違ったゆずきは、新山の胸に刻まれた刻印の意味を全て知っている。不安げに見詰めるゆずきに、新山は「教師として」穏やかな笑みで返すのだった。
 
 
 <解説>
 
 個人的には、視聴に際して大きな転機となったエピソードである。どうにも簡潔にまとめることが出来なくてあらすじからはまったく伝わって来ないのだが、この「三鼎」が始まって5話目にして、ようやく、2期全盛期に味わったあのゾクゾクする感じが帰ってきた。視聴後に体中が弛緩するような感覚に満足しながら流れたエンディングクレジットは、まさか、というかやはり、というか、コンテに小滝礼の名前があった。2期の「絆(7話)」や「あのひとの記録(18話)」など、非常に印象的なコンテを見せてくれたあの演出家が、3期になってもきっちり期待に答えてくれた。ほんと、私の感性にどんぴしゃりの小憎らしいコンテを切ってくれる人である。
 
 序盤は、要所要所を除けば非常に平坦にストーリーが進む。主人公である教師新山の人物像が生徒の評判や職員室での対応から次第に描かれていき、すぐに表のモチーフである「モンスターペアレント」という題材が現れてくる。学校に乗り込んでがなり立てる小枝子とのやり取りや、それを回りから見ている教師達の様子など、理不尽の固まりであるこの社会問題の縮図として非常に分かりやすく、言い換えれば安直な形で提示される。「学校に文句を言う」→「夜中に苦情の電話をかける」→「学校前でビラを撒く」→「自宅にビラで嫌がらせをする」という小枝子の抗議活動のエスカレートっぷりも分かりやすく、いかに冷静な新山でも、振り回されることで疲れとストレスが溜まっていくのが分かる。もちろん、そうした新山の変化も、職員会議の場や自宅でパソコンを開いて思い詰める様子など、言外ではなくてきちんと表示してくれるのも親切。ここまでの「表の」事件像は、実に明確だ。
 
 新山がパソコンを開いたことによって、ゆずきが新山の苦悩を知ることになる(以前もそうだったが、実際に依頼を送らずとも、地獄通信にアクセスした段階であい達はその事実を知ることが出来る。ゆずきの「視界」もアクセス段階から機能しているということだ。そういえば、以前はあいの自宅のパソコンで作業を行っていたようだが、今はどうやってログをとっているのだろうか)。それまでの流れからしたら一気に地獄通信になだれ込んでしまいそうな新山の心情を、ここで一度ゆずきが止める。これまでのエピソードでもそうだが、ゆずきはあまり積極的な性格ではないので、たとえ地獄通信にアクセスしたことを知っても、これまでのシリーズの柴田一や紅林拓真のように直接依頼人に思いとどまるように嘆願することはない。あくまで、さりげなく悩みを取り払おうとするだけである。まぁ、地獄少女との視界の共有など誰も信じてはくれないだろうから、これが彼女なりの最大限の努力なのだろうが。とりあえず、そう言う意味では今回のゆずきの努力は成就する。新山はどんどんネガティブな方向に向かっていた自分の思考を何とか立て直し、改めて小枝子との対峙に挑む。
 
 そして、ここからが今回のエピソードの真骨頂である。片瀬家を訪れた新山を出迎えるのは利々香であるが、外から見た片瀬家は、外門も立派で古めかしく、居間の広さだけを見ても相当大きな建物であることが分かる。玄関には多数の招き猫、居間の調度も達磨大師の巨大な水墨画や大量の招き猫など、あまりに古風で、決して趣味がいいとは言えない内装。ここで利々香が申し訳なさそう「祖母も本当はいい人なのだ」という旨を語っているのを見ると、視聴者に与える最大のイメージは、「祖母小枝子の影響力の強さ」である。屋敷も、部屋も、そして孫さえも、全ては小枝子の力によって統治されている。完全なる「外敵」としての小枝子像が、ここまでのエピソードとの相乗効果もあり、次第に募って行く。何しろ視聴者は全員「最終的に地獄流しが行われる」ことを知りながら番組を見ているわけで、この絶対的な「小枝子の王国」で、新山が一体どのような仕打ちに合うのかと、そこに気をつけながら見る。しかし、実際に新山に降り掛かるのは、そんな「権力者」としての小枝子の横暴ではなく、まったく予想外の、「良い生徒」であったはずの利々香の裏切り。利々香が小枝子に抱かれながら漏らすたった一言が、一瞬にして世界を反転させる。
 
 さらに、失意のうちに呆然と家を出る新山に、利々香がとどめをさしに来る。それが、「先生は先生だし、大人だから」という一言。利々香の表情はそれまでとまったく同じ穏やかな笑みでしかないのだが、そこに意味されるものは、これまでのシーンとはまったく違う。「横暴な祖母の支配下にある気の小さな女の子」のそれではなく、「自分の幸せのために、他人に『教師であること』を押し付ける幼稚な子」の残虐さである。実はこれとまったく同じ台詞が前のシーンでも別な生徒(ゆずきの友達の1人)の口から発せられている。「少女の思考」が実際どのように動いていたのかということについては、伏線として働いていたわけだ。
 
 そして地獄流しのシーン。夕暮れの岡にいるうちに糸を解くというのも珍しいシーンであるが、このエピソードでは、なんと地獄コントも地獄流しの船も描かれない。ただ、小枝子の腕の中にあったはずの利々香がフッといなくなるだけである。いなくなる瞬間も明確に描かれるわけではない。「教師が責任を持たなければいけないのは、保護者でなく生徒よ」という悲痛な台詞があるおかげで、何が起こったのかは嫌という程伝わってくるわけだが、実際にその「責任を取った結果の部分」がまったく描かれない。その後に描写されるのはいくらか俯瞰気味に片瀬家の居間を写したカットと、新山が自宅で崩れ落ちるカットのみ。一気に膨れ上がった「教師であること」への恨みを表すのには、これだけでも充分過ぎる演出である。序盤に展開した下地の執拗なまでの「描写」と、このクライマックスのまったくといっていい「描写の放棄」のバランスが、いっそうの虚無感をもたらしてくれる。この短い時間での緊迫感は、生半な技術で表現出来るものではない。演出を務めた小坂春女も、最近は気になる人材だったり。
 
 これ以上褒めるとひいきの引き倒しみたいになりそうなので、残りの部分の補足をしておく。今回はメインのエピソードに寄った作りになっているので回りで確認すべき事象は少ない。四藁達もせいぜい、モンスターペアレントを評して「俺達にモンスター呼ばわりされるようじゃ人間もおしまいだな」と冗談を飛ばしたくらい。あぁ、あと一目蓮は最初に単に「気になるから」という理由で片瀬利々香の様子を覗き見てました。エロメダマめ。
 
 今回のキャストは、依頼人となった教師の新山役に小林沙苗。何と彼女、2期の「陽のあたる場所(6話)」でも地獄流しを行う依頼人役で登場している。まぁ、あのエピソードは途中で依頼人が変わる変則エピソードだったので台詞はさほど多くなかったのだが、めでたく、シリーズ初の「2度の地獄流しを依頼した声優」の称号を手に入れた。そして問題児だった片瀬利々香役には妄想特急、矢作紗友里。彼女は声に特徴がある割には役に入り込める役者。今年1年ですっかりファンになってしまった。モンスターペアレント小枝子役の峰あつ子さんという人は寡聞にして存じ上げなかった。「プロゴルファー猿」の大丸役など、って言われても流石に無理だわ。

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