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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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 張り詰める緊張感、第9話。ついに訪れた分水嶺、オーディション回である。

 前回のインパクトがあまりに強かったために、つい今回の話数を見る前に8話を見直してから導入したのであるが、続けて見るとやっぱり明らかに演出意図が異なっているのが見て取れるのが面白い。8話のあの情感は、出そうと思って簡単に出せるものではなく、今回描かれたような「シナリオ」部分とはまた違った重みを与えるものになっていた。もちろん、だからといって今回が軽いということでは決して無い。今回描くべきは久美子がはっきりと口にしていた通りに、「先輩と戦う」「仲間と戦う」という覚悟のお話である。

 前回のラストが「オーディションを始めます」だったので、すぐにオーディションに入るものかと思ったが、その前に恋愛関係の諸々の処理から。葉月は本当に良い娘であり、塚本に振られたコトについて、引きずっていないわけではないのだが、それを回りに投げかけるようなことはしない。緑輝は随分気にしていたわけだが、これも作中で言われていた通り、彼女が「勝手に」気にしていたことであって、葉月の本意ではないものだ。前回あれだけうざい絡み方をしておきながら、ここに来て勝手に反省するというのは、やっぱり子供っぽくて面倒なメンタリティである。いいか悪いかで分類するなら、明らかに緑輝は「悪い」立ち位置なんだけどな。

 「悪い」というなら、ここでの久美子のスタンスも非常に興味深いものである。高坂さんには何度も「性格が悪い」と指摘されていた通り、この期に及んで恋愛関係に対する彼女のスタンスは煮え切らないというか、これこそが「黄前流」の真骨頂とも言える事なかれなぬるま湯反応に終始している。塚本と葉月が対話したこと、それによって葉月が傷ついたこと、その一因として(久美子自身に責任は無いとはいえ)久美子が関わっていること。察しの良い彼女ならばその全てを見通せているはずなのに、葉月や緑輝に対する態度は我関せずである。この辺りの対人関係構築こそが、高坂麗奈のいう「性格の悪さ」なのであろう。葉月に指摘された時には半ば本気で塚本との関係性を否定しているわけだが、それ以降の反応を見れば、彼女の本心は明らかである。まぁ、これまた葉月のいう通りに「こっちも無自覚系」なのだろうけれども、愚かなことは時として罪であることを、久美子はもっと自覚的になるべきだろう。

 そして、この恋愛騒動の副産物として、「激怒する副部長」という恐ろしいものを見ることが出来たのもある意味で収穫だった。彼女の人ならざる神経はこれまで幾度か取り沙汰されてきたが、今回の「怒り」はその真骨頂とでもいうべきもの。久美子もなかなかに「性格が悪い」ので恋愛話に「知らぬ振り」を貫くが、副部長に至っては「知らぬ」ではなくて「要らぬ」なのである。そして、久美子のように表面上波風を立てないように努力するのではなく、一切他人の心理状態に関与しない。ひょっとしたらこの作品、田中あすかという存在こそが、最悪にしてラスボスなのではないか、という気もしてきた。最終的に彼女の落としどころはどういうポジションになるのだろうか。

 葉月の気持ちはほろ苦いものを抱えながらも何とか解決。彼女が「さっぱりと諦めた」わけではないことは、塚本が食べていたパンをすぐに貪っていたことなどからも窺えるわけだが、あくまで彼女の中では「終わった」問題。残された問題はオーディションの話だけである。ここで行われる選別は、ある意味、予想通りの消化試合である。下馬評で通ると言われていた人は大体通るわけだし、葉月が落ちることだって当然の結果。高坂さんが先輩からソロを強奪することも、これまでの流れからほぼ確実なことである。つまり、分水嶺の話数とはいえ、その流れ行く方向はあらかた想定内だったわけだ。その上で、オーディションシーンに連なる一連の流れが緊張感を維持し続けられたのは、唯一の不確定要素であった中川先輩の存在があったからこそだろう。

 これまで私もお気に入りでずっと追いかけてきた中川先輩。登場直後は吹部の「不真面目」の象徴的人物として窓際を占拠し、そのまま葵ちゃんと同じようにフェードアウトするのかと思いきや、まさかの一念発起で「再始動する吹部」の象徴的存在となった。それまでの気だるげな表情から、一転して過去の罪を悔い改め努力に輝くその笑顔は、「今までサボってたくせに」なんていう(正当な)文句を吹き飛ばすには充分なものであった。まるで彼女の輝きが現在の吹部の輝きそのものであるかのように、眩しく感じられたものである(ひいき目で)。

 しかし、現実は非常である。残念ながら「怪物」田中あすかや、年季の違う久美子と戦うには復帰が遅すぎたようで、中川先輩はオーディションという壁を乗り越えることが出来なかった。彼女の物語の上での存在意義は、ここで途切れることになる。「久美子が蹴落とした捨て石」「踏み台」としての、あまりに尊い犠牲である。これまで何をするにも本気になれなかった久美子は、今後中川先輩の生霊を背負って戦わなければならない。彼女の努力を、彼女の想いを知っているからこそ、久美子はもう逃げられない。もちろん、別に中川先輩がおらずとも「オーディションに落ちた部員」はたくさんいるのだから、久美子が頑張らなければいけないことにかわりはないのだが、はっきりと「捨て石」として提示された彼女の存在は、ドラマに大きく打ち込まれたあからさまな楔となる(葉月ではその任を担うには不充分である)。これで本番に臨むユーフォ奏者は僅かに2人だけになってしまったのだ。久美子は、恋愛に、そして演奏に、どちらにも「本気」を迫られた人生のターニングポイントになったわけだ。何という青春模様だろうか。

 そして、こんなターニングポイントを生み出してしまったのは、当然あの高坂麗奈ということになる。久美子が「変わった」のは麗奈との夜があったからこそ。それは本人も言っているのだから間違いない。全部が全部ではなかろうが、久美子は麗奈の訴える「特別存在への昇華」に共感してしまった。トランペットを吹くことで「脱却すること」を望む麗奈の世界を、美しいと思ってしまった。だからこそ、彼女は本気の中川先輩の練習風景を見ても、そこで折れずに前を向くことが出来たのである。既に2人だけの世界を構築できる関係になった怪しげな「友達」どうし。今後はソロ担当の麗奈にどんな試練が待ち受けるのか定かではないが、彼女の苦境は久美子にも苦境。3年生という大きな壁をぶち破らなければならないのは久美子も一緒なのである。「愛の力」で、吹き飛ばすことが出来るだろうか。

 ……それにしても、的確に久美子が精神的にダウナー状態にあるタイミングを察知してやってくる麗奈さんは凄まじいサイコオーラを感じる。ほっぺたをぎゅ〜っと押さえるシーンは一見すればギャグだが、足下のみを映したカットなんかの含意は明らかだ。精神的な感応が必要以上にエロい。そんな素敵な百合アニメです。

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