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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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  鬼のような作品であった。脚本家泣かせで監督泣かせで、アニメーター泣かせで、そして視聴者泣かせ。ここまで身を切る覚悟が無ければ完成を見ないアニメ原作というのも、希有な存在である。

 個々のエピソードについてはくどいほどに各回の感想で書いているので総論のみになるが、終わってみればかなり楽しめた作品であったのは間違いない。キワモノ作品にありがちな「特異な演出だけは見応えがあった」とか、私の感想にありがちな「中の人の声だけ聞いてれば幸せだった」とか、そうした一面的な価値ではなく、きちんと総合技術としての「アニメーション」としての完成度が高い、見どころの多い作品であったと思う。

 この作品をアニメ化するにあたって、最も苦労したのはシリーズ構成・脚本を組み立てる人々であろう。月一の1時間枠というのは、普通のアニメシナリオになれてしまった熟達者であればあるほどに異質に見えたであろうし、30分という枠に慣れてしまった視聴者にとっても、1時間の「長丁場」をダレることなく見続けられる脚本の線など分かるはずもない。そんな中で、「原作本まるまる1冊分」からアニメ脚本を再構築する作業は、並大抵の苦労ではなかったはずだ。当初は「月一で発売されてた本を月一のアニメにすればいいんだから楽じゃない?」とか考えたりしたのだが、この作品は残念ながら、西尾維新の作品なのだ。通り一遍の技術でアニメになるはずがないのである。シリーズ構成の上江洲誠氏を始め、脚本を担当した待田堂子氏、長津晴子氏にはとにかくお疲れ様と言わねばなるまい。

 その上で、脚本をどのようにアニメに落とし込んでいくか、という部分は、実にチャレンジングな物作りが試みられている。最も顕著だったのは田中基樹の手による第7話だったと思うが、それ以外にも小松田大全や小林智樹など、多芸な演出家たちの手によって「台詞アニメ」であったこの作品に艶と味が付け加えられ、毎回異なった楽しみ方が出来た。もちろん、統率者としての元永慶太郎監督は言わずもがな。画面の質についてはあまり触れられる機会のない作品ではあったが、癖の強いイラストレーションを毎回安定した質で提供してくれたWHITE FOXの1年のがんばりにも賛美を送りたい。とにかく、スタッフの実力と、愛に恵まれた作品であった。

 1ヶ月ごとに1時間枠で1本、というスタイルは色々な事情と思惑があって実現したスタイルではあると思うが、その試みは充分成功していたと見ていいだろう。ステロタイプな王道パターンを心得ながらも常に捻くれる西尾維新の作品そのものが、「区切らずに1話を1本で」やる前提のスタイルになっており、その意志を十全に再現するには、この方法しかあり得なかった。時間的な余裕もあって質が落ちなかった部分もあるだろうし、今後のアニメ放送のスタイルサンプルとしては興味深いものだ。昨今は、WEB配信などの様々な形態が模索されるアニメ業界の過渡期とも言える時代。その1つの先例として、悪くない結果を出したのではなかろうか。放送本数や放送時期など、財政的な問題で不必要な労苦が多いアニメ業界において、「無理を減らして作品の本質を掘り下げられるスタイル」というのはそれだけで価値があった。なかなかこれに追従することは難しいと思うが、今後もこうした「既存のスタイルに縛られない」作品作りに期待したい。

 少し作品内部のことにも触れておくと、「一月に1本の刀を手に入れるために、一月に一人の敵キャラを倒す」というシンプルな構成のおかげで、各々のエピソードに魅力的なキャラクターを丁寧に配することが出来たのが根源的な強み。刀の所有者であげると、2話で登場した宇練銀閣と10話で登場した彼我木輪廻が印象深い。全てのキャラクターが、ちゃんと「七花の成長物語」という大きな縦のラインにちゃんと絡んでいるという構成も心得たものである。全てのキャラが愛らしかった真庭忍軍の中でも、初登場でインパクト絶大だった蝙蝠は最高の敵キャラだったし、人鳥と鳳凰は最後まで作品を盛り上げてくれた名バイプレイヤー。そして、メインキャラクターである七花・とがめ・否定姫・右衛門左衛門。七花は最初「あんまり魅力的じゃないなぁ」と思っていたのだが、とがめとの相乗効果からか、終わってみればなかなか味のある「主人公キャラ」に成長していた。個人的にお気に入りだった否定姫も、ぶれない生き様が実に魅力的。こういう阿漕なキャラを作らせると、悔しいけど西尾維新のセンスってのは妙に刺さる。そして、そんなキャラクターたちの中でも一番のお気に入りは鑢七実である。男の子はね、やっぱり最強キャラには無条件で惚れるもんなんですよ。

 当然、キャラが盛り上がったということは、私の視点は「中の人大フィーバー」ということ。本当に毎回名前を挙げているのでよく飽きないものだと我ながら感心するが、戸松遥、田村ゆかり、小山力也に置鮎龍太郎。こんな異様な世界の中で、よくもまぁ、活き活きと動いてくれたものです。でもMVPはやっぱり中原麻衣のもの。次点は……インパクト重視で鈴木千尋かな。ちーくんは本当にお気に入りなんですよ。

 のんびりと1年間付き合ってきた全国行脚の12話分。終わってしまうのはとても寂しいが、長丁場で引っ張っただけの意味は充分にあったし、期待以上に楽しませてもらいました。是非とも、このスタッフでまたこうしたチャレンジングな作品が見たいものです。

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