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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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 語る言葉が見あたらない、第11話。なんかもうね、最終的に出てくるのは「綺麗だなぁ」っていうすごくアホみたいな言葉になってしまう。本当に色んなところで見映えが良くて、端正で、それがつまり「綺麗」。ギブミー表現力。

 今回がラス前ってことで、これまでモザイクのように組み上げられてきた全ての要素がどんどん透けて、見通しが良くなっていく。もうここまで来れば意外なことはほとんど無く、収まるべきところに収まっていく。そして、それが全て「今まで見てきた景色」に色をつけていくおかげで、単なる説明以上のカタルシスになる。わずか12話のお話で展開されるイクニ作品なんてどうなってしまうんやと冷や冷やしていたが、この尺だからこそ組み上がる絵っていうのもあるものでね。正直、濃厚なイクニファンにとってはこういう「端正さ」っていうのがどう映っているのかは気になるところなんだけど、私みたいに必死に1クールを追いかけている人間からすると、非常に助かるし、「こんな形もできるもんやなぁ」と感心し通しである。

 シナリオラインとして今回付加された「カイソウ」は銀子の「あの日の真実」。「ともだちの扉」を開けて出会った銀子と紅羽は、あの雪原で単に「銀子が救われた」だけではなかった。気付けば幼い紅羽は銀子を背負って歩くこともままならなくなっており、結局どっちがどっちを助けたのか分からないような状態に。あんな窮地だったからこそ生まれたのが「本当の好き」なのだろうし、その状況を知っていたからこそ澪愛も2人の間に本当の好きを見出すことが出来たのだろう。しかし、そんな2人の間にもやはり透明な嵐が吹き荒れる。今更になって、最初の最初に疑問に思ったこの作品タイトルの意味がはっきりと分かる。「ユリと熊が出会って嵐が起こる」。なるほど、まさに今回展開されていた回想シーンの通りである。銀子が雪原に倒れた「熊の社会」に、まず「排除」があった。「足手まといは排除しましょう」「排除だ」「排除だ」、そう言われて銀子は死を覚悟した。そして救われて移り住んだヒトの世界、今度は救ってくれた友人が自分のせいで排除される。足手まといでもなく、群れになんの危害も加えていないはずの紅羽が、「銀子が熊である」という理由だけで嵐を引き起こし、排除されてしまう。

 この「排除」のシーンも非常に刺激的な画面になっており、文字通りに「突き上げをくらった」紅羽は、一体何をされたものなのか、ボロボロの状態で地面に横たわることになる。これ以上無い形で自己承認を否定された銀子は、熊にも排除され、ヒトにも排除されたという事実をどんな気持ちで見ていたのだろうか。はっきりと異なっているのは、ヒトと熊は排除に全く別な意味を持たせているということだろう。熊の排除は「名付けの排除」。クマカロンたちによって「ヒトリカブト」と名付けられた銀子は、個として認識されながらも「足手まといになった」ために排除された、翻って、ヒトの世界では排除を行う個人の顔さえろくに見えない状態。透明な嵐によって突き上げられた紅羽は、顔の見えない力によって名を奪われる。彼女はあくまで「悪」でしかないのである。こうして苦汁をなめさせられた幼い銀子は、「自分がヒトであれば、透明にならずに済むものを」というシンプルな気持ちから断絶のコートに初めて立つことに。いつも通りの承認を経て、彼女は一度「好き」を手放す。ここで分かる新しい事実は、澪愛が彼女のペンダントを銀子に与えた理由だろうか。以前のエピソードでは「ユリーカとの大事な思い出をそんなに簡単に手放すのは何故?」と疑問に思ったものだが、澪愛から見れば、紅羽は何らかの外的理由で銀子との記憶を消されるという異常事態に陥っていたわけだ。このような異例の事態を打開するために、彼女は自分の「好き」の象徴である、2人を繋ぐ鍵を銀子に託すことで、娘たちの幸せを願ったのであろう。

 こうして熊の世界に戻った銀子だったが、既に扉を隔てた向こうの世界を経験した彼女は異物にしかならず、もとより入れるはずもなかった熊の世界から追い出され、ひたすらクマリア様からの神託を待つ。その途中でるるとの運命の出会いを果たし、彼女は「本当の好きを求める」傍らで、るるから無償の「好き」を受け取り続けていたという。これまで中心的だった「銀子と紅羽」の物語に、改めて「銀子とるる」の物語が浮き上がってくる。銀子はるるに対し、はっきりと「最初から本当の友達だった」と断言している。言い換えれば、既にるるとの間に「本当の好き」が存在していたということでもある。思えば何とも数奇なもので、るるはかつてみるんという最愛の弟から「無償の好き」を提供され続けたにも関わらず、結局それを受け入れることが出来なかった。そんなるるが今度は銀子に向けて無償の「好き」を提供し続けるものの、現状ではまだそれは形を成さない。更に銀子は紅羽に向けて全身全霊をかけて「好き」を訴えているのである。この一方向性はどうにも揺るがない。「るるは本当の友達だった」と銀子が述懐した直後にアイキャッチが入るわけだが、彼女達の持つその「好き」の一方向性は、「愛の弾丸(LOVE BULLET)」として形容されるものである。

 現在の銀子は、「欲望」であると語る自己に内在する感情、百合園蜜子によって走り続けている状態だった。何度も挫けた彼女の人生、あまりの苦境に挫けそうになり、いつの間にやら「好き」が理をこえ情をこえ、本能にまで行き着いた。狩るものと狩られるもの、熊とヒトとの戦いはここに極まり、熊は嵐と戦い続けるが、嵐とヒトも激しくぶつかる。既に「嵐」の頂点へと達した大木蝶子。今回彼女はあまりにもはっきりと彼女たちの真実を語っている。「この世界に神様なんていない。透明な空気だけが世界を支配する」。結局「嵐」とはそういうものなのか。上も下もなく、支配といえばそれは「空気」なのだと。個が失われ、世界が透明になることこそが、ヒトの生きる世界なのだと。絵本を破り捨て、神の存在、好きの存在を真正面から否定する蝶子。前回までは殺熊光線のためにサイボーグ熊を使っていたわけだが、今回ついにサイボーグ熊のこのみさんも力尽き、ヒトはヒトの力のみ、その猟銃で決戦に挑む。

 対抗する熊は何を持って勝負するか。百合園蜜子は「欲望」を振りかざす熊の化身であったが、最終決戦の地へ向かう銀子は、「本当の好き」に辿り付くために、そんな蜜子を振り払い、道を違えた。自分の中の「欲望」との決別、つまりは自分との対面。やはり、月と森を隔てる鏡に映っているのは自分自身だった。千に砕き、万に引き裂くことが、2人を遮る最後の「壁」を超える手段。銀子はついに、紅羽の下へと辿り付いた。最後の「好き」をためされるその場で、どうやらこれが最後の試練だろう、ヒトからの狙撃と、熊による自己犠牲。るるは、弟のみるんがかつてそうしたように、本当の好きを与え続けた相手のために、ためらいなくその身を捧げるのである。

 今回どうにも言葉にならなかったのが2つの「綺麗」。1つは銀子と蜜子の対話だ。自己の内部との対話、なんていうととても陳腐な印象もあるのだが、蜜子はあくまでも蜜子であり、「銀子のクマ性」とかいう単純な存在には還元されない。その証拠に、彼女は退場する際にその象徴である腕章を残している。彼女が単なる銀子の野生の体現であるなら、あそこで腕章はいらないはずだ。蜜子という別個の存在を銀子の内部に取り込んで対話させることで、銀子の孕んでいた問題をものすごく端的に、非常に少ないシーンで全て語ってしまっている。この複層構造がこんなにサラリと組み込まれているというのが既に驚きだし、構造がちゃんと「百合」に還元されて一歩も世界観からはみ出ないようになっているのがすごい。

 そしてもう1つの「綺麗」はやはりラストの銀子とるるの対話だろう。るるの登場に際し、ちゃんとその前に蝶子がLINEで「ともだちの扉が開いている」という情報を受け取っているあたりに如才なさを感じるのはもちろんのことだが、ここに来ていきなりド直球で描かれる「別離」は、ここまでのお話で「死」がどんどん象徴的なものになっていたこととのギャップのために、何とも不可思議なインパクトがある。るるが銀子に与え続ける無償の愛、それは理屈では説明されないある種理不尽なものであるのだが、このシーン1つでそんな疑問が指し挟まる余地は無い。何しろ、「るる、かしこ〜い」のだから。彼女が集めて来た「好きの未来」の存在も、この物語に結末を刻むための重要なパーツとなるだろう。ヒトが否定した未来を、熊が再構築して希望を与える。この状態になって、その渦中にある紅羽はどのような決断を下すのだろう。どのように嵐と向き合うのだろう。

 シャバダドゥ。

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