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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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 最強執事伝説松田更新、第11話。まさかの死出の旅路にまで付き従ってくれるとは。今作最強の下馬評は伊達じゃない。

 茶化してみたが、今回は茶化すことが出来る貴重な回ということである。まさかの死後の世界でまるまる1話。ぽっくり逝ってしまった菊さんが、「その後」どんな末期を迎えたかを懇切丁寧に描いている。一体どのように死んだのか、周りの人間は彼の死にどんな風に接したのか、そうした現世の情報はほとんど無く、一部信さんに語られたのみである。おそらく、現実世界では小夏や与太郎を中心に上を下への大騒ぎになっていたと思うのだが、そんなこたぁ死んだ当人には関係無い。あくまでも「仕事終わりの一杯」的な感覚で、余生ならぬ「余死」を楽しむだけのお話。下手にわちゃわちゃした現世のしがらみを感じさせず、心のつながった3人だけでの時間が流れることで彼の死が、即ち彼の生き様が充分に幸せなものだったことが伝わってくる。今回のお話はあくまでも死後の世界という仮想を描いたものであり、菊さんの独りよがりな妄想であるという考え方も出来るのだが、流石に本作でそれは野暮というものだろう。死後の世界は(変な言い方だが)実在し、今回の一件、菊さんも、信さんも、みよ吉も、全員「あるもの」として認識していると考えるべきだろう。

 死んでしまったことはさほど驚くこともなく受け入れられる菊さん。まぁ、歳も歳だし、何度か入退院を繰り返していた身。あれだけ「死にたくない」と未練にすがってはみたものの、心の準備はある程度出来ている。そこへ迎えにきたのが「死神」として幾度となく任を果たしてきた信さんだったのだから、まぁ、その時点で気持ちの整理も出来ていたのだろう。むしろ、ここに来て死神の影響を受けない純正の朋友と再会出来たことを喜ぶべきところだ。享年によって外見に差があった二人だが、ミラクルパワーで一気にショタ状態に戻る。そういや菊さんって若いころからずっとステッキ使ってたんだっけね。縁日風の道行き(変なの)では2人の仲の良さを見せつけ、演じてみせるは「初天神」である。このあたりの息の合い方はまさに親友といったところか。銭湯に出向くと今度は青年バージョンに格上げされ、信さんはあの時の腹の傷を見せつけるというなかなかに意地の悪い趣向。ただ、菊さんはこれに凹むかと思われたが、割としれっとたしなめていてそこまで大ごとにしていない。この辺りの描写で、「あぁ、死後の世界は現世のしがらみが全部剥がれ落ちた清い世界なのだな」ということが分かる。みよ吉たちも「死んだ後まで○○してもしょうがない」というロジックを多用しており、ここでは生前に抱えていたドロドロが全て抜け落ちている。まさに、菊さんからしてみれば「極楽」みたいなものだろう。菊さんが数十年も抱えて、守り続けたものが、たった1度の銭湯でユルユルと溶け出していくかのようである。

 そしてついに、みよ吉との再会を果たす。彼女もすっかり憑き物が落ちた状態で、助六との三角関係もどこ吹く風。まるで小娘のように「菊さんは顔が好み」と笑ってみせるし、菊さんを前にして旦那の悪口を言ったかと思えば、ちゃんと「あの人は優しいンだ」と2人の関係性も示してくれる。こんな関係性が生前に構築出来ていれば、と思わなくはないが、これも「死んでから考えてもせんないこと」である。とにかくみよ吉はこの世界で救われているし、それを見た菊さんも報われている。それが分かるだけでも充分だ。

 そしていよいよ満を持しての寄席入りである。「燃やしちまったからこっちに来たんだ」とか、昭和の大名人が大挙している様子は笑ってしまうが、まぁ、その辺は「菊さんの思うあの世」だから勘弁しましょう。こんな寄席があったら、そりゃぁ連日超満員だろうにね。さっき死んだ八雲の名前もばっちりカウントされてるあたり、あの世の入国管理システムも抜け目ない。客席側から寄席に入った2人だったが、せっかくなので高座に上がるのは欠かせない。まずはこっちの世界に慣れている信さんから。「火事」というマクラから繋げて見せたのは「二番煎じ」。滑稽が中心のお話なので当然助六の得意とするところだろう。助六の高座ではお馴染みの、客席とのインタラクション多めの演出で、笑い声もこれまで以上に多く響いている。この世界に欠けていると愚痴っていた「美味い食い物」「美味い酒」の描写が際だち、「無いものをあるように見せる」落語の世界の真骨頂といえる(あと、山寺宏一の真骨頂ともいえる)。久方ぶりの助六の落語に菊さんも大満足だ。隣の座布団では小夏が父親の高座を見守っている。「この小夏」は「あの小夏」とは別であろうが、仏様は粋な計らいをしてくれるらしいので、ひょっとしたら今頃現世の小夏も助六や菊さんの高座の夢でも見ているのかもしれない。

 そしていよいよ、菊さんの最期の落語、最初の落語。信さんに背中を押されて高座にあがる菊さんの顔がスッと老齢のものに戻るシーンは、涙を禁じ得ない。「望んだ通りの姿になれる」というこの世界の理を考えるなら、彼が高座に上がるときにこの姿になったというのは、彼の落語は歳を重ねてこその完成を見たことの表れである。直前に信さんも言ってくれていたが、助六亡き後の落語界を支え続けた八雲。思い悩み、苦しみながら噺家を続けた人生ではあったが、彼の中でも、その生き方にはきちんと意義を見出せていたのだ。信さんやみよ吉に見てもらうべき自分の晴れ舞台は、若かりしあの時のものではない。2人の意志を継ぎ、守り続けた「八雲」の落語だったのだ。語り始めるは「寿限無」である。およそ大名人の高座には似つかわしくない前座話。死人を集めて長命のお話ってのも随分ちぐはぐだが、彼にとってはその長い命を尊ぶ最高の演目であり、小夏や信乃助に見せる上で一番「楽しい」のはこの噺なのだ。前座に始まり落語界の髄を極めた男が、また前座話で子供に戻っていく、そんな回帰や輪廻を感じさせる、意義深い高座になったのではなかろうか。

 生前の禊ぎも終わり、しがらみも、未練も、この世にはない。改めて松田さんを引き連れ、菊比古は彼岸へと去っていく。最期に固く信さんと契り、2人の友情が終わらないことを告げながら。

 良い、人生だった。

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