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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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地獄少女宵伽 第2話 「あなたしかいない」

 脚本・吉永亜矢 絵コンテ・齋藤哲人 演出・伊勢昌弘、ボブ白旗 作画監督・中澤祐一/中山由美/飯田宏義

 




 

<あらすじ>

 夕暮れの丘、あいは依頼人に藁人形を手渡す。いつものように口上を述べ、地獄流しのルールを淡々と伝える。しかし、依頼人はそこでヒッと息を呑むと、しばし逡巡した後にすごすごと藁人形を返してきた。「自分にはやっぱりナナコを流すことは出来ないみたい」。

 依頼人の名前はジェラート・ハル。今をときめく漫才コンビのボケである。折りしも人気爆発の兆し、一番忙しくて充実した時期のハルは、必死に毎日の活動を続けてる。その相方はマカロン・ナナコ。ハルが買い出しの荷物を届けに行くと、ナナコは丁度骨女からのインタビューを受けており、「ネタは全て自分が作っており、相方は雑用な身の回りの世話を任せている。コンビを組むときに、あいつが土下座して何でもやるっていったからね」と居丈高。駆け寄ってきたハルに対しても、「オーダーと違う」と怒鳴り散らして散々な扱いをする。ナナコが上で、ハルが下。そんな関係性がはっきり見えるいびつなコンビだった。

 ある日の2人が生活する私室。ハルは自分たちの番組を確認してネタの精度の確認に余念が無い。そんなハルに食事を出して手厚く世話をするのはナナコ。ナナコはハルから厳しい駄目出しを受けてしょげかえるシーンも。2人の関係は、実は世間に見せているものとは真逆のものだった。本当はコンビを組むようにお願いしたのはナナコ。そして、それを受けてあらゆる脚本を手がけているのがハル。鏡写しの2人の関係はほんの思いつきで始めたことだったが、その繋がりは、2人の中で少しずつ変質し始めていた。全てをハルに託し、一方的に信頼を寄せるナナコは、「自分の存在も含めてハルの作品なのだ」と心酔した様子。そんなナナコの様子を見て、少しずつ重圧を募らせていくハル。元々、ナナコを上にいるキャラとして描いた方が花があると考えてのデザインだったが、その思いつきが、気付けばナナコの中であまりに大きくなっていた。

 打開策としてピンの仕事も受け始めるハル。2人の関係性を変えていくための試案だったが、バラバラに活動を始めることでますます忙しくなる2人。ハルはその忙しさも重なり、ついにネタ出しが出来なくなってしまう。必死に作業を進めようとするハルを、ナナコは「その苦しさも理解したい」と言ってただ一心に見つめるばかり。更に「ハルのもと相方が劇場に来ていた。DV男がストーカーをしているのは許せないからいざとなったら警察を呼んだ方がいい」と言い始める。確かにハルのもと相方はかつてハルに対して暴力を振るったことがあったが、今では芸の世界から身を引き、2人は完全に別々の人生を歩んでいる。劇場で見かけることはまずあり得ない。ナナコの言動に危険なものを感じたハルは、相方の期待の重さに堪えられず、かつて自分がされたように、ついにナナコに手をあげてしまう。ハルにしがみつくナナコ、ナナコを支えられないハル。2人の関係がギシギシと歪んでいく。

 ハルのスランプを何とかしたいと考えたナナコは、原点回帰のためにライブでのネタ見せをマネージャーに願い出る。また以前のように2人でやりたい漫才が出来れば、そこから何かが変わるかもしれない。そして、ハルの方は確認の意味も含めて昔の相方とコンタクトを取り、自分たちの現状を吐露する。自分がナナコを壊してしまったと悔やみ、そんなナナコに手をあげたことを後悔するハル。ハルは「自分が書いた脚本が失敗してしまった」ことを痛いほどに感じていた。

 2人で初めて作った思い出のネタをライブで披露した2人。久しぶりの達成感に、かつて大きな夢を見て全力で戦ったあの日を思い出す。お互い、相方のことは一番良く分かっている。本当に想い合っているからこそ、この輝かしい日々が得られた。

 終演後、ハルはついにナナコに解散を申し出た。これまで作ってきた「コンビ」は終わり。ナナコを支え続けた3年間。だけどもう、ハルは自分を支え続けられない。しかし、ナナコにとってこの3年間は長すぎた。ハルの言うがままに続けてきた「ネタ」の中で、ハルとナナコの関係性は、虚構も現実もない交ぜのまま。ここから先に幸せは無い。あの日結んだ指切りの小指を外し、藁人形の糸が宙を舞う。ハルと離れることが出来ないナナコは、2人の関係を永遠のものにするために糸を引いたのだ。

 三途を流されるハルの表情は穏やかだった。「先に行ってまっているから、ナナコ」

 

 

<解説>

 百合である。そりゃもう百合である。まぁ、世の中の百合には「攻めと受け」とか「先輩と後輩」とか「先生と生徒」とか色んな百合があるわけだが……今回はまさかの「ボケとツッコミの百合」というなかなか斬新な設定。しかし、これが色々と考える余地があって面白い設定になっているのだ。

 真っ先に今回の地獄流しについて考えなければならないのは、「恨み」とは結局何だったのか、という部分である。今回のハルとナナコの関係性は一筋縄ではいかないものであり、単純に「何かが憎かった」とか、「愛ゆえの所業」とかいうまとめ方では説明不足になってしまう。複数の要因が絡み合った難解な関係性、何とか与えられた情報だけで読み解くことが出来るだろうか。

 まず前提条件として、ハルの方が持つ「恨み」はあまり問題にはならない。そのことを示すため、今回は「開始2秒で夕暮れの丘」という大胆な構成をとっており、冒頭のシーンでハルは藁人形を受け取るも、それが自分には不必要だと判断してあいへ返却している。一応地獄通信にアクセスしているし、その送信情報からあいがわざわざ出張してきたのだから「恨み」のエネルギーはそれなりにあったのだろうが(過去に、恨みのレベルが低すぎて地獄通信が反応しなかった事例がある)、「受け取った上で糸を引かない」というパターンですらなく、「最初から受け取らない」という珍しい展開で、ハルの「恨み」の程度が確認出来る。そりゃそうだ、あくまで実質的な主導権はハルが握っているのだから、最悪、一方的に絶縁を申しつければナナコとの関係性は切れるのである(その場合に芸人人生も終わるだろうが、そのことについては後述する)。ハルの「恨み」は、「重すぎる愛の相方に頼られすぎて心労が半端じゃない」という、言葉で説明出来るレベルのものだ。

 ということは、今回問題になってくるのはナナコの感情ということになる。彼女は一体、ハルに対してどんな感情を持っていたのか。まぁ、一言で説明するならやっぱり「重すぎる愛」なわけだが、ここに「芸人」という独特の要素が絡んでくることで話がちょいとややこしくなる。二者の関係性において、「先輩と後輩」ならばどちらが主導権を握るかは自由である。先輩の方が強いのが一般的だろうが、その差はあくまで年齢という些細な要素でしかないのだから、逆転してもいいし、完全に対等な関係性だって有りうるだろう。しかし、ボケとツッコミのコンビ芸人の場合、「ネタ作りをしているのがどっちか」という部分はかなり大きなバランスブレイカーになる。極論すれば雇用者と被雇用者みたいなもんであり、確実に依存関係は上と下に分かれるのだ。世間の芸人を見て、我々素人は「こっちがネタ書いてるのか。じゃぁ、相方は頭上がらないんだろうな」と思い込んでしまうのは必然と言える。ハルとナナコの場合、舞台の上のネタだけでなく、私生活の演出まで含めた全てをハルが演出していたわけで、ナナコがハルを神の座に置いてしまうのは致し方ないことだろう。

 こうして「ハルが上、ナナコが下」という上下関係がはっきりすると、ナナコにはもう選択肢が無い。今回の「恨み」の上っ面を見れば、「ハルをもと相方に奪われたと思い込んだナナコが嫉妬に狂って糸を引いた」と解釈出来る部分があり、実際、その要素はそこそこ大きい。「ハルをとられるくらいなら、いっそ自分が奪ってしまえ」という感情がナナコを支配していたことは間違いないのだ。一応、ナナコがそんな風になってしまうくらいに壊れていたという描写もちょこちょこあるので、単なる「クレイジー」という見方でもお話は成立する。

 しかし、実はこのお話にはもう1つ上のレベルも考えられる。それを産み出しているのは、やはり「日常まで役を入れ替えた」という倒錯した設定だ。2人は役を入れ替え、互いのポジションを言わば「共有する」関係性にあった。ラストでナナコがトチ狂って「あんたがあたしに土下座してきたんだ」と漏らすシーンなんかはそれが最も端的に表れた部分で、ナナコの中で「ネタ」と「現実」が不可分になっていたことが分かるのだが、実は、壊れていたのはナナコばかりではない。完全に上に位置していたと思われるハルも、実はナナコに依存している部分があった。

 「何故ハルは入れ替えなどという面倒なことを試みたか」というのは、実は簡単には説明出来ない部分であるが、「見た目にナナコの方が器量がいいように見える」というのは1つの要因だっただろう。その証拠に、ナナコはかつてハルに黙って枕営業をしていたという話があり、表舞台に立つ「コンビの中心」はナナコを据えておいた方が都合がいい。そしてハルは、そんな「見映えのする」ポジションに自分ではなく「代役」のナナコを置くことによって、自分では満たせなかったはずの欲求を満たしていた。もしかすると、ハルにとってのナナコは「成りたかった自分」だったのかもしれない。いつしか2人は「入れ替えている」という意識すら曖昧になり、互いのことをまるで我が身のように共感し、喜び、苦しんだ。ラストシーンでは「お笑いをやめたらもうハルはハルじゃない」とナナコが叫び、それを聞いたハルが「分かってたんだ」と顔をほころばせる。上の方で「ハルはいざとなったらナナコを切ってしまうことが出来る」と書いたが、実際はそれは不可能だったのだ。何しろ彼女が業界にいられたのはナナコと役を入れ替えていたおかげ。彼女が「ナナコ」を演じてくれていたおかげで、「ハル」が成立するのである。ナナコとの縁を切れば、それは即ち(かつての相方のように)業界からの引退を意味する。ハルは、どこまでもこのお笑いの世界が好きで、その世界を離れること、つまりナナコと離れることを選ぶ事など出来なかったのである。そのことをナナコが指摘したことは、感情の共有の端的な表れ。「ハルが描いたナナコという『代理』のキャラクターが、ハルの本心を指摘して解散を止める」という流れは、何よりもまず、ハルが解散を望んでいなかったということを示すのである。

 結局、3年前にこの道を選んだ時点で先は無かったのだ。行く道を失った2人は、3年前に結んだ小指を解くようにして、藁人形の糸を解く。それはきっと、関係性をやり直すことを願っての、地獄という別天地へのはなむけだったのだろう。「相身互い」という藁人形の使い方は初めてではなく、かつても友情を永遠のものにするために藁人形を使った2人がいた(『二籠』二十話「乙女のアルバム」)。今回の2人の場合、ナナコが本当に後を追う展開になるかどうかは確定しないまま終わったわけだが、まぁ、どう考えてもあのナナコが1人で生きていくとは思われないので、すぐに地獄で出会えることを祈るばかりである。まぁ、「地獄は広いから簡単に会えるか分からない」ともあいは言っているのだが……。

 閑話休題、メイン以外のネタを見ていこう。今回もミチルについてはあんまり話が進まなかったので追加情報はほとんど無いのだが、一応、あいは「ミチルは自分のことを忘れている」という発言をしていたので、どうやらあいはミチルの正体に心当たりがあるようだ。記憶を無くしているって……またゆずきみたいなやるせないパターンじゃないことを祈るばかりだが。

 また、今回ちょっと珍しいシーンがあったので付記しておく。それは、ナナコたちがラストステージに立つ直前、その舞台の上にあいが現れるというもの。あのシーンは確実に「ハルは藁人形を返したけど、別な人間(つまりナナコ)が藁人形を受け取ってるんやで」ということを示すものだろうが、あいがこうして「依頼人以外の人間」の前に任務実行時以外に姿を現すのは珍しい。まして、ナナコにとってのターゲットは明らかにハルだったわけで、「これから地獄に流す相手のところに予兆としてあいが現れる」っていうのは過去に記憶にない。まぁ、直前に依頼してきた「元依頼人」だと思えば、アフターサービスの一環としてちょっと顔を見せてくれたのかもしれないけども。おかげでハルは、何となく「ナナコが藁人形を持っていること」を感づいた状態で最後のシーンに挑んでたしね。まぁ、そんなことが出来るなら「真夏のグラフ(三鼎12話)」のときの乃村くんのところにも事前に教えてあげたらよかったのに、って思ったけども。

 今回のキャストはメインのハル役にはほぼ新人扱いの佐藤美由希、そして変幻自在のナナコ役には山村響。ハル役の子は色々な感情がしっかり伝わってきたし、なかなかいい仕事をしてくれていたと思うので今後に期待。ヒビクはいつも通りに男前ボイスだったわけだが、思いっきり依存型のキャラというのも趣があってよかったね。今回作画がすでにヘタっていたのでちょっと気にはなったけど、「お笑い芸人」っていう設定を意識してなんか妙な動画がちょいちょい出てきたのは面白かった。

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