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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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 映画を観に行きました。観にいった最大の理由は、先週末で半年間待ち望んでいた私の今年一番のビッグイベントが幕を閉じ、ちょっと緩んだ「抜き」の期間に入ったことです。「この時間にできることやりたい」と考えた時に「劇場作品を観よう」と思ったわけです。気づけばこの時期、結構いろんな作品が封切りされたり、されそうだったりしてるんですね。そんな中からこの作品をチョイスしたのは……正直、タイミングです。というのも、私の場合はよくあるパターンなのだが、「いつか観るか」と思ってたらいつの間にやら上映回数が減っててヤバい、っていう展開だったんですよね。今作は近所の映画館を調べたら全ての館で上映はしてたんだけど、その全てが1日1回だけになってて……危なかったかもしれない。封切りからまだそんなに経ってなくね? って思ったんだけど、どうにも世間ではあまり話題になってない感もあり、知らずにフェードアウトする前にちゃんとチェックしておかないと、という思いからこれを選びました。こういう映画こそ、観る価値があると思うとる。こればかりは性分である。折り畳み前に一言感想だけまとめておくと………………まー、世間の評価も頷けるかなぁ、という……。

 

 

<以下、ネタバレ含みでの感想になります>

 




 

 やっぱ先入観を持ってから観にいくのはよくないなぁ、とは思うんだけどね、観てるうちに色んなところが「まぁ、なんか言われてた通りかなぁ」とハマってしまってなかなか脱却できなかった。今作は劇場公開と同時にネトフリでも配信を開始しているとのことで、実は先日、バスの中で明らかにこれを観てた人がいて「えっ?! こんな堂々と違法アップロードを?!」と驚いたものである(そのあとで調べて配信もあると知った)。この配給方法だと映画としての興行収入が他作品と比べても意味がなくなり、セールスやマーケティング的にどうなんだろうという気もするのだが、ま、そういう方法をとったってことはどこかで採算はあっているのだろう。少なくとも私が観にいった劇場はそれなりに客は入っていたとは思うが……まぁ、1日1回の上映だしなぁ。

 さて、内容について触れていくが、正直な感想は「色んなところがフワフワしてんなぁ……バブルだけにッ」というどうしようもないものである(本当にどうしようもねぇな)。なんだろ、典型的な「劇場アニメって言われて企画を立ち上げられた、やりたいことは何となく分かるけどあんまり求めてないアニメ」になってる気がする。今作最大の売りは「すげぇスタッフが集まってるぞ!」という部分だったようなのだが、正直小畑健デザインにそこまで価値があるとも思っていないし、冷静になれば荒木哲郎って原作付きのアニメでヒットを飛ばした実績こそあるが、オリジナルアニメって「ギルクラ」と「カバネリ」なのよね……。となると、ある程度の覚悟は必要だったかも。そして、看板に名前が載ってるわりに存在感が全くなかったのが脚本を担当したという虚淵玄である。私は「虚淵流」を語れるほど氏の作品に触れてきたわけではないが、過去の実績である「まどマギ」「Fate/Zero」「PSYCHO-PASS」などのオリジナル作品が持っていたようなパワーは全く感じられず、一番肩透かしを食らった。せっかくなのでパンフを買ってその辺りの成り行きがわかるかどうかと調べてみたのだが、どうやらプロットは企画部と監督が捻り出したものをパスされた形のようだ。それをどのように「虚淵流」に処理したのかは正直よく分からない。

 先に良かった点を挙げておくと、それこそまさに荒木監督の持ち味、とにかくアクション作画の爽快感が桁違いであること。本作はパルクールを主題に扱っており、大々的なアクションシーンが2つ用意されているが、そのどちらもとても良い、模範的な「劇場アニメ」になっている。特にVSアンダーテイカーの方はメインテーマとなっているヒロインとの関係性の繋ぎとしても機能しているし、このシーンのためにお金を払ったと考えたらギリ納得できなくもないレベル。後半の東京タワー攻略編も他ではちょっと出てこないアクションになっているし、かなり気合を入れたんだろうということは伺える。そういう意味で今作は間違いなく「荒木哲郎作品」である。

 ただ、褒めたい部分はそこでおしまいだ。いっそ10分くらいのイメージビデオだったら最高の作品だったかもしれないのだが、どうにも他のパートの存在意義が分からない。いや、やりたいのが「人魚姫」だったと言われてるんだから、「そういうお話なんやな」と思えばいいんだろうが、「人魚姫です」と言われて人魚姫を渡されて、いまさら面白いと思えるだろうか? 個人的な体調も関係してるだろうが、マジで前半4050分は眠気との戦いだった。私が映画館でアニメ観てて眠くなるってのは、よっぽどのことである。でもしょうがないじゃん、おおっぴらに「人魚姫」の絵本とか取り出されるし、そこから画面に大きな動きもないまま、ろくに喋りもしないヒロインとなんとなく遊んでるシーンが続くだけだし。今作のボーイミーツガールについて、僕は何一つ心動かされなかった。何を観ても泣くんじゃないかってくらい涙腺がゆるくなってるおじさんが、全編真顔だった。それだけ、メインシナリオに身が入らない。

 身が入らない理由はいくつか考えられる。1つはやはり劇場版らしい忙しなさが挙げられるが、それ以上に「現代版人魚姫をやりたいです」といってそのまま人魚姫を取り出してくるっていうのは構造的に大きな問題があると思うんだ。パンフの中で虚淵が「あんまりな話」というワードを出しており、実際、人魚姫「あんまりな話」なのは間違いない。幼い頃にこれを読んでどのように感じるかは人それぞれだろうが、「そういう形の悲劇」があることは幼少期に知る価値があるだろう。ただ、そうは言っても本当に幼児向けの「人魚姫」はやはり「子供騙し」であり、そのプロットは言ってしまえばひどく理不尽。大人が真剣に読み込むには何か追加要素を盛り込むか、別なアプローチが必要だろう。それこそ「現代日本版人魚姫」にしたいのだったら、童話を下敷きにした新しい「悲劇アニメ」を作るだけの気概が求められる。

 個人的感傷から引き合いに出したいのは、我が心のゲーム「グリムノーツ」の話で、「グリムノーツ」は第2部となる「リページ」の主軸となる題材がまさに「人魚姫」だったのだ(第1部がシンデレラ)。もちろん悲劇を悲劇として受け止めた上で、「なぜこんな悲劇が起こったのか?」「その時の各登場人物の考えはいかようなものか?」「もし、ここが違っていたら」「作者の伝えたかったことは?」などのアプローチを繰り返し、「新たな人魚姫像」を作ることに成功していた。対して今作は、人魚姫のプロットを単に現代に移し、人魚を「泡っぽい地球外生命体」に置き換えただけ。王子様ポジションに至っては、ヒロインが「人魚姫を読んだために、その存在を王子様に見立てた」という。あまりに「人魚姫」そのものにおんぶに抱っこなのである。もし本気で「現代版人魚姫」をやりたいのであれば、作中で人魚姫の絵本を出すべきではない。それとなく視聴者に「あぁ、これは人魚姫がベースになっているのだな」と伝わる分には構わないだろうが、それを表すための言葉は「人魚姫」以外であるべきだ。そこをサボってコピペで処理してしまっては、視聴者だって「はいはい、人魚姫なのね」で思考を止めてしまうし、あらゆるものが勝手に「人魚姫の要素」として位置付けられるために何も更新されず、単なる「似非」で終わってしまう。本当に人魚姫のプロットに興味があり、その作品性を再現したかったのだとしたら、なんともお粗末な扱い方をしたものである。

 また、アクションシーンが良かったことを褒めることは褒めたが、このアクション要素、残念ながら「人魚姫要素」と何一つ絡まない。完全に作中で「悲恋ドラマ」と「痛快パルクールアニメ」が並行して展開していくだけである。これは勝手な想像だが、もしかしたら制作チームは漠然と「天気の子」がやりたかったんじゃないかという気がしている。地球にとんでもない天変地異が起きているのに、その状況を特に説明することもなく、「現象」自体はそこにあるものとして受け入れさせ、その上で特異な世界の中を自分なりに生きる少年少女のドラマを描く。「天気の子」はこれに成功しており、「なんで雨は止まないの!?」という現象自体に明確な答えはなかったとしても、その「天気」が男女の関係と密接につながっている意識があり、壮大な天空の映像が心情劇を盛り上げる。

 他方、今作は「パルクールたのしー」と「まぁ、それはそれとして人魚姫は泡になって消えるんですけど」が真逆を向いている。よりによってパルクール時の「泡」は愉快に弾むトランポリン障害物にしかならないし、挙句「赤い泡は襲いかかってくるぞ!」なんて凶暴な敵対勢力にされてしまい、せっかく原典の人魚姫で儚さの象徴として用いられている泡が、こちらではマシンガン扱いである。泡というモチーフを効果的に使った画面構成なんかも多いので決して題材としては悪くない、いや、むしろWIT STUDIOの技術力を全力で発揮できる幻想的なイメージは非常に魅力的なものだったとは思うのだが、あくまでそれは適材適所という話。個人的には泡を細胞に見立てて細胞分裂を始める画面とか、あろうことか泡そのものを水分子に見立てて「水気」を演出するシーンなんかは「おっ、そういう見せ方もあるのか」と素直に感心したものだが……結局、最後に描きたいものがあまりに適当だったのがなぁ。

 「凄腕スタッフが集まるから作画技術を全力で見せに行きたい」という気持ちは理解できるし、商品としてみた場合にそれは間違った方向性ではないのだろうが、それなら何も長編アニメにする必要はないわけで。わざわざ100分のドラマにするなら、できればもうちょい、芯のあるものが観たかったです。

 ただ、エンドロールで知ったんだけど今作のノベライズって武田綾乃が書いてるのね。……そっちを読んだらもしかしたら全ての問題が解決してるかもしれない……(木灰アニメ化したらいいのでは?)。

 

 

 

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