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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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 ○「フラクタル」 6

 個人的には、今期最も注目している作品である。何しろあの山本寛の監督作品。しかもその喧伝手段が「引退も辞さない」というのだから穏やかではない。脚本構成には岡田麿里や東浩紀の名前が連なり、アニメオリジナル作品として、どこまでの完成度になるのかというのは本当に楽しみでもあり、怖くもあり。

 1話目を見ての感想は、「まず確実に面白い」というそれなりに好印象なもの。先んじて放送された関東の方の感想などはちらほら流れてくるものの、なるべくフラットな体勢で見るために出来るだけ耳を塞いでいたのだが、そんな中で「なんかジブリっぽい」という文言が漏れ聞こえてきていた。確かに、冒頭部分からの雰囲気はパッと見にジブリ作品を連想させる。ちょっと古めかしくて牧歌的な印象の舞台設定がそうだし、キャラクターデザインもどこか前時代的なものを感じさせるように見える。「ドッペル」と呼ばれる奇天烈な電子存在のデザインにも、寓話的でありながら、どこかイカれたような独特のセンスが伺える。そして、飛行機械から落下した少女と、主人公の少年の出会い。何ともテンプレートな印象を与える、「ジブリ的な」出だしと見られないこともないだろう。山本寛が目指していたものはジブリの模倣なのかと、些か不安になる部分ではあった。

 しかし、少しずつ視聴を続けるうちに、どうやらそうでもないぞ、というのが見え始める。「祈り」を強制する奇妙なフラクタルシステムと、何者かに追われる美少女の存在。そこに見えるのはシンプルな「頑張れ男の子」を予感させる構図であり、もっとあけすけにいえば現代深夜アニメに通底する「萌え」路線の布石。なんだかとんちんかんな行動を続ける少女フリュネのキャラクターも、デザインのおかげで微妙な「今風」とは違うように見えながら、その根本は分かりやすいヒロインになっている。さらに、その後に出てくる謎の幼女と取り巻きの黒服なんかは、もう、ストレートなギャグアニメのテンポになった。作品は、少しずつ、良く馴染んだ「深夜アニメ」の空気をまとい始めるのである。やはり、このメンバーで考えて作り上げた作品が、フワフワと俗世から浮いたようなものになるはずはないのである。

 そして、作画面、演出面において、ヤマカンはいつも通りのディレクションを徹底している。「ジブリみたい」と言われているのは作画枚数の多さと詳細なキャラ動画の質による部分が大きいと思うのだが、例えばフリュネが飛行機械から飛び降りるシーンなんかは、独特の浮遊感に卓越した作画の勘が見える。その後の追跡側の飛行船が空中で制動する様子なんかも、普通ならなかなか描ききれない部分。これまで数々の「リアル」を生み出してきたこだわりが生きる場面である。そして、キャラの掛け合いの時に見せる独特の台詞の被せ方なんかも、おそらくヤマカン本人のディレクションによるものだろう。「あるキャラがしゃべってから他のキャラの台詞を入れる」という「芝居的お約束」をあっさりと打破して、多少クロストーク気味に被せた演技の見せ方は、そこに何ともいえない「現実感」みたいなものを持ってくる。過去には松尾衡の手によるプレスコ録音などで実現していた方法だが、これをかなり意図的に組み込んでいるのも「挑戦」の1つの現れととれそうだ。

 こうした細かいながらも難度の低くない様々な努力によって、この作品は世界作りの厚みを増している。一応説明がちょろっと出たものの、結局何がなんだか分からない「フラクタルシステム」はわずか1話でその全貌が何となく染みこんできているし、冷静に考えれば無茶しかやっていないフリュネの行動にしても、主人公クレイン同様、いつのまにやら巻き込まれて慣れてしまいそうな自分がいる。1話における「世界の導入」のバランスは、まずまず良いものだったといえるのではなかろうか。

 と、色々褒めてもいるのだが、勿論不安も多い。一番の不安は、「これ……売れるのか?」という部分。このまま壮大な物語へと繋がっていく期待感こそあるものの、この作品は1クールであることが既に発表されている。わずか12〜3話程度で、この独特の世界観をどこまでまとめきれるのか、1話の流れがゆったりとしていたこともあり、今からちょっと怖い。また、期待感から1話は終始楽しく見られたのであるが、いわゆる「アニメファン」の目にこれがどう映っているのか。シナリオラインだけを追えば、前述したようにシンプルなボーイミーツガールであり、何か劇的なサプライズがあるとか、未だかつて無かったものすごい技術力で圧倒的な戦闘シーンを描けるとか、そうした部類の作品にはならないだろう。あくまでヤマカンの武器はその精緻な世界作りと、計算に計算を重ねた(上でこしゃくなマネをしてくれる)癖のあるコンテワークだ。「ハルヒ」「かんなぎ」などの阿漕さを押し出した作品作りならばこれも活きるだろうが、この「フラクタル」の世界はどこまでヤマカンワールドとしての受容体を持つものか。実に余計なお世話ではあるのだろうが、そうした「先の見込み」が見えてこないのは不安要素である。

 ま、ノイタミナ枠なので最低限の売上は確保出来ると信じているし、別にヤマカンが今後どうなってしまおうと問題はないのだが、自分テイストを充分にもった貴重なクリエイターなのは間違い無いので、今後も忌憚なく作品作りに専念できるように、何とか一発当てて欲しいものである。

 一応最後はキャストの話。画伯の話はもういいとして、ヒロインフリュネ役はどうやら新人さん。歌まで含めた1話の中身は可もなく不可もなく(技術的にはやや不可気味だが)といったレベルで、癖のあるディレクションの中でどのように芝居の腕を磨いていくのかが注目。他にキャラクターはほとんど出てきていないが、やっぱり井口裕香ボイスじゃないですか? いやぁ、うざ可愛い。このゆかちは間違い無く良いゆかち。今後も是非作品をかき回して欲しいもんです。でも、次からかき回し役は最後にちょろっと出た花澤香菜になるのかな? ヤマカン作品で花澤が出るんだったら、もうついでに戸松も出してよ。

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