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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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 この破壊力、ロリみゆきち、第11話。「ヒトランダム」での入れ替わりシチュ、「キズランダム」の感情暴走シチュにつづいて、今回はそっちの道でのファンも多そうな「ロリっ子シチュ」である。なんだこれ。すげぇな。

 前半パート。いきなりの初詣から始まって何が起こったのかと戸惑ったが、ロリ化した3人を見て季節とかどうでも良くなる。藤島さんに助けて欲しいくらいのカオス設定である。すげぇな、ふうせんかずら(的なもの)の仕業にしちゃえば何が起こっても不思議じゃないんだもんな。とにかく愛らしいロリ唯、ロリ伊織、そしてロリいなばんというハイパーな布陣で、「うわぁ、今回のコレ、いっそ映像特典とかそっち系のノリなんじゃねぇの」と思えるくらいの幸せ展開。そりゃ実際被害に遭っている人間は大変だろうが、回りからみたらほのぼの展開で幸せ満載ですよ。実際、伊織と唯もテンションあげてやがったしな。

 しかし、これが一転、後半になるにしたがって、実は今まで以上にえげつない「遊び」であることが次第に判明してくる。新たな刺客が繰り出してきた神技「時間退行」は、身体が縮んで衣類が絡んでエロい目に遭うとか、知人に知られると都合が悪いから身を隠さなきゃいけないとか、そんな直接的な影響は大きな問題ではない。嫌らしいのは、「退行した時間の記憶をひっさげて戻ってくる」という部分である。確かに、これまであったどの事件よりも抽象的で、とてもイメージ出来るようなものじゃないので難しいが、「今の自分と過去の自分の記憶・感情が共有している状態」って、多分ものすごく怖い。義文が悩んでいた事例もそうだろうが、「過去の自分が何を思っていたか」っていうのは、励みになることもあるだろうが、往々にして「齟齬がある」という事実の方がマイナスに働くんじゃなかろうか。「過去の自分」が知らないことを「今の自分」は知っているわけで、そのギャップが埋まらず、理知的に調和を求めることが困難であるということ。1人の人間の中にも簡単に矛盾が生まれることは、一定の時間軸の中で慣れて、鈍って、帳尻を合わせている人間ではなかなか経験出来ないもの。それが押し寄せてくるというだけでも、それは恐怖だ。

 また、姫子が言っていた通りに、「完全なる過去の自分がそこに居る」ということも恐ろしくある。誰だって「今の仲間達」に過去の自分を見られるっていうだけでも恐ろしい。ましてそれが恋愛感情まで含んだ複雑な関係にある仲間たちであり、過去に様々な火種を抱える人間だったらなおさらだろう。おそらく「過去が見える」ことでダメージを負っているのは姫子と伊織の2人、そして「過去の記憶が同居する」ことにダメージを負うのは義文と唯ということになるだろうか。唯の方は、なんだかとってつけたように「昔の空手のライバル」が登場したのでそちらの悩みということになるし、義文はこれまでアイデンティティとして維持してきた「唯への想い」の出所について、改めて自問しなければならない。

 ほんと、地味で難しい制約でもって揺さぶりをかけてくれる作品。よくもまぁ、こんな嫌らしい設定を思いついたもんだ。太一が一人だけ退行しない、っていうのも、確かに設定上の必要性もあるだろうが、更に太一を個別化し、分離させるという働きもあるのだろう。退行の恐ろしさを知らない太一は、これまでのように「俺も頑張るからお前もがんばれ」という単細胞な自己犠牲論が使えない。あくまで傍観者として、残った4人の苦闘を追いかけなければならないのだ。なかなか気の利いたハンデマッチではないか。

 それにしても……良いロリだな!(改めて) まぁねぇ、沢城さんは元々ロリキャラから芸歴が始まった人ですし、豊崎もロリ、というかユルキャラはホームグラウンド。ひーちゃんだって幼児みたいな役はお手の物ですよ(妖精さんとかな)。見て可愛い、聞いて愉快なトラウマ保育園の次回に期待。あー、でも若返る幅はランダムなんだよなー。中学生くらいだと大して変わらんなー。正直、高校生が14歳に若返っても大してかわらんやんけ、とも思うのだが、これくらいの年齢での1〜2年って本当に大きいんだろうなぁ。もう、おっちゃんくらいの歳になるとさっぱり覚えてないけども。

 今回からシリーズがスイッチということで、当然のようにエンディングが変更。今回も、曲も映像も刺激的である。映像は初見の印象で「なんかピングドラムみたいやな」とか思ったら、コンテ演出がマジで幾原さんだったから吹いた。わかりやすすぎるやろ。

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 覚醒稲葉に待った無し、第10話。日本よ、これが沢城だ。

 先に書いておくと、今回のシナリオってかなり紙一重だと思うんですよ。こと伊織と姫子の言い合いのシーンなんかは、「流石にラノベ的だなぁ」と思うような言い回しがちらちら見えてどこか落ち着かない部分があったし、何よりふうせんかずらの振る舞いが腑に落ちない。彼が「終わらせよう」と思った契機は一体なんだったんだろう。元々「面白いから」という理由だけでやっていることに疑問を差し挟むのも無駄なことなのだろうが、「ヒトランダム」の時には伊織の入院、死の危険(のふり)という大きなイベントがあったからこその打ち切りだったと解釈しているのだが、今回の「キズランダム」において、ふうせんかずらが満足するような何かが起こっただろうか。姫子の改心がそれなのだとしたら、ふうせんかずらも随分優しい存在だったということになる。

 また、ラストでわざわざ登場して姫子を煽った動機も謎だ。あそこで姫子に余計な心配をさせた悪戯は、「ヒトランダム」のときの煽りに似たような部分はあるが、影響を受けたのが姫子1人であるという点が決定的に違う。前者は「ここで誰か一人が死ぬっていう条件を突きつけたらどうなるのかな」という興味があればやったかもしれないが、後者の場合、姫子が慌てて駆けつけて「なんちゃって」というだけで終わることは目に見えているのだから、わざわざやる必要が無い。仮に伊織と姫子の争う様子が見たかったのだとしたら、伊織の身体を乗っ取って姫子にだけ伝達したのは不充分な仕込みといえるだろう。まぁ、「何となくそうしたかったから」と言われるとそれまでなんだけども。

 などと、気になった点を挙げてみたものの、やはり今回は今作の大きなターニングポイントとして印象深い回となった。当然、主人公となるのは姫子と伊織の2人である。姫子の方にばかり目がいってしまいそうになるので、あえて先に伊織の方のメンタリティも追ってみたい。伊織が姫子の感情に気付いたのは、彼女が傷ついた自分の指を見つめて取った行動がきっかけだった。それ以前の慌てふためく様子なんかもヒントにはなっていただろうが、あれだけの仕草から的確に姫子の心情を指摘してみせたということは、おそらく伊織は以前から予感めいたものはあったのだろう。それが蓄積していたからこその、「欲望解放」だったと考えるのが自然だ。

 姫子に向かってたたみかけるような欲望解放は実に良いタイミングで発動した。彼女の持っていた欲望というのは何だったのか、今となってははっきりしないが、「真実を知りたい」という欲望、もしくは「自分の気持ちを伝えたい」という欲望だっただろうか。一目見てそれが異常な状態であると気がついた姫子は、険しい顔で自分を問いただす伊織の気持ちが、嘘偽りの無い真実であるとすぐに理解出来ただろう。だからこそ、見たこともないようなしおらしい様子で、諾々と伊織のペースに流されたのである。伊織の持っていた感情、その中でも「稲葉が好きである」というのが本当だと分かったからこそ、今までひた隠しにしてきた弱い自分を晒したのである。普通の展開なら「愛情と友情の両立なんてちゃんちゃらおかしい」ってな意見も出てくるべきところなのだが、伊織の持っている強烈な仲間意識に支えられ、この一触即発の三角関係を容易く形成する基盤が整えられた。そうしてみると、永瀬伊織というのは実に器の大きな女性である。

 対比的に、今回は弱さばかりが際だったのが稲葉姫子ということになる。自分が本当はどう思っていたのか、そして、認めたくない感情からどのように逃げていたのか。全てを白状させられた姫子は、なんとも弱々しい存在だった。伊織の言を借りるなら、それもひっくるめた「本当の姫子」ということになる。取り繕ってきた「完全無欠の稲葉姫子」は瓦解し、残ったのは年相応の可愛らしい少女であった。そして当然のことながら、こちらの方が何倍も魅力的なのだから困ってしまう。子猫のように怯える姫子も、同級生に人生相談してしまう姫子も、身も世もなくなきじゃくる姫子も、自分のしたことの恥ずかしさで身もだえする姫子も、今まで見たことが無い姿なだけに、致命的な破壊力。ほんとに、それだけ。

 個人的には、今回は女の子どうしの絡みがメインとなったので、その部分だけでも楽しかったです。でも今作は百合作品ではないのです。仕方ないので、藤島さんに頑張ってもらうかなぁ。姫子が太一とくっつくことになれば、自然と伊織はあぶれてしまうわけで、そうしたら藤島さんが美味しく頂けばいいじゃないの。よく分からないキャラ付けでどんどん良い人になってるわよ、藤島さん。この人将来何になりたいんだろうな。

 今作で実に気が利いているな、と思うのは、今回のプロットのように、「絶望的な状況、災難としか思えない設定が、最終的にプラス方向に転じる要素を見せられる」という部分である。「ヒトランダム」の時には太一の機転という訳の分からない形で唯たちを救うのに一役買っていたし、どう考えてもデメリットだらけだと思えた今回の欲望解放も、伊織と姫子の対話を成立させるための重要なファクターとなっている。欲望解放が無ければ、頑なな姫子があそこまで観念して本音をぶつけ合うことはなかったわけで、いつの間にか「終わってみれば良い思い出」みたいな扱いになっているのである。まぁ、自宅謹慎食らった唯からしてみれば洒落になってない思い出ではあるのだが。こうして表面的には「ファンタジー」な作品なのに、落とすところは「青春群像劇」で処理しているのは、なかなか上手いな、と思える部分。

 上手い、といえば。やっぱり、中の人の話ですよ。こちらも先に挙げておきたいのは、伊織の中の人、豊崎だったりする。今回の伊織の欲望解放のシーンは、普段の伊織のキャラから遊離させる必要があるにも関わらず、「意外と激しい奴」としての伊織を維持しなきゃいけないという紙一重のバランスである。しかもクライマックスで台詞が全力全開ラノベ節という、非常に厳しいシーン。これを成立させられるあたり、やっぱり持ってるなぁ、ということは感じる。

 あとはまぁ、稲葉の中の人ということで。なきじゃくるところでクライマックスかと思ったら、最後の校舎裏のシーンで憤死ですよ。あの姫子は反則だわなぁ。みゆきちの自由自在の年齢幅の上げ下げが激しく、乱高下のせいで酔うかと思ったわ。最近はかわいい系のみゆきちボイスがなかなか聞けないので、このまま姫子さんには頑張ってもらいたいものです。

 余談だが、今回のエピソードで伊織が姫子を励ますシーンで「自分が好きな稲葉をもっと信じろ」みたいな台詞があったわけだが、なんだか稲葉の中の人と後藤沙緒里のエピソードを思い出させる。イイハナシ。「お前が信じる俺を信じろ」は結構な殺し文句ってことですな。

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 若いって良いわよね、第9話。太一に続いて、義文まで「良いアイディア」といって馬鹿が極まった作戦を提案するという。そらま、こんなふざけた状況を理知的にクリアしていく手段なんてないんだろうけども。

 前回のミッションでひとまず太一が脱却。「どうしようもないわがまま野郎」であることを自覚し、それを伊織と義文に謝罪することで、中心となる面子3人の友情タッグは回復した。あれだけ好き放題言っていた太一相手にすんなり仲直り出来るあたり、今回の立役者は実は義文の方だった気もするのだが、彼らの普段の会話からすると、どうも太一というのは視聴者が見て感じる以上に人望の厚い人物のようである。義文と直接喧嘩になった前回の騒動は、何度見ても太一が一方的に悪いようにしか見えないんだけどね。私なんかは勢い任せに謝られても、「いつも通りの直情馬鹿が何か思い直したらしいぞ」という醒めた印象しか出てこない気がするのだが、義文は納得してくれている。多分、彼にしても普段から「太一の主人交代質がうらやましい」っていう嫉妬心はあっただろうから、伊織に指摘されたことで逆上してしまったという負い目はあったのかもしれない。まぁ、お互いに自分の方が弱いと思っているのだったら、これはこれでいいコンビなのかも。

 伊織は結局大きな問題も孕まずに野郎二人と結託することに成功したので、次の攻略対象は唯である。義文が、太一から以前の話を聞いて編み出したのが、今回の山場となる「ラブホ作戦」だ。うむ、馬鹿馬鹿しい。ある意味太一の股間キック作戦以上に男子高校生である。そして、最終的にそれで納得しちゃった唯ちゃんも、また救いようが無いくらいに女子高生である。あんな訳の分からない説得で籠絡されてしまったのは、やっぱり少なからず義文を信頼してることの表れなのは間違いないだろうけども。まぁ、設定だけを考えたら確実に薄い本が捗る設定である(このアニメはそんなんばっかだけども)。「唯を傷つけることだけは絶対にしたくないという欲望」ということだが、どうせ「実は唯だって喜んでるんだろ」の欲望とか、むしろ逆に唯の方の欲望が解放されちゃうネタとか、そういう設定が無尽蔵に。個人的には後者のMシチュだな。武力では唯の方が上だからソレが自然。

 いや、我ながらアホな妄想だとは思うが、この作品は本当に「そういう妄想」との紙一重の所を渡り歩くのが見せ場の作品ですよ。欲望解放なんてトンデモ設定を知っている人は誰もいないわけで、端から見たら完璧にただれた男女関係しか無いわけですよ。唯ちゃんの親御さんだって、不登校の娘のところに男2人が押しかけてきた時点で「うちの娘も隅に置けないわね」とか思って悦に入っていると思うのだが、2階から聞こえてきた声が娘の「ラブホ!」でしょ。一体どんなお気持ちなんでしょうか。「もう高校生だからそれくらいあるかなー」って思ってるのかな。しかも翌日に娘が財布をすっからかんにして帰ってきたりする。確実に宿泊費だ。とりあえず、夕食の席で「どっちの子が本命なの?」って確認されたに10ペリカ。

 で、いつも通りのアホテンションで賑やかに唯のミッションもクリア。その後に起こった欲望解放が全員で食欲祭りだったことも、都合の良い「ハッピーエンド」の表れであろう。義文たちのアイディアが本当だったかどうかは知らないが、今後唯が暴力絡みで悩むこともあまり無くなるはずだ。相変わらずこの作品は「完璧に問題が解決した」というところまで到達しないのでやきもきする部分はあるのだが、問題の質がそういうものなのだから仕方ないところか。

 そして、そんなすっきりしない問題に取り残されたのが、我等が姫子さんなわけだ。ふうせんかずらの個別訪問という反則気味の技によって打ちのめされた稲葉さんは、これまで一番認めたくなかったものと向き合わざるを得なくなった。わざわざふうせんかずらが「揺さぶりに」来たということは、姫子が選択していた「精神的な関わりを減らす」という作戦は欲望解放対策としては意味があったということだが、残念ながらそれでは「面白くない」ので終わらない。彼がわざわざ「揺さぶって」作り上げた野外学習の場が、どうやら今回のクライマックスとなりそうだ。姫子の抱える人間不信と恋心のアンビバレント、そして伊織とのややこしい関係性。これで誰も傷つかずに乗り越えるのは不可能に見えるが……若さで乗り切って欲しいもんである。


 
 と、最後に蛇足とは知りつつも、この「ココロコネクト」に関する例のことについても付記しておこう。わざわざ触れる時点で踊らされているみたいで癪なのだが、この期に及んで見て見ぬふりも不自然だし、軽く触ってそれで手打ちとしたい。ことの顛末はおよそ理解しているつもりだが、当然、これだけ大きな騒ぎになっていることには非常に憤慨している。もちろん、運営側ではなく、煽りたいだけで騒ぎ立てている連中に対してだ。元々ネット世界なんてお行儀の良いもんじゃないのは承知だが、こんなくだらないことが「騒ぎ」になる時点で、本当にアニメ界隈を取り巻く人間の質というのが幼稚になっているんだな、と改めて思う。個人的には放っておいてもいい問題だとも思ったのだが、そういやキタエリがツイッターをやめたり、私にも実害が出ているのである。もちろん、キャストの人たちもそうだが、一番の被害者はせっかくの作品にけちがついた制作者側の人たちだ。特に監督の川面さんなんて、これが初の作品だというのに(そして、きちんと良いものを作ってくれているのに)、こんな理不尽な形でけちがついてしまい、非常に気持ち悪いだろう。精一杯良いものを作ろうとしてくれている人たちのためにも、アニメを素直にアニメとして楽しむ、そういうシンプルな姿勢を、きちんと確認したい。そういう意味では今一度自分たちのスタンスを振り返るためのいいきっかけになるのかもしれない。

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 藤島さんマジミッショネル、第8話。こんな奴がクラス委員やってたら、むしろ怖くて学校にいけねぇ。しかも愛の伝道師を謳っておきながら自分はガチレズとか、どうしたらいいんだこの娘。御前ボイスの委員長とみゆきちボイスの俺様女とか、どれだけMに優しいクラスなんだよ。

 藤島さんだけを見ていれば非常に華々しくて愉快なお話ではあるのだが、本筋の方が全速力で転がり落ちる最中である。次回予告を見る限りでは次のエピソードでも盛り返せるのかどうかは微妙なところだが、一応今回が主人公の成長イベントだったと考えれば、次からは何かポジティブな話題も期待出来るのだろうか。まぁ、普通に考えるとこの状況がプラスに転じる手段なんて無い気もするのだが……

 それにしても、今回は太一の暴走が見るに堪えなかった。姫子がことあるごとに罵る「自己犠牲野郎」の思考回路は、改めて見せつけられると常人には理解出来ない病気レベルの状態であることが確認出来る。義文との口論は一見すると平行線であるが、おそらく視聴者の中で太一の側に荷担したいと思う人間はいないだろう。どう考えても無茶苦茶な精神論であり、典型的な「何も考えていない」言行である。確かに、諍いの間に出てきた通り、前回の人格入れ替わり事件の場合には勢いで乗り切れてしまった部分はあったのだが、それだって紙一重には違いないし、実際には姫子、伊織、唯の持つ心の傷は、完全に癒えたということは決して無い。太一の行動がもたらした効果はふうせんかずらに手を出させるという、「ターン進行」の役割であって、その結果伊織が入院する事態になったことは忘れてはいけない。義文の側からすれば、ひょっとしたら今回も太一が無茶をすれば同じような効果は得られるかもしれないが、今度は傷つく可能性が一番高いのが唯なのである。これだけは黙って見ているわけにはいかないことなのだ。

 結局、「何も打つ手はない」ということが確認されるだけで、どんどん沈んでいくばかりの状態。太一と義文の間には決定的な溝があり、どうあがいたところで同じような不安を抱える伊織に埋められるわけがない。もう1つの飛び道具として期待される姫子も、先の事件で地に潜ることを選択してしまった。天下の姫子さんがこんなところで終わる器じゃないとは思いたいが、「心の傷」「隠された欲望」などといったタームは人間不信の姫子がもっとも苦手とするフィールドである。彼女の本領が発揮されないまま事態が進行すると、彼女にとっても残念な結末が待ち受けている恐れがある。出来ることなら、藤島さんみたいな埒外の思考回路でもって、彼女の窮状をすくってあげてほしいもんである。

 まぁ、悩みは深くなる一方であるが、今回は一応太一をメインに一段フェイズを進めることが出来たのは収穫ではあろう。特に藤島さんの辣腕と先生の適当指導によって太一が一歩進めたことがはっきり分かるのは良いことだ。先生が言っていたことは本当に理想論、一般論でしかないので今回の太一たちのピンチを救うのには力不足な気もするが、こういうことってのは、まず当たり前のこと、足下から確認して先に進めるのが重要なのだし。太一にとっては、こんな状況でも何とか引っ張ろうとしている伊織の存在も大きいだろう。改めて大きくくくると非常にありきたりな青春ドラマ、成長記であるという気もするのだが、こんなとんでもない状態でも「なんか分かる気がする」と思える作劇というのは、なかなか面白いのではなかろうか。

 まったく関係無いけど、先生と教卓を運んでいる間の文研部部室を俯瞰で捉えて伊織を見ているカット、すごく「サムデイインザレイン」っぽいよね。あそこまで尖った演出ではなかったけども。時間経過を表して伊織の心情を描き込む演出としてはアリですな。

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 重いよ辛いよ第7話。しかも次回予告を見る限りだとこの流れは次回も続きそうだよ。この鬱々とした気分をどこにぶつければいいものか。

 そりゃそうなるのは当然のことなんだ。精神操作系の能力でトラブルが起こり、自分の意志がままならないままで事態が望まざる方向に転がるだけなのだから、いいニュースなんて飛び込んでくるはずがない。冒頭では伊織や太一が多少「無難な」欲望解放を経験することで「そこまで大きな問題じゃないかな?」と思わせておいて、そこから繋がる新たな事件は、どんどん深刻になるものばかり。人間関係というものが、いかに建前で成立しているかがよく分かる構図だ。馬鹿馬鹿しい話だが、「もし、自分が欲望解放の犠牲者になってしまったら」とか考え出すと、確かに唯のように引きこもるくらいしか回避する手段は無いと思えてしまう。そして、その時でさえ、鬱々とした引きこもり生活に嫌気がさして「外に出たい」と思ってしまった時点でおじゃんになる可能性があるというのだから、この現象は本当に怖い。

 そして、欲望解放のダメージは、5者5様の影響を及ぼすことになっている。現時点で一番平和なのは義文だが、彼の場合、自分が比較的平和な状態を維持しているおかげで他人の悩みが理解出来ないのが辛い。今回の展開をみれば分かるように、感情の高ぶり、純粋な欲求という意味では、他者と接触している時が一番危険な状態になるのがこの現象なのだ。それを率先して関わりに行こうとしてしまう義文のメンタリティは、実は案外危険な状態である。

 普段から「自分を演じる」ことに手一杯の伊織も、まだ被害は軽微な方かもしれない。彼女の場合は純粋に「起こりそうな」被害を一番受けている人間で、授業中の奇行に始まり、普段ならば仮面で隠してしまえるはずの根っこの部分をクラスメイトに晒してしまうことで、少しずつ人間関係が歪んで行ってしまうのを止められない。頼れるのは全幅の信頼を寄せた「仲間」の存在であるが、全員が同じ状態で悩みを抱えている現在、なかなか他者に頼るのも難しい。こういうときの藤島さんの信頼感は異常である。なんかの間違いで藤島さんへの愛情が膨れあがってキマシ展開とかになってくれれば、本人も視聴者も平和になれるのだが。

 もっとも分かりやすい被害が出ているのが、今回渦中にいた1人、唯だろう。「欲望解放により他者を傷つけてしまった」という事実が、誰よりも他人のことを想える彼女にとっては大きな傷となっており、強さを保てないがために内にこもる選択をしてしまった。彼女の中でそれは最善の選択だったはずなのだが、意外な方向から、その目論見は破壊されてしまう。

 単に奇行に及ぶだけならばシンプルな「トラブル」と見なせる能力である「欲望解放」。しかし、最大の難点は、深刻な悩みを共有した仲間同士のトラブルであった。唯の方略を観た姫子が、自分の意見を主張する段でたがが外れ、心ならずも彼女を罵倒することになってしまう。「現象のせいだ」と分かってはいても、あくまで解放されたのは潜在的な欲望である、という設定が影を落とす。「表面ではどう取り繕っても、本音はそうなんだ」ということを感じてしまえば、信頼関係などいともたやすく崩れてしまうものだ。

 ここで、現象を仕掛けたふうせんかずら(というかこの作品のプロット)の憎らしいところは、「欲望」と「本音」という2つの要素をごっちゃにしているという部分なのである。たとえば、唯にくってかかった姫子を例に取ると、彼女の場合は「唯のように引きこもる方策は、自分も考えたが最善ではない」と、本音の部分で思っている。思っているが、「唯の方策は否定されるべきだ」と本音から思っているというほどでもないだろう。何しろ姫子自身も打開策を考えついていないわけで、「間違っているかもしれないが、どうしていいか分からない」というのが現在の状況だ。しかし、あの瞬間、姫子は「唯の方策は正しくないのだ」と思ってしまい、「正しくないと説き伏せたい」と「思って」しまった。おかげであのような暴言を吐くことになり、唯を傷つけたわけだ。ここで「本音」と「欲望」は全く同じものではないのだ。しかし、唯の目から見ればそれが「姫子の本心」に見えてしまい、連鎖的に負の感情が溜まっていってしまうのである。

 この「本音と欲望の差」が埋まらないことで、太一と姫子の関係も崩れていく。太一が「失望した」と発言したのは、そのときの「欲望」であり、決して「本音」とイコールではない。これまで散々姫子と太一は「自己犠牲」についての意見の相違を確認しているわけで、太一だって「自分がやりたいと思う欲望」が人と違うことくらい分かっているはずだ。本音では「自分はそうしたい」とは思っても「他者にそうしてほしい」は無いはずなのだ。しかし、一瞬生まれた「欲望」はそうではない。「姫子にも自分と同じ景色を共有してほしい」「みんなで力を合わせて現状を打破したい」、そうした欲求が、最悪の形で姫子にたたきつけられることになる。あまりに強すぎる「自己」を持つが故に、姫子が言った通り、今回一番危険なのは太一なのである。そしてもちろん、同様に強固な自己を持つ姫子自身も、危険なのである。

 転がり始めた関係性は、あとは現象の導くままに行き着くところまで行くしかない。この5人は基本的には「善人」であるはずなので、どこかで解決に転じることを待つしかないのだろうが、まだまだ辛い時間が続きそうだ。キツい作品である。見てられないのに、見るしか無いのがまた辛い。

 辛いので中の人の話で締めてお茶を濁そう。「本音じゃないのにしゃべってしまう」辛さは、キャラクターはもちろんだが、中の人にとってもかなりしんどい作業になっているだろう。今回心ならずも他者を罵倒することになった姫子・みゆきちと太一・だいちゅうの叫びは、色々と突き刺さるものがある切実なものだった。本当にキャストに負荷をかけ続ける作品である。ちなみに、完全に蛇足だが、中の人で嬉しいのは唯のお母さん役の渡辺明乃。あけのんは「俺妹」あたりから母親役が始まって、「スケットダンス」に引き続いてまたも母親役である。この歳でこんだけ母親役が回ってくるってのも珍しい話だ。本人はあんなに落ち着きないのに。更に年下の沢城先輩はまぁ、例外とする。

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 イナバサン!! 第6話。なんやねんこの作品。ことごとくエロい方向にいくらでも妄想出来る設定しか出てこないじゃないか。作者は不健全な中学生男子か! ありがとうございます!

 というわけで第2幕「キズランダム」と題したパートが幕を開けた。人格入れ替わりは一段落し、次に起こるのは「欲望解放」という、これまた都合良く都合の悪い能力である。人格入れ替わりの方は「完全にランダムですので」という断り書きがあったのでどうにもしようがない現象としてあきらめがついたわけだが、今回の現象は「欲望が高まった時に」という条件がついているため、設定としての突っ込みどころは多い。まずもって「欲望」ってなんやねん、という部分からして謎だ。人間の3大欲求ってなもんがあるが、それとはあまり関係無い模様。冒頭の姫子さんの場合はまさにソレだったわけだが、他の連中の場合はひとえに「感情の高ぶり」としかいいようのないものがトリガーになっている。唯の場合は破壊衝動(?)になったり、太一と伊織の場合は恋愛感情だったり。これ、ものすごくお腹がすいた時には死ぬまで食べ続けたり、「うわ、お腹痛い」って思った瞬間に全力でうんこ漏らしたりするんだろうか。なにそれ、すげぇ怖い。

 ただ、「感情が高ぶればいつでも」というわけでないのが謎なところで、一番分かりやすいのは、ふうせんかずらの登場シーンで、誰一人として奴に殴りかからなかったことから、都合の悪いタイミングで発動する、ということは伺える。他にも、姫子が初日のことを自分からネタばらししているタイミングで太一に腹パン喰らわしていたわけだが、あそこで「このデリカシーのない男を黙らせたい」という欲求が強かったのならば、それこそ再起不能にしてもおかしくないレベルなわけだし。「いつ起こるか」というのは、これまたランダムであると考えるべきなのだろうか。

 また、もしくはサブタイトル「キズランダム」とある通り、何らかのパーソナリティに関わる部分でのみ、現象が起こる、という制限も考えられるかもしれない。分かりやすいのは唯で、彼女の場合、2度の現象に遭遇し、どちらも破壊衝動である。彼女のパーソナリティは他者(男性)への恐怖、自分の持つ武力への葛藤などがあり、感情が動くトリガーとして攻撃衝動が関わるのは分かる気がする。「自分が分からない」という伊織や「利他行為の権化」である太一が、他者を想う気持ちから動いたことも何となくつながりは感じさせる。まぁ、ぶっちゃけてしまえば「シナリオの都合上」なのだろうが、そのあたりでこの作品の売りである「トラウマの嫌な見せ方」に繋がってくれば面白い部分かもしれない。

 しかし、それにしてもたまらないのは姫子さんである。冒頭の大サービスシーンの時点で色々とどうでも良くなるレベルだが、その後の自己述懐については、もうどうしていいか分からないくらいの羞恥プレイ。ヒロインキャラにここまで赤裸々な性癖暴露をさせる青春群像劇ってのも実に罪深いものである。あからさまなエロのくせにシチュエーションが何とも狡猾に「辱める方向」に向かっており、普段気丈な稲葉さんのどうしようもないエロさがほとばしり続けるという。これは確実に薄い本が熱くなる。いや、原作の時点でここまであからさまな「エロシチュ」が固められると、かえって二次創作は作りづらくなるか?

 もちろん、単に「エロい!」というだけで終わっているというわけでもない。今回、姫子さんはいつものように冷静沈着に状況分析をくだし、分からないなりの善後策を提案するという働きを見せているわけだが、その陰では確実に「キズ」が進行している。「互いにフォローしあえるだろう」という義文の発言に動揺を隠せなかったことから見ると、彼女のキズである「人間不信」はそう簡単に解決していないようである。冷静に対処し、最善の策を提案したつもりが、義文でも簡単に思いつく「相互のフォロー」という基本的な方策が全く頭に浮かばなかったという部分が、彼女にとっては大きなショックだったのだろう。これだけ親交が深まったと思われる文研部の面々の中で、やはり自分はまだ信じることが出来ていない、ということを痛感し、膝をつくしかなかったのは何とも痛々しい。

 また、おそらく「人間不信が解消されていない」ことは、この顛末以前から姫子の中ではくすぶっていたと考えられる。どうも、今回の姫子さんは全編通じて本調子ではない。いつも通りに振る舞えていたなら、太一から最初の事件のことをバラされた際にも、もう少しマシな言い訳くらいは考えついただろう。あそこまで赤裸々に自分の状態を吐露してしまっている時点で、彼女の動揺は既に現れていた。この作品の憎めないところは、こうして単純に「トラウマが解決した」ということにはなっていない部分だ。適度にイベントはこなしているはずなのだが、そりゃぁ十数年で培った人間性がそんなに簡単に解消するはずもないのだ。唯の男性不信、伊織の自己不信、そして姫子の人間不信、どれもこれも、改善こそされているが、解消まではほど遠い。同じ問題を別々の角度から切り取っていくこの構成は、なかなか興味深い。

 そうそう、今回からステージが変わったことにより、エンディングテーマが変更になっている。angelaの新曲かと思ったら、クレジットとしてはチームねこかんとatsukoのコラボユニットということになっているらしい。KATSU氏はどこいった。まぁ、普段とはちょっと違った曲調でatsukoの歌が聴ける、というのもなかなか味があるのだが。そして、エンディングの映像は全力の姫子推しになっており、今後の展開で彼女がどれほど重要な役割を果たすかが暗示されている。今回は確実に姫子さんのターン。ちなみに、映像のコンテを担当しているのは大森貴弘監督だったりする。そういや川面さんとはつながりがあるんだな。

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 第一部完、第5話。綺麗に終わったもんだが、来週から人格交代の妙味が見られなくなるのがちょっと残念。

 とりあえず「ヒトランダム」と題されたチャプターが終わったということになるらしい。あの「ふうせんかずら」がやめると言ったからってやめるのかどうかは定かじゃないが、流石に人格交代でやりたいことはやりきったということなのだろう、ひとまずはここで決着である。

 先んじて書いておくと、筋立て自体は本当にベタだし、大した新鮮味はない。これまで4週にわたって様々な内面を描いてきた人格交代の結末に「死」という課題を持ってくるというのは分かりやすくはあるが、非常に阿漕だし、ベタだし、選択の幅が少ないので面白味に欠ける。これまで人畜無害(すごく悪い意味で)を貫いてきたふうせんかずらが直接伊織の身体を支配してタスクを進めるというのもスマートじゃないし、「誰を殺すか」という選択を迫るのは、これまで多々あった「人格が交代するが故のトラブル」とは無縁のもの。これで「誰かと誰かの運命を逆転させて、肉体ごと死を交代できる」という課題ならばもう少し悩みようもあったろうが、伊織が誰かの身体を乗っ取って生きていく、なんていう選択肢は選べるはずもないわけで、「死の選択」としてもあまり緊迫感がない。もっとも、「まだ5話だから誰も死なせるわけにいかない」というメタ的な判断も緊迫感を削ぐ一要因にはなってたんだけども。

 端的に言ってしまえば、非常に「とってつけたような」幕引きで、これまでいくつかのポイントで面白いプロットが出ていた脚本だけに、この幕引きは正直勿体ない。「終わりらしい終わり」を用意しないと片付かない気がするという、刹那的なラノベ媒体だからこその難点といえるだろうか。別にあのまま自然に収束する事に問題があったようにも見えないだけに、何とも惜しい。

 ただ、散々悪態をついてみたものの、ベタはベタなり、とってつけたなりの片付け方としてはまとまっており、1つのアニメシリーズの終わらせ方としては、決して悪いものではない。阿漕なやり方には違いないが、主人公である太一の「ジョバー」としての性質がこれ以上無い形で表に出ていたし、その姿勢に対して、きちんと姫子の口を通じて「狂っている」旨を伝えたわけで、単なるキャラ設定としての無茶を、1つの特異点として浮き彫りにしておくというのは、今後のシリーズを考えれば悪くないことだし、必要な手順だったと見ることも出来るだろう。伊織と太一の仲についても、あそこで多少強引に横やりをいれておかないと、今後の文研部5人の関係性を続けてネタ回しをするためにはギリギリのラインである。どちらかというと、「幕引き」のエピソードというよりは、「一応風呂敷をたたんで次に向かうエピソード」としては良い終わり方だったのではなかろうか。

 個々のキャラの片付け方についても、太一は上述の通りだし、渦中の伊織についても、「実は前回のエピソードで一切問題は解決してなかったんだ」というのが分かって一安心。唯や姫子と違って太一の荒療治を喰らっていなかったのは彼女だけなので、そう簡単に片付いてもらっちゃ困るのだ。今回の騒動でどのように二人の関係性が動いたのか、次回の表情が楽しみである。また、彼女は今回「人格が入れ替わったふりをして太一を揺さぶる」という、本人も「ひどいこと」と分かっている行動に出た。これは今まで出てきそうで誰もやらなかったことだけに意外な展開で、さりげなく「他人の望む他人を演じることを強いられた」伊織という人格を補強する行動でもある。あのシーンの伊織の涙は結構ショックだった。

 そして、メインシナリオの陰でこっそり株を上げているのが義文だったりする。冒頭の真正面からの告白タイムは男らしくて悪くないと思ったし(そういえば、あのシーンで突然人格が入れ替わったら、覗いていた3人はどうするつもりだったんだろうな)、病院のワンシーンで、「伊織の身体と一緒に死ぬべきは伊織であるべきだ」と発言したのがすごく印象的だった。誰もが思っていても口に出せないそれを「誰かが言わねばならない」として口にする。これが出来るのは相当な男前。今まで単なる軽薄な奴だと思っていたが、一気に見直しました。

 雨が降って地が固まったのかどうかはまだ分からないが、こんな面倒くさい5人が次回もまた何かをやらかすのか、次も楽しみですよ。ちなみに今回、久しぶりに藤島さんが登場した。また彼女は別次元で何か悟ったようなことをいってらっしゃったが、この温度差はなかなか愉快である。あの子、ガチなんだなぁ。あのキャラクターデザインでおでこ全開カチューシャ装備のスタイルは、色々と反則である。誰か、ちょっと髪の色をいじってコラを作ってみる気はないかね。

 そうそう、今回も人格入れ替わりは錯綜して有効利用されていたわけだが、またしても沢城先輩の一芸にため息をつくことになった。クライマックスの病院での伊織役、これがまたすごいんだ。みゆきちは「呼吸からキャラを得る」という手法を採っていることを語ってくれたことがあったが、このシーンでの姫子は、間違いなく伊織になっている。というか、間違いなく「豊崎のリズム」になっている。沢城声で「豊崎の呼吸」だったのでそこに何とも言えない違和感を覚えてしまうくらい顕著に、「キャラが違う」ことが浮き彫りになるのだ。まさに職人芸、神業。独特の「うぇへへ」っていう笑い方も完全再現で、本当にこの作品をスタートする前に豊崎観察を行ったんだろうな、というのがよく分かる。もちろん、「姫子のふりをする伊織」を作った豊崎も負けてはいないのだけど。あー、この面白さが来週から無くなってしまうのは、声オタとしては残念至極だ。

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 姫子さん、結婚しよう。第4話。ホントに馬鹿だな、このアニメ。でも、この馬鹿さ加減はあまり知らない方向性だ。

 前回魔法のように馬鹿げた手段でもってあっという間に唯の悩みを解決してしまった太一が、今回はなんと伊織と姫子の2人をまとめて片付けてしまうというミラクルを見せる。この作品がどういう進行でどういう風に風呂敷をたたむのかは全く分からないが、この展開は想像していなかったものだ。まだ4話目なのに。これからどうなるってんだ。

 正直、Aパートの伊織シナリオについては大したことはしていない。というか、多分解決はしてない。伊織のトラウマとやらが他の面々と比べてもちょっと重さが違い過ぎて現実感が無いというのもあるし、そもそも彼女のバックグラウンドが明示されてこなかったので、彼女が本当に自己分析の通りの状態になっているか分からないからだ。確かに家庭環境は壮絶だ。そして、そんな辛い現実の中で形成された「他人に喜ばれる自分」という伊織の造形が、今まで見てきた天真爛漫な永瀬伊織の正体だったのか、と思うとそれはそれで驚きである。

 ただ、本人がどのように捉えていようが、彼女が「明るくて気さくな女の子」に見えていたことは事実であろうし、彼女がそのように振る舞っている間は、彼女は「それを演じている」という意識を持っていたとしても、「楽しさ」は本当なんじゃないか、という気がしてしまうのだ。「自分がどこにいるか、自分がなんなのか分からない」なんて悩みは思春期のまっただ中でアイデンティティを模索する段階ならばよくある話だし、本当に悩んでいたのだとしても、家庭環境が整ったというのなら、これから先の長い人生でゆっくりと培っていけば良いだけの話。少なくとも直接身体的な被害を受けた唯の過去よりは、対処は容易だと思われる。まぁ、だからこそ太一もあんな適当な台詞で丸め込めたのかもしれないけど。

 一番背景が重そうだと思っていた伊織のお話はそれでおしまい。そしてBパートは、いよいよ我等が姫子さんの悩みに突入するわけだ。彼女の悩みの置き所がなかなか面白くて、「最終攻略」の対象として姫子が残っていたことに関しては、素直に面白いプロットだと感心してしまった。何せ、これまでの2人が非常に分かりやすいトラウマを抱えていたにも関わらず、姫子はそれが無い。姫子自身も分析を済ませていたが、「決定的な病巣が無いだけに、対処のしようが無い問題」として提示されている。また、非現実的なトラウマと違って、姫子の抱える悩みは非常にシンプルで、身近なだけに、真に迫るものもある。普通に考えて、「人格入れ替わりもこれだけ続くと慣れてきたよね」という方がよっぽど異常な話で、姫子のように疑心暗鬼を募らせて参ってしまう方が普通の反応だろう。事ここに及んで「人格入れ替わりが辛い」と言ってくれたことは、「ようやく来たか」という気持ちである。

 彼女の場合、「自分がどうしようもないくらいに人間不信である」という負い目が悩みの中心となっていたわけだが、そんな当たり前のことで参ってしまう姫子さんが実は案外可愛いという。どう考えても、あれだけトラウマを抱えながらもなあなあで入れ替わりを享受していた他の4人がおかしいのであって、姫子さんの反応が一番普通。そのことに気付かずに自分を追い込んでしまうあたりが実に真面目だ。また、そんな状況にも関わらず回りの調整役としての仕事はすすんでこなしており、太一の恋愛関係を揺さぶってみたり、唯のトラウマをつついて膿出しを図ってみたり、他の4人の関係性をあれこれいじって反応を見ているかのようなところも一筋縄ではいかない感情である。果たしてこれは、回りを揺さぶることで他人にも自分と同じ不信感を共有させたいと思ったのか、それとも他の4人のつながりをより強固なものにしてしまおうという願望があったのか。普段が素直じゃないだけに、なかなか彼女の心情面を考えるのは楽しい。

 そして、そんな姫子に繰り出された、今回の太一のファインプレイ。もう、これだけでどんどん薄い本が作れる素敵な解決策。いや、確実に間違った療法のはずなんだけど、あまりにも間違い過ぎていて、身構えていた姫子さんも明後日の方向に弾けてしまった。すごいシチュエーションだよね。おかず報告を聞いて涙を流す女子高生って。もう色々とたまりません。ラストシーンの姫子の破壊力とかね。もうね。ほんと、アホな作品でよかった。このシナリオ作ってる原作者の発想は、天才のそれに近いな。

 というわけで、今回は姫子さんが全て持って行ったので万事OK。相変わらず中の人についての話ばかりになるが、やはり沢城先輩の構築力が半端無い。途中でどんどん自信が無くなってトーンが落ちるところの話し方が実に見事で、恐ろしく「歯切れが悪い」「口ごもる」しゃべり方になっているのに、何を言っているのかは明瞭に伝わるという、これぞ声優芸の真骨頂。また、太一の告白の後の「感情をどう処理していいか分からない感」も楽しくて、大声で罵っているはずなのに、決してそこに嫌悪感をのせずに叫んでいるのが良い。みゆきちが本気で罵倒すると、心に来る兵器になることは既に周知のことですので、姫子さんにそんなことやられたらそれこそ一生もんのトラウマになる(性癖になる、ともいう)。良いものを見せてもらいました。

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 ひゅんっってなる、どことは言わないけどひゅんっってなる第3話。そらぁあんた、あかんで。愚地流にでも入門して何とかして回避する手段を身につけないと。

 2話目までの展開もなかなかスピーディーではあったが、3話目も内容はがっつり気味。「人格入れ替わり」というありがちなネタ回しだったのでそこからどういう風に膨らませてくるのかと思っていたが、なかなか興味深い方向性だと思う。

 人格入れ替わりを面白く描くために本来欠かせないはずの手順として、個々のキャラクターの掘り下げがある。誰が誰に入れ替わっているかも分からなければ何も面白くないわけだし、入れ替わったところで、ギャップが生まれないことにはそこに妙味は生まれない。本作の場合、そうした部分をかなりさっ引いた段階から入れ替わりが起こっていたが、そこは脚本・演出面である程度フォロー出来ており、「よく分からないけど気になる」という一定のレベルをキープしていた。そして、今回ようやく、本格的に「個人を規定する要素」が描かれ始め、1人1人が人間としての背景を与えられたように見える。まぁ、本来ならそれだけでも1話かけていいくらいの中身なのだが、テンポ重視のおかげで唯については悩みまで解決するスピード展開になっているわけだが。

 今回ほとんど登場しなかった伊織は置いとくとして、残りの4人は様々な方向から「個性」が描かれた。1番楽観的に見えている義文。彼の場合は未だフォロー役としての側面が強いが、ある意味刹那主義であり、入れ替わり自体についてもそこまで重きを置かずに楽しんでいる様子は大きな個性といえるかもしれない。また、グループ中では唯一「特定他者を想うこと」が明示的なキャラクターでもあり、「惚れた女のことだから」なんて台詞が臆面もなく出てくるのも特徴。彼のおかげで本来ならもう少しドロドロしてもいいはずの関係性が、かろうじて笑えるくらいのレベルに留まっているのは大きな効果だろう。

 前回爆弾発言でかき回してくれたのが姫子。ただ、実は今回の事件で重荷を背負っているという意味では、彼女もなかなか業が深い。現時点では何か大きな悩みがあるようには見えないが、一番の常識人であり、一番大局を見ることが出来る人間なだけに、今回の事件のマイナスの側面ばかりが見えて一人で背負い込んでしまっている様子だ。「自分が何とかしなければ」という意識が先行してしまい、あくまで自分自身も他の4人と変わらない高校生でしかないことに考えが至らない。それを背負い込めるだけの強さもあるのかもしれないが、太一と2人で会話している様子を見る限り、彼女自身も充分に揺れ動くだけの隙間は空いてしまっている。ひょっとしたら一番面倒な存在かもしれない。

 そんな姫子に心配されているのが、今回メインとなった唯だが、彼女の場合は、過去のトラウマという非常に分かりやすい傷を抱えており、5人の関係性においては、それを隠し通して見せてこなかったという、表面上の強さが最大の背徳感にも繋がっていた。信頼出来ると思われていた仲間がそうではなく、最も強いと思っていた自分が小さな存在である。2つも抱えていた微妙な距離感が、入れ替わり事件のせいで強制的に暴かれてしまう。端から見れば奇妙なジレンマではあるのだが、確かにこの歳の女の子にとっては色々と根深い問題だったのかもしれない。これまでのお話でも、彼女だけはどこか距離が空いていたように見えていたのは、今思えば非常に明示的で丁寧な心証描写だったといえるだろう。

 「唯の悩み」という1つ目の大問題が浮かび上がった文研部内で、彼女の悩みを想定外の方向から解決してしまったのが、「最低の自己犠牲野郎」こと太一ということになる。彼の場合、視点人物であるという都合もあるかもしれないが、どうやら大きな秘密や隠された中身はなさそう。非常に分かりやすい彼の特性は、冒頭で姫子が洗いざらい説明してくれた。馬鹿がつくくらいに鈍くて、目的が分からないほどに利他的な自己犠牲の化身。彼がどうしてそんな風になったのかは分からないわけだが、とにかく彼はそういう存在だ。そして、禁断の「自己犠牲」キックにより、彼は唯の抱える2つの「距離」を一気に解消することに成功する。ものすげぇアイディアだとは思うが、長期間にわたってランダムの入れ替わりを繰り返した結果として、自然に出てきたのだとしたら恐ろしいことだ。もう、この5人の中では肉体的な境界性が曖昧になり始めているのかもしれない。「男と女が入れ替わったら……」なんてもしもストーリーでは必ず持ち上がる「男性のオリジナリティ」であるが、まさかこんな形で活用する馬鹿野郎がいるとは。いや、面白い。「入れ替わりストーリーで出せるオリジナリティ」としては、アリの方向性だったんじゃなかろうか。

 まぁ、痛かったですけどね……。それにしても、ああいうアクションが直接行えるほどの関係性ってのは、実はものすごくインモラルなんじゃないか、って気もする。だって、あの瞬間に唯は確実に「ソレ」の存在を意識したわけでしょう。文字通り痛感したわけでしょう? 経験上予想がつくけど、多分とっさに握ってますよ、あれ。少なくとも押さえ込んではいますよ。男性恐怖症を謳ってる人間にそんなことさせていいんでしょうか。そして太一君、今後大丈夫なんでしょうか。事ここに及んでも、まだエロいことっていくらでも考えられる。それが「入れ替わり」ネタの恐ろしいところです。

 次週、姫子さんに何かが起こる? 相変わらず声の存在感のおかげで絶対的な強さを感じさせる姫子だが、ラストで倒れたところの映像なんかを見ればやっぱり女の子。なんだろ、最後のシーンはやたら色っぽく見えたな。

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