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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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 劇場アニメでございます。突発的に観に行ったんですが、その理由は純粋に「予告を観てなんか気になったから」。9月以降、ちょいちょい劇場に足を運ばせてもらっていたのだが、その度にこの作品の予告が流れるのを観て、「全然知らん作品だけど、なんか気になるな」って思っちゃったんですよね。だから観に行った。よくできた予告だったというわけですね。

 そして素直な感想を一言でまとめるなら、「とても誠意がある、是非親子で一緒に観てもらいたい良くて善い映画」です。思いの外満足度の高い体験が出来て、帰りにパンフを購入するのを躊躇うことはなかったです。作品の性質上、「歴史を塗り替える驚天動地のアニメだ! これを観ないとアニメ映画の歴史を語れやしない!」みたいなとんでもない性格の作品ではないのですが、ちょっとくたびれた日常にいい刺激と安らぎを与えてくれる、とても素敵な作品だったと思います。

 

 <別にネタってこともないけど、一応ネタバレ注意>

 




 予告を見て印象的だったのって、やっぱりそのバラエティ豊かなキャラが織りなす画面の賑やかさだったと思うんだけど、まずはその部分で期待通りの画面が見られたというのが楽しさの第1要因。「動物だらけの百貨店」というよく分からないコンセプトは、なんなら最後の最後まで「で、ここって結局なんなん?」という疑問が残る設計ではあるのだが、正直そんなことは一切気にならないくらいに、「そこにある」ことが当たり前で、ありがたい空間になっている。冒頭でミニ秋乃が駆け回ることで一気にその世界に引き込んでくれる導入も巧みなもので、なんの説明もないのに「まぁ、こういうお店があるんだよね」という理解を得た上で進行してくれるのである。

 Production I.G.制作のアニメーションはとにかく「行き届いた」クオリティを最初から最後までバッチリ維持してくれていて、是非とも劇場スクリーンで見たい作品になっている。面白いのは、別に狭義の「超絶作画」とかいう作品ではないのよ。そりゃバトルものとかじゃないし、動画の1枚1枚の密度に手に汗握る、みたいなことはないのだが、しれっとそこにある風景を描くための心配りがはっきり見えるとでも言えばいいんだろうか。メインの筋が画面の前部で進行している間も、絶えず店内を行き交うバラエティ豊かな「お客様」の姿が見えるようになっており、その1つ1つにドラマが見えたり、ディティールまで描き分けるこだわりが見えたりする。私は読んだことがないので詳細は想像するだけだが、元が漫画原作ということでその原作イラストのテイストをきちんと残し、線の数だけでいったらかなり少なくてシンプルな部類のキャラデザ。顔の造形のデフォルメも極端で、秋乃の同僚たちの顔の形状なんてなんなら怖いくらいのものだが、不思議とその「シンプルで極端な造形」に愛嬌があり、動いているのを見ているとどんどん格好良く、可愛く見えてくるから不思議なものだ。多分、根源的な満足感としては「ピシッとしたスーツを着たコンシェルジュの立ち姿のシルエットが綺麗に見える」ってのがあるんだろうな。

 極端なデフォルメと変な造形という点から見れば(私はあまり詳しくないが)「クレヨンしんちゃん」みたいなデザインコンセプトが一番近いだろうか。しかし今作はなんといっても「大量の絶滅(危惧)種」という、スタート時点で際立つデザインの連中が山ほどおり、1種1種の動物たちを丁寧に描き込んでいくことによって賑やかさをさらに掻き立てている。二足歩行する動物のアレンジも面白く、個人的にはミンクの娘さんの、「本来四足歩行の生き物のくせに、高いヒールを履いておしゃれに歩いている」様子がすんごい好き。(声のおかげもあるかもしれないが)俳優をやってるとのことで、とても色気があるのよね。その他にもアザラシのおばはんの無体な存在感なんかも、ちゃんと「アザラシしてる」から出るリアルさだろう。とにかく1つ1つのキャラが画面に映っている間のあらゆる見せ方に責任感を持つ描写がとても丁寧。正直どこになんの動物がいるのかってぇことを全部が全部分からなくても、この賑やかさだけでも充分に眼を楽しませるものだろう。

 また、「百貨店」というテーマそのものの賑やかさ、華やかさがこれに加わる。おそらく、誰しも幼い頃に親に連れて行かれた「おっきなお店」への憧れとか、あの独特の雰囲気に非日常を感じながらも惹かれる感情ってのは共感を持つ部分なんじゃなかろうか。「デパート」と呼ばれる場所だからこそ得られる特別感みたいなものが、背景も含めた舞台全体に見事に乗っている。「でも、お高いんでしょう?」ってんでどうしても大人になってから「百貨店」ってぇのは敬遠しがちだが、「お高いからこそ得られる特別感」という禁断の喜びがじわじわと染み出してくるこの感じ、いい具合に購買欲(?)を刺激してくれる。協賛で高島屋と伊勢丹がクレジットされてましたが、なるほど老舗百貨店のお力添えあっての描写である(?)。

 そうした舞台で描かれるシナリオラインの方も、ほぼ不満の出ないものになっている。大抵、劇場アニメには「尺が足りなくて詰め込みすぎィ」という印象を抱くものだが、今作については(ラストの秋乃の処遇への諸々などはもうちょい説明があっても良かったとは思うが)ほぼ理想のテンポ、理想の密度で話が進んでいく。ここが「お子さんにもオススメ!」と言える部分で、全体で70分とそこまで長くない作品ではあるのだが、おそらく元の漫画が単話形式で進む物語なのだろう、細かいエピソードがポンポン飛び出してすぐに目先が変わるので、多分飽きっぽいお子さんでも「また知らない動物さんが出てきた!」という興味で次々に目先を変えていく展開に心惹かれるんじゃなかろうか。

 この「サクサク変わっていくシーン展開」は単なる子供騙しではなく大人も楽しめるものになっており、テンポよく進めることを意識してか、過度な説明ゼリフや具体的な事実の提示が頻発せず、よく練られたバランスで「見て分かる要素だけでも楽しめる」ように出来ている。例えば冒頭では杖をついたお客さんのところに先輩コンシェルジュが駆け寄って手を差し伸べる描写があるが、「しばらくお待ちいただけますか」と言った後に彼女が車椅子を持ってお客様を乗せる描写は、秋乃たちが展開するメインの会話のバックグラウンドでさりげなく行われる。そうして「画面に映っている百貨店の風景全て」で物語を見せていくおかげで、「欲しい情報は見ながら自然に拾っていけるよ」という配慮がなされているのである。また、単話形式のつなぎにしても、1つの顛末が終わったからハイ次、みたいなぶつ切りではなく、どれもこれもが「秋乃の頑張り物語」で括られるおかげで、時に同時並行で、時に交互に時系列を区切りながら、大きな1つの流れの中にセッティングされている。これだけ細かいエピソードを積み重ねながらも、中心を貫く「縦軸の物語」が曇らないというバランスが見事。おそらく、こうしてさまざまなパートに目が行きやすいようにするために、キャラデザや背景のディティールを削るなどの部分で視聴者の負担が大きくならないように配慮されていたおかげだろう。

 だからといって動画が手を抜いているというわけでもなく、シャキシャキした秋乃のはたらきぶりは時にダイナミックに、時に繊細に見せてくれるし、動物たちの個別のアクションなんかもちゃんと「動物大集合を描く」という今作の見せ場に相応しい詳細さを持っている。ほんとにどうでもいいところに個人的にすげぇ好きなカットがあって、個展を開催した際にウーリーさんが控室で話してて、そこに秋乃がコーヒーを持ってくるところ。「いやコーヒーでかい!」「その量の液体を苦もなく運べる秋乃の筋力どうなってねん!」みたいな笑いの要素もあるのだろうが、感心したのはそこじゃなく、ウーリーさんがカップを(鼻で)取り上げた時に、秋乃がちょっとだけソーサーを持ち上げて重さのバランスを取ってるモーションが入るところ。「どうやって持ってんねん!」というツッコミが入るだろうことは想定済みで(?)、「あのコーヒー、ちゃんと重かったんだから」というのを秋乃のちょっとした「おっ」くらいのモーションで見せてくれるところでやたら感心してしまった。こういう細かい動きの付け方ができるのは、おそらく監督を務めた板津さんの功績なのだろう。

 まぁ、そんな重箱の隅を突きながら見ずとも、「百貨店の楽しさ」「動物大集合の愉快さ」「お仕事ものとしての大変さ、頑張りの尊さ」みたいなものが特に捻らずに伝わってくる筋立てだけでも不満はない。ここも「お子さんと一緒に見て欲しい」部分で、今作で秋乃を応援してくれたお子さんたちなら、きっと将来、どこかで接客業の人を見て横柄な態度を取ろうとは思わないだろうし、モンクアザラシのおばちゃんの醜悪な物言いを見たら、クレーマーまがいの言動は控えようという戒めにもなるだろう。さらにそこに「絶滅動物ってなんだろう?」っていう方向の興味まで持ってくれたら……これ以上に情操教育に良いアニメもなかなかないだろう。

 まぁ、そんな教育的な側面は置いといても、「ドタバタお仕事もの」のシナリオというだけで文句なしに要件は満たしている。「愚者の贈り物」みたいな有名な道徳的訓話を下敷きにしているのに、そこにちょいとエッセンスを足すことにより、「北極百貨店ならでは」みたいな空気を醸し出せているのがお見事。もちろん、個性豊かな動物たちのデザインが活き活きした線で描かれているからこそ、こうした独自性が引き立ってもいるのだろう。ちょっと話が飛躍するかもしれないが、個人的には「日本のアニメ映画」ってこの方向性でいいと思うんだよな。無理にCGやら何やらで人手と資財をじゃぶじゃぶつぎ込むんじゃなくて、ワンポイントのデザインとか、印象的なイラストレーションからどこまで「生の」アニメーションに起せるかっていう部分で魅力を付け足していけば、立派に「映画」になってると思うんだけどね。

 改めて、是非、小中学生くらいのお子さんがいるご家庭では、家族みんなで観に行ってください。そこから単に動物の可愛らしさで盛り上がるもよし、絶滅動物の歴史や現状に興味を持って深い理解に繋げるもよし、普段気にしない職業の人たちの頑張りに眼を向けるもよし、客と従業員の関係のあるべき姿を議論するもよし。何か1つくらい、きっと得られるものがあるんじゃなかろうか。

 僕が得たもの? ……「寿美菜子はエロ可愛い」ですかね。あ、主演の川井田夏海のお仕事ぶりもとても良かったですよ。川井田夏海、ちょっと前の代表キャラが「夏海」だったところに、さらに「秋乃」が追加されるっていう……是非、あと2つコンプしてほしいね。

 

 

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