「クジマ歌えば家ほろろ」 6→7
今期2作目の「原作買わなきゃ」作品。今期の対象はどちらも完結冊数が少ないから抵抗なくて助かります。
失礼な言い方になるが、意外だったのは今作が世間的にも割と「良作」としてきちんと認識されていたこと。昨今のアニメ消費事情(意図的に「消費」という言葉を使うが)において、何よりも優先されるのがその場の刺激、もしくは超作画。妙なムーブメントを起こす「バズり」系のフックが必須となる刹那的な時代。そんな中、クジマは確かに初動のインパクトこそ尋常じゃなかったものの、そこから後の展開は確実に「地味」寄りの作品である。空気もぬぼーっとしていて絶対に急いでなるものか、という信念を感じさせるペースでの進行。描かれるお話だって純然たる「ホームドラマ」であり、事件らしい事件なんてほとんど起きやしない。日本のどこかにある、ふつーの家庭のふつーの日常にちょっとしたスパイス(というには味が濃すぎる存在だが)が混ざり込んだおかしさを描く作品だ。これを楽しもうと思ったら、ある程度の心の余裕と長い目でアニメを見守る冷静さが求められる気がする。こういう作品で「私は好きだがね」と通ぶってみたいもんだ、という気持ちがどこかに無いといえば嘘になるのだが、残念ながら(?)今作はそうした「知る人ぞ知る」の枠に収まる作品ではなかったようだ。
そう考えると、やはりクジマの繰り出すギャグ(たまにホラー)は充分なパンチ力を持っていたということなのだろう。初見のあのインパクトは意外にも終盤まで衰えることなく、エキセントリックな言動で周りを振り回す古式ゆかしい「押しかけもの」のフォーマットで一際輝いてみせた。クジマのホロロという喉の鳴る音は間違いなく鳥類のそれなのに、昂った時に捲し立てる怒涛のロシア語のあまりの流暢さと勢い(と殺意)に怖気が走る。こんだけホラーな存在のくせして、デフォルトでは間違いなく「かわいい」キャラでもあり、クジマ(幼少期の姿)なんて間違いなくぬいぐるみが欲しくなっちゃうのである。作者はいったい何をどう考えてこんなキャラクターをポンと生み出し、それをなんの変哲もないご家族に押し付ける判断をしたのだろう。「日常系」のくせして、その裏のコンセプトはだいぶ非日常である。
そうして繰り出されたギャグの刺激ももちろんだし、きちんとホームドラマとしての骨子を大切にし、勢いだけで済まさないだけの手数を費やしてもいる。まとめてしまえば「お兄ちゃんが一浪して大学に受かったよ」というだけの話なのだが、考えてみりゃ家族にとっての「大ニュース」ってそれくらいのもんだよな。人一人の人生が定まる奇跡も、未確認生命体が突如自販機の下から発見される奇跡も、等しく驚き、楽しむべき事象なのかもしれない。
調理法次第ではダラダラと退屈な作品になる可能性もあった今作をしっかりと刺激的で見応えのある画面に仕上げてくれたのは、まず間違いなく監督・木村真一郎の手腕。なんと12話全てのコンテを1人でこなすというその仕事ぶりは、相当に今作に心血を注いでいなければ実現不可能なものだ(まぁ、他作品に比べればいくらかカット数は少ないかもしれないが)。渋いながらも作画面はしっかりと品質を保たれていたし、模範的な「マイナスを作らない」仕事ぶり。こういう丁寧なお仕事が見られれば、まだまだアニメ視聴は楽しめるというものだ。
最後に、やっぱりクジマ役の神月柚莉愛の仕事ぶりが空気感を決定づけた最大要因。……この人、これからどういう役者の道を歩むのだろう……。
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