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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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<以下の文章は、放送当時に執筆されたものである>
 
○第2話「籠ノ鳥」
 脚本・金巻兼一 絵コンテ・大畑清隆 演出・吉田俊司 作画監督・石川洋一



 <あらすじ>
 ゆずきは、地獄少女という存在を受け止めきれないでいた。誰に話すことも出来ず、一人思い悩む。親友の高杉秋恵は平石逸子の件は仕方がなかった、と慰めるが、そう簡単に割り切れるものではなかった。そんなゆずきと同じアパートに住む男子中学生、北山明が今回の主人公である。
 
 明は、近所の電気屋の女主人、山岡美津子に恋慕の情を持っていた。毎日のように理由を見つけては電気屋に通い、彼女と親しくしたいと思っていた。そんな少年の心情を知ってか知らずか、美津子は明に対して優しい笑みを返す。
 
 ある日、明がいつものように買い物に行くと、美津子の店に険しい表情の男が訪れる。彼は美津子の旦那の誠次。誠次は美津子を奥の倉庫に引きずり込むと、「他の男に色目を使った」というので縄で縛り上げた美津子に暴力を振るう。ただ事でない様子が気になった明は、そんな倉庫での一部始終を目撃してしまう。その夜、明は地獄通信にアクセスするが、目標となる男の名前を知らないことに気付く。あくる日電気屋の表札で名前を確認しに行くと、たまたま誠次からの電話におびえる美津子を目撃してしまい、さらに思い詰める。
 
 「3時過ぎに電話に出るのが遅れただろう」。次の日にも誠次は、疑いに固まった表情で美津子を責め立てる。例によって倉庫を覗き見る明。美津子に非が無いことを知っている彼は、その夜決心して藁人形を手に入れる。その様子を、ゆずきはあいの目を通じて一部始終見せられてしまう。
 
 翌朝、明はゆずきに相談を持ちかける。「友達の話なんだけど」と前置きながら、自分と美津子の置かれた状態をゆずきに打ち明ける。明を止めたいと願うゆずきは、「本当にその女の人は不幸なの?」「何故その人は逃げないの?」「好きっていうことには、色々な形があると思う」と諭す。しかし、明の中ではすでに結論は出ている。ゆずきの話を聞きながらも、結局は自分の出した結論にすがりつく。
 
 いつものように電気屋を訪れた明に、美津子は何事も無かったかのように必死で明るく振る舞う。しかし、明が片腕に巻かれた包帯を掴むと、美津子は目を伏せた。「全部知ってる」と明が打ち明けるのと同時に、店の電話が鳴り響く。「あんな奴の電話に出ることは無い」。明が無理矢理止めると、電話は無情にも切れてしまう。「あんな奴のいうことを聞く必要は無い。嫌ならうちにくればいい」。明の説得に、美津子は僅かに笑顔を見せるが、「帰りなさい」と静かに説き伏せるだけ。
 
 そんな状況に駆けつける誠次。明を殴りつけると、その腕で美津子を締め上げる。倒れ伏した明の鞄から転がり出る藁人形。少しの逡巡の後、明は糸を解いた。美津子の目の前で夫が消え去る。呆然とする美津子に、再び手を差し伸べる明。「今日はもう帰りなさい」という彼女に、明は「また明日来る」と言い残し、美津子は「待っている」と返事をする。
 
 次の日、美津子は姿を消していた。店に残っていたのは、美津子と誠次の幸せそうな写真。店の電話が鳴り響いた。
 
 


 <解説>
 まず、本筋とは関係ない部分から触れておこう。この2話からオープニングが正式なものになっているので、それを見ていく。
 
 白を基調とした画面に熊のぬいぐるみを抱いて眠る幼いゆずきが映るところからオープニングは始まる。そこからゆずきの成長記録が数枚の写真で暗示され、中学生の現代に至る。彼女が大きくなってもぬいぐるみは大切なもののようで、「あなたも小さくなったなぁ」とでも言っているような現代のゆずきにあいがオーバーラップする。(現注・この時点では、オープニングに秘められた大きな『意味』には気付きようもない)
 
 その後はあいとゆずきがほぼ均等に画面に映るイメージビデオのような作りで展開される。歌詞の「くちびるからくちびるへと」で2人のキスシーンというのは阿漕ながらもニヤリとさせる演出。その後のあいの膝枕で眠るゆずきは、二人のただならぬ関係を想起させる。興味深いのは、「大鳥居の奥に佇むあい」→「トンネルを抜け、電車の向かってくる線路の上に佇むゆずき」というつなぎのカット。これは意図的にイメージを重ねているのは明らかで、地獄との接点である大鳥居の向こうのあいが、トンネルの向こう(おそらくは賽河原市を表す)のゆずきとリンクする。あいの背後にはクラゲのような物体が漂っているが、これは2期のラストで解放された「あいと関わるものの魂」の描写だろうか。それと対応する形でゆずきの背後に浮かぶのは奇妙な形の頭の金魚。1期オープニングでも金魚は印象的に使われていたし、2期も「紙風船ふわり(19話)」で金魚がモチーフとして使われている。「地獄少女」ではお馴染みのもの。
 
 そしてきくりと四藁の集合したカット。可哀想なことに彼女達の登場シーンはこのワンカットだけである。2期は主役を喰うくらいにオープニングで活き活きしてただけに、この扱いは寂しい。
 
 続けて、一人でぎこちなく踊るゆずき。ゆずきが笑顔で登場しているカットはここのみで、しかも彼女の性格からはあまりイメージ出来ないその仕草のせいで、一連のオープニングの映像の中で一番浮いているパートである。隣には冒頭の熊のぬいぐるみが座っているのだが、このカットの意味が一番分からないので気になる。ま、わたなべ監督のことだから「女子中学生に踊らせたい。最近のオープニングはキャラクターが踊るんだろ」というテキトーな思いつきかもしれないけど。あまりきびきび踊っていないのが逆にそれっぽくはある。
 
 あとはゆずきと親友であるクラスメイト4人の集合写真が燃え、バックからあいのアップで締め。1期2期のような物語性を感じさせるカットが少ないだけに、その映像の持つ意味を考えるのも楽しい。
 
 閑話休題。本筋の方に入ろう。金巻、大畑というシリーズに慣れ親しんだ2人のタッグということで、あまり目新しさもない筋立てながら、なかなか印象的に仕上がっている。そして、何といっても1話に続いての「いかにもわたなべひろし」と思わせるような艶めかしい描写がそこかしこで目に留まる。まず、中心人物である電気屋の美津子夫人がエロい。声が久川綾の時点で割とくらくらするのだが、常に胸元を微妙にアピールする構図が組まれている上、上半身が見えないカットではタイトスカートからの太ももに焦点がいき、旦那に痛めつけられる時にはわざわざ天井から縄で吊るされての折檻である。男子中学生に見せていい場面ではない。また、まったく必要無いのにゆずきもそっち方面の演出が過剰になっており、冒頭でアイスを舐める仕草が狙い過ぎだったり、公園で明の相談を聞いているときも、決して短くないスカートを絶妙なカットで見せたり、特に意味もなく公園の水飲み場で水を飲んだりと、本筋と関係ない動作で色々見せつけてくれる。明が滑り台の下、ゆずきが上という位置関係で会話をしており、途中でゆずきが膝を抱えたまま滑り台を降りてきて明の背中にぶつかる、なんてシーンもあり、もう、ほんと、もきゅもきゅする。今後はこういう「わたなべ演出」についてはなるべく触れないつもりなので、早くもあからさまだったここで先に触れておく。
 
 明と美津子の物語で最大の焦点となるのは、当然のことながら美津子の心情である。分かりやすい言葉を使えば、彼女が夫を愛していたのかどうか。ラストシーンの演出を見れば、ゆずきの言っていた「好きにも色んな形がある」というのが答えのようにも見えるのだが、正直言って、このエピソードの中身だけでは果たしてそれが正しい見方なのかどうかは判断出来ない。美津子が誠次に対して恐怖を抱いていたのは本当であるように見えたし、明に対して見せた優しい表情も、お得意様に見せる営業スマイルというだけではないだろう。もちろん中学生に「一緒に逃げよう」といわれてまともにとりあうわけにもいかないが、その気持ちを嬉しく思っていたのは事実だったはず。しかし、美津子自身のモノローグなどがほとんどないため、彼女の真意をはかることは出来ない。1つだけ本当だと思われるのは、誠次がいなくなったことを、美津子が悲しんでいたということだけ。彼女の喪失感は、真剣に彼女に思いを寄せていた明の気持ちに応えることを拒んだ。そういう意味では、やはり誠次は彼女にとってかけがえのない存在であったわけで、明の地獄流しも、いつも通りに後味の悪いものになっている。
 
 最後のシーンでかかってきた電話も、答えが無いだけに気になる存在だ。いくつかの「意味」が考えられるが、一番ファンタジックなのが「地獄から誠次がかけてきた」という考え方。地獄流しの船上でも「電話は無いか、あいつに電話をしなきゃいけない」と言っていたことからも分かる通り、誠次と美津子の関係性において、電話というツールは非常に意味深いものである。まぁ、地獄がわざわざ電話を貸してくれるような優しい場所だとは思えないので実際にはあり得ない話ではあるが、唯一この電話の呼び鈴を聞いてた明にとっての答えは、おそらくこれだろう。高らかに鳴り響く黒電話の呼び鈴は、明からは地獄からの呼び声に聞こえたはずである。
 
 2つ目の考え方は、店にいるであろう明に、姿を消した美津子がかけてきた、というもの。面と向かっては話せないが、電話越しでなら謝れるというわけだ。ただ、美津子と誠次との関係性を最も明らかな形で表していた「店の電話」というツールを、わざわざそういった目的で使うかと言われると、これも少し無理がある。また、ひどい考えとして「別な男からの誠次と同じような誘いの電話」という線もある。美津子ビッチ説だ。まぁ、これもストーカーみたいな男が2人も張り付いていた美津子にはあり得ないだろうけど。こうして考えてみると、本当にラストの電話の意味は謎である。演出意図が読み取りきれていない。
 
 ただ、ちょっとメタレベルの手がかりとして、再びここでオープニングがヒントになるということも提示しておく。上述のオープニング映像のことではなく、北出菜奈の歌う「月華-tsukihana-」という曲の歌詞そのものである。抜粋すると、サビの「貴方でなくちゃ満たせない
私じゃなきゃ許せなかった
だから私はこの足で立ち上がれてゾっとしたんだ
飼い殺しなら救われる
でも見事に鍵は外れて
私はまるで鳥籠を欲している狂った小鳥」という部分。ここで歌われる「私」と今回の美津子はイメージがぴったりと重なる。そして、今回のサブタイトルである「籠ノ鳥」も、この歌詞を暗示しているように思われる。もしこのリンクが正しいとしたら、今回のシナリオはオープニングの楽曲から生み出されるという、なかなか新しい発想のものであるといえる。
 
 本筋以外の内容でも、いくつか気になった点をピックアップしてみよう。まず、あらすじには書いていないが、ゆずきが教室の机に藁人形を入れられて驚く、というシーンがある。単にクラスメイトの男子が悪戯でやったことなのだが、地獄少女になってしまったゆずきにとって冗談ですまされるものではなく、泣きながら教室を逃げ出してしまう。このシーンで重要なのは親友の秋恵が男子達に「いっぺん死んでみろ!」と殴り掛かったことではなく、男子生徒達も常識として「地獄少女」を知っていた(しかも藁人形のことまで熟知している)という点である。1期、2期では色々なキャラクターが「そういえば聞いたことがある」程度の認識だったのに、この賽河原市では既に常識のように扱われているのだ。もちろん、その「実在」を信じているかどうかは別問題だが、こうした地獄通信の「常在性」は2期のラブリーヒルズでは惨劇のトリガーとなっただけに、この賽河原市では一体どういうスタンスなのかは気になるところ。今回の地獄流しについても、美津子の目の前で誠次が突然消えるという超常現象が起こっており、美津子から見れば地獄少女は厳然たる「事実」である。この「地獄少女の前面化」が今回は意図的に無視されているようなのだが、最後につじつまを合わせることが出来るのだろうか。
 
 地獄少女との関係と言えば、明との接触を「見せ」られたゆずきが、あいに対して「どうして見せるの?」と問いかけるシーンがある。今回、ゆずきが両親と離れて一人暮らしであることが分かるので、単に邪魔の入りにくい人材をあいが選んだとも考えられなくはないが、やはり何か理由がありそうだ。同様の疑問は四藁も持っているようで、一目蓮は「蝶の姿よりも人間の方が都合がいいんじゃねーの?」との発言をしているが、それで納得している者はいないようである。「何か考えがあるんだろうね」と一人ごちる骨女が、そっと鴨居に張られた蜘蛛の巣を見上げるシーンが印象的だ。人面蜘蛛、閻魔の意図は、どこにあるのだろうか。
 
 今回のキャストは、正直そんなに知らない人が多い。上述の通りに美津子役の久川綾は貫禄の演技だが、明役の笹川麗子っていう名前は初めて聞いた。どうやら新人らしい。割としっかりしてたから、一応頭の片隅には置いておこうと思います。

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