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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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 現れ出でたる黒幕、第十話。分かっちゃいたことなのかもしれないが、この作品でこうしてあからさまな「悪意」に出会ってしまうと、やはりどこか物寂しい。阿呆で自分勝手な狸たちに、こういうもめ事はあってほしくなかったものであるが。

 いよいよ始まる偽右衛門選挙。矢三郎は、海星が漏らした「ごめん」の一言がひっかかり、矢一郎にも注意を促すが、彼女が警告した夷川の謀略は、下鴨の兄弟が想像した「最悪」の更に上を行っていた。家族が泣き濡れたあの総一郎の最期の一幕には、未だ明かされなかった悲劇がもう一面隠されていたのである。過去の偽右衛門選挙で敗れた早雲は、どこまで言っても追いつけない兄・総一郎との軋轢を最後の最後まで清算することが出来ず、最悪の形で決着を付けることにした。彼が結託したのは鈴木聡美。彼女の前だけではどうにも化けた姿を維持出来ないという総一郎は、弟の罠にかかり、あの夜、いともたやすく弁天の手に落ちた。金曜倶楽部に入りたいという弁天の思惑と、総一郎を亡き者にしたいという早雲の思惑が重なり合い、総一郎に非業の死をもたらしたのである。最悪の形で兄に「さよなら」を告げることに決めた早雲の胸中はいかなるものかと望みを賭けて見てみるものの、彼の別れの一瞥には、残念ながら人の、いや、狸の暖かみは感じられなかった。負け続けた弟は、兄を恨みの果てに謀殺したのである。狸界にあってはならない、混じりけのない純粋な殺意。総一郎は、弟のそこまでの覚悟と、自分たちで作り上げてしまった修復しようのない関係性を見て取り、全てを投げ出して一切抵抗せずに檻へと収まった。彼なりの、弟へのけじめの付け方だったのか、はたまた、逃げようのない状況でじたばたする見苦しい姿を見せぬためか。何にせよ、早雲の計画は成功してしまったのである。

 早雲の犯した罪について、全てを目撃していたのが海星だった。彼女は自分の家族を愛しながらも、そのような非道な行為に出た父をどうしても認めることは出来なかった。これまでは身内の恥と知ってか何とか胸の内に押さえ込んでいたが、この度、新たな偽右衛門選挙にあたって、早雲は予想通りにあのときの再現とでも言うべき謀略に出た。矢一郎も、矢四郎も、そして母さえも、全員が捉えられて絶対絶命の下鴨家。次週のタイトルは「捲土重来」とあるわけだが……はたして、この状況から起死回生の一手はあるのだろうか。そして、もしこの危機を脱したとしても、つつがなく偽右衛門選挙が行われるものだろうか。本当に、早雲は取り返しのつかないことをしてしまったものだ。

 今回は、後半のクライマックス、次第に高まる不穏な空気のピークに向けて、それに立ち向かう下鴨一家の繋がりが前半で紡がれた。早朝の矢一郎と矢三郎の会話は、矢一郎のくそ真面目さ、そして、なんやかんやと文句を言いながらも矢三郎を愛し、信じている誠実さが描かれている。この長男と三男の関係性は傍目から見てもなかなか良いものだ。水と油のように性格が違うはずなのだが、お互いに無いものがあるが故に、2人は不思議な信頼感で結ばれている。ただ、いかんせん矢一郎の器量がなかなか成長しないために、彼に「任せておけ」と言われても心配が無くならないのがもどかしい。結局、「気をつける」はずだった矢一郎は、割とあっさり敵の手に落ちてしまったし。

 そして、今回時間的にはかなり長めに描かれたのが、矢三郎と、井戸の底の矢二郎の会話。何故か知らないけど、私はこの「矢二郎と井戸を通して会話する」というシーンがお気に入りで、毎回矢二郎がなにやら悟ったようなことを言ってくれるとしんみりしてしまう。今回も、彼は彼なりに状況に対応はしていたようで、矢三郎同様の警戒状態にまではたどり着いていた。「いわば宇宙的規模の蛙さ」っていうくだりが非常にシニカルで、彼の人生観を如実に表しているようで面白い。また、海星の名前が出たときにちょっと動きを止めてしまう様子や、話が核心に迫るとおもむろに水に飛び込んでみせる姿なども、1つ1つ、彼なりに何かを考え、そして、考えてしまうが故についやってしまう行動だと思うと愛らしい。

 こうして兄弟3人が1つの問題にあたろうとしていた矢先に、父親の所業に耐えきれなくなった海星が、ついにあの夜のことを打ち明けにやってくる。彼女もさぞ悩んだことだろう、言うにもはばかられるような早雲の悪行である。当日の夜の様子が改めて描かれていたわけだが、早雲と総一郎という兄弟の1つ1つの会話の繋がり方が、非常に示唆的に2人の関係を表しているように見える。総一郎は早雲を信じ切っている(もしくは信じようとしている)ために、彼の言うことを全て二人にとって良いことであるという前提で話をしているが、早雲のしゃべっていたことのほとんどは恨み言であった。そこにあまりにはっきりと2人の内面の差が出ており、何となく成立しているように見えた会話も、実は全く会話として成立しておらず、総一郎の話は早雲の表面を上滑りしているだけである。最後の最後、総一郎が「お前はこれでいいのか」と問うた時だけ、早雲は「無言で去る」という、たった1度の「心からの反応」を示していた。総一郎は、そうした弟の姿を見て、この場所こそ、自分が死ぬべき場所、もしくは、死ぬことに意義がある場所だと悟ってしまった。もう、どうにも復元出来なくなってしまった悲しい兄弟関係。自分の息子達だけには、そんな悲劇を再び起こしてもらっては困る。だからこそ、彼は抵抗もせずに、ただ殺されることを選び、今際の言葉も、息子ではなく恩ある薬師坊にのみ残していったのである。いつみても、この下鴨総一郎という男の生き様は全てにおいて意味があり、思慮がある。存命ならば、さぞ楽しい偽右衛門の采配をふるっていたに違いなかろうに。

 しかし、総一郎は今や過去の人。そして、再びあの夜の悲劇が早雲の手によって引き起こされようとしている。下鴨一族のためにも、そして、完全に道を誤った早雲のためにも、矢三郎は、ここで阿呆の本領を見せることが出来るだろうか。是非とも快活な「捲土重来」のお話を見せて頂きたいものである。

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