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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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○第7話「うそつき」
 脚本・根元歳三 絵コンテ・新留俊哉 演出・吉田俊司 作画監督・門智昭


 <あらすじ>
 ゆずきの隣のクラスに、一人の転校生がやってきた。彼の名前は犬尾篤志。スポーツ万能、ルックスもよく、女子の視線を集めるなかなかの好青年だ。しかし、彼が3年生の夏という半端な時期に引っ越してきたのには訳があるらしい。何でも、母親が病気になってしまい、仕事で離れられない父親を東京に残し、息子と2人で故郷である賽河原に療養に来たのだと言う。甲斐甲斐しく母親のための夕食の支度をする犬尾を見て、クラスメイトも、近所の人々も、珍しいくらいの好青年だと目をかける。クラス委員の鷲巣は、母親の世話でなかなか遊ぶことも出来ない犬尾を特に気にかけていた。
 
 しかし、自宅に戻った犬尾を待っていたのは、病床になど伏さず、だらしなく居間でくつろぐ母親だった。母が口を開くと出てくるのは、祖父母への金の無心に、息子への無理難題ばかり。「病気で療養している」というのは、母、さくらが世間体を気にして流布した嘘だったのだ。
 
 さくらはそのだらしなさから旦那に捨てられ、逃げるようにしてこの賽河原に戻ってきた。しかし、それではただでさえ狭い田舎町のこと、あっという間に自分の情けない事実が明るみに出てしまう。それを恐れたさくらは、病気であると嘘をつき、その嘘を守るために、息子にもそのように振る舞うように命令していた。犬尾は、そんな母親の様子を苦々しく思いながらも、ただ諾々と母の命に従って嘘の看病をし続けていた。
 
 ゆずきは、たまたま近所のスーパーで買い物をしている際に犬尾と知り合った。しかし、彼はいつもどこか辛そうな顔をしている。そして、そんな犬尾の様子に気付いた人間がもう1人。特に彼と親しくしてくれる、級長の鷲巣だ。鷲巣は、「おふくろさんの看病が大変といっても、息抜きをしなきゃ駄目だ」と話を持ち出し、自宅の近くで遊ぶようにすればいい、と提案する。あまり遅くならなければ母親の迷惑にもならないだろうというわけだ。鷲巣の親切な接し方に心を許した犬尾は、思わず鷲巣に真実を話してしまう。
 
 当然、鷲巣は驚き、さくらに対する悪口と犬尾への同情をまくしたてる。そこで犬尾はようやく取り返しのつかないことをしてしまったことに思い至り、「全部忘れてくれ」と逃げるように帰宅する。自宅に戻ると、帰りが遅かったことにさくらが激昂する。秘密を漏らしてしまったことも知られてしまい、母親に組み伏され、頬を張られる。しかし、さくらは息子を何度も殴りながらも、そのまま涙で顔をくしゃくしゃにして息子の上にくずおれる。「あんたまで私を裏切らないでくれ」と。犬尾は、その夜に藁人形を手に入れる。
 
 それからしばらくの時が過ぎる。犬尾は藁人形を常に携帯しながらも糸を解く様子はないし、唯一秘密を知った鷲巣も、犬尾のことを思えば秘密を暴露することもない。様々なわだかまりを残しながら、日々が過ぎて行く。
 
 変化があったのは、町に不穏な噂が流れ始めてからだ。なんでも、さくらと見られる女性が夜な夜な町を遊び歩いているらしいのだ。犬尾の必死の努力もむなしく、さくらは自宅でゴロゴロしているだけの毎日に耐えきれず、夜の町に出歩くようになってしまった。寝込んでいるはずの人間が飲み歩いていては、勤労青年の評判も怪しいものになってくる。困り果てた犬尾のもとを改めて訪れる鷲巣。鷲巣は、「先生や親戚、誰か相談出来る人間はいないのか」と犬尾を説得する。「あんなおふくろさんに関わっていては、お前は駄目になる」と。部屋で諍いを起こすうちに、犬尾の鞄から藁人形が転げ出す。それを見て血の気が引いた鷲巣は、思い詰めた様子の犬尾を何とか思いとどまらせようと、様々な説得を試みて行く。
 
 決定打となったのは、ある夜の鷲巣からの電話だった。犬尾が呼び出されたのは、町の盛り場。そこには、見知らぬ男と絡み合うさくらの姿があった。男に「お前、ガキがいるんだろ」と聞かれたさくらは、逡巡なく「いるわけないじゃない!」と放言する。そんな母親の様子を見て最後のタガが外れる犬尾。隣で見ていた鷲巣は「分かったろ、ああいう人なんだよ」と得意げになるが、藁人形を取り出した犬尾を見て慌てて止めようとする。しかし、極限まで追い詰められた犬尾の手はとまらず、そのまま一気に糸を解いてしまった。
 
 「恨み、聞き届けたり」の声とともに、鷲巣の姿が消える。「人には、立ち入られたくないことってのがあるんだよ」。四藁に見送られて、鷲巣は地獄に送られた。
 
 犬尾は、唯一秘密を漏らしてしまった鷲巣がいなくなったことで、再び「元の」生活に戻った。ゆずきがスーパーで彼に出会うと、犬尾は何やら大量の食材を買い込んでいた。「今日は父さんが来るから、ちょっと豪勢にしようかと思って」と明るい顔で答える犬尾。ゆずきは知っている。彼の全てが、嘘であることを。家に帰った犬尾は、3人分の夕食を作って父の帰りを待つ。彼の中で、嘘は嘘でなくなった。
 
 
<解説>
 
 5話あたりからエンジンがかかってきた印象の「三鼎」だが、この回もなかなか質の高い鬱が待ち受けている。今回のモチーフは一言で説明するのが難しいが、誤解されそうな言葉で書くなら「他人の不幸で飯がうまい」だろうか。気安くメシウマとかしてると、当事者から手痛いしっぺ返しがあるかもしれませんよ、という訓告……ではないけども。
 
 今回も、脚本、コンテの作り手が意識するのは「意外なターゲット」という部分だろう。主人公である犬尾篤志は誰が見ても好青年として描かれており、逆にその母親であるさくらは誰が見ても駄目人間。加害者・被害者関係が明確であり、ギリギリまで地獄流しをくらうのは母親のさくらである、と思わせる。しかし、犬尾にとっての恨みの対象は、何くれとなく気にかけてくれていた級友の鷲巣。四藁の言葉を借りるならば「デリカシーがない」「立ち入り過ぎだ」「他人の不幸を見て笑ってたんだろ」というのが動機としては最も成立しそうであるが、おそらく、犬尾自身の中ではそういった下世話な心情以上の「ぶっ壊れた」何かが働いていたように見える。
 
 一応、上記の「余計なお世話」っぷりを演出する部分は、さりげなく、それでいてあからさまに描写されてはいる。例えば鷲巣はさくらに文句を言う時にはかなりダイレクトに、悪し様に罵っているし、犬尾を説得しようとした時にも、「確かに、お前にも悪いところはある。おふくろさんのことを隠すために、回りに嘘ついてたんだからな」って、本当に親身になってたらそんなひどいことは言わない。そして極めつけは、実の息子に母親の痴態を見せつけ、「ほら、あんな人間なんだよ」としたり顔。このあたりの描写で、「あれ?」と視聴者に疑問を持たせるのが、今回の演出の狙いだろう。たとえ「意外なターゲット」が描きたくても、あまりに突拍子がないと「しらんがな」で終わってしまうために、「なるほど、そうきたか!」と膝を打たせるための説得力も維持する必要がある。今回のシナリオは、そのあたりのバランスもきわきわではあるが、改めて見直すと、鷲巣はかなりひどいことも言っていることが確認出来る。必死の伏線だ。
 
 で、ここから先はちょっと読み込み過ぎになるかもしれないのだが、上で書いたように、「犬尾本人の中において」、鷲巣を流した理由はそうした「余計なお世話」の恨みだけでは無いように思える。犬尾青年の複雑な心境をサポートする描写もいくつか確認することが出来る。例えば、さくらに殴られ、泣かれ、結果的に母子で抱き合うことになる中盤のシーン。殴られている間はただ呆然の平手を食らう犬尾だったが、さくらの涙を受けて、表情がハッと変わる。この時点で犬尾は、自分が母の言うように「見捨て」かけていたことに気付かされる。鷲巣に真実を漏らしてしまったことがその全てであり、母の組み上げた「嘘」を破ってしまうことは、それすなわち母の作り上げた世界、「虚像の家族」を裏切ることに他ならない。母の涙を見た犬尾は、自分以外に母の作り上げた「家族」を守れる人間はいないことを悟り、一生「嘘」を背負って行くことを決意したのではないか。
 
 この夜に犬尾は地獄通信にアクセスしているが、実際に誰の名前を依頼欄に書き込んだかは描かれていない(ターゲットを明確に知らずに流す事例も多かったのだから、最初の依頼と異なる人物を流すことはおそらく可能だろう)。「余計なお世話」説を採用するなら、この時点でかかれた名前は「犬尾さくら」であったろう。この時点ではまだ鷲巣は犬尾の生活に踏み込んできてはおらず、決定的な「恨み」には成長していないからだ。しかし、犬尾がこの時点で「嘘」を守ることを決意していたならば、送信した名前はこの時点から鷲巣である。「嘘」にほころびが生じるとしたら、鷲巣から以外には考えられないのだから。
 
 そして、決定的な崩壊が、鷲巣によってさくらの痴態を目撃したことで訪れる。「余計なお世話」説の場合、「なんちゅーもんを見せやがるんだこの野郎」という逆上から糸を解いたことになる。「な、言った通りだろ」と得意げな顔の鷲巣は、確かにムカつく。しかし、このシーンにおいて犬尾はまったく鷲巣に気を向けているように見えない。彼の視線は母親に釘付けになっており、どうも隣に立っているいがぐり頭の級友のことなど見えていないようなのだ。となると、このシーンは「お前よけーなことすんなよ!」という動機の決定打としてはちょっと違和感がある。
 
 そこで、もう1つの見方をすれば、この時に犬尾の中で確立していた「嘘」が、唯一嘘の内部にいたさくら自身の手でぶち壊されたシーンと見ることが出来る。信じていた母、自分が守らなければいけない母が、その口で自分自身の存在自体を否定したのだ。せっかく作り上げようとした「虚構の家族」像からかけ離れてしまったその現実に耐えきれず、犬尾は糸を解いたのではないか。
 
 ラストシーンで、犬尾は父親とあわせて3人分の食器をちゃぶ台に用意し、特大のステーキを焼いている。ゆずきに報告した通り、父親と3人での久しぶりの団欒のためだ。しかし、さくらが「あんた何してるの!」と叫ぶと、調理中のフライパンを床に投げつける。そして、ゆっくりと振り返り「やっぱりやめた。今日はどこかに外食に行こう。父さんはお寿司が好きだったから……」と続ける。この行動は非常に不可解なもので、仮に犬尾の中で「虚構の家族」が確立していたとしたら、フライパンは投げ出さない。父親に振る舞うせっかくの料理を駄目にするはずがないからだ。逆に、全てが瓦解していたなら、後に続く「外食に……」の台詞は出てこないだろう。
 
 結局、彼は「母親の作り上げた嘘を守り通す」という使命と、「その母親自身が、自分とは決して相容れないものである」という絶望の二律背反の中で彷徨っている状態である。鷲巣が流されたのは、そんな処理の不可能な情報を、少しでも減らそうという犬尾の無駄なあがきだったのではなかろうか。「絆(2期7話)」や「あのひとの記録(2期18話)」など、相変わらず「家族」というモチーフでの鬱話は考えることが多い。
 
 その他気になった点を少し。まず、毎回手渡される藁人形のことなのだが、以前のシリーズ同様、これらは四藁が交代でその任を受けている。で、今回の藁人形役は骨女だったのだが……彼女、学校で教員やってるんだよね。犬尾はしばらくの間藁人形を持ち続けていたんだけど、その間、曽根先生は有給でも取っていたのだろうか。副業はあきませんで。
 
 今回の地獄コントは、「崖に落ちそうになる鷲巣を四藁が励ましてくれるけど、手は貸してくれない」というもの。鷲巣に「お前ら! 優しそうなこと言っておいて、他人の不幸を楽しんでるだけだろ!」という台詞を言わせるためだけのコントである。最終的に、きくりが着物の中からなが〜い帯状の布を出して助けてくれる(ように見せかける)のであるが、このきくりの帯攻撃、3期では初である。また、2期では帯が着物の袖から伸びていたが、今回は崖下の人物に救いを与えるため、足下から出ている。そこから出てると、帯というよりはふんどし……いや、いいんですけどね。大きな目がぐにゃりと歪むあの「きくりスマイル」も久しぶりのお目見え。2期で背後関係の謎が無くなっただけに、今期のきくりは純粋に狂言回しとしての役割だけが与えられており、なかなかにぎやかかつ残酷で面白い。あと、個人的な好みからいうと、女子中学生が買い物かごを下げてスーパーで買い物をしている図がすごく良い。ゆずきは可愛いなー。特に声が。
 
 今回のキャストは、実直少年犬尾役に、水島だいちゅう。ほんとの読み方は……なんだっけね! 最近色んなところでいじられてなかなかおいしいキャラになってきてるなぁ。ま、どこに行ってもボロぞうきん扱いなんですけどね。同い年ぐらいだと思ってたら予想以上に年上で驚いた記憶がある。そして、最終的に単なる馬鹿にしかみえなかったクラス委員鷲巣役は、これまた僕等のアイドル白石稔。みのるは、今期2作品で死んでますね<現注:同時期に放送していたのは「喰霊-zero-」である>。「のらみみ」が平和なだけに、この扱いは……おいしいかな。そして駄目駄目母さんさくら役は、なんと田中敦子。こんなお母さんなら仕方無く面倒見てしまいそうだ。

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