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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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 思い滾って第3話。2期目に入って主人公が菊さんから与太にスイッチしたことで、画面の勢いもガラッと変わってストレートにぶつかってくるお話になりましたな。

 前回は鬱々とした展開が続いたお話だったが、今回はパーンと打ち上がる花火のごとく、悩み苦しみが思い切りかっ飛ばされるお話。抱えに抱えて静かに沈んでいく菊さんの「非劇」と違って、与太郎は押しつけられた理不尽をどうにか吹き飛ばしていくだけのエネルギーがある。まぁ、まとめると「馬鹿は強い」になるのかな。

 樋口先生との親交は気付けば随分深くなり、最初は互いに敬意を表しながら探り探りの呑み友達だったのに、今回はお船の上ですっかり打ち解けた様子。与太は難しいことを考える先生のことを未だによく分かってない(というか考えようともしてない)みたいだが、先生の方は与太郎の人となりをプライベートな面からも理解しており、今では素直に「馬鹿ッ」なんて言える間柄。これでイラッとしないでケロッとしてられるのも与太郎の強みですな。自分が馬鹿だと思っているからこそ、偉い人の言葉もすんなり聞けるし、馬鹿だと割り切ってしまえば向こう見ずな無茶にも気合いが入るってもんで。ただ、馬鹿だ馬鹿だと言っても、与太の場合は「能なし」とは訳が違う。菊さん曰く与太は「耳が良い」のだそうで。敢えてアニメのテンプレ的に言うならば、これが与太郎の持つ主人公としての特殊技能ということになるだろうか。確かに言われてみれば、「話す」方の技能ってのは噺家の話題では欠かせないものだが、「聴く」方の能力ってのはあまり省みられることのない要素かもしれない。師匠からの口伝を基本とする落語文化において、内容の理解なんかよりも、話してもらったその「音」や「リズム」を引き継ぐ方が重要ってのは、案外面白い見方なのかも。

 そうして覚える「与太の落語」は、深い意味だとか意義なんてものを考えないだけに、紡がれれば楽しさに繋がってもいく。何しろ与太郎本人が「楽しくって」覚えている落語なのだ。それをそのまま流してやれば、お客さんだって楽しくなるに違いない。技巧も演出も繊細に組み上げられた「八雲の落語」とは根本的な理念が違うが、それが「八雲の落語の良さ」をきちんとトレスした「良さの再生産」であるならケチのつけようもないのだ。そして、この「快楽としての落語」が、与太の命運を握る最後の武器になろうとは。船上で謡うように繰り返していたのは「大工調べ」のクライマックスの部分。そして、これが元々身を寄せていたヤクザものの親分さんへの啖呵になるという。何という「生き残る術」であることか。

 今回の与太の行動は、周りのみんなが言っていた通りに無茶苦茶だ。我々視聴者目線から見ても、核心に触れるまでは「与太はなんでこんな危ない橋を渡ろうとしているんだ?」と戦々恐々。そして小夏を招き入れ、切り込んだところで「ゾッ」とさせられる。小夏がこれまで絶対に口を割らなかった秘密。一介の下っ端ごときが触れちゃならねぇ秘め事。与太は、そこに切り込まないことには自分たちの「家族」が成り立たないと腹をくくり、自ら死地へと突っ込んだ。与太が事前に何となく事情を察知していたのも驚きだが、そのままの勢いで親分さんを丸め込んで生き残ったのも驚き。与太郎は「師匠との約束があるから絶対に死なねぇ」と言っていたが、一体どれほどの勝算があって挑んだ勝負だったのか。……多分なんも考えてなかったんだろうなぁ……でも、自分が正しいと思ったことなので突っ走るしかなかった。「若いころのことを思い出すと自分でも背筋が寒くなる」とか言っていたくせに、やってるときはチンピラ時代の無茶と本質的には変わらなかったりするのだ。唯一変わっているのは、その無茶を引き起こした動機が単なる破れかぶれではなく、たくさんの守るもの、大切なもののためであったということ。守るものがあり、そのために積み上げてきたものがあったからこそ成し遂げられた「噺家調べ」だ。啖呵を切る際の勢いのあるアニメーション、そして関智一の名調子も相まって、実に「与太郎らしい」、活力滾る良いシーンになっていたと思う。

 すったもんだありながらも最後の壁をようやく超えて、その向こうには見えてくるものが2つ。1つは、小夏との新しい関係性だ。これまではずっと抱え込むものがあったせいで軋轢が残る状態だったが、この度の騒動で何もかもがすっきり。与太郎の本気も小夏に伝わったはず。小夏自身は自分の行動を「血の呪い」のように捉えている部分もあり、自分の弱さと向き合えないという負い目に繋がっていたが、与太郎はそれを打ち消し、気にしないと宣言したのである。小夏の目から見れば「自分の母親と同じ駄目な人生」であったが、幸い、隣にいる男は助六ではなく、与太郎なのだ。そこに、小夏の生きる新しい道が見える。そして、家族の新しい形が見えると同時に、与太郎の落語にも新しい道が見える……のかな? 樋口先生は何かを見出したようだが、当然与太さん本人は分かっちゃいない。彼の落語のブレイクスルーの成るや否や?

 そしてラストパート、ここまで全編が「与太郎風味」で締められた賑やかなお話だったが、最後は縁側でしっぽりと菊さんのリズム。相変わらず生気の抜けきったような残念な様子だが、別に生きるのが嫌になっているわけでもないのだろう。孫のような赤子のことだって、息子のような馬鹿弟子のことだって、彼は常に気にかけてくれているのだし。そして「与太郎の落語」のブレイクスルーを感じ取った師匠は、とっておきの難関として「居残り佐平次」を引っ張り出してきた。なんと菊さん本人は「ものにならなかった」と言って封印してしまったというこのネタ。まぁ、ネタの方向性はあまり菊さん向きじゃなかったというのはあるのだろうが、おそらく理由は別にあるだろう。それこそが、彼が久しぶりに額に汗して引き出しの奥底から引きずり出した「助六の居残り」である。流石の菊さん、信さんが得意としていたネタを彼のコピーとして板に上げることは出来るのだ。しかし、それはあくまで「助六の落語」であって、自分のものにしたという認証が得られなかったのだろう。「八雲」である菊さんが助六の落語を引っ張り出してもしょうがない。見せる場所もなければ自分でやりたくもなし、そりゃぁ封印するしかない。しかし、普段なら絶対に見せない「諦めの記録」を、与太の前では敢えて引っ張り出してきたのだ。弟子との約束の中には、「八雲と助六の落語を全て覚える」という項目があったはず。ここで菊さんは、いよいよ「助六」を引きずり出してきたのである。

 菊さんからすれば、人の噺をそのまま持ち出すなんてのは恥以外のなにものでもないだろうに、それを与太に見せるというのは相応の覚悟があってこそ。与太の方だってそれを充分に理解しているからこそ、両の眼を見開いて師匠の「決意」を見届けるのである。「与太の落語」は、この先の道に繋がっているのか。まて次回。

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