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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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 すげぇ回がきちまった……第8話。今まで散々楽しんできた本作であるが、まさかそっちの方向へと開花するとはおもわなんだ。脚本は花田十輝なんだよな。こんなんも書けるものか……。

 今回のテーマは、ものすごく乱暴にまとめると「他者への興味関心」ということになる。人間関係というのは実に様々な要素でくっついたり離れたりするものであるが、打算や利害ではなく、純粋に「こいつなんやねん」「この人はどんな人なのだろう」「あの人がもっと知りたい」という興味関心というのは、ある意味で最も「他者」を必要とする感情であり、原初的なコミュニケーションの第一歩といえる。今回描かれた吹部の「お祭り騒ぎ」の中には、そうした「興味」に溢れかえっている。

 一番分かりやすいゴシップ根性から、典型的な「興味」を振り回すのが緑輝。はっきり言って、そばに置いておくにはかなり鬱陶しい存在である。葉月の恋愛感情を聞きつけるや否や、本人の意志など関係無しに自分の妄想で突っ走ってまわりをかき回そうとするその姿勢は、純真無垢だからこそ面倒臭い。「こいつホント駄目だな」と思ってはみたものの、エンディングの様子を見る限り、彼女が一切その興味を隠し立てすることなくおおっぴらに接していたおかげで、葉月も思い切り泣きじゃくってすっきり出来たのかもしれない。何事も適材適所ではあるが。あ、妹さんも可愛らしいですね。

 純粋な恋愛感情というものは「興味」の発現としては分かりやすいものだが、実は既にその関係性は完成していたというチューバ先輩(長瀬さんというらしい)と後藤。まぁ、今までの様子を見ていれば確かに……いや、でもなんか羨ましいな、後藤め。同じパートにそういう関係の人間がいると回りも気を遣うんじゃないかなー、とか考えたけど、低音パートにいるのって中川先輩と副部長だけだったんだな。じゃぁいいか。中川先輩も、同じパートにいるのがあの副部長と、イチャイチャしてるカップルってんだから、そりゃ窓際でヤサグレたくなるのもしょうがなかった。そしてそんな副部長先輩は、基本的に「他者」への興味というものは皆無である。彼女にとって「人間」など大した存在ではなく、自分の理解が及ぶ程度の範囲は全て些事である。彼女にとって、葉月が男連れで祭りを歩いていることも、後藤と長瀬さんが付き合っていることも、友達が神社でお願いする内容も、そして不安の欠片もないオーディションも、どれもこれも「自分には問題じゃない」という意味で同じカテゴリ。そんなことよりも、どうやったらより心揺さぶる音楽が作れるかしか考えていない。今作で一番壊れているキャラの1人といえる。

 そして、そんな色めき立つ吹部の中で、うっかり春が来ちゃった葉月の「興味」は、初めての恋愛経験。勢い任せで塚本に惚れるも、当の塚本は幼なじみの久美子が気になっていたために即勝負、即玉砕。このさっぱりとした失恋は、本当に彼女らしい一直線の分かりやすい感情の揺れであった。確かに失恋はショックだし、心の傷ではあるのだろうが、彼女の持ち前の強さと、緑輝のあけすけなフォローによって、きっと後を引かない傷で済むのではなかろうか。塚本の野郎、きちんとノーと言えるだけの侠気はみせたわけだが、その後の葉月の質問に対してはっきり返答出来なかったあたりはもう一歩といったところ。「チューバは陰で支えるんです」という台詞に対して返答しなかったあたりに、彼の本心は見え隠れ。というか、はっきり見えてはいるのだけど。しかし、何であんな女に思いを寄せるものかと謎は深まるばかりである。

 「他人への興味」という意味では、一番浅薄であり、人間的な情動という側面から魅力に欠けていたのが、我らが主人公・黄前久美子。彼女は他者に対して強烈な興味を持つことも、感情をぶつけることもしない。もし他者への積極的な感情が生まれたとしても、それを理性や羞恥、外聞で押し潰し、表面は波風を立てないようにする人間である。中学時代から続く高坂さんとの確執も、そんな彼女の「取り繕い」のなれの果てだ。久美子は、他者の深奥を見ようとしないし、自分の本質をさらけ出すこともしない。ただ、何もそれは彼女だけのことではない。世の中の人間というものは、大なり小なりそういうものである。事なかれ、無関心、それが現代のスタート地点なのである。

 しかし、そんな冴えない主人公のところに、ついに訪れた盛大なガールミーツガール。高坂麗奈というイレギュラー中のイレギュラーが、彼女の全てをぶっ壊すためにやってきた。単なるアクシデントから発生した謎の登山イベント。下駄箱のシーンでの「集合場所は?」には「この娘、こんな性格なのか!?」と驚いて大爆笑したものであるが、そこから始まる2人きりの「お忍び登山」は、どれもこれもがまるで夢物語のようである。高坂麗奈は、確かに変な人間であり、どこかに中二臭い「夢」を抱えたままの幼い少女である。しかし、彼女の「興味」の発露は実に真っ直ぐだ。彼女の目には、黄前久美子は自分と同じものを持つイレギュラーだと映った。「性格が悪い」という褒め言葉は、「普通じゃない」と言い換えても良い。そこいらにいる女子高生の有象無象とは一線を画す「おかしさ」を、彼女は久美子に感じ取った。だからこそ祭りへの招待を受け入れ、この期とばかりに彼女を山へと引っ張り上げた。昔から、山は霊所である。高みに登れば登るほど、現世と隔絶し、隠り世に近づく。青春18切符すら必要としないお手軽な「隔世」ではあるが、祭りという特別な夜に、人っ子一人いない山へと登るその行為は、何とも滑稽であり、異常なものだ。だからこそ、高坂さんは「興味」の対象である久美子を「引き上げる」場所としての価値を見いだした。

 あまりに異質なその世界に呑まれ、久美子はこれまでのようなしがらみから少しずつ解放されていく。高坂に対して持っていた負い目が消え、次第に対等になっていく対話。全くキャッチボールになっていないはずなのに、少しずつ魂の底で通じていく感覚。一歩一歩の登山道が二人の呼吸を合わせ、互いに背負う楽器の重みを分かち、気付けば2人は同じ目的で、同じ場所に立っている。高坂の「愛」が、久美子を絡め取っていく。そして、たった2人だけのアンサンブルが始まるのである。この「山」のシーンの、互いの距離を測り合う緊張感。どこまでが上っ面で、どこからが本当なのかがあやふやな危機感。そして、いつの間にか肌と肌で繋がる密接な距離感。何もかもが、「麗奈と久美子」の世界を不動のものとしている。いつまでも見ていたい、怖気の走るようなシーンであった。今回のコンテ演出は藤田春香さんという人。恐るべし京アニ。こんだけの仕事をする人間がまだ出てくるのか。石原さんの演出指導ががっつり入ってるおかげなのかもしれないが、これだけの画作り、なかなか一朝一夕で出来るもんじゃないぞ。

 とにかく圧巻。まぁ、すげぇ簡単にまとめると「キマシタワー」ということになるのだけど、もう、ここまで来ると百合とかそういう次元ですらない気もする。高坂さん、油断すると次の週には仏とかに昇華してるかもしれない。このアニメ、本当に一筋縄ではいかないわぁ……。

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