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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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 今期2つ目の劇場作品は、あの舛成孝二が監督を務める期待の作品、「宇宙ショーへようこそ」! 正直、かなり前から楽しみにしていました。

 まず、率直な感想からいえば、大変面白かったです。劇場でアニメを見てると魂の奥の方を「ガッ」と掴まれて思わず目が潤むことがあるんですが、この作品は何度となくその「ガッ」が発生しました。うむ、非常に伝わりにくい表現になってしまっているけど……泣きそうだったってことだよ。言わせんな恥ずかしい。別に「泣かせる」演出の作品というわけではないのだが、キャラクターの心根が良かったり、物語としてのボルテージがあがったり、ノスタルジーを直撃されたりすると、思わず泣きそうになるんですよね。ちなみに過去に見た劇場作品は、ほとんどうるうるしながら見てます。

 (以下、どう考えてもネタバレが発生するので、未視聴の方は注意)

 さて、まず持ち上げるところから始めたわけだが、序盤は、正直言うとちょっとダレる部分もあった。個人的には最も重要なファクターである「キャストの演技」が耳ざわりなのがどうしても気になってしまい、最初のうちはなかなか物語に入っていけなかった。突如現れた藤原啓治声の宇宙人(宇宙犬?)はおっさん臭くて愛嬌もないし、「ろくにキャラクターの名前も知らない段階で、いきなり修学旅行で月って言われてもなぁ」くらいの印象。劇場作品らしく画面はとてつもなく豪華でつけいる隙もないのだが、正直言って「劇場ならそれくらいは当然よね」とか思っていた。

 流れが変わってきたのは、中盤に実際に「宇宙旅行」を堪能しているあたりから。最初のうちは子供だまし、こけおどしだと思っていた子供じみた宇宙の描写が、だんだん狂気を孕んでいるように見えてくる。確かに宇宙人1体1体のフォルムは陳腐なものも多いし、どれもこれも子供の落書きみたいなデザインなのだが、そんなふざけたデザインが、全て個々に画面上を動き回っていることに気付いた時に、ちょっとゾクッとした。この作品は、「とある1つの種類の宇宙人との交流」ではなく、「宇宙との交流」をテーマにしており、そこに集う宇宙人たちは正に千差万別。どんな細かなシーンでも、どんな動き回るダイナミックなシーンでも、そこに現れる宇宙人や奇妙な建物1つ1つが、全て「個々に」生きている。その作り込みの入念さが、この作品の表現したい全てだ。

 「夏のある日のノスタルジー」という大きなくくりでまとめると、見始めた段階では、同じく劇場で見てきた「サマーウォーズ」とイメージが被った。あちらもバーチャル空間の描き込みが偏執的なまでに徹底しており、本作の宇宙人の扱いと被る部分がある。しかし、「サマーウォーズ」はあくまでバーチャル世界を異質なものとして扱っており、それはCGによるサンプリングと、全てを統一的に処理する理知的な配置に現れていた。しかし、この作品は違う。全ての宇宙人は、単に好き勝手にそこにいるだけ。夏紀たち主人公グループの経験している「旅行」と、何ら変わりない重要性で、そこを歩いている。これを全て丁寧に書き込むことで、「宇宙である」という特別さがなくなり、あくまで「普通の作品で描かれる日常風景」の延長が、月や他の星系にも拡大された世界が構築されていく。

 非常に乱暴なまとめをするとしたら、「サマーウォーズ」は手近なバーチャル空間を利用し、そこで未曾有の大事件を巻き起こすことで「日常に非日常をもたらす」作品。対して、この作品は宇宙というとんでもない舞台をエピソードにしながらも、そこに見た目以上の特別さを設けず、「非日常の極みを日常的に描く作品」と言えないだろうか。いくつか例をあげると、端的なのは月に行って一番最初に食べたファーストフード。「コーラはどこも同じなんだね」って、んなわけないのに、それが妙に「近さ」を感じさせる。おっかないルックスのウェイトレスに持ってこられた奇妙なポテトも不気味なハンバーガーも、あくまで「ちょっと見た目の変わった日常の延長」である。また、銀河超特急で移動中に、イスの形をいかにも電車風にしてみせたのも象徴的。「やっぱり修学旅行はこうでなくちゃ」と言っていたが、あそこまで非日常的な世界を満喫しながら、子供達にとっては、あくまで「旅行」の一環なのだ。また、ポチの実家に帰ったシーンなども印象深くて、全然違う星での生活で、家のサイズや様式も全然違うにも関わらず、そこには家庭的な温かさがそのまま表れているし、スケールや文化の違いが、目に見えているのに意識されないレベルにまで内在化している。この「コズミックな日常」というモチーフは、実に鮮烈であった。

 そうした「非日常の中の日常」を存分に堪能し、もういっそそれだけで終わってしまっても構わないなぁと思っていると、ようやく事件が起こる。周の誘拐事件に端を発する、いかにも「映画的な」奪還劇。筋立てはシンプルで特に目新しい部分もないのだが、それまでの旅行パートまででジワジワと組み上げてきた物語の伏線をまとめて放出し、一気にたたみかける構成は流石の一言。旅の途中で出会ってきた仲間達との協力や、夏紀と周の喧嘩を通じて得られた本当の友情、愛情。そうした要素が過不足なく集結して、夏紀のいう「ヒーロー」像が完成する。事前にポチの家で「周の夏紀に対する気持ち」は語られていたが、クライマックスではそれまで溜まっていた夏紀の周に対する気持ちが爆発し、そのパワーが巨悪を打ち砕く。どの子供達にも等しく活躍の場が与えられているし、やや説明不足ながらも無茶なことをやっていることが嫌でも伝わってくる敵側の悪辣さや小憎らしさも引き立つ。冷静に見ると「単に力比べで勝ってぶん投げただけ」というお粗末な決着なはずなのだが、全ての台詞と、回収しきった伏線の重みのおかげで、これが説得力のあるカタルシスを構成する。本当に、見ていて気持ちが良い。

 繰り返しになるが、この作品の持ち味は「日常」と「非日常」のバランスの取り方、見せ方。自分でもよく分からない感情だったのだが、地球に帰ってきた面々がそれぞれの親の車で帰路につくシーンでは、そのあまりの「平凡さ」に感極まってしまった。それまではずっと「銀河を超速で走る列車」だとか「クラゲのような外見でめちゃくちゃブースト出来る飛行機械」とかに乗って冒険を楽しんでいた子供達が、ひとたび地球に降り立てば、普通のワゴンやセダンでおうちへ帰るのだ。そして、こうした「普通の車」と、「特別な宇宙船」が等しく、入念に描かれているからこそ、この対比が映える。同じシーンで「なんだ、ただの宇宙船じゃない」という奇妙な台詞が出てくるが、子供達の心情を考えると、こんなにどんぴしゃりの台詞もないだろう。

 こうした日常と非日常の融和が「容易く」行われるための画面作りは、並大抵の苦労ではなかったはずだ。この見事な画作り、脚本作りを成し遂げたスタッフには素直な賛辞を送りたい。

 まぁ、あとは細かいところですかね。超特急乗車中あたりだったと思うが、何故か画面が突然妙な空気に変わる部分がある。言い方は悪いが、「作画が崩れる」シーンだ。「まるでりょーちも画だなっ」とか思ってたら、マジでスタッフにりょーちもが居て吹いた。絶対あのカットを担当しているのは間違いない。地上波作品で個性大爆発させるのは構わないけど、劇場版であそこまで個性を出してくるのもどうかねぇ。面白いからいいけどさ。あと、個人的に好きだったギミックは、インクが操るでっかい手の動きとか、ネッポの不定形なのに何故か芯の通ったアクションなんかかな。インク可愛い。

 そして当然、キャストに触れるのも忘れちゃいけない。まぁ、メイン5人がほとんど素人なので、そのあたりはあまり触れるべきではないのだろうが、覚悟していた「子役だらけの学芸会」よりは幾分マシ。特に夏紀役の子はなかなか頑張っていて、挫折から立ち直った夜の誓いのシーンや、クライマックスの一番大切な台詞あたりの熱演は好感が持てた。どこの誰かは知らないが、今後も頑張って欲しいものである。あとは、倫子役が松元環季ちゃんでした。わーい。やっぱり彼女1人だけちょっとステージが違う感があるね。あ、でもインク役の子も好き。誰だろうと思って調べたら「夢パティ」でキャラメル役をやってる子だ。なるほどなるほど。

 そして、残るは貫禄充分のベテラン声優達。そんな中でもやはり無視できないのは、ポチ役の藤原啓治と、ネッポ役の中尾隆聖だろう。特に中尾隆聖は私が「一番好きな男性声優」と言って憚らない憧れの人で、こういう人外かつ狡猾かつ憎めない役をやらせると右に出るものはいない。痺れましたわぁ。1人だけで空気を作れる役者というのは、本当に素晴らしい。

 他にも銀河万丈は普段とはちょっと違うコミカルなキャラクターで魅せてくれたし、「なのは」でもラスボスを演じてくれた五十嵐麗、素敵なお母さん伊藤美紀など、メインが辛いだけに「いつものあの声」が聞こえてきた時の安心感はかけがえのないものでした。唯一の心残りは、作中で千和の存在に気づけなかったこと。舛成作品なんだからいるに決まってんだよな。

 長くなったが、最後のまとめを一言。この作品は、はっきり言って詰め込みすぎだ。大画面の細部にいたるまで、世界を構築するために必要なファクターを、限界を超えて押し込んである。シナリオに関わる重要な要素ですら、明示的に説明されずに流されたものも少なくないのだ。それ故に、この作品は何度も見るべきものになっているのかもしれない。特に、本当に楽しんで欲しいのは「まっとうな」対象である子供たちだろう。「あの画面に映っていた妙な宇宙人は、どういう生態系なんだろう」とか、「あそこで出てきた食べ物は元々どういう材料で出来ているんだろう」とか、答えがないが、無限に想像出来る楽しみがこの作品には詰まっている。小さい頃に絵本を読んでもらって、どんな小さな絵でも穴が空く程眺めていたような、そんな楽しみ方が出来る作品である。是非、そうした「無駄な贅沢」を大人目線でも楽しんでもらいたい。

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