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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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 スタッフ一同の完全に間違った方向に向かった正しさに頭が下がる第6話。馬鹿は突き抜ければ伝説になる。この作品は、やるべきことを本当に分かっている。

 今回のテーマは委員長、繭佳と修輔の関係性を掘り下げ、3人のライバル同士の邂逅を描くことなんだろうと思うのだが、それを差し置いても、とにかくBLである。何がそこまでマジにさせるのかと思うくらいに、馬鹿馬鹿しさが突き抜けている。わざわざ妄想BLの中身のために「BL用」のキャストを呼んできて一言だけしゃべらせるこだわりも恐ろしいし(しかもエンドクレジットが「攻めA」「受けA」である)、スタッフロールには「BL作画」の文字まで。そうですか……やっぱりああいうBLものは専門スタッフが必要になりますか……本当にきれいな花瓶だこと! まさかアレが地上波アニメで放送される日が来るとは思わんかったよ! ちゃんと花瓶の原作者には許可をとったんだろうかね。

 で、何がここまでの情熱をたぎらせているかといえば、ひとえに「BL」という要素も作品のメインストーリーを作り上げる上で欠くことが出来ないファクターであるため。具体的には、繭佳というキャラクターの特性を一言で表した時に「腐女子」であることが、このアニメで強く押し出さなければいけない大切なポイントになっているためだ。

 考えてみて欲しい。今週も突き抜けた異常性が見事だったメインヒロインの奈緒を皮切りに、生粋のストーカー体質で自分の言動に一切の疑問を持たない彩葉も、奈緒に対抗できるだけのポテンシャルをもったキャラクターだ。そんな2人が対峙しているシーンに登場してさらに関係性をややこしくするキャラクターなんて、並大抵の個性では対抗できないだろう。単なる委員長や、単なる「飼い主」、単なる「BL好き」というだけの属性では、2人のド変態を前にすれば霞んでしまうはずなのだ。

 しかし、繭佳の場合にはそれがない。ちゃんと「委員長キャラ」を守りつつも、深夜の公園でBL談義になると歯止めが効かず、目を爛々と輝かせて修輔に迫り来る様子は、まさしくアブノーマル。端から見ている2人のストーカーもドン引きするレベルだ。ここまでの突き抜けたキャラクター性があって初めて、このシナリオが成立している。そして、その繭佳のキャラクターを引き立てるためには、やはりその根源である「BL」の異常性を徹底的に引き出すのが近道というわけである。原作ではどの程度の描写なのか知らないが、アニメでここまで徹底してやったからこそ、繭佳のキャラクターは美味しいポジションに落ち着くことが出来たのは間違い無かろう。いや、単にスタッフが遊んでやってるだけって可能性ももちろんあるのだが……

 で、そんな繭佳の突き抜けたキャラクターを前面に押し出しつつも、残りの二人がまだまだ元気。すっかり共闘態勢が馴染んだ妹と幼馴染みのタッグは、表面上は手を取りながらも堂々といがみ合う絶妙な腹黒さが憎らしい。一応対等な関係ではあるものの、「彩葉ちゃんは自分の言動に疑問を全く持っていない」という奈緒の指摘は激しく同意出来る部分で、現状、なんだかんだで最も客観的に大局が見えているのは奈緒のようであるが。ナチュラル策士な妹っていうのは、なかなか斬新であるな。気付けば「黒パンストを履いた足を兄にねぶられる」という、およそ地上波ではアウトとしか思えないプレイにまで発展しているのは気にしない方向で。ちゃんと修輔を踏み付ける前のカットでこちらに生足を披露してくれる阿漕なカメラアングルもナイスである。彩葉は彩葉で、冷静に修輔のパンチラ視認回数をカウント出来るよく分からないスキルは見事。ほんとに職人の多い世界だよな!

 最後に一番気になったのは……かあちゃん、流石に自分の息子の周りの環境がおかしいことには気付けよ。どんだけ無防備な家庭だ。ちなみに、修輔がBL本を買いに行く書店の店員さんも、高梨家のお母さんと同じ声が出ます。

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 三雄そろい踏み、第5話。既にエンディング歌唱のおかげでその存在は知らしめられていた委員長だが、今回正式に参戦。これによって物語は混沌の中へとさらに突き進むことになる。風邪で体調が悪い状態で観ても、この作品のテンションだけは落ちることはありません。

 今回は奈緒よりも修輔の方が台詞が多いくらいの、修輔中心のエピソード。野郎の自分語りが中心の構成になったら面白さが落ちるかと思えば決してそんなことはなく、いつも以上に振り切れた修輔の恥も外聞もない数々の蛮勇に頭が下がる思い。今回はようやく「ひょっとして自分は好かれているんじゃないか?」という事実に(やんわりとだが)気付くこともできて、この調子で突き進めばいくらでもエロイベントなんて発展させられそうなセッティングである。でもまぁ、それでも一線は越えないのが作品の限界ではあるのだけれども。

 新ヒロイン近藤繭佳は、直近のヒロインならば「アマガミ」の絢辻さんがかなり近い。普段は物静かで優秀な委員長キャラを維持しているのに、不慮の事故によって主人公にだけ正体がばれてしまい、そのまま高圧的な態度で犬として使役することになる。「アマガミ」の純一も本作の修輔も、そうした情けなくも幸せな状況にすぐさま順応できるヘタレ含みの紳士っぷりはよく似ているだろう。同様の変態ヒーローながらも女性に対しては常に支配的であろうとした「そらおと」の智樹との対比も面白い。どうやら妹がいるご家庭っていうのは、どこか兄の性癖をゆがめてしまう傾向があるようだ。

 ただ、絢辻さんと繭佳が決定的に異なるのは、繭佳が大のBL狂いであるということ。薔薇目的ならばろくに素性も隠さずクラスメイトを脅迫するくらい朝飯前で、何が彼女をそんなに狩り立てるのかと感心してしまうほど。その上で、必死に自分の属性を隠そうとしたり、書店で目当ての本を買えなかったりと、案外奥手な部分も見せてくれるのがこざかしい(この世界の書店はどれだけハードルが高いんだろうか)。普通はBL好きキャラクターならば野郎との恋愛関係になど興味を示さないものだが、繭佳は何故か分からないが修輔のことを意識することが多くて、正統派ヒロインとしての受け皿まで用意するという、属性のバーゲンセールみたいな状態である。こんな無茶なキャラクターなのに、このアニメのテンションだと「よし、変態がまた一人」みたいな自然な溶け込み方が出来るので、あまり押しつけがましく感じないのが不思議なところだ。

 そんなてんこ盛りの新ヒロインの登場により、妹・幼馴染みの2キャラはお役ご免になるかと思えば、決してそんなことは無いのも見事。もう深夜のストーキングなんかはお互いろくに突っ込みもしないくらいの仲になってしまった奈緒と彩葉は、似たような属性と思わせておきながら、新たな闖入者に対する態度ははっきりと分かれた。彩葉は露骨な泥棒猫に嫉妬してみせるが、奈緒はさらに兄の新しい属性が開発できるとあってご満悦。あまりのプロフェッショナルぶりに、流石の彩葉も理解が及んでいないほど。メインヒロインが不動だからこそ、安心してその他の要素も楽しめるってもんですな。ぽっぽと上気して色々妄想を巡らせる奈緒がいちいち可愛らしいのである。

 今回注目すべきは、新キャラ繭佳を演じた荒波和沙という中の人。新人のようで、エンディング歌唱を担当している時点で「どんなもんだろ」と思っていたのだが、初めてのレギュラーとしては上々の部類である。最近の新人はちゃんと基礎が出来た状態から登場するのでなかなか減点する機会がないな。まだちょっと声が細い部分はあるのだが、それでも繭佳の二面性はちゃんと出ていたし、他のヒロイン2人に負けないだけのパワーはありそうだ。所属は内田彩や齋藤楓子が所属するJTBエンタテインメント。この事務所も着実に新人を送り込んできてるよなぁ。

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 永遠にこのノリ、第4話。流石に4話ともなると慣れが出てきましたね。それでも、次回予告にひとネタ仕込まれてるので視聴後はどうしても吹いた状態で閉幕するんですけど。

 大雪警報連発のご時世には全く関与する気も無い海水浴回。今回最大の中の人的ハイライトである兄が見事にゲザるシーン(およびそれを母親がドン引きで諭すシーン)から幕を開けて、特に流れも何もなしで海へ。メンバーは最終的に彩葉と友達2人を加えた5人構成となり、普段家の周りでやっているようなことを場所を変えてやっているだけ。

 今回はネタもとの原作が薄いのか、これまでのエピソードのような切れの良いネタ回しや奈緒のぶっ飛んだ異常性癖面などがあまり表に出てこず、多少もたついた感じでくどめの進行が目につく。ネタの中身も、途中で修輔の夢の中身なんかを挟んで煩雑な画面転換が重なるおかげか、慎重に中身を追うのが手一杯で、あまりネタのキレを増すような見せ方にはなっていない。ま、流石にこれだけテンションの高いままで続けてきたので、多少の休止は必要だったということにしておきましょう。

 要所要所で見ていくと相変わらず病巣の深いネタも散見され、中でも特に説明されずに展開された修輔の夢フィールドは絵的にもひどいのが出揃っている。ガーターナース、セーラー触手などといった節操のない組み合わせもひどいが、どう見てもおかしかったのはスク水ニーソという一見「ありがち」なセッティングながらも、そのまま海水浴してしまうという暴挙。ニーソックス履いたままの入水って、アイアンスエットばりの拘束具だと思うのだが。海水をたっぷり吸って重量感を増すニーソによって彩られる絶対領域は、夢の中とはいえこだわりのムチムチ加減に一家言ある修輔のこだわりが伺え、その上で相変わらずこのイラストレーションなので萌えにもエロにも繋がっていないのがポイント。

 キャラの造形でいえば、面白かったのは瀕死の修輔の周りで展開された奈緒と彩葉の力比べだろうか。針金のようなほそぎすの身体どうしが激しくぶつかり合う珍妙なシーンは、明らかに骨格がおかしいにも関わらず双方の肩にがっつりと力が入っているのが分かる奇妙な迫力があり、この世界における人体のスタンダードがどこにあるのかを何となく伝えてくれるもの。いや、そんなとこを見るアニメでは無いのは確実だが、こういう描写でちゃんと「それっぽさ」と、「隠しきれない無理くり加減」が伺えるのは面白い。唇を奪ってくれたAGEのメインの子の無闇にいい身体も割と細かく描写されてたしねぇ。誰得極まりないのだけどねぇ。

 あ、終わってみたらなんだかんだで面白かった気もしてきました。今期は意外に頭空っぽ作品が少ないので、やっぱりこのアニメは助かりますわ。今日の一番のハイライトは、ボートで突撃するシーンの奈緒の口上ですかね。やっぱり早口でまくし立てている時のキタエリ節は聞いててほんとに楽しい。

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 全然ペースが落ちない第3話。こんだけ中身が凡庸な話のはずなのに、むしろ病巣が深くなっている気すらします。これホント楽しい。

 今回も奈緒劇場、キタエリ劇場と言ってしまえばそれでしまいの内容なのであんまり感想は書けない気がするのだが、加えて彩葉劇場、つまり麻里奈劇場も同時開演されており、この2人が互いに勢いを増していく相互作用が本当によいテンポを生み出している。

 今回のハイライトはなんと言っても夜の街で徹底的に修輔を誘惑し続ける彩葉と、それを観察して別世界にトリップしてしまう奈緒。うしろの友人2人の視点をメインに描かれているので、途中の段階で奈緒がどんな気持ちになっているのかが全然分からず、突如送信されたメールでその超人的な感覚を見せつけると同時に、意味不明な司令で友達を困惑させる奈緒。いざその表情は? と思って見に行けば、完全にヘヴン状態で悦に入っているという、恐ろしく倒錯的なシチュエーションである。他にも抱き合う二人に勝手にアテレコしてみせたり、翌日にも彩葉と楽しげに会話をしたり、常にテンション上げ気味の奈緒の、アゲきった状態でのぶっ飛びぶりがいちいち常軌を逸しているのである。

 対抗馬たる彩葉も、幼馴染み、尻軽、ビッチと呼び方はいくらでもあるが、そんな下らない誹りを消し飛ばすほどの徹底したストーカー気質と、何故かそれをヤンデレに分類させない妙な勢いが大迫力。ストーカー2人の挟み撃ち状態に追い込まれた修輔は本当に大変そうだ。

 でもまぁ、彼のパーソナリティもよくわからなんですけどね。奈緒からみれば「童貞エロ魔神」であり、妹がいつ部屋に押しかけてきてもおかしくないような家庭環境においてさえ、なりふり構わず挑戦できる(彩葉風にいえば「自家発電」出来る)ほどのあふれ出るリビドーはサイバディに乗っても戦えそうなレベルなのに、どこをどう見ても「据え膳」であるはずの彩葉に対しては、完全にヘタレ状態で逃げの一手。もちろん強引な幼馴染みに対する苦手意識や、ほのかに心を寄せている妹に対する罪悪感などはあるだろうが、誘われたあのシチュエーションでは、奈緒のことは考慮しなくてもいいはずなのだ(まさか見られているとは思っていなかったはず)。その状態で結局何もせずに脱兎のごとく逃げ帰るとは……意外に草食系なのだろうか。

 それに加え、AGE探検隊への復帰申請の手土産がコンビニ売り雑誌の付録、というのもなんだかショボい。昔のことなんで思い出せないけど、高校2年生の時のエロの水準なんてそんなもんだったかなぁ……今の若者はネットを使えばいくらでも「そういうもの」が転がってるんだから、わざわざ1500円をありがたがる意味もよく分からないんだけどね。あんだけ暴れ回っているのに、修輔はコンビニでエロ本買うのすら躊躇ってるくらいだしな。意外とレベル低いぞ、あいつら。

 ま、何はともあれ奈緒のテンションと奇特なキャラクターだけでもまだまだいけそう。「兄好きの妹」なんて吐き捨てるようなテンプレかと思っていたものだが、ここまでキャラが立っているのは脅威である。しかしそれでも、キタエリのリミットはまだまだこんなところじゃない。エロでもギャグでも突き抜けろ! 大丈夫、別に奈緒も彩葉も、どんだけきわどい台詞や下品な単語をいってもあんまりエロいとは思わねぇから! やっぱりあのキャラデザが原因だよな。

 余談だが、奈緒と彩葉が見に行った映画がゾンビもの、っていうのがちょっとタイムリーで笑ってしまった。お前ら(の中の人2人)は、つい最近までゾンビだらけの街で逃げ回ってたじゃないかよ。規制だらけの作品にばっかり出てる状態やないか。……そういや、この番組の規制レベルがよく分からないね。同じパンツでも見えて良いパンツと悪いパンツがあるのは何故なのでしょう。まぁ、個人的にはモザイク替わりの猫とペンギンのイラストが可愛いので別に構わないのだが。

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 サブタイトルだけ見るとウルトラ怪獣で大騒ぎしているようにしかみえない第2話。何の気なしにwikiったら、やたら詳しいページになっててびびったのは内緒。ウルトラ怪獣の記述、充実しすぎだろ。

 という全然関係無い内容から入ったことからも分かる通りに、この作品は何も考えずに見るのが吉。とにかく奈緒のぶっ飛んだ言動だけを見て聞いて笑ってりゃいいだけなので、ギャグ作品としてもものすごく見やすいし、基本的に登場キャラクターが全員変態なので、どこかズレた笑いどころも多い。何はともあれ、この兄妹は楽しそうで仕方ないな。

 そして、今回はさらなる爆弾投下。幼馴染みかつツインテヤンデレ気味少女という、いささかキャラ設定が渋滞を起こした感のある転校生の登場。転校生の彩葉は奈緒に負けず劣らずのハイテンション+痴女設定ってんだから、もう好きにしてくれとしか言いようがない。屋上での修輔との一連の議論の流れとか、突っ込みどころが多すぎてどうしていいやら。世の女性が全員こんな阿呆だったら、むしろ世界は平和だったんでしょうなぁ。

 既に2週目にして一切気にならなくなっている奇形なキャラクターデザインは今回もクルクルと姿を変えて動き、奈緒もそうだが、彩葉も二面性を持った実に多彩な顔を見せてくれる。そして高低差の激しい修輔の反応も掛け合わせることによって、下品なギャグでも一気に振り抜いて後味の悪さを吹き飛ばしてくれる。振り切れた馬鹿ってのはいつの時代も気持ちがいいや! 

 今回の見どころは屋上での彩葉のひどい台詞や行動が一番だと思うが、アルトリコーダーを絡めた奈緒の奇行と、それに付随する形で進行した彩葉と修輔のやりとり、そしてBGMとして流れたリコーダーの音など、アニメならではの見せ方もやけに笑える。かたや直接唇を奪いに行った幼馴染みで、かたやリコーダーの間接キスでテンションMAXの妹、という対比も露骨ながらシンプルで良い。結局、今回はこの3人のノリと勢いでクリアしたんだろう。

 というわけで、やっぱりすごいぞ喜多村英梨。次回予告の「観察日記」とのテンションの差なんかも見事なもんです。そして、今回登場した彩葉役は、ちょっと珍しい声音を作ってきた井上麻里奈。個人的には「Rio」みたいなのよりもこっちの方が好きですね。麻里奈は中原麻衣とかと同じ部類で、テンション芸をやってくれた方が声質が映える。

 あと母親役の大原さやかの声が聞こえるのも今期はここが安定かな。そういや全然関係無い話だが、google翻訳に読み上げ機能がついてるんだけど、その声を担当しているのが、どう聞いてもさぁやである。多分、音源提供が彼女なのは間違い無いだろう。googleが選んだ声ということは、間違い無く「日本を代表する声」となったということだ。流石の流石。伊達に関東圏の鉄道音声の過半数を統べているだけのことはある。思わず翻訳機能とか関係無しにさぁやキャラの名言を読ませてみたのもしかたないところだよね。コレとか、コレとか、コレとか、コレとかね。流石にあんまりうまくいかねぇが、ボーカロイドならぬさぁやロイドで遊べるだけでも「死んでもいいな」って気にさせる。googleさん素敵。

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 長かった1年の決着、最終話。長かったとはいっても、実質普通のアニメで言えば24話分の尺ですが……やっぱり、ゴールしたなぁ、という感慨があります。

 今回のエピソードの中で起こった事件は、たった1つ。それはもちろん「奇策士とがめの死」である。先月狙撃シーンで幕を下ろし、まさかそのままということも無いだろうと思っていただけに、あまりに真っ直ぐそちらへ向かったのは正直ショックだった。これだけ様々な場面で「最強」であることを話題にし、「最も賢い」ことを誇ってきたとがめと七花。その2人が、為す術もなく「死」というあらがえぬ現実に打ちのめされる姿は、じわりじわりと物語の終幕を伝えていく。

 「とがめが死ぬ意味」については、いかにもこの作品らしい話ではあるが、末期のとがめ自身が全てを語ってしまっている。とがめ自身から見れば「駒という存在からの解放」であり、その死をもって奇策の完成となす。もしあのままとがめが生存した状態で尾張城へと乗り込んでいたならば、七花は幕府軍に敗れていたであろうし、最終目的である「歴史の改竄」には到達しない。そして、もし無事に目的を果たしたとしても、とがめがとがめであり続ける限り、いつかは七花を「駒として」殺す日がやって来る。それを避けるための手段は、「とがめの死」以外には無かったという。実際には、今の2人の関係を見れば決してそんなことはないのだろうが、それが「とがめの死ぬ意味」として、最も優しい解答であった。「自らの死を策と成し、成就した後にはお互いに駒である必要がなくなる」。己を含むあらゆる事物を奇策の手駒として使い続けてきたとがめの、文字通り命を賭した最後の奇策。この結末こそが、とがめにとって、七花にとって、否定姫にとって、右衛門左衛門にとって、そして世界にとってあるべき姿ということか。

 「とがめの死」を受けた七花は、駒としての役割、刀としての役割から解放されるのと同時に、あらゆる目的を失う。残された道は「死」への1本のみ。これまでは「自分を守れ」とのとがめの命があったからこそ選択できなかったその進路を、今ならば気兼ねなく取ることが出来る。そして、それを叶えてくれる人間は右衛門左衛門をおいて他にはない。最後に残された虚刀・鑢は、全ての刀を越えて、完了形へと至る。

 奇策士の死は、否定姫と右衛門左衛門の最後の一手。七花の動きまでを全て読み切った上での行いだったのかどうか、今となっては闇の中であるが、否定姫の大願と、それを叶えるために動き続けた従僕の願いは、最後まで果たされることなく終わった。つまり、最終的に「奇策士の死」は、単なる「奇策士の死」でしかなかったわけだ。

 あまりに何の変哲もない単なる「終幕」は肩すかし以外のなにものでもないが、考えてみれば「ま、そうなるか」という、妙な得心が残る。最大の関心事は「はたして七花はどのような精神状態になり、どうやってこの先を生きていくのか」という部分だが、とがめのいう通り、彼女は七花にしてやるべきことは全て託し終わっていた。そして、本人が自らの死を悲嘆していなかったのである。ならば、七花はこの喪失を、単なる悲劇と受け止める必要も無い。「やりたいことをやれ」という最後の命令には「ただただ悲嘆に暮れ、残りの人生を棒に振る」という選択も可能だったわけだが、それが最愛の奇策士の望みでないことは、いかに七花とて理解出来たはず。自分を除けばとがめの最大の理解者であったであろう否定姫との珍道中は、彼の中でも、自然に受け入れることが出来た「次の物語」であったのかもしれない。

 終わってみれば「なんじゃそれ」と投げ捨てることも出来る、テキトー極まりないエンディング。こけおどしの尻すぼみ作品とこき下ろすことも出来ようが、どうも、そうすることも作者の狙い通りのようで気にくわない。「終われなかったこと」「終わり方が分からなかったこと」、それがこの作品の「幕引き」だったのではないか。「尾張城を真っ二つに切る」というビジュアルに、「おわらず」という右衛門左衛門の声が聞こえてきそうなのは、あまりに穿った見方であろうか。

 メインシナリオでは色々と思うところもあるが、その他のパートではこれまでの集大成と言えるおふざけと苦心がいっぱい詰まっている。序盤で延々続いたとがめとの分かれのシーンは、いかにもこの作品らしい、一切の場面転換のない長口上のパート。作品が始まった時にはどうなることかと思った空気を読まない長台詞も、今となってはごく当たり前の光景。じわりじわりと死に歩み寄っていくとがめの様子に、悲しさも伴いつつ、どこか穏やかな収斂を感じさせる。

 これまで集めてきた刀を丁寧に破壊しつつ天守閣へ上り詰める戦闘パートは、ジャンプ漫画の王道展開のテイストを残しつつ、皮肉たっぷりのネタ仕込みが憎らしい。絶刀・鉋をあっさりと叩き折ったり、賊刀・鎧を苦もなくぶっ壊してみせた七花に理屈抜きの力を感じ、王刀・鋸や誠刀・銓のパートでは「ま、そりゃどうしようもないよな」という肩の力の抜けたギャグも交える。どう考えても「塔登りバトルパターン」なんて実現できないはずのセッティングなのに、敢えて最終回だからっていうのでそれをやってのける根性と底意地の悪さに溜息が出る。いちいち名前つきで登場する敵キャラが全然分からなかったのはご愛敬だな。誠刀・銓をもってた奴とか、なんで幕府直属の11人に名前を連ねていたのかさっぱり分からんな。

 最上階での右衛門左衛門との戦闘。一応「ラスボス戦」ということだが、もうここまで来たら理屈抜き、とにかく「なんかすげぇことが起こってる」感が出せればそれで充分という姿勢。野暮はいいっこなしで、とにかく「強い者が強い者に負けた」のである。

 そして、全てに決着をつける否定姫との初会談から、エンディング。対面したことすらほとんど無い否定姫と七花だが、当たり前のように会話が成立しており、この2人の関係性の最終形態こそが、とがめの作り出した結末であることが伝わってくる。最後の最後まで否定姫というキャラクターは一筋縄ではいかない造形だったのだが、様々な心中を暗示させる細かい台詞回しが心憎い。

 右衛門左衛門戦の前に「姫様、あんた……」と口を開きかけた七花。のちの展開から、彼はそこで「とがめのことが好きだったのか」と問うつもりであったことが分かるのだが、彼女はその質問を押しとどめさせている。右衛門左衛門との勝負の前に、「それ」を聞かれることは七花の姿勢に影響を及ぼすためだ。あくまで「勝った七花」こそが彼女と心をかわす権利を持つのであり、その前にとがめとの関係性に答えを与えることが出来なかったのである。また、右衛門左衛門の最後の言葉を伝えられた時に、彼女は一笑に伏したわけだが、その時に口から出た言葉は「否定」ではなかった。「案外否定的」な彼女であるが、ラストシーンの頭飾りを見て分かる通り、右衛門左衛門との関係性だけは本物であったわけだ。

 そして、最後の一撃を見舞う七花の、渾身の「ちぇりお」。時代の改竄こそうまくいかなかったわけだが、奇策士唯一の望みである「ちぇりお」については、長い長い時を越えて、この現代に結実した。そして、右衛門左衛門戦では「いつ言うのだろう」と思って身構えていた「だがその時、あんたは八つ裂きになっているだろうけどな」が、何故か最後に否定姫に向けて放たれる。右衛門左衛門戦においては、七花は「自分を守れ」などのとがめとの約束事をことごとく破ることで勝利しており、その約束事には、毎回きちんと守っていた「決め台詞を言うこと」も含まれていたのだろう。記録者であるとがめの死をもって、彼はその台詞を言う必要がなくなったはずである。しかし、最後の最後で、彼は否定姫に向けてその一言を使ってみせた。自身の人生が、まだどこかで記録されるのかもしれない。もしくは、自分自身の記録は、ちゃんと残しておく方が良い。そう思えば、彼は「最後に殺すはずだった対象」の否定姫に、律儀にそれを言っておかなければならなかったのだろう。

 

 とにかく、これだけのシナリオ、これだけの台詞量の中に、ありとあらゆる憶測が可能な、読者泣かせ、視聴者泣かせの作品である。最終回を見終えた後でも、その感想は変わらない。本当に、ふざけた作品でした。そして、だからこそ楽しめました。1年間お疲れ様です。

 最後に蛇足。ラストシーンでこれまで登場してきたキャラクターの顔が全員流れたわけだが、あの順番で見ないと、錆白兵はわからねぇよ……

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 刻一刻と、第11話。新キャラも登場せず、特に奇をてらうような演出も展開もなく、粛々と物語は閉幕へ向かう。

 今月分の放送は、いわば「何も無い」話数といっても良いだろう。刀は既に前回で全て出揃っていたし、新たな所有者も当然現れない。とがめ達は尾張へと戻ったし、真庭忍軍はその命運を終えた。全ては終局へ、いやさ、この作品の言葉を使うなら、「完了」へ向かっている。少しずつ積み重ねてきた11ヶ月の物語が収斂していく様を見ていると、それだけで何か感慨深いものがある。

 不満点ももちろんある。最大のしこりは、結局鳳凰が大した活躍も見せずに退場してしまったことだ。今回はバトル展開がいつも以上に多くて、鳳凰対右衛門左衛門、人鳥対右衛門左衛門、そして七花対鳳凰と、メインクラスの戦闘を3つも描いている。だのに、今回は鳳凰の存在感が非常に希薄なのだ。その理由はやはり四季崎に乗っ取られて自我が消え失せてしまったせいであろうが、あの慇懃無礼でどこか癇に障る鳳凰との直接対決が拝めなかったのは少々残念である。また、原作を読んでいないので分からないが、鳳凰(というか四季崎?)と対面した時の七花ととがめの台詞の意味がよく分からなかった。「あんな普通の刀であるわけがない」というくだりを二人で嘘くささたっぷりに言い合っていたのだが、あのくだりは、どういう意味があったのだろうか。単なるジョークなのか? 折角の感慨深い「刀集めの終着点」となるシーンだったのに、なんだかノリが奇妙だったのでどこか違和感があったのである。

 とまぁ、不満は先に書いておいたが、やはり今回もびっちりと詰め込まれた台詞の数々と、それをただ流すだけでなく、画面にのせて世界観を描出し続ける偏執的な構成は充分楽しませてもらった。いつもに増して背景のディティールが美しかったのは、秋という季節を意識してのものだったのか、それとも「旅の終わりの景色」にどこか叙情的なものを込めたおかげなのか。七花ととがめが二人で語らう海辺や、右衛門左衛門が鳳凰とぶつかった夜の平原、そしてラストシーンとなった夕暮れの境内など、1つ1つの絵が不思議なほどに冴え渡り、動きの少ない画面でも充分に目を楽しませてくれる。こういう部分で見せてくれる作品というのは昨今あまり多くないので、それだけでも製作陣の心配りが感じ取れるというものだ。

 アクションシーンについては特に目を引く部分があったわけではないが、演出的にかなり際立ったのは人鳥の最期だろうか。今月のパスワードが「アレ被り物だったのか!」な時点で人鳥というキャラクターには少なからずマスコット的な要素があり、「可愛らしいのに忍びとしても優秀で、鳳凰からは次代の頭領を任される人材でもある」という奇妙な魅力を持つキャラクターだったのだが、右衛門左衛門によく分からない理屈で打ち負かされた人鳥は、何とも情けない姿で這いつくばり、あげく命乞いまでして右衛門左衛門には最大級の罵倒と共に誅殺されている。これまで数多のキャラクターが死んできた今作だが、ここまで凄絶で、後味の悪い死に方もなかなか無いだろう(まぁ、虫組も同情を禁じ得なかったが)。この人鳥の殺害シーンはラストにもってきたとがめ狙撃シーンに繋がるファクターとなるわけだが、冷血なマシーンとなった右衛門左衛門の特性が浮かび上がると同時に、彼の隠しきれない醜さ、妄念の深さをうかがい知ることが出来る。

 今回最もスポットが当たったキャラクターは、やはり右衛門左衛門なのだ。いまだよく分からないが、鳳凰との対決では次第にそのベールがはがされ、人鳥を殺すことで彼の目的が最大限に前景化する。クライマックスでは夕日を背に浴びて神社の石段からぬっと顔を現す姿が何とも禍々しく、これまで1年にわたって描かれてきた物語の最後の試練にふさわしい存在感である。そして、そんな彼が黙々と任務を遂行し続けることで、暗にその裏にいる否定姫の存在感もふくらみ続けるのである。ただひたすら自室で独り言をまくし立てるだけの否定姫。今回は誰とも会話していないはずなのだが、薄暗い室内での唾棄とも憐憫とも取れる不可解な感情の吐露は、とがめとの一筋縄ではいかない因縁の深さを感じさせる。物語に幕を下ろす障壁として、こちらも立派に立ちはだかってくれそうだ。

 一方、敵方に比べると多少おとなしめだったのが主人公カップル。特に七花は今回「あまり強くない敵」である鳳凰を一蹴したくらいで、最後の大活劇は次回に持ち越しのようだ。しいていうなら、開祖となったご先祖様、鑢一根がどことなく七花に似ていたことくらいが見どころだろうか。

 それに比べて、とがめは遂にその宿願を果たす。つまり、七花に対する事実上のプロポーズである。何とも不器用で、情緒の感じられない彼女らしい物言いではあったが、現時点における七花との関係性を考えれば、ベストのタイミングで、ベストの振る舞いだったのではなかろうか。わずかながらも七花の中に残っていた「父親殺し」の禍根はすっぱりと断ち切ってみせたし、あくまで「刀」としての七花を求めることで、現在の関係性を崩さずに未来を見据えることが出来る。自分にとって初めての「交友関係」であるという、何とも初々しいプロポーズであった。今回はやたらととがめのお尻メインのカットが多くて、妙にエロティックな雰囲気が漂っているのも見どころでした。あのへんてこな衣装のお着替えシーンも細かく描かれたし、まさかの眼福でした。

 およそ出し切る部分は出し切り、泣いても笑ってもあと1本で終幕。どのようなエンディングを迎えるのかが今から楽しみで仕方ない。今回のように旅情をふんだんに醸し出すような必要も無いだろうし、出来ることならこれまで以上に充実した活劇で見せてほしいものである。今回のコンテ演出には何故かこでらかつゆきが混ざりつつも、元永慶太郎監督が指揮をし、作監にも中田正彦が参加してのシルバーフォックス総当たり体勢。次回も、期待できそうです。

 最後は当然キャストの話。今回は人鳥役の涼さんが相変わらず腹の立つ愛らしさだったことに加え、置鮎龍太郎の軽快な二役に痺れます。青二軍団の存在感は格別である。でも、今回一番痺れたのは四季崎記紀役の森功至。「なるほど、この人なら時代を揺るがすことも出来る」と思わせる存在感。たまらんです。

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 ゴールに向かってカウントダウン、第10話。ついに全ての刀が出揃い、一気にクライマックス! ……と行かないところが、本当にこの作品らしいところで。

 10本目の刀、「誠刀・銓」。これまでおかしな刀も多数登場し、最近では「刀ってなんだろう」という哲学のレベルにまで行っていた気がするのだが、ついに、実際に存在論にまで発展することになった。ここに来てこの流れというのは、本当に原作者の底意地の悪さというか、何事も無下に片付けられないお人好しの部分が垣間見える設定である。今回の目的は、これまで少しずつ少しずつ溜まっていた澱のような「うやむや」を、さらなる「うやむや」で丸め込んでしまうこと。はっきり言えば、反則行為だ。

 普通のバトルものとして見た時、今回の展開ほどつまらない話も無いだろう。刀の持ち主である彼我木輪廻とはほとんど戦っていないし、途中でとがめが「勝つ」方法を思いついた、といつものように奇策を巡らせるようなそぶりを見せたにも関わらず、その後に出てきた結論は「相手が戦わないつもりなら、自分も戦わなければ勝ちと同等の結果となる」という訳の分からないもの。はっきり言って、屁理屈を通り越した詭弁でしかない。とがめと彼我木は得心がいったような顔をしているが、読者も世間も、こんな話で納得出来るはずもない。実際、彼我木ととがめの問答シーンでは、いつの間にやら七花が画面から消えている。彼がいたら、「訳が分からない」ことが第三者の視点からも明らかになってしまうからではなかったか。

 そう、今回は本当に訳が分からない。しかし、「訳が分からない」のは、この作品を「月に1本ずつ刀を集めていくバトルもの」として見た場合の意見である。12話で完結する1つのシリーズアニメとして見た場合、今回のテーマは前述の通りに「うやむやの解消」だ。そして、その解消手段が、さらなる「うやむや」なのである。そもそも、ここまでの話で限界ギリギリとはいえ一応現実レベルで話を進めていた今作において、「仙人」という存在自体がまずイレギュラーだ。作中で一切説明がなかったが、姿形を変える彼我木のデザインや、彼がもたらした幻影の数々、そして銓の効果に到るまで、どれもこれも全てがファンタジー。極論してしまえば、全てが夢幻であってもおかしくはなく、彼我木という存在自体も、「おのが姿を写す鏡」という機能さえ成立していれば、あとは個人として存在する必要も無い。実際、全てが片付いて袂に銓を忍ばせたとがめたちが百刑場を後にしてから、とがめが必死に掘った穴は綺麗さっぱり消え失せている。今回流れた全てのバトル、苦役は、銓の効果であったとも考えられるのだ。こうして「自分と向き合う」という行為自体を刀の属性としてあたえ、その延長線上に彼我木輪廻という実在しない人格を形成する。そうすることで、一切バトル要素が存在しない、単なる「内省」という行為を一つの「刀探し」エピソードに変形させているのである。この解題の仕方は、本当にしたたかだ。

 「内省」というテーマが決まれば、後は描くのは容易い。奇策士とがめが振り返るべきは、過去の自分の原点。家族を失ったあの日の凄絶な思い出と本気で向き合う機会を得て、これによって動乱に飲み込まれてしまった父親の存在にようやく片を付けることが出来た。そして、そんな父の背後に迫っていた虚刀流という存在についても、「四季崎の刀の一本であった」といういかにもなネタを回収することで、一応の決着を見ている。彼女が集めるのは刀。そして、刀を集めるのは刀であった。全てが「刀」に収束する、いかにもこの作品らしい落としどころではないか。

 そして、今回のメインネタといっていいだろう、七花の内省。鑢七花というキャラクターは、最近になってだんだんくだけてきてはいるものの、やはりその内実を探りづらい、謎の多い人物である。「何のために戦うか」という大命題はもちろんのことだが、勝つこと、負けること、戦うこと、守ること、そうした全ての行動について、彼は自らの意志を優先させない。そんな彼の最奥をえぐるための手段が、今回の「敗戦相手との対峙」であろう。

 汽口慚愧との対峙は、まだシンプルだ。彼女ははっきりと自らの口で自分が伝えるべきことを語っており、「刀が使えないのは呪いではないか」というファクターをあぶり出した。鑢七実との対峙は、七花にとって一番重たいテーマであったが、「あくまで刀でしかない」「刀は刀を使えない」という彼女のメッセージは、最終的に「刀の使い手」の存在をあぶり出す。そして、最も根深く七花の奥に眠っていた存在、敦賀迷彩との邂逅により、七花はようやく、本当の意味で「使い手」の存在に気付くのである。「私を殺してまでして、何のために戦うのか」との迷彩の問いに対し、存外あっさりとした七花の答えは、「とがめのため」と。

 結局、まとめてしまえば今回のエピソードは七花にこの一言を言わせるためだけに存在していた。内省の果てにたどり着いたのはたった1つの「目的」。この「目的」という言葉もとがめ達の問答の中で再三登場するフレーズだが、本来最も重要であるタームを軽々しく女性2人の問答の中で引き出し、あてどない方向に転がしてしまうあたり、作劇の底意地の悪さが伺えよう。表面をなぞると本当に馬鹿馬鹿しいことしか論じていないキャラクターたちは、一歩引いて俯瞰することで、きちんきちんとこの作品のゴールに向けて、切るべきものを切り捨て、拾うべき因子を丁寧に拾いながら歩いているだけなのである。本当に憎たらしい。

 これだけ面倒な脚本、アニメにするのはさらなる艱難辛苦を乗り越えなければならない。今回のコンテを担当したのは小松田大全という名前のクリエイターだが、相変わらず無茶な脚本を相手に四苦八苦しているのが伺える。最終的にとられた方策は、監督の元永慶太郎の大筋の流れに沿った、「画面はのせるだけ」という方針だったか。無駄に長い問答のシーンは、本当に動きが無い。今回は特に彼我木の問答が頭を悩ませるものとなっていたので、おそらくこれに徒に画面までいじり始めると、おそらく作品としての収拾がつかなくなっていただろう。皮肉なものだが、動きを捨象して構成するという判断は正解だったと思われる。もちろん、ただ画を止めて諦めるわけではなく、1枚1枚の画のインパクトは重視しており、個人的に気に入ったのは、否定姫と右衛門左衛門の会話のシーン。いつも通りにお行儀よく座っていた否定姫はいつの間にか床に寝そべって天井裏の右衛門左衛門と会話をしており、間をつなぐカットを用意していない。一体どういうことだろう、と考えてみると、この「寝そべった否定姫」は、天井裏の右衛門左衛門から見た時に、きちんと全体像が捉えられるアングルに変化しているのである。今回、右衛門左衛門は初めて「笑みを浮かべる」というアクションをとった。2人の関係性に、主君と臣下という関係以外の、もっと濃密なものを感じさせる。物語の収束に向かって、この2人の関係性も少しずつあからさまに、そして密接に進んでいるのだ。

 また、彼我木の作り出したファンタジー世界の造形も、ベタな部分はありながらもなかなか含蓄に富む。「書き割りで描かれた世界が割れる」というクライマックスの演出は、個人的な思い出から言うと「妄想代理人」の最終話と被る。どちらも逃避先を用意された『向き合いたくない現実』の打破のメタファーとなっており、今回は七花が彼我木の投げかけた問答に対する答えを導き出したことを端的に表すカットとなっている。他にも、彼我木が抱える酒瓶(?)の中がとがめの掘り続けた穴と繋がっていたのは彼我木ととがめの関係性を分かりやすく示しているし、そもそも彼我木のデザイン自体、アクロバティックな「概念の複合」をビジュアル化するという難度の高い造形の産物である。まぁ、期待していたこなゆきの活躍がみられなかったのは残念だったけど……

 そして、そんなややこしい問答回だからこそ、数少ないバトルの見せ場の力の入れ方がすごい。ただ、何故か今回は彼我木とのバトルではなく、回想シーンの慚愧とのバトルの方がものすごかったけど。あの短いシーンにどれだけの労力を傾けたのだろう。劇場版と見紛うものすごい迫力だった。「動きでだって見せられるんだぜ!」という製作スタッフの維持の表れか。

 とにかく色々と見どころ、悩みどころの多い今回。最後にやっぱり中の人の話で締めよう。ゲストキャラクター彼我木輪廻役は、なんか久し振りに聞いた気がする伊東みやこ。「しずくちゃん」「キョロちゃん」とひたすら人外のイメージであるが、やっぱり今回もファンタジー生物という名の異物としての存在感が濃すぎる。面白い造形だったが、ちょっと気になったのは笑い声ですかね。やっぱり「ケ」音で笑うのは人として難しすぎるよ。過去に「ケケケ」でちゃんと笑えたキャラクターって、ステカセキング(CV・二又一成)しか浮かびません。

 その他、とがめ、否定姫、七実、慚愧、迷彩などのオールスター出演も今回の見どころ。やっぱりこうしてみると重要なキャラクターは全部女性なんだよなぁ……とがめは今回あんまりしゃべってなかったからちょっと不満だったんだけど、ラストのいちゃいちゃシーンで全部持っていった気がします。まぁ、本当に最後に持っていったのはエンディングテーマを歌った否定姫だった気もしますけど。作詞が畑亜貴、作曲が伊藤真澄のゴールデンコンビ。本当に「容赦無い」曲になりますよね。これってアルバム収録とかされないもんかなぁ。

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 久し振りに破壊力抜群のとがめ節、第9話。そうだ、この作品は、最初はとがめの魅力でもっていたんだ。やっぱりボスキャラは本領発揮したら違うぜ。

 9本目の刀ということで、流石にもう展開に差が出しにくい頃になってきていますが……今回は、なんと「七花は刀が全然使えない」というネタをメインに持ってきてすったもんだする展開。いや、ここまで馬鹿な設定がまだ生きているとはおもわなんだが……これまでの刀集めとは緊迫感が全然違うよな。北海道の山の中にある刀とか、海賊の頭領が持ってる刀は流石に集めにくそうだけど、単なる田舎道場の師範が持ってる刀なら、マニワニにしろ幕府にしろ、ちゃっちゃと集められそうなもんだけど。とがめがラストで何か訝しんでたけど、この刀の蒐集が随分遅れたことには何か意味があるんだろうか。前回までの白熱した戦いが、急に色恋混じりの緩い展開になったから、ちょっとどうしていいか分かりませんでした。

 とは言っても、七花ととがめは勿論大まじめ。なんとか正攻法で刀を譲り受けるべく、奇策を巡らせて……って、今回は10日間もうだうだしてたけど、「あの勝ち方」だったら別に10日間もいらんよなぁ。これって単純に「とがめの頭がテンパってたから良いアイディアもしばらく浮かびませんでした」ってことでいいのかな。何の障害も無い状態だったら、最初に勝負を挑んでから2,3日で奪えてた気がするんだ。やっぱり9話目に持ってくるような試合ではないなぁ。

 いや、別に今回のお話に不満があるというわけではない。ただちょっと妙な流れに肩すかしをくらっただけ。今回のシナリオの焦点は、前回までですっかり円熟した夫婦みたいになっていた七花ととがめの間に爆弾を落とすこと。特に具体的な契機もなく、半年以上もの旅路で自然と結びついた七花ととがめ。このまま何事も無ければ2人は相思相愛で片付くところなのだが、ここで敢えてそれをかき回すことで、より密な関係性を示唆する。それが今回のシナリオのメインプロットだろう。そして一番分かりやすいかき回し方は、「ライバルを出すこと」だ。

 元々朴念仁でしかない七花を釣り上げるための「恋のライバル」は、普通の女の子では務まらないので、わざわざ刀の持ち主として汽口慚愧が登場する。刀の力により非の打ち所のない清廉潔白な人間となった慚愧に対しては、どこかズレた七花も文句をいうことは出来ない。話の流れからいつの間にやら門下生として修行をすることになり、師1人、弟子1人の修行の時間は、言い換えれば男1人に女1人の空間。武道といえば七花はホイホイついていくわけで、気付けば奇跡的なセッティングで「とがめがやっかむ恋のライバル(大誤解)」が生み出された。

 基本的に、とがめが1人でどつぼにはまってギャーギャー言ってるのを楽しむことになるわけだが、誤解の仕方とか、いつの時代の漫画だよ、と突っ込みたくなるくらいにベタベタ。はたして原作小説でこれを読んで面白いのかと不安になるくらい。しかし、アニメはこれで面白い。今回はとがめさんの百面相を描くのに全精力がそそがれており、泣いたり怒ったりふくれたりあざ笑ったりするとがめの顔を見ているだけでも楽しくて仕方ない。慚愧のキャラクターがあの通りの鉄面皮なので、それとの対比でいつも以上に賑やかで可愛らしく見えました。ほんとに1人上手なんだから。

 そして、そんな(勝手に)切羽詰まったとがめに、遅すぎる一歩を踏み出させたのが今回の大オチ。「10日とは言え練習したから素人とは言えないよ」という七花に対し、必殺の忘却兵器を炸裂させたとがめ。あんた、これまでずっと奥手だったくせに、こういう時には躊躇いないんだな。奇策のためならなんだって「肯定」出来るってのはこういうことをいうのかねぇ。しかも、実際に使った作戦をみたら、別に七花が素人だろうがセミ素人だろうが全然関係無いやんけ。今回の奇策っていうのは「慚愧に勝つための策」というよりは、「七花を自分の下に引き戻す策」としての奇策だったのかもしれません。

 さて、そんな浮ついた雰囲気の2人とは対照的に、どんどんシリアス風味が増しているのはマニワニと尾張城の面々。残り3人しかいなくなってしまった真庭忍軍は、「最も強力な変体刀」を手にしたことで一気にビハインドを取り返そうとしている。そして、そんな真庭忍軍を追うのは、否定姫の僕である右衛門左衛門。海亀の復讐を願う鴛鴦との直接対決は前回の海亀戦よりは白熱したものとなったが、それでも右衛門左衛門の持つ銃(刀?!)によって突然の幕引き。これにより、真庭忍軍は残り2人。なかなか強烈な個性を発揮してくれていたマニワニたちがどんどん減っているのはちょっと切ない。今回の鴛鴦にしても、海亀同様にほとんど活躍出来なかったからなぁ。残り3話でどうにか一花咲かせてくれるんでしょうか。

 今回は場面転換も多く、とがめが騒がしかったので普段のような「台詞の圧倒的な多さ」は(そこまでは)気にならない回でしたかね。ひょっとしたら9話も見てるから単に慣れてきただけかもしれないけど。残念ながら否定姫の活躍があまりみられなかったので、次の一ヶ月が待ち遠しいですわ。

 最後は当然キャストの話。今回のゲストキャラである汽口慚愧役は、固い役といえばこの人、伊藤静である。ま、中の人の本性を知ってしまうとこういう役はどないやねん、とも思うんだけど……イメージはしっくり来るのが不思議だ。御前はちょっと前までは少しずつ出番が減って中堅どころとして落ち着いてきたイメージだったのだが、今期は森島先輩にオオカミさんなど、メイン級での当たり役が多い。こういう年がある役者っていうのはしぶといですよ。個人的には「セキレイ」の紅翼が一番「らしくて」好きなんですけどね。

 ただ、今回はやっぱりそんなゲストキャラよりも、回りを全て食ってしまうとがめの中の人を褒めるべきでしょう。嫉妬に暴れるお子様な部分から、ちょっと背伸びして七花をいじってみる策士としての側面まで、本当に見てて聞いてて楽しい見事なさじ加減。出来ることならこれを収録してるアフレコ現場をずっと見ていたいくらいです。ちぇりおー。

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