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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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 のみこがすげぇ! 第7話。視聴後そのままのテンションでお送りしているのでエンディングテーマの印象ばかりがやたら強いのです。のみこっていうと「しちゃいましょう」のイメージしかなかったのだが……こりゃアルバム買おうか。

 せっかくの導入なのでテーマソングの話をもう1つ書いておくと、今回からオープニングが栗林みな実からARI PROへとシフトしており、画面もよりシリアスで、クライマックスを意識した構成になっている。特に否定姫・右衛門左衛門などのキャラクターにスポットが当たっている部分が強烈で、今後嫌でも盛り上がるんだろうことを感じさせるなかなかの出来。アリプロの歌の方は、かなり「ギリギリ張り詰めたアリプロ」な曲なので、相変わらず高カロリーでヘヴィーな楽曲である。もちろんメインテーマとしての迫力は充分なので、これはこれでぴったりと言えるかもしれない。残り4回のエンディング歌唱が誰になるのか楽しみですね。

 と、ここまで書いてようやく本編の話。今回描かれたファクターは大きく3つ。そのうち1つは当然、「七花ととがめの関係性の終着点」。ここのところ少しずつおおっぴらにいちゃつき出すようになった2人であったが、今回のエピソードではその度合いが加速しており、冒頭で七花が家の外装を散々笑い飛ばした時にはとがめも不機嫌になったが、そこから先は基本的にべったりの関係性。お互いがお互いのことをこれっぽちも疑わず、信頼という便利な言葉で繋がりを強めている。そして、その中心には、前回七花が打ち勝った鑢七実の存在が潜んでいるわけだ。七花が七実を倒すことが出来たのはとがめのおかげ。七実は「刀としての純度が下がって随分なまくらになってしまった」と七花を酷評していたが、七花自身はとがめの刀としての半年間の生活は自分を強くする要因であったと信じることができ、結果的に2人のコンビネーションでもって七実を打倒した。血を分けた姉を殺害したことによって「血の通った刀」である七花が完成を見たのである。

 そして、そんな「自分の有るべき姿」を手に入れた七花と対峙するのは、「動きはするが血の通わぬ刀」であるところの、微刀・釵である。もう設定とか仕組みとかは面倒なので突っ込まないが、とにかくオートプログラムで侵入者の撃墜をするだけのキリングマシーン。これを「誰かのために戦うこと」という七花の手に入れた大義名分と対比させることにより、刀集めの激闘と、七花の人間としての成長を同時に描いてしまおうという魂胆である。相変わらず抜け目ない脚本だ。

 戦闘機械との対決、という素材そのものについては、今回のアニメーションはほぼパーフェクトと言っていいレベルの出来である。久し振りにバトルシーン自体もけれん味溢れる大回転が満足できるものだったし、戦いに挑む七花がとがめと心通わせる様子なども、シンプルな描写なのにじんわりと染みこんでくる安定感があった。

 敢えてちょっと不思議に思った点をあげておくと、演出方針として1つだけ分からなかった「日和号の流した涙」がある。「血の通った刀」である七花と、キリングマシーンである日和号を対比させるには、徹頭徹尾、日和号には「心を持たぬ機械」であった方が都合が良いのだが、最後の最後で、日和号は一瞬だけ人形から「人間」になる。七花が空から落ちてきた日和号を受け止めた時の姿勢が、その前にとがめを抱きかかえたお姫様だっこと全く同じというのも、「人間扱い」というキーワードを表す端的な描写になっているだろう。

 不思議と言えば不思議なのだが、あのシーンを見ただけでも思わずウッと唸ってしまったので、これは見ているこちらの負け。おそらく、日和号はあくまで機械であり続けたが、それを受け止める七花の方が「機械にも人として接する心を持つ」という意味だったと解釈するのが正しいんだろう。「雨粒が涙になる」という演出が、実は「ソーラーエネルギーで動く日和号を叩くためにとがめが曇天の日を選んで対決に臨んでいる」というネタの伏線回収になっているのは流石の一言。また、そんな日和号の顔が四季崎記紀の愛した人の顔である、というエピソードを挟むことによって、今後絡んでくる可能性がある刀匠四季崎記紀のキャラクター性を表す伏線になっている可能性もある。色々と考えさせられる演出だった。

 2つ目のファクターは、これまでよく分からない存在だった右衛門左衛門の存在。今回は否定姫がかなり出張ってきたので彼にも自然にスポットが当たるようになったわけだが、七花が気にしていたことからも分かる通り、少しずつその存在感を増し、オープニング映像を見る限り「お前がラスボスなのかよ」というポジションに到達。そして、そんな陰のキャラクターの存在感をアピールするのに格好の素材が、噛ませ犬の代表である真庭忍軍だったわけだ。CVが関俊彦ということで実力が期待された真庭海亀だったが、全く良いところを見せることもなく惨敗。しかも持ち技が単なるフェンシングって、これまでの噛ませ連中と比べてもかなり扱いが悪い。無念。

 そして最後の1つのファクターというのが、右衛門左衛門の主である、否定姫その人である。これまでもちょいちょい登場していた彼女だったが、がっつりとがめに絡んだのは今回が初めて。いかにも西尾維新らしい、完璧に固まった阿漕なキャラクター設定は、そのエキセントリックな風貌も相まって実に面白い画面を生み出す。とがめとの「あいさつ」のくだりはいつにも増して台詞の数が多くて不自然極まりない、たたみかけるようなマシンガントークパート。今回は、こうした「ただ台詞を垂れ流すだけのパート」で「止まる」ことが一切無く、しかも演出の不自然さを一切感じさせずに「普通の画面」に落とし込んだコンテ回しになっていたのが白眉である。スタッフロールを見れば今回のコンテは小林智樹氏。むー、流石にうまい。

 今回のコンテでもう1つ触れておくと、日和号の初登場シーンからガシャンガシャンと歩く描写についても、どこか奇妙な「異物感」みたいなものが秀逸だった。何故か思い出したのは過去の名作ゲーム「MIST」における様々な機械やアイテムたちで、そこに現れるのはこれ以上無いくらいの「異世界を見る」視点。瓦礫の山を寂しげに歩く日和号には、最大級の「現実感の無さ」と一緒に、「どこか奇妙な存在感」を感じさせるものに仕上がっていた。

 で、否定姫絡みでは、他に気になったのが天井裏の右衛門左衛門との会話のスタイルがある。右衛門左衛門はいつも通りに淡々とした口調でしゃべりつづけているのであるが、画面に現れるのは彼の大写しの口元のアップのみ。そして、この口元が若干笑みを浮かべているようにも見えるのである。否定姫が御機嫌で笑っているのは分かる。テンションが高くてノリノリの彼女の表情は、それだけでも充分なインパクトがあるのだが、声音だけを聞くとひどく冷静な右衛門左衛門のビジュアルも、どこか奇妙な笑みが見て取れるのだ。この2人の関係性も、まだ色々と面白い部分がありそうではないか。

 毎回毎回、「台詞が馬鹿みたいに多くて頭でっかちなこの作品をどういう風に料理するのか」という点が楽しみなのだが、2話のような力業、7話のような変化球と来て、今回のコンテ演出は王道中の王道。言い方は悪いが、まるで「刀語では無いような」、凄く見やすい画面であった。こういうのもたまにはいいものである。小林智樹氏は3話でもコンテを担当していたのだが、あちらは脚本がイマイチだったので消化不良の部分があった。今回久し振りに堪能できたので、今月分は満足です。

 最後はやっぱり中の人の話。今回の対戦相手である日和号だが、中の人は何故かわざわざ遠藤綾を使っている。……加工音声にされてましたがな。ちょっと勿体ない。あとは前述の通り、海亀役の関俊彦が痛々しくてたまりませんでしたね。

 しかし、なんと言っても捨て置けないのは、毎回楽しませてもらっている否定姫役の戸松遥である。やっぱり戸松は一言で空気をもっていくだけの天性のパワーがありますよ。あのクソ憎たらしい否定姫のキャラクターがここまで天晴れな現れ方になっているのは、ひとえに戸松の豪腕があってこそだと思う。また、戸松VS田村ゆかりという新旧(?)アイドル対決も見どころの1つ。2人とも「一言で空気を変えることが出来る」という意味では実に見応えのあるマッチメイク。今回のクライマックスは、画的には日和号VS七花だったかもしれないが、トータルで見たら冒頭の否定姫VSとがめだったのではなかろうか。「10歳、いえ20歳は若く見えるわ〜」とちんちくりんのとがめを馬鹿にする否定姫の中の人は現在二十歳。馬鹿にされるとがめの中の人は、若作りの限界に挑むことには定評がある現役アイドル34歳。名勝負数え歌。

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 ハイパー七実アワー、第7話。並べて書いて今気付いたが、7話だから七実なんだろうか。先月の次回予告を見て「うわ、次回の敵は七実ねぇちゃんだ。こいつは今から楽しみだぜ!」と思っていたのに、関東では放送が早かったせいもあり、うちのブログをやたらと「七実」「死亡」で検索して来る人が多くて、何か哀しくなった。無事に視聴したので、これでめいっぱい書けるぞ。七実死亡、七実死亡。鑢七実死亡。

 今回はとにかく、その特徴的な画面が目を引く回である。原作挿絵を強く意識したのだろうか、ゴリゴリと太い枠取りにシンプルなラインで描かれた造形。普通に動くだけでもかなりインパクトのある絵柄だったが、これがさらにデフォルメを強調させていくことでゲーム画面のようなストイックな画面構成としてギャグにまで落とし込まれる。最初は、一時的にコミカルな演出の箇所を用意したのかと思ったのだが、結局、ほとんどぶっ通しで最初から最後までこの画面が貫かれていた。この独特のデザインが何を意味していたのかは推し量るしかない部分であるが、最後に七実から悪刀を引き抜いたあたりでふっと画面の緊張が緩むことから考えると、おそらくあの画面は「七実の世界」を構築していたということなのだろう。

 象徴的なのは冒頭に七実が刀を奪いにいくシーンで、等身の低いキャラクターが、ゲーム画面のような一見すると手抜きの造形の中ですがりつく敵を無惨に踏み付ける。「草め」と延々呟きながら手負いの敵兵士、そしてその亡骸を踏み続ける七実も、その後で死屍累々の荒野を1人笑いながら歩く七実も、実に恐ろしいシチュエーションなのは間違いない。しかし、七実の目から見てしまえば、それらはあくまで日常的な一風景でしかなく、自分が踏み付けたものはあくまでも「草」。そうした虚無的な七実の思考、厭世的な物の見方が、ゲーム画面のような味気ない作品世界を構築してしまったと考えることが出来るだろう。その「どうでも良さ」「張り合いのなさ」を考えれば、チープと見える戦闘シーンのエフェクトなんかも、怖気が走る不気味なものに見えてきませんか?

 今回はこの作品では初めて、コンテ演出、それに作監までを田中基樹氏という人が1人でこなしている。印象になかった名前だが、長丁場のこの作品をきちんと1本の軸で描ききってみせた手腕は評価出来るだろう。延々と垂れ流される会話劇の演出については単調な部分も見受けられたが、相変わらず必死に画面に変化を付けようという努力は見て取れたし、クライマックスに刀大仏前で対峙してからのバトル展開は直球勝負で見応えがあった。別に七花と七実の姉弟関係なんてそこまで思い入れがあるわけでもないのに、ラストはちょっとうるっと来てしまうくらいの出来だった。良い物を見せてもらいました。

 で、そんな画面のがんばりを差し引くと、今回のシナリオラインは今まで以上に阿漕で、見るべき部分が少ない。珍しくとがめが「奇策士」らしいことをしているのだが、「相手の目が強いならば暗闇にすればいいじゃない」なんてネタは流石に奇策と呼ぶのもどうかと思うし、それが通用するならスタングレネードみたいな光線などで目の働きを阻害した方が手っ取り早かった気もする。もともと「七花八裂」がどの程度「最終奥義」なのかは疑問が残る部分があったのを、そのまま「ちょっと改良すれば本当に強いよ」という流れで使ってしまったのも拍子抜け。「どこからどう見ても最強」というキャラクターをどう倒すのかっていうのが今回の見どころだと思っていたので、この幕引きは肩すかしであった。バトルものは強さの配分が難しいね。

 もちろん、そうしたいちゃもんは単なる言いがかりでもある。今回のメインプロットは「七花の強さ」というものを別方向から描写することにあったであろうし、もっと割り切って言えば「ジョーカーの退場」を目的としたものであったろう。バトルものにおいて主人公よりも強いいわゆる「ジョーカーキャラ」は扱いが難しく、存在しているだけで主人公のがんばりが霞んでしまうという難点がある(過去にそれで失敗した漫画がいくつあることか)。この作品も、七実というジョーカーを出して4話ででっかい悪ふざけをやってみせたわけだが、そのまま七実を残してしまっては、最後の決戦で支障が出てしまう。物語として成立させるには、あくまで「正面から、七花が七実を倒す」必要があったのだ。その必要性をある程度満たしつつ、説得力を維持するギリギリの落としどころが、今回の顛末だったと見ることが出来るだろう。一応七花もとがめも全力で頑張った結果、ということなので、努力からの勝利という方程式は守られている。

 あとは「ジョーカーとしての七実」にいかに魅力を与え、いかに綺麗に退場させるかという部分が腕の見せ所。悪刀を抜かれた後の「技を見取っていた理由」などはあり得ない理屈だけに度肝を抜かれるし、その後のとがめを狙ってのソニックブーム、最後の一撃を浴びた末期の一言など、ひねくれながらも華々しい「悪役の幕引き」。もう、本当にこれがラストバトルでも良かった気がする。鑢七実という実に良くできたキャラクターが退場してしまうのは口惜しいが、このあたりが丁度良い幕引きか。

 後はとがめのドロップキックとビンタを合わせた叱咤激励のシーンとかが見どころですかね。今回は初めて新キャラが1人も登場しない回だったのだが、既存のキャラクター達が回りでぎゃーぎゃーやっているのを見てるだけでも何となく楽しい部分はありました。個人的には否定姫が気になる。普段は「〜〜せず」の形で返答していたはずの右衛門左衛門が、何故か否定姫相手には素直に「ハイ」って答えちゃうんだよね。

 そして、毎度毎度のことながら、やっぱり中の人のこと。ハイパー七実アワーなんだから、今週は中原麻衣のことしか書く気が起きません。「弱さ」と「強さ」、「冷酷さ」と「慈悲深さ」を同時に孕んだ、鑢七実という怪物の心情など、演れと言われて演れるものではなかろうに。安心の狂気、それが中原麻衣。勝手な思い込みかもしれないですが、この人はこの歳の役者の中では屈指の「役を感覚で引っ張ってくる」役者だと思ってます。それこそ、七実と同じ天性のものかもしれません。

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 季節感完全無視の第6話。一ヶ月前に「次の放送までの一ヶ月は長く感じるか、短く感じるかのどっちかな」とか書いたけど、正直あっという間でした。多分、この作品の出来不出来は一切関係無しに、私的に忙しかったせいだとは思うけども。

 前回の校倉の嫌がらせで、蝦夷の地にやってきた七花ととがめ。そのまま刀集めに挑むわけだが、今回は試合前から七花が倒れるというアクシデントが。強い強いと言ってはいるが、流石に天候には勝てない模様。まぁ、普通の少年漫画の設定だと、「強いから痛みに対して鈍感である」っていうのは負けフラグなんだけどね。悪魔将軍なら足が止まってるレベル。ヨガポーズ!

 さておき、そんな状態でも大丈夫、七花はフラグなどあろうがなかろうが、この作中では案外弱かったりする。凍空一族の生き残り、こなゆきは年端もいかない幼女ではあるが、一族の特性(便利な言葉だ)を受け継いでいるので生物学上あり得ないくらいの筋力の持ち主。多分、ヒュペリオン体質の一族なんでしょうね。真っ向から勝負を挑んであっさりと主人公が負けるという展開は流石であるが、これまでの戦歴を見ると、確実に七花よりも強い人物というのは、病床の姉である鑢七実と、今回登場した10歳の少女こなゆきの2名。屈強な男たちや癖のある忍者は噛ませ犬になるのに、か弱そうな女性ばかりが強いというのは、いかにも捻くれたセッティングである。このあたりの意外性の出し方は、やっぱりフリーザ様の第3形態で衝撃を受けた世代の共通言語みたいなところがありますね。

 そして、更に意地が悪いのは、生まれながらにして強いこなゆきに「武芸の経験」を足すと、今度はあっさりと七花に負けてしまうという展開。正直言ってバトルシーンを見る限りでは「何でやねん」としか思わないのだが、まぁ、勝っちゃったものは仕方がない。「定石を覚えて二目弱くなり」なんて言葉もあるくらいだし、「素人+変態刀」という完全イレギュラーの持つ力こそが脅威であったというセッティングは、分からないではない。多分原作だともう少し説得力のある描写が……されてんのかなぁ。とりあえず、アニメではそのあたりの展開はちょっと唐突だったので釈然としませんでした。このアニメのバトルは大体そんなもんだけどさ。

 と言っても、具体的なバトルシーンの展開は、少なくとも前回よりは見応えがあったのも事実。狂犬戦は一瞬で終わったので置いておくとして、こなゆきとの試合については、それなりのスピード感があり、少ないバトルシーンで何とか盛り上げようという意識は見て取れる。後半も刀の持つ「重み」が出ればもう少し面白かったとは思うんだけどね。

 そして今回はさらに2つのファクターが物語に大きく絡む。1つは、半年経って少しずつ変わっている七花という人間の内面。全部が全部とがめがしゃべっちゃうので読み込む隙間が無くてちょっと辟易するのだが、飄々としながらも少しずつ変わっている(正確には、とがめに変えられている)七花の様子は、いくら捻くれているとは言っても、古式ゆかしい少年漫画の成長物語の1パターン。気付けばとがめとの距離も自然に縮まっており、一組の男女としてもなかなか魅せてくれる絵面である。あとは残り半分の物語の中で、七花の「優しさ」と「強さ」のバランスをどう取っていくかという勝負。とがめはこと七花の人間形成に関しては、奇策士というよりも1人の女の子にしかなれない部分があるため、計算尽くで行く部分ではなかろう。

 そして今回個人的に盛り上がった2つ目のファクターは、少しずつとがめ達との関わり方を変化させている、真庭忍軍の立ち位置である。狂犬のシンプルなキャラクターは、これまでのどうにかしてほしいマニワニのキャラクター(特に白鷺と喰鮫)に比べれば非常に分かりやすく、説明書きにも「ギニュー隊長」って書いておくといいから楽。そして、そんな狂犬を弔うために訪れた鳳凰と川獺の、衝撃的な「交渉術」。鳳凰たちが走っている時の会話の時点で川獺の持つ危うさは発揮されていたわけだが、「今月は右腕もやっちまうのか」と思って見ていただけに、流石にアレは衝撃だった。冷静に考えれば、「仲間の仇」と息巻く人間がわざわざ身内の命を交渉材料に持ち出すという思考はおかしいのであるが、鳳凰のキャラクターはただでさえ読めないものなので、一連の流れでその「謎めき方」がいや増すことになる。やっぱり4話の虫組の話があったおかげか、マニワニ絡みのエピソードはちょっと心が騒いでしまいます。

 で、次回のアナウンスでナレーションの池田さんがとんでもないことを言ってたような気もするけど、とりあえずスルーしますよ。だから……だからヤンデレ中原さんは凶器なんだってば!

 というわけで、お待たせしました(?)、キャストのお話。今回も相変わらずいい仕事をし続けております、我らが田村ゆかり。七花が突っ込まないのでちょいちょい流しそうになるが、時たま地が出て口調が可愛らしくなってしまうとがめは反則である。「幼女に心変わりしたか?!」とか息巻いてましたが、あなたも充分ロリです。ちぇりおちぇりお! また、ちょい役ではあるが、否定姫役の戸松は先月分に続いてストレートなインパクト。「否定するわ」って最近どこかで聞いたなーと思ったら、チャコリーの魔法権利だった(分からない人はググらなくてもいいよ)。

 そしてまとめて登場した真庭忍軍の濃いことと言ったら。鳳凰の置鮎だけでも充分なのに、今回ちょろっと関さんも出てましたな。大好きな役者さんなだけに、今後どんな活躍をするのか楽しみでしかたない。川獺役には汎用性の異常さに定評のある川田紳司。なんだかこっちが主人公チームみたいな男性キャストです。

 女性陣も充分なラインナップで、お色気もばっちりの狂犬役には根谷美智子さん。母親にしたい声優ランカーです。同じく不思議な色気の漂う鴛鴦の中の人は寡聞にしてあまり存じないのであるが(外画メインの人だね)、ペンギン(人鳥)の中の人は、また出てきやがった広橋涼! 最近調子に乗ってるんじゃありません?! 何であんなに愛らしいのでしょうか。広橋ずるいなぁ。

 そして、今回これらの重鎮たちを押さえてのMVPといえば、なんと言ってもリアルロリっ子声優、日高里菜である。登場時は一瞬「あれ? きみきみ?」 とか思ったが、なんか違うので脳内検索。しばらくして「あぁ、ラストオーダー……日高里菜!」と分かったが、それでも受け入れるのに時間がかかった。特に今回は狂犬にのっとられた後のモードも彼女が熱演しているわけだが、言葉の端々がきちんと「根谷さん風」になっているのが凄い。作りもののロリっ子ボイスを取っ払った演技を初めて聞けたのだが、地声の幅も量もなかなかのもので、今後も声優をやってくれるならば色々な方向への期待が持てる。まだ高校に入ったばかりなので進路は未定だろうけど(そして本人が希望したらもっとメジャーな路線に行っちゃいそうだけど)、是非とも「育成枠」として囲っておきたい、有望株である。「期待の持てる声優を青田買いしたいなぁ」とか夢想してる時間が、一番幸せです。いいじゃない、声ヲタだもの。

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 ちぇりお! な第5話。既に伏線が張られてから半年近く経っていますが、遂に正体を現した「ちぇりお!」ですよ。毎月やられていたので「そういやそろそろとがめが恥ずかしがる頃なんだよなぁ」ということは頭の片隅に置いてあったわけですが、あそこまで全力でやってくれるとは思いませんでした。もう、バトルがどうとか恋愛感情がどうとかいうファクターよりも、ちぇりおの方が大事な回でしたよ。

 さて、前回が完全変則構成、その前の3話の試合も、ちょっと消化不良気味だったので、今回は2話の宇練銀閣以来のガチンコ正面勝負。事前に「防御力VS防御力」などとあおり立てておき、一体どのような方法で鉄壁の防御を突き崩すのかと思ってみていれば、何のことはない、「愛の力で何となくクリアしました」という腰砕けの展開。バトル要素に関しては、今回も3話同様、特に見るべき点も無く終わってしまいました。まぁ、毎回毎回バトル部分で新規性のあるプロットをひねくり出せ、というのも無理な話なので、あまり高望みしてはいけないと思うが、七花が最終的に何を悟り、何をもって校倉を凌駕したのかがいまいちしっくり来なかったので、決着のシーンはちょいともやもやが残ってしまった。頭では分かっていても、やっぱりこの作品に期待したいのは「すっきりしたバトルの結末」。そうした要素は、今回ちょっと物足りないくらいです。

 でもまぁ、シーンの配分からしたら、今回はこんなもんか、というのも素直な感想。何せメインとなるのは七花ととがめの関係性。旅を初めて半年近く経ったこのタイミングで、そろそろ2人の感情にも1つの答えを出しておこう、というのがメインプロットだろう。そういう見方をすれば、校倉というキャラクターは実に分かりやすい噛ませ犬。一目惚れなんて便利なアイテムでさりげなく七花の嫉妬心を煽りだし、それを乗り越えることで試合にも勝ってみせるというシンプルなプロットは、相変わらずジャンプ漫画のような分かりやすさ重視の姿勢を貫き通していることが確認出来るだろう。

 また、七花ととがめの関係性、もっと突き詰めていうなら恋愛感情というものを主軸として見た場合には、今回のプロット(とコンテ)は実に如才ない。冒頭の温泉シーンでは二人の色気の欠片もない関係性が描かれるが、行き交う酒の盆に二人の対等な感情がたゆたっている姿がトレースされる。わざわざ七花を立ち上がらせて全てをくまなく観察するとがめは、二人の関係性に男女の間柄を感じさせず、あくまで「主人と刀」の関係を想起させるためのワンシーンと見られるだろう(もちろん、「そのとがめが見ているもの」を視聴者に想起させて、多少なりともセクシャルな雰囲気を出そうという意図もあるのだろうが)。これに続く按摩や浴衣お披露目シーンも、勿論この「色気のない2人」の関係性の表れ。

 これが分かりやすく変容するのは、2人が校倉の訪問を受けた後から。しきりに焼きもちを焼く七花が微笑ましいし、とがめもなんやかやとはぐらかしてはいるものの、一度たりとも「七花が不要である」という主旨の発話をしていない。あくまで「七花と一緒にいること」を前提として会話をしており、それを感じ取れない七花に微妙なズレを感じている様子も見える。そして、最終的にはこの「ズレ」や「焼きもち」が七花の戦闘スタイルの「濁り」として表れているという構図になり、とがめの一言で七花は晴れやかな顔に戻る。何とも分かりやすい青春模様。噛ませ犬になってしまった校倉には可哀想だが、互いの気持ちを確認するためのイニシエーションとしては、これくらいが丁度良かろう。

 その他に描かれた要素を確認していくと、まず、冒頭では遂に画面に姿を現した「否定姫」の姿が確認出来る。「遂に」とか書いておいて原作を読んでないからどんなキャラクターなのかは全く知らないのだが、事前に「へぇ、戸松がいる」と思っていたので、ちょっと楽しみにしていた。戸松キャラの中では多少変化球気味の声音だったので、今後のキャラの広げ方が楽しみである。ちなみにその否定姫の部下の中の人は小山力也。校倉役が小山剛志だったので、奇しくもこんなところで2大小山の共演が久し振りに実現した。黒い方の小山さんは、まだヒゲ独身なんでしょうか。

 続いて、今回は誰も死ななかったのでちょっと嬉しいマニワニ軍団。まとめ役と目される鳳凰が登場し、噛ませ犬役が板に付いてきたマニワニの最近の傾向からは離れ、きちんととがめ相手に1人で渡り合う活躍を見せている。中の人も置鮎龍太郎なので雰囲気だけでも充分格好良く、衣装がどう見ても科学忍者隊にしか見えないとかいう部分はスルー出来そうだ。切り落とした左腕は当然ひとネタ仕込まれているのだろうが、ようやく威厳を取り戻せたマニワニが今後どのように絡んでくるのかは気になるところだ。

 そして、そんな鳳凰のさりげない置き土産が、冒頭でも触れたハイパーちぇりお祭ですよ。この作品は台詞量が尋常じゃないので画面が動かないというのが特徴だというのは何度も書いていることだが、何故か今回最も画面が賑やかだったのは、バトルシーンを差し置いてこの「ちぇりお」のシーン。やっぱり、こういうアニメーションを見せられると脳髄が持って行かれるような感覚に陥りますね。そして、毎度毎度ながら感心するゆかりんフェスタ。なんだろう、やっぱりこの人の演技って、魔力を帯びている気がする。とがめは本当にアニメーションになるにあたって恵まれたキャラクターだ。ここまで愛のある描写がなされるのなら、きっと原作者も本望だろう。

 そうそう、毎月変更されるエンディング曲が、今回ついに田村ゆかりに。ゆかりん+畑亜貴、そして曲は伊藤真澄。現代アニソン文化の極を集めたような仕上がりですがな。

 さて、次回も一ヶ月後。だんだんこのサイクルにも慣れてきましたが、前回が面白かったおかげか、この一ヶ月はやたら短く感じたものです。6月は、長い1ヶ月になるか、それともあっという間と思えるか。このエピソードの真価は、この一ヶ月の気分次第です。 

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 臙脂水晶とやらがどうしてもレイジングハートにしか見えない第4話。それにしても似ていた……いや、単に赤い玉なんだけども。

 今回は随分間が空いてしまったわけだが、3話がちょっと消化不良気味だったので、なんだか実際の期間よりも待たされた感がある。そして、待った日数の見返りが充分にある、本当に酷い話。色んな意味で酷い。この捻くれたセッティングこそ、西尾維新の真骨頂といえるだろう。

 まず、なんと言っても刀集めのくだりが酷い。確かに「いやぁアレは凄かった」といって武勇伝をさも描ききったかのようにしてしまうネタというのは過去にもあって、うすた京介なんかがよく使っている気もするのだが、それを一ヶ月に一本しか放送されないアニメ(原作でいうなら一ヶ月に1冊しか出ない本)でやってしまうのが酷い。アバンであれだけ思わせぶりな「錆白兵」の剣士としての想像を煽っておきながら、七花は今回一切戦わないという、全身全霊をもっての腰砕き。この思い切りの良さは、本当に売れた作家じゃないと許されない、特大の「なんじゃそれ」である。そして事後の茶屋で二人がまた得意げに話してみせることといったら。「激縮地」って、「薄刀開眼」って何さ! くそう、悔しいけど笑っちまったよ。こんなに天晴れな二人、久し振りに見た気がするわ。

 そして、もう1つの酷さは鑢七実というキャラクターそのものの存在。「格闘もの」なのだからどこかにジョーカーが潜んでいるという設定自体は有りっちゃ有りなのだが、それがまさかの七実ねーちゃんですか。しかも「病弱なのに死ねないことが弱点」とか、「強すぎるから流派が継げない」とか、「努力が出来ないので敵の努力をねたましく思う」とか、捻くれまくったキャラクター設定がいかにも西尾維新。「見取り」の達人っていう設定はギリギリ有りだとは思うが、あそこまでのチートを出してしまったら、本来なら作品世界は確実にぶっ壊れる(何せ七実の強さには理由が無いので、少年漫画にお約束の修行が出来ない)。それでもしれっと何食わぬ顔でこういうキャラクターが作れてしまうっていうのは……大胆というか、ええ加減というか。とにかく捻くれたいんだろうなぁ。

 そして、そんなチートキャラを描くのが今回の目的なので、視聴者視点は完全に真庭忍軍の方へ。これまでは蝙蝠だの喰鮫だのおかしなキャラクターばかりが登場していたマニワニどもだったが、今回はばっちり感情移入出来るように、きれいにキャラ立ちし、応援したくなるような3人を誂えてある。部下思いで冷静沈着、忍びとしてのプライドも健気な蟷螂。部隊のムードメーカーで、ちょっとやんちゃだけど仲間思いでまっすぐな蝶々。そして最年少で控えめながら、先輩達の意志を受け継いで志を強く持つ蜜蜂。どれもこれも、「真庭虫組物語」みたいな作品ならば主人公を張ってもおかしくないキャラばかりだ。

 そして、これらの応援したくなるキャラを眉一つ動かさずに惨殺していくのが、七実。このギャップが凄い。蟷螂戦ではまさかの強さをこれでもかと見せつけ、尋問の台詞回しで蠢く狂気と恐怖を否応なく叩きつける。こんなキャラクターデザインでは恐怖など描きようも無いと思ったのだが、蟷螂殺害シーンに限っては、「リアルじゃなくても狂気は描ける」というのが嫌というほど伝わってくる。

 蝶々戦は、事前に蝶々自身が大量の死亡フラグをばらまくという可哀想なネタもありつつ、最も「少年漫画の主人公属性」が強かった蝶々の「努力と友情」を全て丁寧に踏みにじっていく。構えを取った蝶々と七実の対峙するシーンは今回最も緊迫感に溢れる場面で、七実の映像は引きのものとアップのものが交互に移り変わるのに、蝶々を写すカットでは、必ず大きく引いて蝶々の全体像が小さく映るのみ。終いには七実がいびつな笑みを浮かべた口元がアップになり、蝶々の矮小さとの対比が痛々しい。己が努力のむなしさを末期に叩きつけられた蝶々の哀れなことと言ったら。

 そして最後は、虫組3人の意志を受け継ぐ蜜蜂との対決。このあたりまで来ると流石にオチは読めるようになるわけだが、それでもただひたすら任務に忠実であり、先に逝ってしまった2人の意志を継ごうと奮戦する蜜蜂が痛々しい。ご丁寧にとどめに使った毒薬の伏線まで七実自身が回収し、まさに虫けらのごとく、彼らはひねり潰されてしまった。最後の煙草のくだりだけは一応人情にのっとった処理がなされていたみたいだが、殺すことに一切の躊躇いがないのに、敵の最後の願いだけはあっさりと聞き届けるあたりが、逆に七実の「狂気」を表しているように見える。これで蜜蜂の最後の「刀で殺してくれ」などの願いも無下に踏みつぶしてくれれば、単なる殺戮狂ということで説明がつくだけ楽なのだ。残念ながら鑢七実はそんな人物ではなく、単に「他人を殺すのが極端に容易く、抵抗がないキャラクター」なだけである。

 このエピソードは……面白かったです。作品の構成自体はさておくとしても、今回描くべきはあくまで「鑢七実という人間」。それを余すことなく画面上で展開させ、背筋に来るような筋運びで見せられたのだから、刀集めがどうなろうと文句の有り様もない。正直、こういうのがもっと見たいです。

 今回は、こんな設定のおかげで七花ととがめにはほとんど出番無し。とがめは冒頭の鎖骨のくだりで嫌というほど存在感を示してくれたので別にいいんですけどね。いやぁ、今期は田村ゆかりはエロ声優ってことでいいんでしょうか。代わりに主人公を務めた(?)虫組3人は、なかなかいいキャスティングでした。個人的には蝶々役が阪口大助っていうだけで満足だったが、蟷螂役の保村真、蜜蜂役の三浦祥朗など、きちんと「主人公」出来るだけのキャストが集まっています。

 そしてなんと言っても七実の中の人、中原麻衣。もう、流石の一言ですわ。個人的には鴇羽舞衣、森宮蒼乃、竜宮レナという3大ヤンデレキャラを生み出した中原ボイスは至高だと思っているのだが、今回は既にヤンでもデレでもない、単なる狂気。この空気を作れるのは、業界広しといえども数える程しかいないのではなかろうか。静かな中に孕む迫力、殺意、そして無垢。役者ってすげぇ。中原麻衣の記念碑が、また新たな文字を刻んだ。 

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 一ヶ月なんて案外あっという間な気もする第3話。2月はどこへ行ってしまったのでしょうか。春ですねぇ。

 3本目の刀を巡る物語は、これまでと違ってとがめの台詞があまり多くない。その時点で「良かったね!」と言いたくなるのだが、代わりに敵キャラとして登場した敦賀迷彩の台詞量は多い。湯屋さん、ご苦労様でした。ただまぁ、今回は不思議とこれまでのような「台詞で埋め尽くされている感」が薄かった回ではあります。原作に元から動きがあったのか、それともコンテを切った小林智樹の手腕なのか。個人的には後者のファクターを推したいところです。

 ただ、先に断っておくと、今回はこれまでで最も微妙な印象の回ではあった。何が微妙って、主眼を置かれるべき刀を巡るバトルが面白くない。「12本の変体刀」と銘打たれているのに千本あるとかいう部分は、突っ込んだら負けなのだろうか。いや、でも分からねぇよ。しかも最終的には結局「はじめの一本」に魂が籠もってるとか言い始めるし。それなら、正しい「12本」に含まれるのはその1本でいいんじゃないのか? 「12本集めれば政府も安泰」っていう当初の眼目からは完全に外れている気がするのだが。

 そして、クライマックスとなる千刀流の戦い方も、意味が分からない。刀をセッティングして奇襲を仕掛けるって言うなら分かるのだが、「千刀巡り」とやらの効果は全く感じられない。七花も礼儀だと思ったのか「千刀巡り」に突入した時には焦ってみせたわけだが、これまで蝙蝠、宇練銀閣と単体での実力がある敵キャラと戦ってきたのに、今更刀がどこに設置されていようが知ったこっちゃない。どうせ迷彩だって1000本全部で一気に襲いかかるとかいうDIOみたいなまねは出来ないだろうし、戦国BASARAの正宗みたいなキチガイじみた持ち方をするわけでもなかろう。一応喰鮫退治の時には「突如現れた刀」で切り刻むことに成功していたみたいだが、その時の目を見張る速さと「千刀巡り」の強さは全く繋がりが無い。森に誘い込んで千刀流の強さを説くシーンも単に「手がないから七花に降参して欲しくてブラフをかけている」ようにしか見えず、何とも尻すぼみな結果となってしまった。大した策もないのにそれまでのシーンではさも大剣客であるかのように振る舞っているせいで、迷彩というキャラクターの印象がちぐはぐになってしまっているのだ。原作ではどのような演出だったのかは分からないが、西尾維新らしからぬ、ハッタリのかけ損ね。七花の大暴れも無かったし、何とも消化不良であった。

 一応フォローしておくと、そこまで持っていくまでの筋立ては悪くない。山奥に控えた人切り崩れの救済者という迷彩のキャラクターは、「火の鳥」の異形編と非常に似通っており、最終的に殺生を巡っての輪廻を背負う左近介と、女達の非業を背負って自ら命を絶った迷彩には通じるものがある。今作の場合はそこに「殺生の道具」の象徴的存在として「刀」を絡め(「火の鳥」における火の鳥の尾と対応する)、「刀は毒であるか薬であるか」という問いを、迷彩の命に預けたわけだ。彼女が何度も七花に問いかけたように、三途神社の存在自体は、慈悲深く意義深い。極力声を発さず、ただ粛々と仕事を続ける黒巫女たちはそうした神社の理念の象徴である。しかし、そこに「刀」というファクターを投入してしまうと、作中で乱心した黒巫女のようなイレギュラーも生まれてしまう。そして、そのイレギュラーとしての「刀」、ひいては「武力」とは、結局迷彩そのものである。彼女がいる間は、三途神社に本当の安寧は無かったであろう。今回の「輪廻からの離脱」は、彼女の死以外では得られなかった結末である。

 そして、そんな輪廻にまかれ、修羅の道を歩き続けるのが、とがめと七花。雨に濡れる迷彩の亡骸を見て、とがめは思わず「そこまでせずとも」と言いかけ、飲み込む。七花の行動は、全て自分の命によるもので、自分のためのものであることに気付いたためだ。ここで彼女が七花をとがめてしまっては、彼女自身の手で、最高の「刀」をへし折ることになってしまう。それが出来なかったために、七花は今後も思考を持たない「刀」であり続ける。それが、本当にとがめの望む姿なのかどうかも分からずに。

 テーマとしては1つのエピソードとしてきれいにまとまっており、ストーリーテリングの方策としても面白いものなのだが、設定に引っ張られすぎて齟齬をきたしてしまった感のある今回。アニメとしてのクオリティはむしろ上がっているくらいなので、今後はシナリオとの親和性にも1ランク上の完成度を期待したいものである。ほんと、池田昌子さんに「巫女萌え」とかいう言葉使わせちゃ駄目。 

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 月に一度のゆかりんアワー、「刀語」待望の第2話。2話目になれば少しは雰囲気が変わるかと思ったが、流石にそんな甘っちょろいもんじゃござんせん。相変わらずドラマCDもびっくりの台詞量です。

 2話目ということで、今回は七花ととがめの関係性の変化が1つの見どころとなる。前回ラストできちんと主従の関係を契った2人ではあるが、七花が浮世離れしているため、なかなか「教育」もままならない。主人と一般人の区別も付かぬ七花には、とりあえず色形、臭いや味までを駆使して、必死で差別化を図るとがめ。彼女のあまりに嘘くさい髪の毛を全身に巻きながら丁寧に味わう七花はどう考えても変質者なのだが、絵柄自体が淡泊なのであまりインモラルな雰囲気を醸し出さないのが良いのか悪いのか。キャラクターデザインと演出の方向性から考えて、あまりそっち方向の味は際立たせない作品作りになってはいるんだろうね。もちろん、だから悪いというわけではなく、最後の最後までどこまで本気でどこまで冗談なのか分からない2人の関係性は、端から見ている分には愉快である。今のところとがめの方だけが顔色を赤くしたり青くしたりしているわけだが、いつか七花の方からとがめに意識を向けてくれることがあるのだろうか。

 そして、今回もう1人の主役となったのが、因幡藩主、宇練銀閣。前回登場した刀所持者、蝙蝠がエキセントリックでアクの強い人物だったので(とがめの言葉を借りるならば「七花よりも明らかに目立っていた」ので)今回の敵は流石に喰われるかと思ったのだが、これがなかなか良いキャラクター。対決のテーマ自体が「守るべきもの」というなかなかシリアスなもので、その中できちんと「武士」のひな形を守りつつ、短時間で魅力を発揮できるだけのキャラクターに仕上がっている。七花も普段は飄々として適当なキャラクターなのだが、こういう懐の深いキャラと対峙してきちんと「剣士」としての矜持を見せてくれるだけの器はある。各々のキャラクターの思考プロセスやイデオロギーにブレがないので、対人関係は非常に見やすいものに仕上がった。

 そして、おそらく作者と制作チームが最も気を遣っているであろう、戦闘シーン。なんだかんだ言って月に1冊の本、月に一本のアニメで、戦闘シーンはたったの1度だけ。そこに全てのアイディアと労力をつぎ込まなければ、「戦国絵巻」としてのこの作品は成り立たない。今回は「超高速の居合い」という非常にシンプルな武器を持った相手であるが、多分西尾維新のことだから、「るろうに剣心」などの剣客もので「結局シンプルな技が一番強い」という理念はあったのだろう。噛ませ犬となった白鷺の貴い犠牲もあり、「零閃」と呼称される居合いの存在感はなかなかのもの。流石にラストステージでソニックブーム連射VS上からなら大丈夫じゃね? という対決姿勢はやや拍子抜けの感はあるが(そもそも虚刀流の真髄とか言っておきながら単に飛んだだけってのが釈然としないが)、刀VS徒手空拳のタイマン勝負としての落としどころはこれくらいだろうか。どちらかというとその前の体裁きで居合いを避けるシーンの方が見応えはあったかね。そもそも、出会い頭の零閃を喰らいながら、相手の挙動を見てから動いてとがめを救った七花の動きの方が明らかに速いのであるが。

 とまぁ、今回はバトル要素とそれを見せるシーンがそこそこ多かったので(放送時間を見ていたら、銀閣と出会ったのがちょうど30分目くらい)、前回のような怒濤の会話劇は少なかったのだが、それでも道中の砂漠に座っての長話はやはり凄い。歩いていればまだよかったものを、何故か決め台詞云々のくだりになると、2人は砂漠に座って話を始めてしまう。延々動かぬ背景に、延々変わらない二人の位置。あり得ない構成のはずが、やはり会話の無茶苦茶さを注意が行くのであまり気にならない。卑怯な作品だなぁ。いや、面白いんで文句はないんです。

 さ、今回も当然キャストの話。まず、脇から埋めていくと短いながらも「逆さ言葉」を流暢に使ってみせた白鷺役の羽田野渉。原作を読んでいないので結局彼が何をしゃべっていたのかは分からずじまいなのだが、あの台詞、実はとんでもなく労力を要するもの。次回予告でとがめが「無理に決まっとろーが!」と叫んでいたが、普通の人間は、逆さになって単語、文節が意味を成さなくなった文章など、普通に発話できるはずがない。それをさも「普通の日本語である」かのように普通の抑揚でしゃべり、それが何となく通じてしまいそうになるほど自然に聞こえるというのは、かなり中の人が練習した証拠であろう。しかも彼の出番はここだけだったし……こんなアフレコ、もう2度と無いと思いますよ。

 そして一国の運命を全てその背に受けて座り続けた剣客、宇練銀閣役には、久し振りに名前を見た気がする、宮本充。やっぱり彼の声には色気がある。「気位だよ」という彼の「口から出任せ」に込められた信念の重みを聞け。もっと色んなところで耳にしたい役者さんです。あとは七花役の細谷佳正だが……そりゃ、一ヶ月であんまり変わらないよね。ところどころ棒読みになって気になる部分があるんだよなぁ。七花が唐変木だから救われてる部分はあるけど、今後難度の高い演技を求められた時に大丈夫なんだろうか。

 そして当然、今回もおそらく全力全開、とがめ役の田村ゆかり。やっぱり彼女は何かを持ってますね。ある意味反則ではある。「ちぇりおー!」の説明のくだりで「私は九州にゆかりなどない」みたいなことを言っていたのだが、その台詞を福岡出身のゆかりさんが言うのは高度なギャグだったのだろうか。一瞬だけ油断して飛び出した「もん!」の破壊力がやべぇ。ゆかりんボイスで日本がヤバい。

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