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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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 「チャットのハンドルネームを理解した上でもう一回みなあかんのかい!」と戦々恐々の第12話。うーん、流石に2人分もチャットネームが判明してしまうと、その伏線はきちんと回収しておきたくなるよなぁ……しかもまだ分からないチャットネームもあって、この作品のことだから、それも多分キャラクターの誰かなんだろうし……うわぁ。

 大団円にして新章突入を飾る記念碑的1話。Aパートは事件の収束からエピローグまでを繋ぐ。恋人を取り返すために帝人にメスを振り上げる誠二だったが、セルティの英雄的活躍によって帝人は危機を乗り越える。誠二は「お前は数に頼るだけか!」とすごんでみせたが、古来より君主キャラなんてものはそういうもの。実際、ダラーズの力により、現時点では池袋でも無敵の存在であるセルティが立ちはだかったわけで、姉の庇護の下で生きてきた誠二との差は歴然。セルティからの返り討ちにあうも、ここは愛のパワー、張間美香の救出によって二人の関係性は一気にゴールテープを駆け抜ける。美香のヤンデレ飛ばしっぷりはなかなか爽快で、何の躊躇もなくピックガンで解錠出来るという行動力と技術力は見ていて気持ちいい。いやぁ、ヤンデレの活躍っていうのは何回見てもムズかゆいものがありますね。また、誠二の方の「病み」方もなかなか堂に入っており、躊躇無く美香の側頭部を壁に叩きつけるアクションは鳥肌もの。やっぱりこの姉弟はどこかおかしい。

 事の真相を美香の口から聞き、誠二は力なく崩れ落ちる。絶妙なタイミングでだめ押ししてやる臨也の悪辣さも相当なものだが、正論ながらも空気の読めない感想文で褒め称える帝人の対応もどこかずれているように見える。結果的に2人はくっつくことになったみたいだが、顔を見て本当の憧れの人を忘れないためにつきあうことを決意した誠二と、自分を半殺しにした男から片時も離れない美香の2人も充分おかしい。めでたしめでたしみたいな格好になったが、いつ破綻してもおかしくないぞ。

 そして、そんな2人の痴話喧嘩のいざこざで首の真実を知ってしまったのが、今回の主役であったセルティだ。自宅へと愛馬をかっ飛ばし、新羅の胸ぐらを掴みあげて声なき恫喝を行う。しかし、新羅は全てを悟っており、いつもと何ら変わらぬ口調でただ諾々と自分の本音を聞かせてみせる。恨みをぶつけようとしたセルティだったが、新羅の恐れは自分の恐れの裏返し。結局、彼を1人悪役にすることも出来ず、彼の愛を本物と認めることで、和解するに至った。デュラハンのパンチはなかなか痛そうだが、殴られてメットがぶっ飛ぶ気分というのもどんなものなのだろうか。最後はいちゃいちゃのベッドシーン(?!)で締め。

 今回はこの2人の関係性が本当にきゅんきゅんしてしまうような仕上がりで、一番の見どころと言ってしまっていいだろう。セルティが何も言わずとも彼女の心情を全てくみ取ることが出来る新羅と、そんな新羅を信頼して全てのぶちまけるセルティ。次第にセルティの「声なき声」が全て新羅に伝わるようになり、いつしか2人の会話は全て「会話」として成立している。セルティの声の演出はこれまでも秀逸なシーンが多かったが、今回彼女が感極まって全てを受け入れるまでの流れは、彼女の持つ魅力と、それを受け止める新羅の一本気な部分がグッとくるベストシーンの1つ。メットを吹き飛ばしたあとの「やっぱり素顔が一番きれいだ」なんて普通なら歯の浮くような台詞も、この2人の関係性に照らし合わせると、また格別の意味合いがある。ほんとにセルティは可愛いなぁ。

 エピローグは学校での出来事や、誠二達のその後、そして晴れ晴れとしたセルティの雄叫び(?)で幕を閉じる。沢城みゆきによる情感たっぷりのナレーションのおかげでありふれた日常への回帰が本当にかけがえのないものに思えるし、セルティの馬上のアクションは、彼女の今の気持ちを余すことなく表現している。まぁ、若干「お前はそれでいいのか」という疑問は残らないではないが、今回のエピソードの締めとしては文句のない仕上がりだったのではなかろうか。

 そして、それだけでは終わらずに後に引くのはこの作品が2クールだから。Bパート中の臨也の独白、一人舞台は、正直言って流石に詰め込み過ぎの感はある。臨也のキャラと神谷浩史による立て板に水のしゃべりのおかげで何とか成立はしているものの、相変わらず厨臭い妄言のオンパレードに、なんだかやるせない思いがする。まぁ、彼の言っていることや回想をまとめると、「結局今回の騒動も全部臨也の手のひらの上」ってことなんだろうけど。

 次回以降、一体どこの誰が騒動を引き起こすのでしょう。ナレーションは園原さんだったので、園原さんメインで話が進むことになるのかな。確かに、現時点でまだ回収されていない伏線は、園原さんの奇行が一番大きいかも。あとは紀田と「黄巾族」の話とかかな。一段落した後ではあるが、来週からもまた楽しみなもんですわ。 

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 「イッペン、シンデミル?」の着ボイスはちょっと欲しい気がしてきた第11話。そしてなんといつの間にか来日してやがったらしいアイザックとミリアまで登場しており、作者繋がりの化け物どもの存在が気になります。まぁ、あの2人は死なない存在だからどこに居てもおかしくはないわけだけどさ。相変わらずの空気の読めなさにほっこりですよ。ここからさらにニャンコ先生も登場すれば大森作品大集合になるんだけどなぁ。

 さておき、前回覚醒してみせた帝人を中心に、「ダラーズ」の真実が語られ、さらにそれを使って矢霧製薬を圧倒してみせるという、なかなか痛快な1話。……のはずだが、なかなか一筋縄ではいかないのがこの作品。最後の(どうやって判断したんだかわからんが)誠二が帝人へ挑みかかる引きは、一体どんな展開になるのかが気になって仕方ないですがな。相変わらず構成が憎たらしいなぁ。

 ただ、今回はちょっとシナリオ上釈然としない部分もあったので、まずはそれを確認しておこう。なんと言っても、今回一番納得出来なかったのは、クライマックスとなるダラーズの使い方の部分である。帝人は波江が動いたのを見てすぐに反応してメールを送信したわけだが、やはりどうしたってここにタイムラグは生じている。矢霧製薬チームがなんとなくダラダラしてくれていたために大事にはならなかったが、相手は実験のためなら人の命を何とも思わない集団である。それこそ誠二のように突如襲いかかってくるという可能性もあったわけだし、みんなしてメールを見ているあいだにさっさと片が付いてしまうという危険もあったわけだ。帝人が「数の力」をそこまで信用できた根拠がいまいち分からないし、不用心な気がしてならない。

 また、「メールチェックしてない人間が敵」というのは面白いアイディアだとは思うのだが、帝人はどこまでダラーズの拡大を実数として把握できていたのだろうか。数千単位で増え、その一部を何らかの手段であの場に集めたとも考えられるわけだが、それなら、矢霧製薬チームにもダラーズのメンバーが居ても不思議はないのだ。その場合、すぐに敵側に帝人の作戦は伝わることとなり、壮大な「こけおどし」が露呈することになる。「矢霧製薬の人間はダラーズではない」という確証をどうやって得たのか、それが一番気になった部分であった。

 しかしまぁ、そうした些末な疑問点があったとしても、今回のシナリオはやはり奇妙な爽快感がある。ダラーズの結成と浸透の過程が明かされ、一介の少年だと思われた竜ヶ峰帝人が、実は「創始者」であったことが判明する。これまでのエピソードではそのあたりのことを割と露骨に、かつ自然に描かないようにぼかしてきたのは素直にうまいと思う。知らんかったせいで色々と見当外れなことも書いてきた気がするけど、まぁ、アニメ初見の人間なのでこんなもんですよ。

 そして、「ありふれた幻想だけに、それは多くの人間が望んでいることなんだ」という台詞から、「数を武器として使う」という宣言への流れは、この池袋という珍妙な街の中において、なかなか面白い自己主張である。謀略の天才である折原臨也や、部類の馬鹿力を誇る平和島静雄、組織力の矢霧波江、そして魔性の能力を秘めたセルティなど、魔都池袋には様々な「強さ」がはびこっているわけだが、地味で非力な学生である帝人が手にした力は、「無色透明な緩やかな繋がり」という、何とも奇妙なもの。これを行使する方法として、「何もせず、ただ見つめる」という戦略をとったのも「田中太郎」である帝人らしい戦略で、あくまで暴力、謀略で勝つのではなく、「ただあること」によって敵をくじく。「ただあるだけ」の存在であるダラーズの創始者として、これ以上の自己主張も無いだろう。もちろん「努力をする時間も与えられない」といいながら、彼の手にした力は長年蓄積してきた「努力」の賜物以外の何物でもないのだが、そうした「手にある力」を存分に発揮しつつ、これまでの「帝人像」を崩すことなく作戦を遂行しきった姿は、何とも不可解な、興味深い主人公の姿であった。

 こうした「力の行使」のシーンの演出がまた面白く、最初は関係していそうな人間以外はモノトーンの人影で描かれていた部分に、帝人のメールが届くことで、少しずつ個体としての色を得ていくという描写がなされている。「色がないこと」が特徴であったはずのダラーズの存在が、「次第に広がり行く色」で表現されるというのは、何とも倒錯的で、見応えのあるシーンであった。

 そして、「ダラーズ」という都市伝説の上でもう1つの都市伝説である「首無しライダー」も現実のものとなる。「池袋における自分とは何か」で思い悩んでいたセルティ。新羅には「結婚しよう」とまで言われた彼女だが、自らの手で「首が他人のものとして人格を持ち、自分の手を離れてしまった」と認識したとたん、彼女はブチ切れてしまう。理知的な彼女のこと、流石に張間美香から首だけを奪い取ろう、などとは考えなかったが(何せ首の方だって「彼女自身」なのだから)、「首のない、今の自分」の存在価値を知らしめるため、全てをなげうっての壁面滑走からの大立ち回り。画的にも迫力のあるシーンだったが、なんと言っても我を失い、現実に寄りすがるセルティのもの悲しい慟哭が寂寥感を誘う。首もなく、名も奪われ、彼女は何をもってアイデンティティとするのか。池袋の住人達は、そんな一人の女性の懊悩の、決定的な目撃者となったわけだ。

 さぁ、次週でこの矢霧製薬の騒動は一区切りするのかな? ここまで盛り上がったバカ騒ぎ、何とか収めてもらいやしょう。 

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 狩沢さんのあまりの見る目の無さが空前絶後な第10話。いやぁ、姫神主人公だけは無いわぁ……公式に影の薄いキャラのレッテルを貼られているってのに。せめて神裂さんくらいにしてくれ。

 今回はナレーションだのなんだのという縛りもなくなり、素直に帝人が池袋を回るという構成。これまで登場したキャラクターは結構な数が顔を見せており、「主人公」である帝人を中心にして、物語が渦を巻くように動き始めていることが感じられる。

 とは言っても、やっぱり高校生パートは町に出たときよりも話が地味。今回Aパートはずっと学校の中で帝人と紀田の無駄話が展開され、微妙な新キャラの口からダラーズの本当の姿の一端が語られたのだが、正直言って「相変わらず紀田がうぜぇ」っていうくらいの感想しか無くて、どうにも盛り上がりに欠ける。「こいつ、本当に主人公の資格があるんかい」とすら思えてくる。

 しかし、一旦外に出てしまえば、刺激だらけの池袋。校門前で待ち構えていたのは、カラーギャングやら都市伝説で溢れかえる池袋にはそぐわないレトロなヤンキーで、それを起点にしてセルティと臨也が帝人に絡んでくる。セルティの見事な回し蹴り、臨也の「ごめん、君タイプじゃないから……カエレ!」という素晴らしい暴言。カオスですなぁ。これぞ神谷浩史、といわんばかりのほんっとうに憎たらしい台詞です。似合うわぁ。そうそう、その前に出てきた帝人の妄想の中の園原さん、「アイウォンチュー」とか「ファイアー!」も無駄に可愛らしかったなぁ。やばい、気付けば化物キャストばかりに耳が行く。

 妄言はさておき、池袋の2大問題児を引き連れる帝人。そして、カード下でセルティと腹を割って話すことになる。嘘がド下手なセルティさんは基本的にまっすぐな人物なので話し合いの余地があるとは思っていたが、まさかこうもあっさり正体をバラしてくれることになるとは。どうやら臨也も知らなかったようなので、彼女の正体を知っているのは新羅を除くとひょっとして帝人だけなんだろうか(静雄もひょっとしたら知ってるかな?)。あっさり友好関係が成立した二人は、美香を中心とした問題を解決すべく協力し合う。そして、そこに絡んでくるのは当然矢霧製薬。かなり強引な手も使う連中のようだが、セルティはこれで当面の目標が定まったことになる。そして、ついに主人公としてのポテンシャルを表すべく、輝き始める帝人。なんだか分からないテンションになっているが、臨也は全てを知った上で来訪した模様。これまで単なる雰囲気ツールだった謎のチャット、そしてネットに繰り広げられる世界。このフィールドが帝人のホームグラウンドか? 小石程度でブチ切れちゃった渡草に流される形でチームドタチンも騒動に絡みそうだし、ダラーズ・臨也・セルティ・そして帝人という連合軍が、矢霧製薬に照準を定めた。さぁ、ここから何が起こるんだろう。すげぇ、なんか無条件に盛り上がってる。

 今回は本当に細かい演出が積み重なってこの最後のドキドキに直結している。「自分の身の回りにはずっと普通があった」と述懐する帝人が、あらゆるおかしなパーツをくみ上げて中心に居座るまでの流れがきれいで、気付けば視聴者も彼と同じ、「異常を楽しむ」立場に回されている。特にこの高揚感が分かりやすいのは帝人がセルティの正体を拝むシーンで、緊張しながらも恐怖を感じていない帝人は、どこかしらおかしな空気を漂わせている。このとき、セルティにメットを取るように依頼する場面ではそんな帝人の顔は描写されず、セルティのメットの風防に映り込んだ帝人の影だけが、このシーンで彼の心情を表現している。そして、実際に顔を(中身を)見た後の表情は、ラストシーンでパソコンに向かう時の、ちょっとしたトリップ状態と同じものだ。ぶっちゃけ、怖いくらいである。なるほど、君は主人公かもしれなかった。

 他にも、セルティの相変わらずの魅力は相手が変わっても維持されているし、ちょっと石がぶつかっただけでブチ切れた渡草の変貌っぷりも面白い。臨也は相変わらず飄々としているが、やっぱり変人の代表だけあって存在感は抜群だ。

 次週の予告も相変わらず帝人によるものだった。今回のようにナレーション要素は極力無しで持っていくのかな? 無駄に期待感だけが高まってますよ。 

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 瓶詰めにされた首への偏愛を描く物語に、どこぞの拝み屋が絡む匣の物語を思い出さずにはいられない第9話。鍵を握る首は、眠りについたまま、みっしりと。

 今回の語り手は、弟に対する常軌を逸した愛情を持つマッドサイエンティスト、矢霧波江。彼女と、その弟である矢霧誠二が今回のエピソードでは中心となる。ここ数話の間は語り部の重要度が徐々に下がっていたのだが、今回は今まで登場シーンの少なかった波江の心情が描かれているため、再び語り手の重要度があがって、序盤の構成に近いものに戻っている。

 物語は、錯綜しつつも次第に1つの終点へ向かっていることを感じさせる。まず、セルティの「首」の所在が、断片的にとはいえ判明したのは大きな進歩。どこをどう巡ったのかは分からないが、一時は波江たちの叔父の家に所蔵されていたらしく、その美しい素顔は一種のオブジェとして完成していたらしい。が、その首の魔力に取り憑かれたのが誠二であり、そんな弟に「取り憑かれ」ているのが波江。この池袋にはどこかネジの外れた連中が多いのだが、この姉弟の場合はストレートに犯罪者気質なのでまだ分かりやすい部類かもしれない。誠二は、完全に「首」に魅入られてしまったただの青年。一度は愛する姉の下から首を奪い去り、それが原因で張間美香を死の一歩手前にまで追いやった。そして、そんな誠二が頼れるのは、女傑と謳われる自慢の姉。波江は波江で行きすぎた愛情を持っており、弟の罪の告白を聞いて、戸惑いも怒りもせず、喜びを感じるという真性だ。どうやら、1つのものに対する執着心という部分ではそっくりな姉弟であるらしい。

 そして、そんな矢霧家のごたごたに巻き込まれる形になったのが、これまた犯罪者気質のストーカー少女、張間美香。波江の力で「首」と同じ外見を手にした少女は、誠二の心を捉えることには成功したが、この成功の裏にある波江の存在をどうにかする必要があることも理解している。波江は美香の存在が「自分の既知のものである」という点において精神的均衡を保てているわけだが、駒として使われているだけの美香はそうも言っていられない。誠二の全てを掌握するために、携帯を処分したり、姉の膝元である池袋から脱出しようとしたり。女同士の熾烈な覇権争いの間で、一人お花畑の誠二は何を思うのか。まぁ、今回の立ち回りを見る限り、彼は「愛情」に対してはひたすら真っ直ぐみたいなんだけど……ちょっと頼りないなぁ。

 そして、そんな偽りの「首」を見つけちゃったもんだから、セルティさんもそりゃ大変。20年来の捜し物を必死に追走するも、間一髪で取り逃して意気消沈。確かに、「ずっと探してきた首は、もう自分(身体)を必要としていなかった」っていう結末なら、これ以上恐ろしいことはない。彼女が思い悩むのも仕方ないことだろう。でも、そんな中でも「新羅と話がしたかった」って寄り添ってくれる彼女が本当に可愛い。普段はそれなりにクールに振る舞える女性が取り乱す姿ってのはいいもんですね。最近はキーボードに打ち込んでもいない声が出ることが多くなってる気がするんですが、多分新羅は感じ取っているんでしょう。

 そんなセルティの面倒を見てくれるのが、少しずつ怒りのコントロールを覚え始めた静雄。両膝と手のひらに合計3本ものボールペンを突き立てられながらも冷静なのは流石だが、青臭いガキから愛だの恋だのを唱えられて、ちょっとだけカチンときた模様。サングラスの有無でスイッチを切り替えたり、相変わらず細かい演出のおかげで非常に良い味が出ています。最近はセルティも随分彼のことを頼りにしているようだし、案外この街ではまともな方なのかも知れません。

 そして、最後のとばっちりは美香とたまたまぶつかってしまっただけの帝人君。彼の場合は本当に「巻き込まれた」だけの存在で、どれだけ気を遣ってみても主人公には見えないのが正直なところ。次回は久し振りに語り手の役目が彼に戻ってくるみたいだが、ここで一念発起、主人公としての矜持を見せることが出来るだろうか。

 そしてそんな全てをてっぺんから見下ろしているのが、諸悪の根源(?)折原臨也。彼のここまでの所業をまとめておくと、まず、ダラーズの構成には彼が絡んでいる。そして、矢霧製薬と繋がり、試験体の情報提供もしている。にも関わらず、一方では拉致集団に襲われた神近をセルティを使って救出したりもしている。さらに今回は張間美香との繋がりも臭わせており、矢霧製薬を四方八方から絡め取っているようにも見受けられるのだ。彼の目的は未だ闇の中だが、その全てが「人ラブ!」の一言で片付いてしまうんだろうか。この街に溢れかえる「愛情」は、おしなべて面倒ごとでしかないのかもしれない。

 今回も様々なキャラクターが入り乱れての相変わらずの構成だが、毎回切り口を変えているおかげで、少しずつ視野が広がっていくようなこの感覚が毎回楽しくて仕方がない。そういえば今回は1度も例のチャットシーンが出てこなかったし、全てが画面上の画だけで展開すると、それだけ見応えが増して30分などあっという間である。みっしりと、みっしりと。 

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 顔のない女性が一番魅力的という、本当に倒錯した状態が気がかりな第8話。4話の時もそうだったけど、セルティ・新羅のカップルがメインになると、この作品は何とも言えない安心感と刺激がいい塩梅にない交ぜになって展開する。

 一応今回の語り部は2話に続いてセルティであるが、物語の重層構造がどんどん多角化し、全ての局面が同程度のウェイトで視聴者に伝達されるようになってきているため、今回は語り部の地位がかなり低く、言い換えればナレーションはあまり重要ではない。その上で、まるで重ねたミルフィーユを少しずつ縦に切り取るように、様々な断片だけが、中心へ向かってじりじりと進行している。ほんと、この構成で物語が破綻を来さないというのは恐ろしい事態である。

 まずは脇から見ていこう。高校生3人組は、園原がいじめにあってしまったことで少しずつ関係性がおかしくなっている。生真面目な帝人、お調子者の紀田、その間で静かに笑う園原という構図だったのが、紀田はいじめに対して静かな怒りを燃やし、園原の中でも2人に対して(世界に対して?)何かが歪んでしまったように見える。これまでの園原の振るまいから考えて、わざわざ靴を届けてくれた帝人に対するあの態度は、確実にどこかおかしい。そして、そんな園原の動向を訝しく思いながらも、普通の高校生レベルでしか悩めないのが帝人。園原の変化に疑念は抱くが……どうにもしょうがないのかな。この作品で一番普通な奴だから、普通じゃない状況についていけてないんだなぁ。主人公(?)パートが一番地味だよ。

 個人的に(特に中の人的に)気になるのは狩沢・遊馬崎コンビ。これまでは「単にノリの軽いオタク」という認識しかなかったのだが、サイモンを前にしてまるで話を聞かずに自分の目的をダラダラ話し続ける狩沢は、やっぱりちょっとどこか変。無事に再会して街中で踊り狂う2人のテンションも相変わらずだ。なんかいいね、こいつら。もう1人の相方であるドタチンはシリアス全開なのにな。

 そして、矢霧製薬を中心にして展開するメインストーリー。花火を掴んで研究所に突撃する男と、女(張間美香)を「セルティ」と呼び、記憶を押さえつけようとする矢霧誠二。このあたりのファクターは、次週の語りが矢霧波江のようなので、おいおい説明があるだろう。

 そして、なんと言っても今回その関係性が濃密に描かれていたのがセルティ・新羅のカップルである。身勝手でどこかズレた新羅であるが、彼のセルティに対する気持ちだけは本物。顔のないセルティとの接し方は長年の経験で完成されており、セルティに対して「浮かない顔だねぇ」と看破してみたりするのは端的な見せ場。他にも会話をするときにきちんとセルティの正面にぐるりと回り込んでしゃべり出したり、うつむいたままの状態でも「そう喜ばれるとな……」と正対したセルティの心情の変化を悟ったりと、阿吽の呼吸を見せつけてくれる。セルティの手料理を食べて涙を流しているのも、別に味にたえているのではなく、本当に彼女の料理に感動しているためだろう。そんな新羅に対して、セルティの方からは直接的なアプローチこそないが、独白シーンでは「恋慕」という言葉も使っているし、ネギを抱えて愛馬で滑走する姿は実に甲斐甲斐しい。無駄にまがまがしい闇の能力で料理をひっつかまえたりしてみせるが、休日の過ごし方のプランは女性らしくてうらやましいことこの上ない。

 これで新羅の方が「今のセルティ」にこだわり、セルティが過去(首)を追い求めているというすれ違いさえなければ、この2人もうまくいくはずなのだが……最後のフォーチュンクッキーを見る限り、どうもこのすれ違いは決定的なものであるようだ。静雄と一緒に空き地を眺めるセルティ。彼女は「自分の顔さえ忘れそう」だが、その空き地に何があったかは「記憶」が残っている。池袋という土地で仕事をしたり、共同生活をしたする今の「ヒト」としてのセルティと、首を抱えたデュラハンとしてのセルティ。彼女が落ち着くのは、どちらの姿なのだろうか。「私はここにいる」という最後の台詞は、首の言葉か、「セルティ」の言葉か。

 相変わらず切れ切れの世界。それなのにどこかが繋がっている不思議な感覚。今回は広場で「さがしもの」を聞いていた金髪美人へのメッセージが面白い働きをしており、帝人が見たスケッチブックの中には、「羽島幽平!」に始まり、「家でした猫」「仕事」「首」、そして「ゆまっち」と続く。最初の描き込みは弟にこだわる静雄のものだということは容易に想像出来るし、「家でした猫」を探したいのはおそらく新羅だろう(実際は、彼があの場所でスケッチブックを書き込む時間は無かったと思うが)。「仕事」だけは誰とも限定できないが、その後の「首」は当然セルティ。今回登場したメインキャラの「さがしもの」が、1冊のスケッチブックを通じてクロスしていく。そして、最後に帝人が書いたものは「つながり」。この世界は、どことどこが繋がっているのか。

 ほんと、気にさせる演出は天下一品である。 

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 静雄の中の人ネタがいい加減しつこい気がする第7話。まぁ、厳密には静雄の弟がやってるわけだからネタとしてもずれているんだが……でも確認したら「執事、沈黙」っていう回は無かったみたいね。

 さておき、今回の主人公は池袋「最凶」と名高い平和島静雄。ただ、彼の場合はあまり池袋の内情を冷静に語るナレーターには向いていないらしく、ぼそぼそと漏れるのは彼の生い立ちについての説明と、「暴力は嫌いだ」という彼のアイデンティティを端的に表す一言だけ。前回の門田もそこまで雄弁なキャラクターではなかったが、今回はさらに「語り部には向かない人物」がしゃべっていたことになる。

 そんな人間が何故語りを任されたかといえば、今回はあまり現実に事件が進まず、過去に起きたよしなしごとをざっくりと振り返る構成になっていたためだ。静雄の生い立ち、特に「怒り」と「リミッター」という彼の性質は、口で説明してもどうしようもない部分があり、彼の感情の吐露と、実際の現場を見てもらうのが一番手っ取り早い。弟に向けられた冷蔵庫に始まり、最終的にはコンビニのゴミ箱、自動販売機に至る彼のスローイング人生は、一種の病気とも言える自制心の欠落と、それによって鍛えられた鋼の肉体を彩るものだ。何が彼の特性なのかは、常に彼が繰り返す一定の所作で画面から分かりやすいように演出されており、具体的には「何か手に持った物をへし折る」→「地面に投げ捨てて踏みにじる」というアクションが、プリンのスプーンや鉛筆で繰り返され、今の彼に連絡する1つの記号となっている。ぷっつん切れると体組織が脳のリミッターを外すというのは非常に奇妙な状態で、感情は自分で抑えられず、その感情が体を抑えられず、命令を出しているはずの脳がどこかへ行ってしまったかのような状態。全てを脳の命令下で管理して体組織に無茶をさせる「黒神ファントム(by黒神めだか)」とは真逆の構図ということになる(余談)。一応、最後のシーンでは過去の出来事のように曲がり角でトラックにはねられることはなくなったことを示しており、少しは自分で制御できるようになったとは思うのだが、それだって弟のおかげで一息付けたからであって、また臨也を見て激高したらどうなるかは今のところ分からない状態だ。

 そんな彼の破天荒な人生には、池袋の曲者達が小中学生の時分からついて回る。今回面白かったのは、一見すると誰だかよく分からない幼少期の新羅が、その台詞回しから彼であると明示される部分。静雄は、小学生のくせに訳の分からない四字熟語を使う友人を、まずブン殴るべきだったかもしれない。ぶち切れた静雄を見ても特に動じることなく友達づきあいが続けられた新羅は、やはり何かが欠如しているのは間違いないようだ。そして中学に入り、因縁の宿敵である臨也との邂逅。出会い頭にいきなり斬りつけられて殺し合いの喧嘩にまで発展するだけでも因縁深いのに、どうやら臨也はその常識外れの静雄の馬鹿力に何らかの利用価値を見いだしてしまったらしい。何度も何度も利用され、最終的には視界に入っただけでリミッターを外す要因にまでなった。彼の気配は同じ池袋にいるだけで感じられるようになり、どこに潜んでいても目ざとく見つけてものをぶん投げる。ただ、そんな彼の理屈無用の大暴れすら、臨也の不適な笑みの前では利用されるだけの力にも見えるのだが。

 そして、もう1つの静雄との繋がりを持つ人物が、新羅を通じて遭遇した首無しライダーことセルティ。静雄は彼女のヘルメットの中にも何かを感じ取ったようだが、どこかで理屈抜きの繋がりを感じているようにも見える。ただひたすら「静かな暮らし」を求めながらもそれが叶わない静雄は、自らの首というシンプルな探求物があるセルティと似ている部分があるのかもしれない。セルティも、静雄の気持ちは理解出来ているようだしね。新羅が二人の会っている場面を見たらどう思うのだろうか。

 静雄の立ち位置は、今のところ微妙なものだ。町中に知られているためにカラーギャングたちとも交流は深いし、臨也とはライバル関係、新羅・セルティとは交友関係がある。しかし新羅は臨也とも繋がっているし、その臨也はカラーギャングを使って何かきな臭いことをしようとしているように見える。1人で単独勢力を構成できるくらいのポテンシャルを持っている静雄がどのような立ち回りを演じるのか、というのは今後のカギになるだろうか。ただ、彼自身が非常に無欲な人物で、弟絡み以外では特に積極的に動こうとしないのは気になるけど。

 今回はやたらと男臭くて、小野・神谷・福山・小西と、そっち系の人は大喜び間違いないしのコテコテキャストが頑張ってくれましたね。そういや、次回予告をセルティがやっていたのだが、今までの流れからすると、また語り手はセルティに戻ってくるんだろうか。 

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 「電撃文庫をモチーフにした拷問」が気になって仕方ない第6話。いや、「ドクロちゃん」は何となく分かるけど……多分それだと「拷問」じゃなくて「処刑」になる気がする。「れでぃ×ばと」風の拷問ってどんなやねん!

 さておき、今回の語り部は謎の4人組の頭領格であるところの門田京平(CV:中村悠一)。今まで単に「紀田が池袋でつるんでいる妙な連中」という認識しかなかったのだが、せっかくなのでここで全員名前を確認しておくと、細目オタクが湯馬崎ウォーカー(CV:梶裕貴)、紅一点が狩沢絵理華(CV:高垣彩陽)、そしてドライバー役が渡草三郎(CV:寺島拓篤)。公式ページのキャラ紹介を見に行ったら、最後の渡草だけが微妙に離れた位置に紹介されてたのは何でだろう。とにかく、この騒がしくもよく分からない4人が、今回の中心だ。ただ、これまでよりも話運びに重点が置かれているためか、門田の語りはそれほど多くなく、しかも作中で「誰にしゃべってんの?」とメタ突っ込みされるという軽い扱い。この時点で、今回のエピソードの毛色が違うということが分かる。

 さらっと出てきて一番驚くのは、やはり彼らが「ダラーズ」であったという部分だろう。門田の独白を聞く限りでは「カラーギャング」とは言っても具体的な活動は何もしていないらしいが、紀田がうわさ話程度に聞きかじった謎の組織が、こんなに軽々しくあっけらかんと出てくると、拍子抜けを通り越して何か壮大な意志が感じられる。門田は当たりを付けているみたいだが、その創立には街を左右する重要な人物である臨也が関わっているとかどうとか。ただでさえ治安の悪いこの街で、さらに臨也の思惑を孕んだ集団が蠢いていると考えるだけでもきな臭い。

 そして、もう1つのグループとして起ちあがってきたのは、1話で神近を誘拐したグループを末端に配する、矢霧製薬。人体実験を何とも思わないキャラクター、矢霧波江の登場により、一応公式ページの人物表に掲載されたキャラクターは全員登場したことになる。そして彼女のラボには、思わせぶりに浮かぶ人間の首。これはつまり、セルティの追い求めていたアレということになるのか。色んなところが繋がっていたり、すれ違ったり、このやきもき感はたまらない。実はほとんど全てのキャラクターが顔を出しており、その1つ1つのベクトルが向かう先が、ゆっくりと「ダラーズ」「セルティ」「矢霧製薬」にまとまりつつあることが伺える。ここまでとっ散らかった展開なのに、何故見ている方は混乱しないのか、不思議で仕方がない。

 まぁ、後のことはどうせ分からないから置いておくとして、今回はダラーズ4人組のへんてこりんな人間関係が見どころ。結局語り手役の門田が「何か良い奴、それなりに思慮分別のある奴」ということと、「渡草はアイドルオタク」ということは分かったのだが(彼が応援してるアイドルがなんとも可愛い)、個人的に気になっている湯馬崎、狩沢のパーソナリティがよく分からないままだ。言動を見る限りでは本当に現実感に乏しいオタク兼DQNって感じなのだが、渡草はなかなかのドライビングテクニックを持っているようだし、彼らにも何か特別なスキルがあるのだろうか? オレオレ詐欺に成功したときの訳の分からないテンション(と演出)とかを見てると、単なる賑やかしのようにも見えるぞ。何にせよ、セルティの仕事をまるまる横からかっさらってしまうほどのバイタリティには感服する。まぁ、あのメモ書きを握りながらも最終的に目的地にたどり着けたセルティも凄いとは思うけど。何で彼女は宇宙人のドキュメンタリー番組を見てたんでしょうね。何か親近感でも湧いてるのかしら。

 なんだかんだと騒がしさばかりが際立つこの作品だが、不思議と煩雑さは感じない。それどころか複層構造で次第にその輪郭を露わにしてくる池袋という街そのものが、あり得ないと分かりながらも奇妙なリアリティを増しているかのようである。変な作品だけど、この馬鹿騒ぎっぷりは嫌いじゃないです。 

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 オープニング中に入るダイジェストの構成の妙に感心してしまう第5話。これまでも随分すっきりとその回の勘どころをまとめてくれるな、とは思っていたのだが、きちんと既知のエピソードからの引用だけでその回の復習が出来るように構成するってのは、結構神経を使う作業。やっぱりどうしても視点が散漫になってしまう構造を持つだけに、そのあたりには気を遣っているようです。

 今回の語り手は、1話からストーリーに絡み続けている紀田正臣。彼のキャラクターは一貫して「軽い」「適当」というスタイルが貫かれており、濃いぃ面子の集うこの池袋では陳腐なイメージもあったのだが、今回のエピソードで自ら信条を語るに至って、ようやくその内面が見えてきたようである。実際、彼は軽薄だ。嘘みたいな女性観を持っているし、それを臆面もなく体現できる神経の図太さは生来のものであるだろう。しかし、どうやらその裏側に真っ正直な芯が通っているのも事実なようで、今回は親友の帝人に対する接し方に常に神経を払っている様子がよく分かる。どうやら「黄巾族」と呼ばれるカラーギャングとの因縁もあるようだし、薄っぺらいと思っていたキャラクターに少しずつ肉付けされていくのを見守るのはなかなか面白い。

 また、今回のエピソードで紀田を語り手に選んだのは、紀田自身に対する掘り下げもあるだろうが、帝人と園原を加えた3人の青臭い高校生青春視点を描くのに最も適した人材だ、という理由もあるだろう。園原が行方不明になった(元)友人について語るシーンと、それに対して帝人が初めて主人公らしいはっきりと意味のある返答をするシーン。この2つの場面は、はっきり言ってかなり臭い。園原の淡々と自分を語りながら過去を振り返る様子はちょっと現実感に欠ける奇妙な情景であるし、それに対してきっぱりと拒否、提言を行う帝人の態度だって、いかにもお話的で何とも馬鹿馬鹿しいシチュエーション。言い換えれば「ラノベ的厨二臭」がする。しかし、こうしたこっ恥ずかしいシーンであっても、それを見ている紀田が元々飄々として、責任感の薄い態度を一貫して示しているために、何となく飲み込めてしまうくらいのレベルにまで落とし込まれる。一見すると子供じみて見える紀田の態度も、実際は帝人や園原といった「友達」を的確に見守る優れた観察眼と判断力によって成立しているものであると分かるわけだ。原作ままなのか、それともアニメの脚本で考えられた構成なのかは知らないが、この配役はなかなか面白い。

 そして、そんなハイスクールライフ以外にも様々な不思議がまたもあふれ出す池袋の街。セルティは切り裂き魔に出会い、帝人のクラスメイト、矢霧はストーカーに追いかけられた過去を持ちながらも謎の女性と逃避行。「池袋最強」を追い求めるレポーターに、チャットに現れた危険な参入者。そうそう、紀田との思い出を抱えた病院の少女なんてのもいる。臨也はあれだけガミガミ言われたのにまた平気で池袋に来てるのかな。

 前回までは収束気味かと思っていた群像劇が、再び拡散し、ファクターをちりばめる。この緩急の付け方は視聴者としてはありがたい。次はどこに視点が向くのか、池袋はどこから切り取られていくのか。良い感じで次も楽しみです。

 それにしても、首がないのに何でセルティは色っぽく見えるんだろうなぁ。 

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 いきなりサブタイトルの四字熟語の意味が分からなかった第4話。っていうか、調べてみたら別に四字熟語ではないな。一応コトバンクから転載しておくと、「《李密「陳情表」から。自分と自分の影とが互いに哀れみ、慰め合う意》孤独で訪れる人もなく、寂しいさまをいう。」知らんがな。まぁ、一応今回のエピソードの雰囲気は出ているけども。

 今回の主人公は、「首無しライダー」ことセルティ・ストゥルルソン。そして彼女の生い立ち心情を語るのは、20年にわたって彼女と同居している闇医者の岸谷新羅。新羅は前回もセルティに声をかけるくらいはしていたが、表だって登場するのは初。臨也や静雄、サイモンなどのぶっ飛んだキャラが多い中で、まだ一般人のように見えなくもないキャラクターであるが、彼の父親が完全にマッドであったために、彼の中でも何かが歪んでいる気はする。何より、まったく気にすることなくセルティと同居し、彼女に愛情を抱いている時点でおかしいのは確かだ。まぁ、4歳からデュラハンと行動を共にしていれば、別に恐れを抱く機会はないのかもしれないが。

 今回の見どころは大きく2つあり、1つ目は、ようやく正体が割れたセルティの描写。首無しライダーの噂は1話からしつこく流されていたわけだが、実際に首があるか無いかは今まで分からなかったわけで、今回あっさりとその正体を現したのは少々驚き。また、前回たどり着いた「セルティの声は沢城」という事実も今回すんなりと裏が取れたため、現時点で池袋の街中に残っている謎はほとんど無い状態。そして、姿を現したデュラハンの姿形があまり恐ろしいものとして描写されず、すんなりと街の喧噪、部屋の一部として溶け込んでいるのが面白い。絶えず首元や手先から黒い霧をしゅんしゅんと沸き立たせるセルティの異形は確かにおかしいのだが、新羅があまりに平然と接しているためか、いつの間にかそれが当然であるかのように見えてくる。「首がない」という決定的な欠落も、彼目線で見れば大した問題ではなく、視聴者も新羅の価値観に引っ張られる形だ。今回から携帯による筆談に加えてセルティの意志がきちんと音声で伝わるようになったことも、そんな変化に拍車をかける。この奇妙な「存在感」はなかなか面白い演出である。

 そして、そんなセルティという存在を成立させるもう1つの見どころが、岸谷新羅という男の描写。闇医者という職業こそイレギュラーであるものの、彼の立ち居振る舞いはごく普通のもの。そして、そんな一見普通の彼が、今回は「記録者」としての立ち位置を明確にする。具体的には冒頭に現れたビデオカメラによるリサーチがそうだし、セルティとの対話を一つ屋根の下にありながらチャット形式で行うというスタイルも、彼女との対話の記録者としての意味をもつ。さらに彼の描写の中で再三焦点が当たるのはカチカチとノックを続けるボールペン。これも「筆記者」としての彼のスタンスを強調する道具立て。回想の中で、彼の父親を象徴するツールが「探求者」としてのメスと、「記録者」としての万年筆だったのも、彼の血統の「記録者」としての特性を強調している。

 つまり、新羅は物語内でも「記録者」であるし、視聴者にとっては、非常にオカルティックな今回の筋立ての「認定者」としての役割も持つ。一見すれば信じられないはずのデュラハンという存在も彼の「記録」によって「認定」されることで苦もなく受け入れられるし、彼の目線から見たセルティの欠落したが故の美しさも、普通の価値観ではないはずなのに何故か不思議と不快にならない。彼の人間としての何かを変えてしまったであろう、「肉の塊」であるデュラハンの艶めかしい肢体は、今回の何ともアダルトなムードの中でも一際見栄えのするシーンであった。

 そして最後に、彼は絵描きの老人の力作であるデュラハンの肖像を手にして「これで完成しているのだ」と「認定」する。首を探し求め、そこに自らの答えがあると信じ続けるセルティと、首によって今のセルティが失われることをどこかで恐れ、その事実を忌避しようとする新羅。何とも奇妙な共同生活だが、どこか暖かく、見守っていたい男女の形である。今回みたいな話は、1話完結のエピソードとしてもきちんとまとまっているので、お気に入りです。

 ところで、デュラハンとこの作品のタイトルの関係性を誰か説明してくれないか。 

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