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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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 パメルク、ラルク、高らかに、第8話。はしもっちゃんがおジャ魔女好きだった可能性が? いや、別に関係無いんだけどさ。個人的には、昨日今日で「聲の形」→「けいおん20話」→「ユーフォ」という謎の京アニラッシュをたたき込まれて完全にKO。どれもこれも素晴らしい。

 本編の要素だけで言えば、今回は諸々のミッションに特に変化が無いので「繋ぎ」のエピソードといえる。風邪引きなんて分かりやすいアクシデントがサブタイトルについているのだが、風邪引き要素はあんまり重要ではなく、久美子のまわりでは色々な外堀が埋まっていっている。現状、2つの家庭環境の問題が大きく存在しているわけだが、そのうち1つ、黄前家の問題については今回幾らか解決の兆しを見ることが出来ただろうか。

 久美子の姉・麻美子の突然の反抗については、これまで彼女の人となりがほとんど描かれて来なかったので正直何とも言いがたい。一般論だけで問題を切ってしまえば、悪いのはどう考えても麻美子の方であろう。夢を追いかけたいという若者を悪く言うつもりもないが、親御さんからしたらいきなり大学を辞めると言われて面食らわない訳がない。「何故このタイミングで」というのが正直なところ。夢を追いかけたくなったならそれはそれで尊重してもいいが、いくらなんでも「あと1年で大学が終わり」のタイミングでの申し出は彼女の将来を思えばこそ受け入れがたい。最悪、学歴だけでも確保してから専門学校に入り直せば夢は追えるのだ。「その1年が」と若者は言うかもしれないが、少なくとも大学3年分の学費に折り合いを付けなければそんな話は出来ない。何もかもタイミングが最悪なのである。突然の彼女の暴走の理由として一番分かりやすいのは「男になんか余計なこと吹き込まれた」なのだろうが……いかんせんそういう作品じゃないからなぁ。純粋に青春の情動のほとばしり過ぎなんだろうなぁ。

 「姉がこれまで何を思い、何を考えて生きてきたか」。久美子の前に降って湧いた問題はこれである。幼い頃は憧れの対象で、何をするにも後をついていきたかったお姉ちゃん。思春期を迎えてからは、上から目線が気に入らず、やっていることもなんだか気に触るお姉ちゃん。まぁ、兄弟姉妹ってのはそういうもんである。これが男兄弟ならせいぜい弟がプロレス技の実験台として苦しむとか、エロ本の所有権を巡って諍いが起こる程度なのだが(俺調べ)、姉妹関係ってのもなかなか面倒なもんでね。姉は「全部妹が持っていく」と文句を言い、妹は「姉は好きなことばかりやって」と疎ましがる。いつの時代も、どこの家庭もそんなもんだ。ただ、黄前家の場合、その諍いが面倒なタイミングで表面化してしまっただけなのだ。親にとっては経済的・将来的な問題を抱えたタイミング。そして妹にとっては、たまたま「楽器を続ける意味」を問われているタイミングで……。

 ただ、北宇治の変革と共に生まれ変わった久美子と違い、姉の方の「楽器を続けたかった」気持ちは、おそらくもう終わってしまったものだろう。今回ぶちまけたのだって、親子喧嘩で売り言葉に買い言葉。トロンボーンをやめた当時はそりゃぁ悔しい思いもしたのだろうが、おそらく現在はそこまで楽器を吹きたいという思いはないのじゃなかろうか。ただ、自分が閉ざされた道で溌剌としている妹を見てしまえば、そりゃ面白くないのが年上の本音。そんなクサクサした気持ちが、CDを巡る姉妹喧嘩に現れてしまっただけである。後になって(なんにも知らない)塚本のナイスフォローにより、かつての妹からの熱視線に初めて気付いたお姉ちゃん。学校云々の問題は残しつつも、楽器を巡る妹との関係性は雪解けの兆しです。すげぇな、秀一が役に立ったのって初めてじゃなかろうか。

 さて、こうして久美子は「家庭環境と楽器」という問題を家庭内にはらみ続けながらも、その問題はいよいよ吹部の中心へ。田中あすかの周辺部は、一向に落ち着いてくれない。彼女は繰り返し「迷惑はかけない」と応えるだけだが、未だに「辞めない」だの「大会に確実に出る」だのといった確約は一度も口にしていない。このあたりが彼女の周到なところで、すでに先週の時点で中川先輩にもしものことは託してあるだろう。何とか「一番迷惑をかけない」形は模索しているのだろうが、さしもの女帝も、実母の問題となると完全な答えは出せていないようである。そして、そんな彼女を問い詰める「性格の悪い」久美子に対し、田中あすかのカウンターアタックは、なんと「おうちへご招待」。「その日は夜まであたし一人だから」っていうのは状況次第ではかなりのパワーワードだが、今回は全く意味合いが違う。さらには「1人で来い」とまで指定。かつて、別作品では球磨川禊という「悪役」が捨て台詞として「さもなくば君をディナーに招く」と脅したことがあるのだが、それに似た恐ろしさを感じる。いや、別にあすか先輩にとって食われるわけじゃないが……「先輩から家に誘われた」→「なんか気に触ることでもしたの?」というナチュラル暴言な高坂さん、流石です。

 あすか先輩の真意は現状では闇の中。しかし、ここで同輩の中瀬古先輩や部長先輩ではなく、久美子を一人で招いたというのはどういうことか。少なくとも謝罪が目的だったり、泣き言を言いたくてすがったりということではないだろう。事務的な結果報告なら、3年生に伝えるはずだ。となると、久美子が呼ばれた理由として考えられるのは2つ。1つはユーフォというパート。低音パートから自分が欠けることのダメージは本人が一番分かっており、「迷惑をかけない」ために、後継者たる久美子に何らかの訓辞を示すことが目的だ。ただ、これについては、わざわざ家に招かずとも出来ることであるし、同様のことを中川先輩に託しているであろうことを考えると動機としては薄い。となると考えられる理由は、久美子の「性格の悪さ」ではないか。物事をドライで一歩引いた目線から見守る久美子の人生観は、煩わしいあれやこれを忌避するあすか先輩にとっては一応プラスの存在。そんな彼女を通じて自分の存在の「欠落」を吹部全体に伝えるというのは、穏当な手段として考えられるかもしれない。部活を辞めたいとか、辞めなきゃいけないという話をした際に、吹部の中で一番あっさりと対処してくれるのは間違いなく久美子だろう。つまり、今回の「招待」は、田中あすかにとっても最後の選択なのかもしれない。まぁ、そんなバットエンドを向かえる作品じゃないだろうからあんまり心配はしてないけどさ。オープニングのラストカット、あの表情が早く見たいなぁ。

 さて、2つの問題を中心に見てきたが、今回意外だったのは、まさかの葵ちゃんの再登場だった。田中あすかの進退について、久美子以外にも「ドライに」処理してくれるもう1人の人材が、実は葵ちゃん。いや、ドライにはならんだろうな。自分が退部した後に吹部が躍進した、っていう変な引け目もあるだろうから。今回の「氷を毛布でくるんだような」という彼女の割り切れない感情は、「自分の退部に何の反応も示さなかった田中あすか」が、奇しくもこうして退部の危機に追い込まれていることへの反応なのだろうか。彼女の底も見えないなぁ。次回以降も葵ちゃんが絡んでこないと今回出てきた意味がないので、おそらくもうちょっと関わってくるのだろうが……どうなっちゃうんだろ。ちなみに、「氷を云々」の表情芝居なんかを見てると当たり前のようにその変化を受け入れてしまうが、これ、作画で表現出来てる京アニってやっぱりすごいよな。「聲の形」で散々そういう「普通に凄いこと」を叩きつけられたせいで、今回のお話もちょっと違って見えました。

 今回はシリアス連発で心休まる隙が無かったぜ……と思っていたら、「目覚めた寝床、一番最初に目に入るのが麗奈」というワンパンで確実に内蔵をえぐりとるシチュエーションが容赦無く展開された。高坂さん、絶対にそのポジションは意識してキープしてたでしょう。「朝目覚めて一番最初に君を見たい」みたいなこと意識したでしょう。平然と1人で見舞いにくるのやめてください。病人が起き上がってすぐにナチュラルにベッドの隣に座るのやめてください。おたくの久美子さん、今回あすか先輩にも唇つままれてましたよ。緑輝にはおでこもゴチンってやられてたし、久美子さんの顔面、案外色んな人にいじられてましてよ。麗奈さん、取り返さなくていいんですか? ……いいんですよね、このままで……。(昇天)

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 溢れんばかりに京都駅、第7話。ここ十数年のアニメの歴史の中で、もっとも登場作品数が多いのはおそらく京都駅だろう。学園アニメだとなんだかんだで1話は登場することになるので、作品数だとダントツだと思う。今度聖地巡礼してきましょうかね。近い。なお、たまこマーケットの聖地だとほぼ毎日巡礼している模様。

 さておき、「田中あすかの乱」開幕編。これまでたっぷり1クール半もの時間を費やし、溜めに溜めてきたラスボス田中あすか嬢のバックグラウンドがついに明らかになった! ……あれだ、割と分かりやすいヤツだ。そうかー、お母ちゃんだったかー。お目々の大きさが印象的なお嬢さんに比べると随分きつめの顔をしたお母ちゃんだったが、まー、人間それまでの人生が顔に表れるもので。おそらく本人のいう通り、女手一つで娘を育てるのにも随分な苦労があったのだろう。でもまぁ、一言でまとめると割と分かりやすい「親と子」の問題である。

 面白いのは、この「親と子」の問題、実は黄前家でも「姉と妹」で縮小版みたいないさかいが起こっていたこと。流石にユーフォをやめろとまでは言われていないが、久美子も「受験に関係無いのにいつまでユーフォなんか吹いてるんだよ」と姉に言われ、その姉は「良い大学にいって良い会社に就職する」という時代がかった分かりやすいご高説を垂れながら、どうやら大学でなにやら問題を抱えているという扱いづらい状態になっている。てっきり、久美子のそんな悩みがなんかの拍子で解決して、それが田中家の問題にフィードバックする形になるのかと思ったのだが、今回のラストシーンを見る限りではまだまだ黄前家のもめ事も先が長そう。田中家、黄前家、どちらが先にゴールするんでしょうか。

 さて、「分かりやすい」とは書いたが、ここまで散々引っ張ってくれた田中あすか先輩のことである、よくある「母と子」の構図にも色々と考察の余地があるので、せっかくだから今回の内容からその読み解きをしておこう。今回心底見事だと思ったのは、実際にあすか先輩の母親が登場していたシーンはそこまで長くなかったのに、その中に母娘の関係性をうかがわせる要素がギュギュッとまとめて詰め込まれていたこと。元々あんな難物の娘が出てくる時点で一筋縄ではいかない家庭であることは想像出来るわけだが、そんな娘さんのこれまでの立ち振る舞いも合わせて考えると、田中家の持つ暗闇の内実が見えてくる。注目すべきは、一見してヒステリーを起こしていると分かる母親の細かい表情の動き。特に、滝センから一喝され、事態を飲み込めずにいるときの、喜怒哀楽が複雑に混ざり合ったような、一瞬ながらも奇妙な表情の歪み。この時、あすか先輩の母親は笑ったような、怒ったような、泣いたような、諦めたような、何とも不思議な変化を見せる。そこに籠められた感情は、おそらく彼女自身にも処理しきれないような、根拠も動機もない感情の爆発だ。

 その何とも言えない表情を経由し、彼女は娘に対して「部活を辞めろと今ここで言え」という無茶振りを行い、最終的は平手打ちに及ぶ。さらにその後、すぐに泣き出して自分の娘にすがりつく母親と、相変わらずの無表情でそんな母親を受けとめるあすか先輩。この構図から、「この母娘は、これまでもずっとこんな生活を送ってきたのだ」ということがすぐに分かるようになっている。そうして、この歪んだ母娘の関係性を見て、「如何にして田中あすかが形成されてきたか」というところにまで推測が及ぶわけだ。

 どうにも面倒な、情緒不安定な母親。彼女が激昂するのは、おそらく部活絡みの話だけではなかろう。おそらくあすか先輩が幼い頃から、似たような状況は度々発生し、娘は母親の扱いに難儀したに違いない。当然、こうした状況では「自分が一番大事」という保身と、「でも恩義ある母親を、自分の愛すべき肉親を無下にも出来ない」という家族愛がぶつかり合い、悩み、苦しむことになるのだ。そんな状況を処理するために、怪物・田中あすかは仮面を被った。徹底した堅実主義を貫き、人の感情などというものは、自分が生活していく上で、どうコントロールするかだけが問題になるノイズとなった。田中あすかが生きていく上で、周りの人間が何を考えようが、どう思われようが、それは「処理すべき対象」の1つでしかない。実の母親との付き合い方が、彼女をそんなドライな人生観へと到らせたのであろう。いちいち母親のヒステリーに付き合っていてはきりがない。あくまでクールに、先に影響がないように、効率的に処理するのが、自分のためであり、母親のためにもなる。同じように、部活の中でのソロ争いも、旧友の復帰に怯える後輩の世話も、どれもこれもが「事務的に処理すべき仕事」であると、彼女は捉えていたのであろう。怪物が生まれた事情は、何とももの悲しい、家族との絆の果ての物語である。

 しかし、そうして彼女の人生観が見えてくると、その中で特異な存在も浮き彫りになる。合宿の朝靄の中、一人無心に吹いていたユーフォ。彼女にとって、ユーフォを吹くことは「母親との諍いの元」でしかなく、本来なら「処理してしまうべき案件」だ。全てを打算で処理したいなら、彼女はユーフォを手放すべきだ。しかし、実際にはそれが出来ない。何を言われても、彼女は部を辞めない。つまり、彼女の中の「人間性」が集約されているのが、ユーフォの演奏という行為なのである。怪物・田中あすかは「ユーフォにしか興味がない機械」ではなく、「ユーフォしかすがるべき人間性を持てない人間」なのだ。それが分かれば、今後の対応はいかようにも出来る。彼女の一時的な不在により、「あすか無き吹部」がようやく起動した。部長先輩も頑張った。おそらく、中川先輩は低音パートを託された。万一彼女が欠けたとしても、吹部は何とかやっていける体勢を作り上げるだろう。しかし、それはあくまで仮のものであり、最後に「人の心を持つ田中あすか」を迎え入れて、北宇治高校吹奏楽部が完成するのだ。今期のフィナーレは、一体どんなものになるだろうか。

 今回はあすか先輩のもろもろを観るだけでもへとへとになるエピソードだったが、その他の要素も相変わらずてんこ盛りで忙しいんですよ。謎のベーシスト緑輝とか、葉月の初めての本格ステージとか、そんな葉月にも気軽に励ましの言葉をかけて上げられるようになってる麗奈のレベルアップとか。でも、今回はやっぱり3年生がメインかな。どのシーンでも中瀬古先輩がいちいち可愛かったし、部長先輩のソロパートは過去に登場したどのソロシーンにも負けていない大迫力で最高の仕上がり。やっぱりサックスのソロは決まるとマジで痺れますね。今回あらゆるキャラの細かい所作まで含めてやたらと色気があって素敵だったんだが、コンテ演出が今期エンディング映像を担当している藤田春香という人なのよね(1期8話もこの人が担当してる!!!)。これだけの密度のシナリオを見事に収めているし、1つ1つのシーンに魅力があるし……どうにも京アニの女性クリエイター陣は化け物揃いであることよ。

 そして、相変わらず軽々とホームランをかっ飛ばすのが、デカリボンこと我らが優子である。部長先輩の決死の挨拶へのあのレスポンス。誰がどう見ても愛されキャラ過ぎるだろ……。優子・夏紀の2年生コンビ、最強です。希美なんていらんかったんや。

 そして、次の曲が始まるのです。

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 オープニングがカラフルに、第6話。これまでモノクロだった画面に色がつく、ってのはある程度予想出来ていたことだが、地区大会突破記念で色がつくってのもなんか変な話だな。

 前回が大きな山場だったので、今回はそのフォロースルーとなるお話だが、それでも色々とてんこ盛りですよ。まずはアニメ業界名物、「絶対そんなに盛り上がらないだろっていうくらいに盛況の学園祭」から。まさかこのアニメで学園祭が見られるなんてねぇ。吹部は誇らしい金賞を持ち帰り、体育館での演奏もどこか堂々としている。全国出場の報を聞きつけて、まわりのお客さんも増えた事だろう(少なくとも去年までの吹部のイベントにあんまり客が集まるとは思えないしな)。地味に今回が葉月のステージイベント初披露だったりするのだが、最近の常として、葉月と緑輝の扱いはちっちゃいのである。このアニメ、レギュラー4人(仮)にした意味があんまり無いのが残念だよな。いや、個人的には久美子・麗奈さえいればそれでいいのだけども。

 学園祭と書いて百合祭と読む。あっちこっちでイチャイチャが発生。その先陣を切るのはなんと中川先輩と優子である。うーむ、余りもんどうしでコンビ芸認定されてしまったのか……もう、優子の立ち位置はそこでばっちりだからいいや。何故か彼女の登場シーンは、表情の割り方とか、顔の見せ方がいちいちコミカルで非常に恵まれている。彼女はこのハードな「ユーフォ」ワールドにおいて、特権的な立ち位置を手にした無敵の存在にまで昇華されたのである。ちなみにその脇ではすっかり手なずけられてしまった鎧塚先輩が希美とイチャイチャ。本当に魂まで売り渡したような笑顔見せんといて……オレは希美を認めたくないんや……。いつの間にかちゃっかり吹部でフルートまで吹いているしな。一時は鎧塚先輩に吐き気を誘発させていたあのフルートをな! ……ところで、何で2人して同じ店で働いてたんでしょうね。確か鎧塚先輩と希美ってクラスが違う設定じゃなかったっけ……? 有志を募って参加するタイプの喫茶店だったんでしょうかね。どないやねん。あ、ちなみに久美子たちのクラスもメイド喫茶でした。あんまり可愛く見えないのは何故なんでしょうね。まぁ、麗奈曰く「似合ってた」らしいですけど(お嬢ちゃん、久美子が着てれば何でも褒めてくれるんじゃないかい)。

 3年生の教室まで上がってみると、ダンスイベントがあったり、占い屋が管巻いていたり。ちょっと待て、クラス全員が占い師ってどんなイベントだ。教室の中は一体どうなっていたんだ。しかも「忙しい」って言ってたぞ。どんだけ占いのニーズがある学校なんだよ。ちなみに今回あすか先輩の出番はこんだけだったので、あんまり意味深なことはしませんでした。そのくせラストシーンで全部持ってったけど。こうして、3年生の教室までぐるりと回るのは、当然久美子と麗奈のデートコースだったわけだが、普通のアニメはそこを男女カップルでやるやろ、という野暮な突っ込みを構えていたら、なんとまぁ、お化け屋敷で塚本とばったり。そして、このアニメ始まって以来、最大級の接近遭遇を見せたのです。塚本君の満足げな顔、本当に久しぶりに見ましたね。まぁ、百合のみが生き残れる修羅の世界で、まっとうな恋愛を試みるという無謀な戦いに挑んでいる男ですからね。案の定、麗奈さんの登場で全部吹っ飛んだ。麗奈さん、確実に2人の邪魔する目的で飛び込んできてますやん。いや、でも実は麗奈って塚本の存在については割と寛容なんだけどね。わざわざ久美子をつついて意識させようとしてるきらいもあるし。自身が滝センにお熱なので、久美子は久美子でまっとうな男女交際【も】展開すればいいと思ってるんじゃなかろうか。残念ながら、久美子さんにその意志も気構えも予兆も素質もないんですけどね……。

 文化祭には橋本・新山両コーチも参加しており、当然そこには滝センもついてくると思っていたら……突然の修羅場。麗奈さん檄おこからの怒涛の軍事介入ですわ。この子は本当にこんだけ迷い無く行動に出られるんだけど、滝センに告白したり、具体的な行動に出ることはしないんだよね。まぁ、教師と生徒っていう立場をわきまえた上での行動なのかもしれないけど。彼女が高校を卒業してからのラッシュが見もの。いや、普通に考えたらその前になんらかのイベントは発生するだろうけども。

 賑々しい文化祭ムードは翌日の台風で一掃。そして、黄前家には別の嵐も吹き荒れています。うーん、この久美子の姉ちゃんのトラブルって、作中で一体どういう意味があるのか分からないからどんなテンションで観ていいのかわからんのよね……久美子が将来の目標を定めるきっかけになる、とかかなぁ。単に久美子の心をざわつかせるだけのイベントっていうならちょっと勘弁して欲しいけど。すでに久美子はユーフォを吹くモチベーションを確立させているわけで、今更ねーちゃんがどうなろうがあんまり部活に影響は無いと思うんだよね。お父さんお母さんは久美子と敵対するわけじゃないから精神的にもそんなにクサクサしないだろうし。あ、お父ちゃんは台風の中の出勤ご苦労様です……。

 家庭内のもめ事に絶えられない久美子さんが外出すると、持ち前の家政婦能力がフル回転して偶然滝センに遭遇。こうしてガンガン偶然から(知りたくもないのに)相手の内情を掘り下げていくのが黄前さんの凄まじいところですね。しかもこんな台風の日が滝センにとっても記念すべき日だったようで……だいぶ肉薄してしまいましたなぁ。とりあえずこれで滝センのモチベーションははっきりしたし、それをうっかり聞いてしまった久美子をさらに発憤させる材料にもなった。唯一の問題は、そんな隠された事情を麗奈に漏らすかどうかなんだよな。普通に考えたらそういうプライベートな事情を面白半分でなくとも勝手に漏らすのはよくないとは思うのだが……すでに橋本っていう前科者がいるからなぁ。久美子がうっかり漏らしてしまうのはしょうがないことだと思うけど、全部見ちゃって知っちゃってるおかげでかえって話せない部分もあるのかしらね。今回の校門のシーンで言わなかったってことは、多分久美子の方から積極的に教える意志はなさそうである。まぁ、教えたところでどうなるもんでもないしなぁ。麗奈も「どうして黙っていたの?!」とかキレるような器の小さい女でもなかろう。久美子さんは黙って見守るしかないのですよ。

 さて、色々ありましたが、とりあえず全国です。心機一転、久美子はいつもよりも早めに登校してみるものの、そこにはすでに、こちらも心機一転して純正強キャラとなった鎧塚先輩、そしてやる気に満ちた一年生、緑輝も麗奈も。みんな、とにかく練習したくてしょうがないご様子。そして、そんな熱心なメンバーの誰よりも早く練習を始めていたのが……我らが田中あすかだ。彼女の「マジ」は本当にマジなのだ。気迫が違うんですよ。そして、そこにやってくる謎の女性……ついに、田中あすかメインステージの開幕となりますか。

 そして、次の曲が始まるのです。

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 ハレの日、第5話。約束されし勝利の演奏、今期前半戦のクライマックスである。

 結果については分かりきっていたことなので特別触れることもないが、とにかく演奏の全てを見せようという画作りが圧巻。課題曲の方は流石に切るが、「三日月の舞」は全てをノーカットでお届け。あたかも視聴者がコンクールの会場で演奏を聴いているかのような、臨場感と緊迫感をそのまま伝えている。こういう堂々とした話運びが出来るのが、流石の京アニというか、「それが出来る」という絶対の自負と、実際に出来るだけの技能があって初めて実現する内容である。ただただ驚嘆するしかない。しかし、今回これをやっちゃったら最終話とかでどんな盛り上げ方をすればいいのやら……。

 演奏シーンについては、こちとら素人なので偉そうに語る言葉もない。相変わらず楽器の光沢やらディティールに変態的なこだわりが見えるし、楽器の指運なんかも全部忠実に再現されたものだろう。以前、京アニフェスで展示されていた楽器の詳細の指示書きなんかの解説で「とにかく全部、一から描き上げている」ということを知って度肝を抜かれたが、こういう緊迫した演奏シーンになると、ごまかしのない全力全霊のやり過ぎ描写がしっかりと意味を持ってくる。管楽器だと分かりにくいが、私のような素人でも打楽器のモーションならそのあたりが分かりやすくパーカッションの躍動感なんかは骨まで届くような音の響きが伝わってくる(打楽器パート、可愛い子が多くないですか?)。

 そして、本作の場合はそうししたリアリティを持たせた作劇に、心情芝居がきっちりついてくるのが白眉な点。石原立也ここにあり、と言わんばかりのねちっこい描写に今回もお腹いっぱいムネやけいっぱい。冒頭、橋本に話題を振られた鎧塚先輩の優しい笑顔に始まり、締めの一コマも鎧塚先輩で終わるわけだが、この二枚の笑顔、全然表情が違っていて、自然とその意味合いの違いを感じさせるものになっている。今回のお話をもって完全に「鎧塚編」が幕を閉じたのだなぁ、ということが伝わってくる。それにしても、橋本イイ奴だったな。あの激励は学生さんたちも元気をもらえるわ。

 他にも、各パートごとにそれぞれの交流があり、これだけの大人数であるにも関わらず、「全員で1つの吹奏楽部」「全員が主人公」みたいなニュアンスも伝わってくる部分。流石に全キャラの顔が分かるとか、名前が分かるみたいなことは無いのだが、それでも演奏シーンでは個々の表情が活き活きしているのが見えるし、見えている世界も1つに集約されている。中でも一番思い入れが深いのはやっぱりトランペットの面々ですかね。麗奈のソロパート、背後に優子が映るカット割りで流すのが実に心憎い。数ヶ月前まではおそらく忸怩たる思いで視線を落としていたであろう優子だが、今回は麗奈のソロパートを聞きながらその表情に迷いは無い。やっぱり優子さん最高です。他にもオーボエはもちろん無視できないし、緑輝の堂々たるコンバス捌きなども今回はたっぷり見られる。ここまでまっとうに「吹奏楽アニメ」が実現するなんて、にわかには信じられない事件ですよ。

 そして、毎度お馴染み我らが麗奈・久美子間の関係。以前「誰のために吹くのか」の問いに「強いていうなら自分のため」としれっと答えていたアイアンハート・麗奈嬢。彼女には本番での緊張感などという言葉は無いらしく、出番直前にも久美子相手に余裕のプロポーズである。滝センを想って奏でると暑苦しいバラードになってしまうらしい。真顔でそれを受け取る指揮者の顔も見てみたかった気もするが、この機会を利用して麗奈さんはどさくさで「久美子に届ける演奏」をひとつ。それを聞いた久美子の脳裏に花火が弾け、大吉山がフラッシュバックするのはずる過ぎるな。「こいつッ、直接脳内にッ!」みたいなレベルで思念共有が可能な久美子と麗奈です。ソロパート以外でも二人の演奏中の表情はどちらかというと笑顔に近い。いや、二人だけでなく、今回の北宇治の面々は緊張感を伴いながらも、どこか笑顔に似た雰囲気を持たせて演奏に余裕がある。これが夏休みの猛特訓の成果ということなのだろう。そりゃ、麗奈たちだって2人で目配せする余裕もありますわな。「楽しく(いちゃいちゃと)演奏」というのが、この世界の完成形なのかもしれません。Cパートは「久美子と麗奈が涙ながらに結果発表を聞く」っていう構図が1期とも重なるし、中学時代のあの馴れ初めとも重なるようになってるんだなぁ。

 そして、そんな「楽しい」とは一線を画す存在だったはずの最後の1ピース、田中あすか先輩。すでに鉄壁と思われた彼女の内面にも変化はあらわれており、本番前の突然の弁舌は、これまでのあすか先輩だったら絶対にあり得なかったものだ。彼女は「自分のための演奏」「勝つための吹奏楽」を続けており、それを他人に押しつけたり、期待したりはしてこなかった。しかし、今の北宇治は、田中あすかのお眼鏡にかなう存在になったということなのだろうか。初めて彼女が本気でチームにはっぱをかけた。いや、見方次第では仲間達に懇願したと言ってもいいかもしれない。彼女は、初めて自分以外のものに可能性を見出したのである。この変化は恐ろしく大きな一歩だ。

 めでたく、あすか先輩の願いも叶い、北宇治は全国大会へと歩を進める。ここから先に障害はない。ただひたすらに研鑽を積むだけ……ではないよなぁ。まだ半分残ってるもんなぁ。最後の壁は一体なんでしょうかね。

 今はひとまず、勝利の余韻を楽しみましょう。あ、新山先生、来週以降も来てくれませんかね……。

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 えぇ〜〜〜、もひとつおまけに、えぇ〜〜〜〜、第4話。うーむ、好きな作品なのは間違いないし、今後もそれは変わらないだろうが、だからこそはっきり思う、今回のシナリオ、どうなのよ。

 たとえるなら中ボスだと期待していてそれなりに装備を調えようとしていた矢先に、ポロッと通常攻撃で倒せちゃった、みたいな印象。こんなにあっけないのかよ、鎧塚エピソード。流石にこれは扱いが雑じゃありませんかね……いや、違うな、扱いが雑なわけじゃない。ここまで高めた「中ボス感」の方がペテンだっただけで。その部分の脚本運びは、流石にちょっと抵抗が大きい。

 1つずつ見ていこう。まず、今回最大の焦点となったのは鎧塚先輩のパーソナリティである。ここまでのお話で「ぼっち気質」「浮世離れ」といった属性ははっきりしていたものの、同じ京アニ作品で比較して「長門っぽい」と言われていた彼女の中で、「希美に対する拒否反応」だけは完全に異質なものだった。彼女のフルートを聞くだけで「吐きそう」とのたまい、優子やあすか先輩は「絶対に希美を会わせちゃならねぇ」と警戒心を強めていた。一体、彼女の中で希美とはどんな存在なのか。ここまでのお話で「対希美エピソード」への期待感は高まり、ハードルが上がっていたのだ。しかし、ふたを開けてみればそこに隠されていたものは何一つ無かった。「友達だと思ってたのに、勝手に部活を辞めちゃったのが理解出来ない」というそれだけのことで、鎧塚は希美に対して絶大なアレルギーを示すようになり、必死に彼女の影から逃げ続けたのだという。……どんだけ厄介だよ。どんだけぼっちだよ。いや、まぁ、ひょっとしたらそういう人間がいてもいいかもしれないし、元々そういう設定なんだろうと思って見ていたわけなのだが、それだったら、今回のお話であっさりと氷解してしまうのは流石に納得出来ない。そんな簡単に乗り越えられるハードルだったのなら、わざわざここまで思わせぶりに盛り上げないでくれよ。

 実際、彼女達の日常生活を考えても、彼女の「希美拒否」には無理がある。だって同じ学年なんでしょ。クラスは違うかもしれないけど、希美は地区大会を見に行っていたと言っているし、今回だってフラッと「希美の様子見てこようか」と言っていたのだから、彼女の側から接触しようと思えばすぐにでも鎧塚と顔を合わせていたはずなのだ(今回実際にそうしたわけだし)。部活を辞める時こそこっそり抜け出したが、それだって1年も前のこと。中学時代に「友達」関係だったのなら、それから延々顔を合わせないなんてことはあり得ない。もしそれが実現していたのなら、本当の本当に「彼女は友達だと思っていない」という鎧塚の妄想が事実だったと考える方が自然だ。希美の「復帰活動」の仲立ちとして中川先輩が積極的に動いており、彼女は希美と鎧塚先輩の間の確執を知らなかったわけで、「とりあえず昔の友達と作戦練りましょう」みたいな流れになるのが当たり前。何故、この状況で頑なに2人の接触が避けられていたのか、その部分はどう考えても不自然で、「今回久しぶりに顔を合わせて話を盛り上げるため」以外の理由が無いのだ。

 そしてもう1つのすっきりしない点は、希美のキャラクターそのものにある。鎧塚先輩の方は、「そういう類のすげぇ面倒なぼっちの人」というキャラ設定で納得出来る部分はある。今回彼女の独白ではっきりと言及されたわけではないが、ぼっちだった彼女のところに自然にやってきた時点で希美は神格化されてしまい、希美のためなら命も投げ出さんばかりの信頼をぼっち少女が抱いてしまったというなら、それは納得する。確かに、それまで縁もゆかりもなかった吹奏楽に参加し、最高難度と言われるオーボエを完全に操るまでに鎧塚が部活に打ち込んだのだとするなら、それは希美の圧倒的なカリスマによるものであり、彼女がどれだけ心酔していたかをうかがわせるエピソードになりうる。しかし、それだけに今回の彼女の対応は許し難い。最後に2人が対面を果たすシーン、彼女が言い放った「何が悪いのかわかんねぇ」という発言は、図らずも彼女が「みぞれのことを数多の友人の1人としてしか認識してなかったッス」という鎧塚の被害妄想を裏付ける形になり、身体に変調を来すまでに希美に依存してしまった鎧塚先輩が不憫である。まぁ、希美サイドから見れば「そんなに依存されても困るわ」って話なのかもしれないが、個人的にぼっち気質の方が共感度合いが高いので、どうしても鎧塚目線で物事を推し量ってしまう。希美が断りも入れずに部活を辞めたことについて、「頑張っていることに配慮したため」という弁明があったが、それこそがすでに鎧塚にとっての裏切りであり、冷遇だったということを希美は未だに理解していない。彼女の中で「希美>吹奏楽」という状態であったことを理解していない。そこで改めて友達面されても、「今更何言ってるんだ」という気持ちの方が強い。優子が涙ながらに訴えた1年間の絆の方が、よっぽど価値のあるものなのは間違いないだろう。

 それにもかかわらず、今回のお話におけるエピローグは、「二人の間の誤解が解けて、二人は元鞘に戻ったよ、めでたしめでたし」なのである。これは駄目だ。すでに「元鞘」の状態は鎧塚にとって不幸しか生まないことは証明済みであり、彼女の今後の人生を考えるなら、「希美の下に帰る」のではなく、「希美無しでも吹奏楽が楽しいことを理解する」方向に持っていくべきだった。その場合には希美が完全に「空気の読めなかった悪い奴」になってしまうが、ここで1人くらい悪い奴が出てきても構わないだろう。何がやるせないって、ラストシーンで優子がまるでフられたかのような扱いになってしまっているところだ。中川先輩に「希美はあんたの100倍は良い子だから」とか言われているが、そんなわけ無い。もう、視聴者目線で言ったらこの世に優子くらい気の良い奴はいない。今回の熱烈ラブコールによって先週時点でストップ高まで上がっていた優子株はさらに天空へと突き抜けた。こんな良い友達を持って、鎧塚も本当に幸せだと思えるようになった。それなのに、彼女は希美と一緒にいることを望んでいるのである。何ともやるせない結末である。まー、優子はどこまで行ってもこういうスタンスのキャラなんだろうなぁ……。鎧塚先輩、来週以降は今回見せたような素敵な笑顔を部活仲間に振りまいてくれるようになるんでしょうかね。どれだけ素敵な笑顔でも、「まぁ、これも全部希美のおかげなんだけどね」って言われると、ちょっと興が冷めるのが残念だが……。

 というわけで、メインプロットとなる「VS鎧塚」戦は色々と納得いかない幕引きでしたとさ。一応フォローしておくと、個々のシーンの見せ方に文句は無いんだ。というか、やっぱり京アニさんどう考えても力配分間違い過ぎてて、優子がのしかかるシーンとか性的過ぎて規制が入るレベルだったのはやり過ぎなんだ。いや、いいです。あれでいいです。今度は、ちゃんと納得いく形であの最高潮の盛り上がりを見せてもらえれば。優子はどこに置いても完璧な仕事をしてくれる、今期MVP最有力候補なのです。彼女が鎧塚のほっぺをむにむにするシーン、一応以前久美子が麗奈のほっぺたムニムニしたのに繋げてあるんですかね。最大限の親愛の情を表したものです。

 さて、結果はどうあれ、とにかく大きな山をひとつ越えたことは間違いない。今回ほとんど描かれなかった1年生劇場は、麗奈が「強いていうなら、自分のためかな」って答えて安易に「滝センのため」とか「久美子のため」とか言わないところが素敵だな、って思いました。さぁ、後に残されたのは田中あすかという前人未踏の最高峰のみ。ラストでまた良い表情を見せてくれましたねぇ。彼女だけは、どうか彼女だけは、今回みたいな安易で打算的な落とし方になりませんように。もう、彼女もろともに世界が砕け散るくらいのエンドでもボクは文句を言いません。

 そして、次の曲が始まるのです。

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 下がジャージで上がブラの破壊力な、第3話。別に風呂シーンに限らず、日常的には割とよく見るスタイルなのでやけに生活感が出てリアルなのがヤバい。隣に麗奈がずっといる、っていうその存在感がヤバい。少しは溢れ出るエロオーラを自重して欲しい。

 以上、リビドー全開の感想はここだけに留めておくとして、今回もてんこ盛りで非常に忙しい1話になっている。いささか久美子が便利に動きすぎやな、っていう感じはあるかね。元々「性格が悪い」でお馴染みの、地雷を踏み抜きやすいキャラだったのだが、いつの間にやら色んな先輩の心の隙間にスッと入り込んで、「別に好きな後輩じゃないけど、成りゆき上こいつにしゃべるくらいはいいや」みたいなポジションに落ち着いてるのがずるい。もっと緑輝と葉月を使ってあげてよ。どんどん2人の存在感が薄くなってるからさぁ。

 まぁ、1年生が薄くなるのはしょうがないといえばしょうがない。今回のメインはあくまで2年生。悩める2年生チームとあすか先輩という面倒な連中を相手に、久美子は望まず東奔西走である。まず板の上に上げられたのは鎧塚先輩。全体練習でついに彼女の問題点がやり玉にあげられたのだ。進言したのは「そこそこ使えるチャラ男」くらいに思われていた橋本先生。流石に滝センの友達だけあって、性能はピカイチだった様子(そういや今回巨乳美人先生に一言も台詞が無かったのは納得いきません)。「音に表現力が」とか「三日月感だせよ!」とか、例によって素人が聞いてもよく分からない注文が多いのだが(まぁ、その道の人もわからんのかもしれんが)、こういうレベルからが本当の地区レベルの戦いということなのだろう。滝センが特に反応しなかったってことは、橋本の指導は間違ってないってことだしね。むしろ、理にかなった指導を追求している滝センの場合、なかなか「表現力」とか「気持ち」とか、そういう指導がやりにくいのかもしれない。自分では気づけなかったり、言いにくかったりする部分をさらにえぐり込むために、適材適所で橋本を招聘したのだろう。

 そして、そんな橋本が落とした爆弾が、鎧塚先輩の「淡泊な」演奏を非難するものであった。普通に考えて、久美子ですら「淡泊」と気付いていたのだから、滝センもその部分は気付いていたはずだ。それでも彼が今まで鎧塚先輩に何も言ってこなかったのは、言うべき方法が見つからなかったのか、それとも彼女の内面を知っていて、指導するわけにはいかないと線を引いていたからなのか。彼のことだからどうも後者っぽい気もするんだけど。滝センもあすか先輩に似た「度の過ぎたリアリスト」みたいな属性があるので、「余計な刺激を与えてオーボエが欠けたら困る」みたいな打算があったのかもしれない。橋本がフランクに文句を言ってくれる方が、鎧塚先輩にもあたりがソフトになる、っていう計算まで考えづくなのかも。

 合奏練習の結果、久美子はついに前作で超えられなかった壁を乗り越えることに成功する、なんて進歩エピソードを挟みつつ(まぁ、見るべきポイントは当然麗奈の絵顔だ)、久美子は本日の第一試合にして天王山、あすか先輩との個人面談に挑む。そこで知らされたの衝撃の事実だったが、よくよく考えれば、久美子の持っている情報だけでも導き出せる「妥当な」答えでもあった。なるほど、鎧塚先輩の「希美アレルギー」は本当に深刻だったんだな。そして、この話を聞いたおかげであすか先輩の株は持ち直すことに。先輩、割とまっとうな理由で鬼になってたんですね。もっとひでぇ理由があるのかと思ってました。まぁ、「いらん手助けより一本のオーボエ」ってのは「らしい」判断とは言えるのだが、このくらいの判断は他の人間でもするだろう。実際、後半パートで優子も同じようなジャッジを下しているわけだし。あすか先輩が鬼なのは、こうした事実を(警告したとはいえ)サラッと久美子に話してしまったところ。まぁ、あれだけ真剣に来られたら断る理由も無いんだけど。説明した上で「久美子はこれで苦労するだろうけど、望んだ上でのことだからあとはシラネ」というのが流石である。彼女が中川先輩のことを考えてあげてるだけでもちょっとした奇跡なのかもしれない。なお、対談シーンのあすか先輩は特有のエロスと残虐性が絶妙にマッチした最高の作画状態だったことをここに付け加えておく。

 場面変わって第2戦、久美子VS橋本。その前に麗奈のほっぺをギュッとやってるシーンとかもあるが、あそこで一切言葉をかわさずに「行ってくる」になるあたりは流石の高坂さんですね。そして、そんな麗奈の様子を微笑ましげに見守る橋本降臨。よく見るとその前のカットから足だけは画面に映り込んでたりする。そして、この橋本がぶん投げる爆弾発言。言った後の本人がマジで「やべっ」みたいな顔してたが、いくら何でもガバガバすぎんだろ。こういうことをたまたま聞いちゃう、超高校級の家政婦みたいな能力を持っているのが今期の久美子さんなのです。さぁ、滝センは既婚だったと言う事実が明かされてしまったぞ……って、麗奈はそんなこともしらんかったんか。一応は旧知の仲だったわけでしょ? 結婚してるかどうかぐらいは知ってても良さそうな雰囲気なのだが……あの様子だとマジで知らないよねぇ。久美子はどのタイミングで言うのかしら。この2人の間で情報共有されずに「秘密」が生まれるのって、一体どれくらいぶりかしら。久美子さん、間違っても麗奈を裏切らないようにだけお願いしますね(あ、滝先生は新山先生と付き合ってないそうです、良かったネ!)。

 第3戦は久美子の家政婦体質がフル回転した場外の1戦、久美子VS優子。夜中に廊下で議論してる時点で中川先輩たちも「聞いて下さい」って言ってるようなもんだと思うのだが、とにかく揉めてる2年生チーム。優子の方は鎧塚先輩のことを全部分かった上での行動なので、そのベースはあすか先輩と一緒。あすか先輩は鎧塚先輩には一切関わらずに希美を切って捨てているのが凄まじいが、優子の方は希美とも関係が深く、かえってそのあたりの処理は苦労してそうだ。デリケートな鎧塚を何とかなだめすかしながら部活に参加させているあたり、実はこの部で一番の気遣い屋さんの可能性すらある。そして、回りの人間から「あの子は事実を知ったら困っちゃうでしょ」と腫れ物扱いされてる中川先輩が可愛そう。まぁ、かつて3年生に暴言を吐いたことからも分かる通り、多分良くも悪くも素直で単純な人なんだろう。彼女がもし「希美が入ると鎧塚先輩が押し出される」なんて板挟み状態を知ってしまったら、確かにどうしようもなくなって希美に変なこと言い出しそうだし。優子はそれを理解した上で、自分が憎まれ役になって背負い込んでいるのである。うーむ、良い奴。そして、たまたま見つけた久美子とジュースを飲み交わして1期の遺恨を解消するための歴史的会談。久美子は先輩に会うたびに飲み物おごられてんな。

 今回の会談で、2期に入ってから上がりっぱなしだった優子株がさらに上昇。1期の中瀬古先輩の件について、「一切間違っているとは思っていない」と断言するあたりに彼女の迷わぬ百合パワーが籠められているし、その上で、実力主義の有用性を認め、現在の部活の意義を認める発言もしている。なんと大人な判断なのだろう。目の前にいる久美子は憎らしい後輩には違いないが、彼女の努力・実力を認めた上で、「アンタは好きじゃないけど、いいとこは認めてあげないと」というスタンスなのである。こういう先輩が最終的に一番有意義な存在になったりするんだよなぁ。このドラマは間違いなく「鎧塚攻略」が次のミッションになるわけで、その際に最も有用なキーパーソンは間違いなく優子。1期のコンペの時のような素晴らしい活躍を期待しましょう。

 お部屋に戻った久美子は、例によってご褒美マッチであるVS麗奈戦。まーた布団の中で睦言を囁きあってるよ……まぁ、今回は顔も近づけなかったし手も握らなかったけど。それでも私は布団の上の麗奈の笑顔を見て「ウェァァァアア」って変な声が漏れました。そしてこのシーンで久美子は麗奈にも「コンクールが好きか?」という質問を投げかけており、それに対する麗奈の返答が実に印象的。彼女は「コンクールのシステムに文句を言っていいのは勝者だけだと思う」と言い、さらに「ポジティブにとらえたいから嫌いではない」とも言った。これまで同じ質問に答えた鎧塚先輩や優子の否定的な意見とは真逆のもので、なんだか不遜に聞こえそうな、いかにも麗奈らしい物言いではあるのだが、この発言の裏には、これまで麗奈が積み重ねてきた血の滲むような努力がある。「勝者だけが見える世界」を実力で見に行く。それはつまり、この世界に潜むどんな理不尽であっても、自分はただひたすら練習を積み重ね、実力だけで踏み越えていくという、彼女なりの宣言なのである。それでこそ高坂麗奈。彼女が「特別な存在」であり続けるのは、彼女の高潔な精神性の成せる御業なのである。

 以上、今回の合宿における人間関係の諸々は全て終了かと思ったら……なんと、エクストララウンド、朝靄の中から聞こえてくるユーフォの旋律。そこには、ただ無心に愛器を奏でるあすか先輩の姿。朝日に煙る自然の中に立つあすか先輩の凛々しくもどこか物憂げな姿は、あまりにも神々しい。しかし皮肉なことに、ここで見せたあすか先輩の表情は、これまでの鉄面皮の女王のものとはどこか異なっている。何か、彼女の「中」に入り込むための突端が見えたような、そんな描写である。つまり、この朝の光は彼女の後光ではなく、彼女が天上から降りてきた天孫降臨の光。個人的にはあすか先輩には常に「完璧」であって欲しいと願っていたが、流石に2期ではそうも言ってられない。「ラスボス」田中あすかはこれから一体どんな表情を見せることになるのだろうか。

 そして、次の曲が始まるのです。

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 第2話! 相変わらず圧倒的幸せ成分の嵐で何をどうピックアップしていいか分からない作品ですが、今週はとにかく「死んだ魚の目の麗奈」です。高坂さん! その顔していいのは中の人だけだから!

 まったくペースが落ちる気配のない第2話ですよ。もう、今作の全力投球は本当に頭が下がります。全てのシーンが(色んな理由で)気の抜けないものに。優先順位が難しいので、思いつく限り適当に覚え書きしていこう。

 水着回! えぇ〜、この作品でそういうのいらないですって。別に水着なんてなくても十二分にエロいのだし、いきなりそんなサービスされても……いや、もらえるもんは貰っておきますけど……。多分、実際に水着を着たシーンよりも、麗奈が「きつくなったから着られるうちに」って言って久美子にガン見されたシーンが一番エロいと思いました。久美子さん、高校生になっても変わらないものは変わらないですよ。中の人に聞いてご覧なさい。ちなみに、プールのシーンになる前に中の人とごっちゃになって「あれ? 緑輝って胸でかい設定だっけ?」って訳の分からない勘違いをしてしまったのは秘密。中の人は葉月・緑輝がでかいサイドですが、メイン4キャラでは麗奈がダントツの様子。さらにプールは中瀬古先輩・あすか先輩・中川先輩に優子と、吹部のみんながよってたかって現れたが、あすか先輩がでかいのはご存じの通り、あと中川先輩も実にエロくてよい身体してましたね。

 まぁ、今作では水着はあくまでおまけ、このプールが何のためのセッティングかというと、希美先輩との偶然の再会から、炎天下で真剣な話をしてもらうため(アイスは溶けた)。今回彼女の動向を探ることが出来るシーンはこのプールだけなので、キーパーソン・希美の人となりを探る重要な手掛かりになる。今回のシナリオ、もちろん誰かが完全に悪、というわけではないのだろうが、何か「落としどころ」を見つける必要がある関係上、誰かに何らかの「傷」があるはずなんだ。現状の対立構図だとそれが希美サイドにあるのか、それともあすか先輩にあるのかはまだ判然とせず、彼女の動向から微妙な「過去の遺恨」を探っていくしかない。出会い頭、いきなり「何故中川先輩がコンクールに出られず、1年の貴様が出ているのだ」と訪ねられたところで「あれ、こいつひょっとして悪い奴?」って思ったけど、あくまで彼女は久美子の反応を見るためにふっかけただけのようなので、残念ながらそこまで単純な「悪い奴」ではなさそう。彼女は復帰出来ない苦しさを訴える段で涙も見せており、今回の嘆願が心からの本気の行動であることも窺える。ただ、過去の事実についていくつか聞いていくと彼女の「傷」らしきものも見え隠れする。一番はっきり現れたのは鎧塚先輩との関係性のところで、彼女は「真面目な部活を成立させる」という目的があったにも関わらず、コンクールメンバーに選ばれ、黙々と部活の空気に従っていたと思われる鎧塚先輩には声をかけなかったと言う。そして、そのことを伝えた彼女に何か後ろめたいような表情が表れた。それはまるで、メンバーに選ばれていた彼女に希美が嫉妬していたようにも見えたが……。どうやら過去の対立の鍵を握るのは、鎧塚先輩になりそうだ。

 ちなみに、希美から「なんでお前がコンクールに出るんだ?」と問い詰められた際の久美子だが、そこでフラッシュバックしたのが中川先輩の努力している姿だったのは当然だが、さらにそこから麗奈との誓いのシーンに繋がる。短いカットだが、久美子が「戦える」理由がはっきりと分かる部分である。そう、分からず屋は愛の力で蹴散らせるのだ。

 前半戦のみでプールが終わり、いよいよ合宿に。つまり、久美子も麗奈も一つ屋根の下、油断すると1つの布団で寝てしまいそうなイベントに突入だ。なんとここでも思わぬ伏兵、木管パートにまでスパルタ指導者を追加だ。この「2期になったからガンガンレベルアップイベントをぶち込んでいく」みたいな火力主義の滝センがなかなかに分かりやすくてよい。木管パートで表れた美人巨乳なおねーさんは(まぁ、無いだろうケド)何となく滝といい感じ。そして死んだ魚の目に戻る↑。ちなみにCVは桑島法子。また中村が同じ現場にいるので杉田がキレそうなキャスティングである。私にとっては感謝以外の言葉が見あたらないキャスティングである。案の定、鬼みたいなキャラだったし。

 そして合宿の夜が訪れる。まずは久美子×中川先輩。希美絡みの過去話を聞かせてくれる中川先輩、彼女はやっぱり良い人レベルが高く、当時はいけ好かない先輩連中に噛み付いたこともあったとか。高校の部活で1年生が3年生に噛み付くのってすげぇことだよな。まぁ、彼女がそこまで無茶しちゃったせいで希美VS上級生の溝が決定的になっちゃった可能性もあるんだけどさ。結局、いざこざが収まらずに希美が抜けて、中川先輩は「何となく」でも残っていたというのは皮肉な話。板挟みで苦しむ中川先輩は大変だろうが、何とか彼女にとって幸せな結末を迎えて欲しい。しかし、どうやったら双方丸く収まるんだろうね。正直、希美がやめたタイミングと、翌年に滝旋風が巻き起こって吹部が生まれ変わったタイミングが最悪なのはどうにもなぁ。

 第2ラウンド、久美子VS鎧塚先輩。なんか、厄介なのばっかり久美子の回りに寄ってくるよな。鎧塚先輩、単に人畜無害の被害者体質なのかと思っていたら、割と自己主張のしっかりした面倒な人間だったようで……。様々な目的意識で部活に精を出す面々と異なり、彼女のフルートは「淡泊」である。その理由が今回明らかになり、彼女には闘争心がなく、向上心も強くないのだ。おそらく去年一年間で望んでもいないゴタゴタに巻き込まれ、希美が自分とは関係無いところで勝手に暴れて去っていったことが大きな傷になっているのだろう。鎧塚だって同じ学年だったのだ。同じ中学の仲間だったのだ。それなのに一切の接触を持たず、正義の御旗を掲げて散っていた希美は、鎧塚にとって「味方」ではない。だからこそ、彼女は希美のフルートの音に頭を抱えるのではなかろうか。そして、「コンクールが嫌い」と言ってしまうようになった彼女のモチベーション。もう、今となっては何故オーボエを続けているのか、自分でも分からなくなっているという。コンクールで金を取ろうと誓ったのは希美、しかし、そんな自分を置いて部活を去ってしまったのも希美。もう、彼女には誰が正しいのかも分からない。彼女が真の意味で仲間を理解し、自分だけの音を見つけることが、今後の吹部にとって不可欠のミッションとなるのではなかろうか。

 面倒だらけの久美子さん、お疲れ様の第3ラウンドは久美子VS麗奈のご褒美バトル。もう、布団の中でのヒソヒソ話の距離感がヤバい。こいこいと手招きする麗奈、自分から布団の端までにじり寄る麗奈。もう、そのままくっついちゃえばいいんじゃないか麗奈。実際最後は手と手だけだけどくっついちゃったしな。もう、枕は1つでいいんじゃないでしょうか。

 そして翌朝、天王山を向かえます、久美子VSあすか先輩。久美子さん、こういうところで逃げなくなったあたり、本当に成長しました。

 そして、次の曲が始まるのです。

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 あぁもう……あぁもうね……最終話! 言葉も出ませんわ。

 何もかも完璧だった最終話です。話の盛り上げ方、各キャラクターの配置、演奏シーンのバランス、本当によくこれだけの構成が作りあげられるものだ。最終話コンテは山田さんなのだが、そちらの手柄と考えれば良いのか、全編通じてここまでを作りあげた石原監督の手腕なのか。……どっちもだろうなぁ。

 冒頭、髪をポニテに結い上げる久美子からしてまずテンションがマックスまで上がる。そのポニテは何? 中川先輩の弔い合戦? 久美子の覚悟が朝のワンシーンで明確に伝わる。そこからいきなり電車内で麗奈とじゃれ合うシーンへつながり、二人のモチベーションの高さが窺える。「吹奏楽部が大会のために楽器の搬出入をする」っていうだけのシーンなのだが、これまで培ってきた部内の様々な人間関係の結末がちりばめられており、一切無駄なカットがない。もちろんデカリボン&中川先輩が至高であるが、緑輝や葉月のポジションだって、単なる脇役ではない、立派な舞台設定だ。部員全員が集まって初めて「北宇治高校吹奏楽部」なのだという、滝センの教えが力強く染み渡っているのを感じる。

 そのことは、演奏前の音合わせから本番に至る場面でも確認出来る。どこまでも真っ直ぐな滝イズムが今では完全に吹部全体を調和させており、滝センはそのことに満足しながらも、決してそこで終わるようなことはさせない。会場をあっといわせる演奏を。そして、何よりもそのために、彼自身が汗だくになって生徒達を導く。野郎の汗が舞ってこんなに爽快な物語が出来上がるとは。その他、演奏シーンではこれまでの蓄積があったおかげで、各パートの音が1つずつ聞こえてくるようになっていたのが非常にありがたい。ぶっちゃけ今でも吹奏楽の音の良し悪しなんてさっぱり分からないが、今作の1クールの軌跡のおかげで、「これがチューバ、ここがクラリネット」という風に識別できるようになり、個々のパートの顔が見える程度にはなった(もちろん、それが分かりやすいように映像を作ってくれているわけだが)。特に、これまでほとんど注目されていなかったパーカッションだが、いざ演奏シーンを映像にするときには、動きが一際大きいので非常に画になる。おかげで今回はかなりパーカッションの細かい動きに魅せられることになりました。

 その他、個人的クライマックスは、本当にたくさんあるけど大きく5つ。1つ、高坂さんの髪を結ぶ久美子。高坂さんが他人の手を借りて「何かをやってもらう」なんてことはあるはずがない。何しろユーフォを抱えて山登りする時にだって「平等に」ってんで他人の楽器を担いでいたような人間である。そんな高坂さんがわざわざ久美子に「結んで」と頼みにきた。たくし上げるうなじの色香も相まって、2人の近さが実に艶めかしい。「自分で髪を結い上げた久美子」と、その久美子に「髪を委ねた麗奈」という対比から、高坂さんの作りあげたい2人の関係性が垣間見られる。

 1つ、会場外で音を確認してはしゃぐ葉月と中川先輩。二人の顔がくっつきそうな距離で聞き入っているシーン、アップで映る2人の顔のディティールが凄い。中川先輩マジ美人。なるほどね、こうして「外から音を聞いて反応する役」が必要だったから葉月というキャラクターがいたのだね。彼女の反応で、「演奏の出来不出来」が一発で分かるようになっているために、今回の結末に持っていく布石が揃えやすくなった。

 1つ、舞台袖でキメる塚本。塚本君。いよいよ男になりましたね。久美子の耳元で囁いた後のカット、久美子から見た塚本は、気付けば男の子の頼もしさが出ている。見上げる視点から「大きさ」を見せる構図、光のあたり方も、確実に久美子が塚本に対して心動かされたことが分かる素直な「どきん」ショットである。いいね、これだけ出番が少なかったのに、ちゃんと「塚本君の成長物語」として完結しているのだ。

 1つ、高坂さんのソロ。ここでこけてしまっては何もならないという最大の山場。ソロの冒頭部分は香織先輩の顔をナメるカット割りで高坂さんの勇姿を映し、更にその奥に吉川という並び順が憎らしい。最後には微笑む香織先輩も、最初はなるべく高坂さんの方を見ないようにしているし、吉川の表情も、決して全てが終わったわけではないという決意が見られる。高坂麗奈の晴れ舞台、とくと見よ。

 そして最後の1つ。これは具体的なシーンではないのだが、心底感心させられたのが「あすか先輩の役割」である。前々から「田中あすかというキャラクターの暴虐はどのように決着がつくのか」と見守っていたのであるが、なるほど、最後には吹部全体で彼女を打ち倒すことで、「ラスボス戦」としたわけだ。蛇足とは思うが付記させてもらうと、今回、副部長先輩だけは、他の部員達と違う行動をしている部分がある。全員で「オーッ!」と声を上げた時に1人だけ無反応だったり、意気の上がる部員達の中で、1人だけ「これが楽しめる最後だ」と嘆息したりしている。これが何を意味するかといえば、「客観の権化」たる田中あすかは、盛り上がる部内でただ1人「現在の北宇治では優勝は不可能だ」と認定していたということ。彼女は、どれだけ自分の技巧が優れていようが、今の北宇治にはトップを取る演奏は出来ないと断じていた。だからこそ回りに合わせて盛り上がることもしなかったし、久美子に向かって「これで終わりだ」とさも当然のように言っていたわけである。この時点で、視聴者としては「あの田中あすかが終わると言っているのだから、北宇治はここで終わってしまう、なんてこった!」と思うわけだ(実際私はそう思った)。しかし、結果はその真逆。なんと、北宇治はあすか先輩の思惑、彼女の「絶対感」を打ち破り、見事に結果を出す。つまりこれが、擬似的に「田中あすかを倒す」ということである。こうして、「最後の逆転」のための布石として、絶対存在田中あすかが認定されていたのだ。まさにラスボス。「倒すのが無理だと思っていたものを乗り越えた達成感」が、彼女によってもたらされ、意外性を持った至福の結末を迎えることになるのである。

 ほんと、よくこれだけの要素を配置して、一切の過不足無くまとめ上げたものだ。こんな最終回、見られて本当に良かった。

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 黄前久美子が主人公になった日、第12話。これにて今作は完成へと至る。

 説明不要の回ですかね。最終話へ向けて、これまで「観察者」であり続けた黄前久美子という1人のキャラクターが、スルリと物語内部に入り込み、ふてぶてしくも主人公の座に登り詰めるという展開。高坂さんとの魂の交感を経て以来、久美子は少しずつ「無気力な観察者」でいられなくなっており、前回もはっきりと「上手くなりたい」という台詞を漏らしていたわけだが、こうして作られてきた久美子像が、今週でようやく完成したことになる。

 周囲を次第に固めていく「臨戦態勢」に乗り遅れてしまった久美子は、非情にも滝センの選抜から転げ落ち、高坂さんと一緒に「特別」になるという夢を志半ばで絶たれてしまうことになる。そのことは悔しくて悔しくて仕方ないが、それが「勝つため」に正しい決断であることも重々理解している。これまでの久美子ならばそこでそっと一歩退き、身の丈にあった立ち位置から回りで起こっている「戦い」を見守っていたことだろう。今回久しぶりに登場した葵ちゃんも、そうした「過去の久美子像」を喚起しての対比が目的であるし、姉との関係性においても、久美子がこれまで波風を立てずに生きてきたことが改めて確認出来る。しかし、高坂さんという束縛要因が出来たことにより、既に久美子に「退く」という選択肢は許されていない。彼女は戦わなければならない。抗わなければならない。こうして、久美子はいともたやすく「主人公」になるのである。

 今回は(今回も)様々なシーンで今作独自の見どころが目白押しだったが、その中からあえて2点だけピックアップするなら、1つは冒頭から衝撃の通告まで続く「屋外での個人練習シーン」。時に一人で、時に高坂さんと一緒に練習を重ねる久美子。流石に日なたに出ていたらあっという間にやられてしまうし、おそらく楽器にも良くないだろうから必ず日陰を選んで場所を取っているわけだが、そんな「薄暗がり」でもはっきりと分かるその暑さと熱さ。久美子の表情、したたり落ちる汗、瞳に反射する景色と、日陰にも透過したかのように容赦無く降り注ぐ陽光。そうした全ての映像が、ただ一点、「夏の暑さ」に集約し、さらにそれが「久美子の熱情」へと繋がっていく。「夏」「水」といったオブジェクトについては、京アニは「Free!」シリーズの製作でたっぷりと経験値を積んだ部分で、今回はそれがダイナミックな動きとしぶきを伴う「動」の映像美ではなく、じっとりとしたたり、一目見るだに汗の漏れそうな「静」の映像美に繋がっている。高坂さんの表情や、皮膚に描かれる陰影も素晴らしく、この作品にどれだけの心血が注ぎ込まれているかが分かる。個人的に「暑」の京アニ、「寒」のP.A.みたいな印象が出来上がっている。

 そして2点目は映像もさることながら、キャストの好演が光る「橋の上を駆ける久美子」のシーン。これまであまり取り上げてこなかったが、黒沢ともよという役者は非常に面白い存在だ。「声優」としてはまだまだキャリアが浅く、はっきり言って「アニメ声優としての発声」だけを聞けば拙い部分も多い。しかし、役者としての蓄積は豊富であり、芝居の中に没入する心得は充分のようである。これまでも「なんかエロい」や「なにそれ」といった一言で「性格の悪い黄前久美子」像を容易く作り上げてきていたが、今回はそうした「これまでの久美子像」をぶっ壊し、繭を破って新しい久美子が生まれてくる重要なエピソードであった。その「新生」の極みとも言えるのが、橋の上のシーン。「上手くなりたい」と叫び続ける久美子の声は、一声ごとに様々な感情の色を持ち、彼女が走る速度に合わせて全てを脱ぎ捨てていくような切迫感がある。これまで高坂さんの前でしか見せてこなかった「特別な自分」を、ついに塚本にもさらけ出し、実姉にもさらけ出し、いよいよ黄前久美子がその姿を現したのだ。この芝居を一部のズレもなく作り上げられるというのが、ともよちゃんの最大の強みなのだろう。表面的な技術だけでは推し量れない「勝負勘」みたいなものの強さは、やはり子役あがりならではのものなのか(「紅」の時のあおちゃんに感じたものに似ているのかもしれない)。

 こうして久美子の物語としての完成を見た実質的な「最終回」と言ってしまってもいいお話だったが、本当の最終回は次回である。生まれ変わった久美子が、高坂麗奈、田中あすかといった「特別」達と肩を並べて「結果を出す」フェイズだ。指をバンテージだらけにした緑輝も、久美子との対比でついに長いトンネルを抜けた塚本も、全ての力が一点に集まり、滝昇の手で「次の音楽」へと向かう。一体どんな映像になるのか。どんな結末になるのか。今から正座待機もやむなしだ。

追伸:中川先輩、少ない出番で的確に可愛いです。吉川が許されたんやなぁ……。

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関西在住の、アニメを見ることを生業にしてるニート。必死で好きな声優を12人まで絞ったら以下のようになった。
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